狭山事件の再審を求める7・14狭山東京江東地区集会
不当逮捕から60年 事実調べ~証人・鑑定人尋問を行わせよう
再審開始と完全無罪判決を
【東京東部】7月14日午後6時半から、江東区亀戸文化センターで「不当逮捕から60年 事実調べ~証人・鑑定人尋問を行わせ一日も早い再審開始と完全無罪判決を実現しよう! 狭山事件の再審を求める7・14狭山東京江東地区集会」が部落解放江東共闘会議の主催で開かれた。
司会の和田さん(江東部落解放研究会)が「袴田再審裁判で、検察が有罪を立証することを明らかにした。2014年の静岡地裁の再審決定から9年間が過ぎている。ムダな時間を過ごしてしまった。第一次袴田再審は27年間やったにもかかわらず、証拠開示は一点もない。狭山は3回目の再審請求中。弁護団が事実調べの請求を行った。本当の山場にきている。気持ちを引き締めてやっていきたい」と開会のあいさつを行った。
引き続き、江東共闘代表幹事の渡邊さん(東交10号乗務支部)が「労働組合と市民運動の共闘の重要性、石川さんの再審なくして、日本の人権はない」と狭山闘争を取り組む意義を話し、主催者あいさつとした。
昨年8月に弁護団が求めた11人の証人尋問とインク資料の鑑定はすべて必要ないと3月15日に、検察側は意見を出してきた。これに対して弁護団が必要であると意見書を出していくことにしている。こうして、秋に向けて重大な局面に入っている。署名などさまざまな活動を強化しようという集会基調と集会決議が提案され採択された。
片岡明幸さん(部落解放同盟中央狭山闘争本部長)が「万年筆インクの鑑定を 狭山事件・60年目の真実」と題して、スライドを使いながら狭山事件がどのような事件で、なぜ石川一雄さんは無実なのかを分かりやすく説明した。初めて狭山事件を知った人でも石川さんの無実を理解できる内容であった。(別掲)。
最後に、飯塚さん(部落解放同盟江東支部)が「大野裁判長は12月に定年退官する。そのため9月頃には鑑定をするかどうかの判断をするものと思われる。重大な局面だ。署名は52万筆になろうとしているが、オンライン署名が4千しかいっていない。SNSで発信し、若い人に知ってもらいたい。9月22日狭山東京集会(台東区民会館、東武線浅草駅下車)、毎月23デーJR亀戸駅頭での宣伝活動に参加してほしい」と閉会のあいさつを行った。(M)
片岡明幸さんの講演から
「万年筆インクの鑑定を 狭山事件・60年目の真実」
事件が起きたのは1963年5月1日。埼玉県の狭山市で、高校1年生の中田善枝さんが学校帰りに行方不明になった。当日の午後7時40分くらいに自宅の玄関に脅迫状が差し込まれていた。脅迫状には2日の夜、20万円持って佐野屋に来いと書かれていた。40人の警察を配置した。犯人が現れお姉さんと10分くらいやりとりをした。犯人は警察を察知して逃げてしまった。
5月3日、身代金目的の誘拐事件で犯人が逃げれば、被害者が殺される可能性が高いということで大々的に山狩りを行った。5月4日、麦畑の農道に遺体が埋められているのが発見された。警察に強い批判が起きた。5月6日には、この事件で重要参考人とされていた男性が自殺した。翌日の7日の日に結婚式の花婿さんになる人だった。なんで死んだのか未だに分からない。この人は中田家に仕事に行っていたことがあり、善枝さんを知っていた。
予断と偏見に基づく不当な捜査
警察は生きた犯人を捕まえると狭山市内の二カ所ある被差別部落に向けて捜査を続けることになった。
当時の新聞の切り抜き。ずいぶんひどいことを書いている。高校生が誘拐される。誰がやったのか、いろいろ噂が出た。やったのはあの地域の人間ではないかというような予断と偏見の中で、被差別部落に目が向けられて、ほとんどの男性を調べることをやっている。
そして、5月23日に石川一雄さんが逮捕される。この時二回の家宅捜査をやっている。第一回目が5月23日、刑事12人、2時間17分。第二回目は6月18日、刑事16人。小さな家なので刑事であふれかえった。天井裏から、畳をめくったり、縁の下などを徹底的に調べたけれども、事件にかかわる内容のものは何も出てこなかった。
6月26日になって石川さんの自宅の鴨居から万年筆が発見される。この時は刑事3人が、「石川が自白した。殺した高校生の万年筆を鴨居に置いた」と言うので取りにきた。一雄さんの兄さんは「何をいうのですか、皆で調べて、何もなかったでしょう」と言った。刑事にうながされ鴨居の所にいき、そこでピンク色の万年筆が見つかった。これが石川さん有罪の決め手になった。
事件はその年の9月から浦和地裁で裁判が始まり、翌年1964年3月11日に死刑判決が言い渡され、その後無罪を訴えたが1974年の10月31日に東京高裁が無期懲役の判決。77年8月9日に、最高裁が上告を棄却した。その後32年間の獄中生活を経て、94年に仮出獄でようやく自宅に帰ってきた。それから30年が経っている。
その後、77年に東京高裁に再審請求を行ったが却下された。88年には二回目の再審請求。94年の12月に仮出獄。96年、早智子さんと結婚して今日に至っている。
11人の鑑定人の尋問請求
今、三回目の再審請求をしている。それから17年経っている。三次再審請求はそれまでと様子が違っている。裁判としては大きな進展があった。2009年に、門野博裁判長がこの事件はおかしいと思ったのでしょう、検察側に対して証拠を開示するように勧告をした。証拠開示勧告によって、次々といろいろ証拠が出てくる。弁護側は出されてきた証拠をもとにして、新証拠を出すことにいたっている。
16年間の活動を集約する形で、昨年の8月26日に、裁判所に11人の鑑定人の尋問請求を行った。弁護団としては勝負をかけに出た。
内容について見出しだけをいう。①石川さんには脅迫状を書く能力がなかった。②脅迫状の筆跡は99・99%別人だというコンピュータの筆跡鑑定。③脅迫状に指紋がつかないはずがない。実験をやった。いっぱい指紋がついてしまう。④足跡。犯人が現れて逃げてしまった。畑の中に犯人の足跡が残っている。石川さんの物と似ているというがどう見ても似ていない。
⑤犯人の血液型はB型と断定できない。⑥スコップは遺体埋設に使われたものではない。⑦目撃証言は信用できない。⑧万年筆が発見できないはずがない。二回も捜索している。⑨犯人の声。だいぶ経ってから善枝さんのお姉さんが逮捕されている石川さんの声を聞いて似ていると証言しているが、それは信用できない。⑩万年筆は被害者のものではない。これが最大の問題になっている。
⑪殺害方法。石川さんは手拭いで絞め殺した、タオルで絞殺したとか、いや手で絞め殺したと自分で殺したと自白しながら、何でどうやって殺したかということをころころ変えている。遺体の写真から見ると石川さんの自白とは殺害方法が違うということが分かる。
万年筆のインクの色が違う
最大の争点は万年筆のインクだ。万年筆のインクが有罪の決め手になっている。万年筆にはお兄さんと刑事の指紋は出てくるが、一雄さんのものは出てこない。インクの色も違っている。被害者が使っていたのはライトブルー。発見された万年筆はブルーブラック。おかしいということは分かっていたが、それを証明することができなかった。今回やっと証明することができた。
被害者が使っていた万年筆のインク瓶。日記をつけていた。被害者が使っていた万年筆とインクを一番目とする。二番目。事件の当日彼女は学校に行って、ペン習字の練習をしている。ペン習字をしたものが証拠として残っている。不幸にも彼女は殺害されるが、万年筆はどこにいったのか。警察側の説明だと石川が殺した後、万年筆を奪って自分の家の鴨居に隠した。石川さんは5月23日に逮捕されている。6月26日に、自白したということで万年筆が見つかる。発見された万年筆を持って、警察は被害者の中田家に行って、家族に見せた。石川の家から出てきた、見覚えはあるか。お兄さんがこれは妹の持っていたものによく似ているということで、お兄さんがこの万年筆で数字を書いた。これがかぎだ。これが出てくることによって、比較することができるようになった。
善枝さんの自宅にあった万年筆、その万年筆を使って当日学校でペン習字を書いた。殺されて石川さん宅から出てきたという万年筆。その万年筆を使って、善枝さんのお兄さんの書いた数字。本物だったら、インクはすべて同じでないとおかしい。私は岡山でみかんとか桃とかを光センサーで選別して大きさや糖度を調べる所に行ったことがある。ほとんど瞬時に行われている。万年筆のインクの成分を調べるのはわけがない。
2018年8月に、証拠開示で出てきた善枝さんのお兄さんの書いたものが、初めて比較できるということで専門の下山先生がインクの成分を比較したら同じではなかった。中田さんの書いたものはクロム元素があり、石川さん宅から発見されたものにはクロム元素がなかった。インクとしては違うものだ。万年筆のインクが別であることが証明できた。
では、違うということは誰かが置いたということになる。事件はそれでひっくりかえる。百パーセント証明できれば勝てる。われわれとしても俄然元気が出てきて、2018年8月に弁護団が下山さんの鑑定を提出した。
その年の12月に、検察側が自分たちでも実験して、反証すると言ってきた。その後実験を準備している最中。翌年の4月になっても出てこない。6月になっても出てこない。いつ実験をやるのと弁護団が求めても回答がない。7月、検討中で見通しが立ったら回答すると答える。弁護団は実験を誰に依頼したのか、実験の内容を教えてくださいと求めた。それでも検察側の返事がない。
一年経った。9月になるとジェットブルーインクを捜査中と、変なことを言う。ジェットブルーインクなど証拠は全部検察が持っているのだから、エックス線をあてて、調べればいいだけのことだ。11月弁護団は改めて、実験の内容を求めたが返事がない。検察は12月までにはジェットブルーインクを探す。検察は3月になり、ジェットブルーインクが入手できなかったので、実験は行わない、文書だけ提出すると返事し、文書を出してきた。
2022年8月に、インクが有罪の決め手になっているのだから、裁判所で、ぜひ鑑定実験をやって下さいと求めた。しかるべき機関、民間の会社や科学警察署でもよいから、光を当てれば成分は分かるのだからやって下さい。下山鑑定が正当であることの立証の機会を与えて下さいと。検察側は今年になって、下山鑑定はやる必要がないという文書を出してきた。今は弁護団は改めて実験をやる必要がある。それはこの事件にとって大事だと文書を作っている最中だ。それを出したら、裁判官が判断するということだから、9月に裁判所が実験をやるかどうかの結論を出すという状況にきている。
狭山再審闘争
は最終局面に
狭山闘争は事件が起きて、60年が経っていて、石川さんは84歳、最近は目が悪くなっている。昔は字をいっぱい書いていたが字を書けなくなった。読むのも大きな虫眼鏡が必要になっている。万年筆の鑑定は裁判官が職権で直接やってもらいたいという最終局面にきている。
(発言要旨、文責編集部)
石川一雄さんの無罪を事実に基づき持って説明する片岡さん(7.14)
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