STOP! ロシアの侵略 ウクライナに連帯を! 7・16シンポジウム その③
ウクライナへの連帯―その核心的課題を問う
【東京】7月16日午後2時から、東京・渋谷区勤労福祉会館で、「STOP! ロシアの侵略 ウクライナに連帯を! 7・16シンポジウム」が開かれた。
青山正さん(チェチェン連絡会議代表)の講演の後に、加藤直樹さん(ウクライナ社会運動への連帯基金の呼びかけ人)、杉原浩司さん(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕)、原隆さん(ウクライナ連帯ネットワーク)、コーディネーター林克明さん(ジャーナリスト)でパネルディスカッションが行われた。 パネルディスカッション前号に掲載。今号はを質疑応答を掲載する。 (M)
(発言要旨、文責編集部)
何よりもまず
事実の直視を
加藤直樹さん ロシア語話者が虐殺されているというのは事実ではないとちゃんと言わなければいけない。ウクライナの第一の都市はキーウ。第二の都市はハルキュー。ハルキューはほぼロシア語話者。キーウでも映画の世界や政治とか企業でもオフィシャルの世界ではロシア語が使われている。かつてのロシア時代のなごりがある。長いロシア支配の時代があり、ウクライナ語はオフィシャルな言葉ではないと位置づけられてきた。ウクライナ語を話す人でも正式な場合はロシア語を使う。
例えばゼレンスキーを大統領に押し上げた大人気ドラマがあった。だいたいロシア語だ。ロシア語話者のゼレンスキーが人気をはくして大統領になった。ネオナチと言われるような人は確かにウクライナにいる。民族差別もある。それは東ヨーロッパの中で、ウクライナが突出してあるわけではない。LGBT問題でロシアは法的に弾圧している。ウクライナでLGBTのレインボーパレードが2015年までは右翼に襲われたりしてたいへんだった。それ以降はそういうのがなくなって、普通に行われている。ポーランドでは非常に抑圧されているのでできない。ウクライナの方が自由があるといえる。
民族的なことで言うと、ゼレンスキーはユダヤ人。南部の州の知事が仕事が非常に有能だということで人気があり、将来の大統領候補だと言われている。キムという名でも分かるように高麗人です。ソ連時代に日本の支配を逃れて沿海州に大勢の朝鮮人たちがいたが、スターリンが強制移住させて、ウクライナに来た。その末裔だ。マイダン革命の最初の火付け役になったのはアフガニスタン系ウクライナ人だ。
極右の議席はほとんどない。民主主義のレベルで言うと、メキシコなどと同程度。メキシコは普通の国ですよ。まっとうなウクライナ観を持つべきだ。
ゼレンスキーは
独裁者ではない
青山正さん ゼレンスキー大統領について。日本の中でゼレンスキー大統領は独裁者だと言う人がいるがそれは違うのではないか。指導者としてすごく弱者、国民や兵士に寄り添う姿を見せている。広島に来て、広島から戻ったらウクライナ東部の最前線の兵士の激励に行っている。なかなか普通の人にできることではない。日経新聞の世論調査ではゼレンスキー大統領が広島に来たことは良かったという回答が8割以上になっている。これも普通の人たちの感覚だ。日本の平和運動にかかわっている人がゼレンスキーは独裁者だと言っている。おかなしことになっていると思う。
自己決定権を
まず認めよう
原隆さん ロシアの外相のラブロフがウクライナを非ナチ化すると言っている。ある記者が質問した。ゼレンスキーはユダヤ人ですか。そうするとラブロフが「実はヒットラーはユダヤ人に違いないと言われていた」と答えた。するとイスラエルから猛抗議があり撤回した。それくらいロシアの言っていることは支離滅裂だ。プーチンのレトリックも支離滅裂。民主主義の度合について、ジェンダー指数、ウクライナは日本より上だ。国境なき記者団が23年度報道の自由ランキングで、ロシアが164位、最下位が北朝鮮。日本が68位。戦時下でもあるにもかかわらず、ウクライナが79位。国境なき記者団が出している評価はまともだと思う。
武器供与の問題は悩ましい問題だ。原則なのはウクライナには侵略され、占領されている人たちには国際法上も抵抗権がある。武器を取るか、暴力であるか非暴力であるか問わない。国際法上も認められている、あえてそれを否定する。それは信じられない。抵抗権を認めたうえで、パレスチナもそうですが、私たちがそれに対して、ウクライナの人たちがどういう選択をするのか、暴力で戦えとか非暴力にすべきとか、言う筋合いはない。そういう人たちの自己決定権をまず認めなければならない。
クラスター弾の問題は、ウクライナもリスクがあると思っている。ただし、メリット・デメリットを考えると、私はウクライナ側にとって、デメリットの方が大きいと思う。弾薬の供給が余りにも少ない。アメリカ側からすると在庫一掃だ。それに対してロシアはチェチェンでも使っている。ロシアは無差別で使うぞと脅している。
サハリン沖からロシアの天然ガス輸入問題。欧米のシェルはすぐに撤退した。日本は産業省も撤退しない。それは国益にかなっているからだという。その天然ガス購入代金がロシアの戦費になっている。岸田政権は侵略反対と口先で言っているだけ。サハリンから三井・三菱・伊藤忠などは即時徹底しろという声を上げていかなければならない。
心を痛めている人に共感しないと国際連帯なんかできない。ウクライナの人たちに試されている。
論理のとりこ
にはならずに
杉原浩司さん 侵略戦争が始まった当初から、武器取引反対ネットワークをやっているので、あらゆる武器輸出に反対してきた。そういう中で今回の事態が起きた。それを機械的に当てはめると人間としてとんでもないことになる。要するに見殺しにするということになる。ただ、武器輸出しろとかは言えない。ちゅうちょしながら、武器輸出反対だ。
論理のとりこになるとどうなるかと言うと、ウクライナの人たちが武器を求めている、日本も出すべきだとなる。逆になると西側の武器輸出はやめろと安易にいってしまう。どちらもおかしいだろう。日本は憲法九条を持ち、戦後武器輸出三原則を自民党につくらせてやってきた。今でも重要だ。
そこはきちんと曲げないで、むしろ西側で軍事援助している軍需企業や政府はイエメンに対して、何をやってきたのか今でもやっているのではないか。サウジアラビアやUAEに対して、しこたま武器を売りつけて、それでイエメンの人たちに無差別空爆して、戦争犯罪を引き起こしている犯罪企業だ。今回はたまたま武装抵抗しているウクライナを支援しているにすぎない。本質的にはどこにでも儲かるところに武器を出す人たちなのだから、その連中をのさばらしてきたからこういう事態が起きた。そこについて本質的に批判していくことが非常に重要だ。
最近バイデン大統領がゼレンスキーに対して、戦争をやっていればNATOに入れるのは難しい、けれどもアメリカとしてはイスラエルにやっていると同じ軍事支援をやっていくと言った。
ようするに軍事同盟は結んでいないけれども、戦争違反をやっているイスラエルを支えている。ついこの前、ジェニンでの虐殺についてもアメリカは真っ先に、イスラエルの自衛権を支持すると言い張った。それに対して私たちはきちんと批判しないと二重基準になる。イスラエル大使館抗議を12人でやったが本当はもっと集らなければいけない。日本の市民は二重基準ではなく、殺されている側に立つと現すためには12人では少ない。120人くらいは集ってほしい。
どうやって平和的手段で、ロシア軍を撤退させるか。いろんなやれることがあって、中国がきちんとロシアに対して、経済的関与を止めて、撤退しろと言わせる。そのためにアメリカや日本は本当にどこまでやっているのか。
例えば中国大使館に抗議に行ってもいい。その映像がウクライナの人々に伝わるだけでも意義がある。サハリンからの天然ガス問題。本当はもっと早い時期に運動をつくって、日本の市民が運動をやっていることが伝わるだけでも力になる。
内側の論争にけりをつけて、実際に効果ある市民運動を今からでも遅くはないので、きちんとつくっていく。日本の武器輸出に対して断固として反対する。世論は圧倒的多数が反対しているので、選挙の争点としながら、しっかりがんばりぬく。
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