労働者の切実な願いは無視された!全国一律1500円は譲れない最低基準だ!

最賃引き上げ目安決定 何と加重平均で41円!

最賃制度を抜本的に見直せ

 7月28日、厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会目安小委員会は、今年の最低賃金改訂の引き上げ目安を、全国加重平均で41円ととりまとめた。これは、各都道府県の最低賃金が目安通りに改定された場合、最低賃金の全国加重平均が1002円になることを意味する。メディアは過去最大の引き上げと報じているが、岸田首相が今年はじめからことあるごとに明らかにしていた最賃1000円到達という期待に応えるという意味で、いわば筋書き通りとも見えるとりまとめだ。
 とりまとめを主導した公益委員は生計費上昇を重視したとされている。しかしエネルギーや食品など生活必需品の値上げが続いていることを考えれば、非正規など低処遇の下で働いている労働者の生活防衛にこれで足りるかは大いに疑問だ。ましてこれらの労働者層の生活改善に今回の改訂が遠くおよばないことも明らかだ。その点で今回決定された目安は、最低賃金に対する労働者の要求に完全に背を向けるものであるだけではなく、日本の最低賃金制度そのものが抱える問題をもあらためて露わにしている。

最賃地域格差の温存許さない


 問題にされるべき第1の点は、最低賃金の地域格差の温存だ。全国の都道府県をランク分けし、そのランク別に引き上げ目安を決定するこれまでのやり方は、生活実情を反映せず労働条件格差をいたずらに拡大固定化しているとして従来から批判されてきた。その批判に応えるとして、今年4月6日、中央最賃審目安制度の在り方に関する全員協議会が、昨年までのA~Dの4ランクからA~Cまでの3ランクへの変更を決めたのだが、まさに小細工の見本の様な決定であり、それが格差縮小につながるという根拠ははおそろしく薄弱であり、保証もまったくなかった。
 今回の決定は、Aランク(東京など6都府県)41円、Bランク(28道府県)40円、Cランク(13県)39円だ。明らかに格差は拡大する(A、C間で現在の219円から221円に)のであり、目安通りであれば、最賃が1000円を超えるのは8都府県にすぎない。4ランクから3ランクへの変更がほとんど無意味だったことがだめ押し的に示されている。
 さまざまな労働者組織が全国の生計費調査を行ってきたが、生計費の地域差が今ではほとんどないということが共通に報告されている。ファミレスやコンビニを含め生活用品価格に地域差などない以上、おそらく誰もが実感していることだ。最賃に地域差をつけることは全く不合理になっている。またこの格差のため低ランク地域からの特に若い労働者の流出が問題になり、昨年は低ランク地域で目安を上回る最賃決定が続出、という事態も起きた。
 全国一律最賃という長年の労働者の要求の正当性はは今や誰も否定できない。その要求を全民衆の社会的要求として日本の支配層に認めさせる運動を強力に展開しなければならない。

最賃の大幅引き上げを

 第2の問題は最賃水準の低さだ。
 かつて最賃レベルの労働者比率がかなり小さかった時期がある。しかし今は事情が待ったく異なっている。最低賃金とほとんど差がない賃金水準の労働者が大幅に増大し、厚労省調査でも、中小零細企業では最賃引き上げで即賃上げが必要になる労働者が19%を超えているのだ。日本の労働者の圧倒的多数が中小企業で働いていることを考えれば、この数字は驚くべき多さと言わなければならない。
 まさに日本で進行している貧困化がここにまざまざと示されている。最賃の大幅引き上げはこれらの労働者にとってはまさに切実な必要であり、貧困化に真に取り組むのであれば、何よりも最低賃金の大幅底上げこそがその最も効果的な対策だと認識されなければならない。
 ところで最高ランク地域でも最賃1000円というレベルは、毎月200時間働いてやっと月額20万円ということだ。これで成人が健康で文化的な生計を維持することができるだろうか、子どもを育てることができるだろうか。特に一人親世帯の貧困が大きな社会問題になっている。最賃の低さがそこに大きく影響してることは論を待たない。最賃レベルの大幅な引き上げはもはや絶対的要請と言わなければならない。
 この間全労連、全労協を中心に全国一律1500円を要求する運動が展開されてきた。各県労働局に対する働きかけが重ねられると共に、今回の目安審議に対しても毎回会場前での要請行動が強力に続けられた。闘いは今後各地方最賃審に舞台が移る(宮城発の記事参照)。
 全国一律1500円要求は今や譲れない最低水準の要求だ。この要求を軸とする強力な労働者の運動を全国的に作り上げることに挑戦しなければならない。それを見据えつつ、これから各地域で目安を上積みさせる闘いをまず全国でくり広げよう。 (神谷)  

これでは生活でできない!全国最賃金一律1500円を(7.20)

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