7.30「デジタル監視社会はどこまで悪化したか! 私たちを取り巻くデジタルの落とし穴はどこに?」
盗聴法に反対する市民連絡会集会
デジタル分野での運動が不可欠
【神奈川】7月30日、盗聴法に反対する市民連絡会は、かながわ県民センターで「デジタル監視社会はどこまで悪化したか! 私たちを取り巻くデジタルの落とし穴はどこに?」をテーマにパネルディスカッションを行った。
5人のパネラーから報告と問題提起が行われた。
情報収集活動
を各国が強化
小笠原みどりさん(ジャーナリスト・社会学者/カナダ・ビクトリア大学教員)のテーマは「カナダの監視法制と戦争」。
「米国の情報収集活動を告発したエドワード・スノーデン(アメリカ国家安全保障局(NAS)および中央情報局 (CIA) の元局員)を直接インタビューし、『スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか』(毎日新聞出版社)『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』(毎日新聞出版社)にまとめた。対テロ戦争下で米国が極秘裏に発達させた大量監視の手法を明らかにした。それは通信ケーブルの交換地点に監視装置を埋め込み、膨大なデータをコピーしていた。また、通信事業者やインターネット会社顧客の通信情報を政府に渡していたことも判明した。日本は米国の世界監視システムの主要な拠点だった」。
「スノーデンの告発から10年たった。世界で監視法制が拡大していった。日本では、共通番号(マイナンバー)法(2013年)、特定秘密保護法(2013年)、新安保法(2015年)、改定盗聴法(2016年)、共謀罪法(2017年)を制定し、民衆監視態勢を強化していった。コロナパンデミックの拡大によって新しいデジタル監視技術が登場した。パンデミック監視資本主義の登場だ。ほとんどは失敗したが、監視強化に対して市民は反発した」。
「カナダは急速に中国の仮想敵国化を進めている。カナダの諜報機関は、中国大使館、中国系科学者を監視対象にしている。大学研究者と中国系技術企業のつながりも問題視され、研究費の申請に『国家安全保障ガイドライン』を導入し、ファーウェイ(中国通信機器会社)との共同研究事業が中止になっている。中国とカナダの関係が悪化している」。
マイナカードに
抵抗運動今こそ
宮崎俊郎さん(共通番号いらないネット)は「監視社会化とマイナンバー制度」について報告した。
「保険証廃止によるマイナ保険証への一本化は、実質的なマイナンバー強制の第一歩だ。国家にとって非常時に必要な人材を効率的に利用していきたいという意思の表れであり、その頂点に徴兵制がある。今ねらわれているのが医療と教育情報だ。これらの個人情報を生涯管理して綿密な国家管理の下に置くことこそが超監視社会の基盤整備なのだ」。
「いまこそ『書かない番号!持たないカード!』を!番号強制社会への抵抗運動を!の取り組みを広げよう。これ以上所持率を増やさないことで、紙の保険証廃止を撤回へと追い込める。マイナカードの自主返納を呼びかける。だが、保険証データは今のところ紐づけを解消することはできない。デジタル強制に対して私たちはあくまでもデジタルとアナログの選択を自らの生き方として選択可能な社会を作り出していきたい。街頭宣伝・デモ・集会などを通じて保険証廃止撤回を訴えていこう。すでに政府の強引で支離滅裂な対応に市民の怒りは高まっており、あと一歩ではないだろうか」。
顔認識システム
野放図に拡大中
角田富夫さん(共謀罪NO!実行委員会)のテーマは「広がる顔認識カメラシステム これとどうたたかうか」。
「JR東日本は、顔認識別カメラシステムを2021年7月に導入した。システムのデータベースに指名手配犯、同社の管内で事件をおこした出所者・仮出所者、『不審者』の顔画像を登録した。後に「前科」は機微情報(要配慮個人情報)にあたると批判され登録からはずした。指名手配犯、『不審者』の登録はそのままにし稼働し続けている。個人情報保護委員会は、同システムの利用にあたっては利用目的の特定、通知・公表をしなければならないとしている。本当に、同システムの利用にあたって『透明性の確保や適正な運用』が行われているかチェックしていくことは重要だ」。
「このシステムの『不審者』の登録は、その概念も含めて曖昧だ。本人がデータベースに登録されているかどうかも知ることができない。だからプライバシーの侵害かどうかの本人確認ができないことだ」。
「JR東日本は、このシステムを通してほかの事業者との顔画像の共同利用をねらっている。個人情報保護法は、個人情報を取得した事業者は本人の同意がなければ第三者に提供できないとされているが、共同利用は例外としている。JR関係各社、私鉄などとの共同利用が可能となり、全国的な顔識別カメラシステムのネットワークが可能となり、各地どこに行ったかなどの追跡が可能となり、個人のプライバシーはまっくなくなってしまうことになる。日本は世界有数の監視カメラ保有国であり、プライバシー、個人情報の侵害の拡大を許してはならない。国会での議論が必要だ。『カメラで追跡されるのはゴメンダ! 私たちはプライバシーを守りたい 顔識別カメラシステムに反対する市民団体共同声明』運動を拡大していこう」。
サイバー対応は
自衛隊でも進行
木元茂夫さん(すべての基地にNO!を・ファイト神奈川)は、「4000人のサイバー部隊、2万人のサイバー要員を目指す自衛隊」について報告した。
「岸田政権は、安保3文書で能動的サイバー防御の実施のための体制を整備すると言っている。建前としては防御だが、防衛省・自衛隊は、関係省庁、重要インフラ事業者、防衛産業との連携を強化し、『サイバー攻撃を受けている状況下において、指揮統制能力及び優先度の高い装備品システムを保全し、自衛隊の任務遂行を保証できる態勢を確立するとともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる体制を構築する』と明記している。未然に攻撃者のサーバーに侵入して無害化できるような権限も必要だと言っている。ところが憲法21条の通信の秘密の保護があり、電気通信事業法、不正アクセス禁止法がじゃまでしない。政府・与党内では自衛隊を不正アクセス禁止法などの対象外とするように法改正の検討が始まっている。浜田防衛相は、『安全保障上の必要性と現行法令との関係等を総合的に勘案しつつ、内閣官房が中心となって政府として検討を進めている』と国会答弁している」。
「防衛整備計画の一環として2027年度を目途に、自衛隊サイバー防衛隊等のサイバー関連部隊を約4000人に拡充し、システム調達や維持運営等のサイバー関連業務に従事する隊員に対する教育を実施すると明記している。これによりサイバー関連部隊の要員と合わせて防衛省・自衛隊のサイバー要員を約2万人体制とし、将来的には更なる体制拡充を目指し、サイバー安全保障分野に係る政府の取り組みに積極的に貢献していくということだ。このような動向をチェックし、粘り強く反基地・軍拡の取り組みを強化していこう」と訴えた。
政府・企業の
基本戦略とは
小倉利丸さん(盗聴法に反対する市民連絡会・JCA─NET)は、「見えないデジタルの落とし穴」というテーマで報告。
「監視社会化に向けて政府・企業は、①『監視社会』批判を回避する迂回作戦が基本 ②法の抜け穴利用 ③『見えない』ところで進展(技術の悪用) ④便利・無料による浸透 ⑤メディア・情報操作(インフルエンサーの利用) ⑥人権を逆手に取り、反論を封じる─などの基本戦略を進めている。この戦略に対してデジタル・サイバー領域に焦点をあてた社会運動、人権運動が不在という状況を深刻に認識しなければならない」。
「4月18日~21日、NATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)が主催で、『サイバー攻撃への対処能力向上及びサイバーセキュリティ動向の把握を図る』ことを目的にしたサイバー防衛演習『ロックド・シールズ2023』が行われた。NATO加盟国を含む約40カ国が参加」。
「参加部隊等は(1)防衛省─内部部局、統合幕僚監部、陸上自衛隊システム通信団、海上自衛隊システム通信隊群、航空自衛隊作戦システム運用隊、航空自衛隊航空システム通信隊、自衛隊サイバー防衛隊
(2)他府省等は、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)、総務省、警察庁、情報処理推進機構(IPA)、JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)、重要インフラ事業者等が参加した」。
「子どもの性的搾取や虐待の脅威に対処すると称してテクノロジーの責任あるイノベーションと実装を推進することをねらっている。『サイバー攻撃』『子どもの性的搾取』対策と称して監視戦略の強化は、『これが唯一の解決策であるかのように主張する』『不安感や正義感を監視社会容認の世論形成に利用する』『既存の市民運動などでの合意の未形成の隙を突く』の共通点がある。民衆のサイバーセキュリティの確立が必要であり、運動体をつくりだそう。民衆のための技術開発が不在も克服課題だ」と強調した。
パネラーの提起後、質疑応答を行い様々な課題を深めていった。 (Y)
小笠原みどりさんがアメリカ、日本、カナダなどでの世界監視システムの実像を明らかにした(7.30
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