麻生発言「戦う覚悟」を県民は拒絶する

自衛隊ミサイル基地建設を中止し中国との平和共存外交を

沖縄報告 沖縄 沖本裕司 8月21日

県庁前広場に響きわたる怒りの声
麻生発言に抗議する8・13緊急集会に200人

 台湾を訪問した麻生自民党副総裁が8月8日、台北市で講演し、「台湾防衛の明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」「今ほど日本、台湾、米国などの有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない。戦う覚悟だ」と述べた。
 麻生発言が伝えられるや直ちに、地元二紙は社説でそれぞれ、「専守防衛を逸脱し、中国を挑発するもの。緊張緩和に向けた対話が必要」(琉球新報)、「日中の相互不信と対立が深まる。挑発的な言動を見過ごすことはできない」(沖縄タイムス)などと主張した。また、沖縄戦体験者たちは、「浅はかだ。戦争をさせないよう日本が果たす役割への認識が欠けている」「過去の戦争を反省していないからこういう発言が出る。戦争を煽るのはやめて」などと声をあげた。
 沖縄を再び戦場にさせない県民の会(共同代表=具志堅隆松、瑞慶覧長敏)は「妄言に抗議する」ため、8月13日(日)午後5時から、県庁前広場で、「麻生発言に抗議し発言の撤回を求める緊急集会」を呼びかけた。約200人の参加者は、ノボリ、白旗、手作りプラカードを手に結集した。集会は、山城博治さんの進行で始まり、まず、瑞慶覽さんがあいさつに立ち、「求められているのは対話であり、信頼であり、平和力だ」と強調した。具志堅さんは、「〝戦う覚悟”を言うのは政治の敗北。日本という国は戦後、戦わないことを国是としてきた。私たちは絶対に戦わない。子どもたちのためにも〝戦わない覚悟”を固める」とアピールした。
 連帯のあいさつは、新垣邦雄さん(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会)、上間芳子さん(平和市民連絡会)、横田チヨ子さん(サイパン戦体験者)らが行った。そのあと、県議会をはじめ各市町村議会の議員が会場前に並んで立ち、一人ずつ意見表明を行った。県議の仲村未央さん(沖縄市区)、山内末子さん(うるま市区)をはじめ、宜野湾市、北谷町、うるま市、八重瀬町の議員らがマイクを握った。また、宮古島市の下地茜市議、石垣市の内原英聡市議、ハワイ・ニューヨークからのメッセージが読み上げられた。さらに集会場にいる台湾や米国からの参加者も紹介された。最後に集会宣言が読み上げられ採択された(別紙)のに続き、全員でシュプレヒコールをくり返した。
 麻生発言糾弾!戦争扇動許さないぞ!戦争に協力しないぞ!

辺野古新基地建設と沖縄基地強化の現実
 
 かつて麻生が「ナチスの手法に学ぶ」と述べたように、安倍・菅・岸田と続く自公政権は、重要な国策であればあるほど国民的な議論を避け、あるいは打ち切り、閣議決定という手法を駆使して政権運営を行なってきた。とくに、昨年12月の安保三文書の閣議決定ののち、「南西諸島」へのミサイル配備と攻撃能力の付与、軍事費倍増と増税、地下シェルターの建設方針などと、沖縄の軍事基地強化はとどまるところを知らない。
 アジアでの米空軍の拠点基地である嘉手納基地では、F15戦闘機の老朽化による退役に伴ない、新たに配備されるF15Eストライクイーグル戦闘機、F35ステルス戦闘機、F22ステルス戦闘機、FA18スーパーホーネットなどが沖縄上空でくり返し訓練を行なっている。沖縄県が調査した今年上半期(1~6月)の速報値によると、嘉手納基地の騒音の発生回数は、昨年同期から12・3%増の10万2193回にのぼった。最大騒音値は117・9デシベル。100デシベルが「電車通過時のガード下」、110デシベルが「2メートルの距離の自動車のクラクション」、120デシベルが「ジェットエンジンの近く」というので、どれ程の騒音かは想像がつく。
 米軍基地を汚染源とするPFAS(有機フッ素化合物)による飲み水と環境汚染は依然として未解決であり、周辺住民の命と健康を危険にさらし続けている。また、「負担軽減」の目玉として返還された米海兵隊北部訓練場跡地からは、空砲類5万発以上、大型鉄板14トン以上、空き瓶・空き缶・プラスチックなどのゴミ17トンなどが回収されている。世界自然遺産に隣接する亜熱帯の森で、米軍はまさしく環境汚染の張本人だ。処理費はすべて日本政府が出している。米軍基地内のPCBも同様である。
辺野古新基地建設の埋め立ては、辺野古側がほぼ終了したが、難関の大浦湾側は、沖縄県が埋立変更申請を不認可にしており、全く手が付けられていない。埋め立て予定地の大半を占め、最も深いところで水深90mに及ぶ軟弱地盤の存在を無視して無理やり工事を強行すれば、生物多様性の海・大浦湾の環境は深刻に破壊されることになる。ところが、政府防衛省は埋立工事を止めようとしない。辺野古側埋め立て地に、大浦湾埋立のための土砂100万立方メートルの仮置き工事の契約を施工業者と交わした。防衛局は「2013年の仲井真知事による埋立承認の範囲内で仮置きは可能」と強弁している。こうした政権の独善と強権が沖縄基地政策のすべてに共通している。
 「軍事は国の専権・専管事項」というのは国家を掌握する権力者たちのマヤカシだ。沖縄の主権者は県民である。県民の意思を尊重する政治こそ民主主義政治といえる。沖縄を踏みにじる政治家たちを国会と政権から放逐しよう!

「戦う覚悟」を示す来年度防衛省予算案

 防衛省の2024年度予算の概算要求案がこのほど明らかになった。総額は過去最大の7兆円、射程3000㎞の極超音速誘導弾の量産、国産の地対艦誘導弾の長射程化、艦艇や地上目標を攻撃する精密誘導弾の開発、イージス・システム搭載艦2隻の建造、航空自衛隊のステルス戦闘機F35飛行隊の新設、火薬庫の整備、さらに南西諸島への輸送を陸海空三自衛隊共同で行う海上輸送群の新設、陸海空自衛隊を一元的に指揮する統合司令部の設置などとなっている。米軍と一体となった自衛隊の増強と沖縄・奄美の攻撃型ミサイル基地化はとどまるところを知らない。
 これが麻生の言う「戦う覚悟」の中身であり、際限のない軍拡への道である。軍備拡大は、周辺諸国との一触即発の軍事的緊張の激化と共に、国内の民生・教育・育児・物価・年金・福祉などの縮小・後退をもたらす。何のために、誰のために戦うのか!沖縄県民は二度と戦いをしたくない。米軍と自衛隊の道連れとなって再び戦場の惨劇をくり返すことを断じて拒否する。戦わないのだから武器も軍隊もいらない。非武装の島々を宣言し、国際的な認知を得て、米軍と自衛隊を撤退させることが安全保障の道だ。

玉城知事が国連人権理事会に出席予定
沖縄の理不尽な現実を世界に訴え


 9月11日~10月13日、ジュネーブで開催される国連人権理事会に、玉城デニー知事が出席する。沖縄の民意に反して強行される辺野古新基地建設、復帰後も継続する米軍基地の重圧と様々な基地被害、「台湾有事」をめぐる沖縄での軍事力拡張が県民に対する人権侵害であることを訴えると共に、沖縄県が取り組みを始めた地域独自外交などについて、アピールする予定だという。地元二紙をはじめ、東京新聞、ロイター通信など外信でも伝えられた。
 国連人権理事会は「人権と基本的自由の促進と擁護に責任を持つ国連の主要な政府間機関」であり、国連加盟の47の理事国で構成される。長年、世界の様々な人権問題に取り組んできた。日本に関しても今年、5年間に3人の収容者が死亡したことを挙げ外国人収容施設での医療体制の改善や死刑制度の廃止などを求める報告書を採択している。今年8月も、ジャニーズ事務所での性加害問題を巡り、「事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという憂慮すべき疑惑が明らかになった。日本のメディア企業は数十年にわたり、不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」と強く批判し、日本政府に改善を迫った。
 日本は憂うべき人権後進国だ。8年前の2015年、翁長知事が日本の知事として初めて人権理事会に出席し、「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください。……自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか」と演説した。
 日本政府が沖縄の民意を顧みない状態が続いている。しかし、国連の場での訴えと世界からの圧力は少しずつ日本政府の強権にブレーキをかける役割を果たしていくに違いない。玉城知事のアメリカ、中国訪問に続く国連人権理事会出席に注目してほしい。今年4月に知事公室に発足した「地域外交室」は間もなく「地域外交課」に格上げされ、人員、機能も拡充される予定だ。県民の意思に耳を傾けない東京の日本政府に対し、沖縄の島々の150万にのぼる人々の平和と安全のため、独自にアジアの平和の架け橋として努力する沖縄県政の一層の発展を願うものである。


麻生暴言に抗議し発言の撤回を求める8・13緊急集会宣言

 去る8月8日に台湾を訪問した自民党麻生副総裁は、台湾国際フォーラムでの講演で、中国を念頭に「日本、台湾、アメリカはじめ有志国に抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と主張したという。これは中国と事を構える決意を表明したのみならず、それ以上に中国にとっては、宣戦布告と受け止めかねない極めて危険な発言で、いたずらに台湾、沖縄を含むこの地域の軍事緊張を高める言動というほかなく理解に苦しむところである。事実中国外務省は「身の程知らずの挑発」「中国を威嚇し、地域の平和と安定を乱す発言」と激しく反発したと報道されている。今年8月12日は、1978年に日中間で締結された「日中平和友好条約」調印から45年を数える重要な節目となっている。今年4月北京で林芳正外相と会談した中国李強首相は「平和友好条約の精神を双方が守り、友好を発展させることは両国の利益だ」と強調し、歩み寄りを求めたと報道されている。それだけに今回の麻生発言は対話による和平の芽を摘みとる極めて残念な発言と言わなければならない。
 他方、国内政治の関連で言えば、麻生発言は、「二度と戦争は行わない」と誓った平和憲法の精神を踏みにじるだけでなく、自民党政権が戦後一貫して国是としてきた「専守防衛」の安保外交政策を完全に投げ棄て、普通に戦争が行える国家を宣言する暴論と指弾されなければならない。
 さらに沖縄との関係で言えば、安倍、菅、岸田と続く自民党政治によって、沖縄の島々そして奄美、馬毛島と続く「南西諸島」と総称される島々が、対中国戦争の最前線に位置づけられ、自衛隊基地建設と弾薬庫やミサイル配備によって、地域では戦争に巻き込まれる不安が広がっている。そのような状況下で、いよいよこの地域が戦場とされる現実の脅威があからさまに語られたと言って過言でない。「戦う覚悟」とは現実の問題、沖縄県民に向かって、南西諸島の全住民に向かって語られたことであり、「戦争を覚悟せよ」と語ったことに等しい。
 しかも、この発言は、麻生氏に同行した自民党政調副会長によれば「政府内で調整した発言」と報じられ、単に麻生氏の暴言、暴走で済まされず、岸田内閣の責任は重大であることが明らかにされた。政府挙げて台湾を守るために中国との戦争も辞さない決意を明言し、全国民、沖縄県民に対し「戦う覚悟」を迫ったものと受け止めざるを得ない。実に恐るべき内閣である。私たちは許さない。常軌を逸した麻生発言、それを容認後押しする岸田内閣に満腔の怒りを込めて抗議し、麻生氏、岸田首相に釈明と謝罪及び発言の撤回を強く要求するものである。以上宣言する。
    
沖縄を再び戦場にさせない県民の会主催
麻生暴言に抗議し発言の撤回を求める緊急集会参加者一同

2023.8.13 県庁前ひろば。麻生発言に抗議し発言の撤回を求める緊急集会。200人参加。

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