今こそ東アジアの非核平和を! 7・29集会

朝鮮戦争休戦協定70周年

核抑止大国日本からの脱却を

 【大阪】7・29集会実行委員会(しないさせない戦争挙力関西ネットワーク・大阪平和人権センター・戦争あかん!ロックアクション・ヨンデネット大阪の4団体呼びかけ)主催の集会が7月29日、エルおおさか南館ホールで開かれ、ほぼ200人の市民が参加した。

未来を語ることができる関係性を日朝・日韓で

 荒木淳子さん(ロックアクション)の司会で始まり、林真樹さん(ヨンデネット大阪)がはじめのあいさつと集会基調を述べた。林さんは、日本帝国主義による朝鮮支配、その後冷戦下での朝鮮の南北分断と朝鮮戦争、日本植民地支配の反省なしの日韓条約の締結、韓国における民主化、朝鮮半島非核化を巡る米朝会談、ウクライナ戦争勃発による米中関係の悪化と東アジアの軍事緊張、反共保守「国民の力」の韓国尹錫悦政権の誕生、尹政権による韓国民主主義の破壊と労働運動への弾圧、北朝鮮の相次ぐミサイル発射・対決姿勢・「核戦力」完成をめざす動き、岸田政権の「防衛3文書」の閣議決定と軍備拡大路線・「戦争する国」への大転換、韓国世論調査で福島原発事故の汚染水海洋放出に反対85%などについて述べ、日本は戦争の危機を煽るのではなく、朝鮮半島・東アジアの平和的安定を築く外交努力が求められていると訴えた。

髙橋博子さんの講演から


 髙橋博子さん(奈良大学史学科教授)が「米国と核に依存する『核抑止大国日本』からの脱却」と題して講演した。
 髙橋さんは大学院生の頃、大阪朝日新聞で、1945年から1954年の10年間の新聞記事を調べ、核についての記事を整理するアルバイトをした経験がある。そのことがその後の髙橋さんにとって大いに参考になっている。連合国軍総司令部(GHQ)は、連合国軍が不利になるような批判を禁じ、広島・長崎原爆被害についても真実を報道することを禁じた。当時、原爆は新型爆弾と呼ばれ、その内容が明らかにされなかった。

原爆の被害実態を知らせない政府

 1945年8月10日の朝日新聞は、『新型爆弾対策』を発表。その中で、「軍服程度の衣類を着用していれば火傷の心配はない。防空頭巾及び手袋を着用していれば手や足を火傷から保護できる」とか、「待避壕をとっさの場合に使用し得ない場合は、地面に伏せるか堅牢建造物の陰を利用すること」などと書いていた。それは、日本帝国政府の政策だったのだろう。ところが、その同じ政府が1945年8月10日、米国の新型爆弾による攻撃に対して米国に抗議文を出している。そこでは、「性能の無差別性・残虐性ゆえに従来使用が禁止されおる毒ガスその他の兵器を遙かに凌駕しており、米国は国際法及び人道の根本原則を無視して……(この後、日本の諸都市に対する無差別爆撃を批判する文書が続く)」と述べている。つまり、内と外では言うことが全く反対だった。
 一方、米国では、1945年9月5日『デイリー・エクスプレス』が、大きなけがを受けていない人でも、「原爆病」という未知の理由によって、不可解な亡くなり方をしていることや、元マンハッタン計画医学部門責任者のスタッフォード・ウオレンの言葉を載せている。そこでは、上空での原爆の爆発は、爆風によって破壊し、ガンマ線や中性子線の放射によって殺傷することを明確に述べている。
 米国原子力委員会は1950年6月18日、広島・長崎の日本人生存者は明らかに原爆による急性の、もしくは即時の影響から回復したが、遅発性の影響の痕跡が明らかになったとして、日本人原爆生存者の研究を継続することを決めた。しかしながら、米国政府も市民向けの核攻撃による放射線退避マニュアル用につくったアニメでは、建物の壁に身をかがめるよう指示をしているのである。
 また、米国1947年マッカーシー上院議員のデマ=国務省に裏切り者がおり、米国は中国を失った(中国革命が勝利したこと)として、国務省の中国派は共産主義者だとのデマを流し、国中がこの旋風に巻き込まれた。この事件は、朝鮮戦争に向かう底流をつくった。
 1950年朝鮮戦争が勃発すると、トルーマン大統領は朝鮮戦争で原爆の使用もあり得ると発表した。朝日新聞も1950年、GHQの指示に反して原爆被害の事実を報道し、6日間の新聞発行を禁止されたことがある。民間のグループで「平和に生きる会」は、せっかく終わった戦争をまた始めさせてなるものかと語り、京都大学の学生自治会や同志社大学で原爆展が世界で初めて開催され、アサヒグラフは、原爆の惨状を報道した。

日本政府、核兵器は必要だ!

 現在、日本政府は生物化学兵器を国際法上使用してはいけないこととしている。しかし、憲法9条との関係で純法理的に「それを保有することは、必ずしも憲法の禁止するところではない」としている。これは核兵器に対しても同様だ。「我が国は、生物化学兵器のように、核兵器を使用しないことにしている、とは言わない。核抑止とは核兵器による脅しであり、究極の武力である。しかし、日本政府の考えでは、核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険にさらすことになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起する、ということになる」。G7広島ビジョンでもそのことが主張されている。核兵器を必要だという論理だ。この論理からの脱却が必要だ。核兵器によって危険が増していく。

 「核兵器は必要だという論理を批判する」髙橋博子さん(7.29)

イ・ジュンサンさんの講演から


 続いて、イ・ジュンサンさん(韓国民主労総全北本部組織部長)が韓国の状況を報告した。

尹錫悦政権退陣運動

 政権退陣運動は、保守的野党である民主党から民主労総をはじめとする進歩的社会運動組織まで、根強い反感が形成されているが、政権退陣運動には多様な政治的立場が競合していて、退陣の根拠や背景についても異なっていて、この運動には大きく分けて民主党の流れと民主労総を中心とする2つの流れがある。民主党は大統領退陣を公式の立場にしていないが、親野党の様々な団体や個人があつまった「ろうそく勝利転換行動」などの団体は、昨年8月から今日まで、退陣を求めて大小の集会を行ってきた。民主労総は、今年6月政権退陣運動を宣言し7月1~2週目にかけてゼネストを行っている。建設労組員ヤン・フェドンさんが労組弾圧に抗議し焼身自殺をした事実は大きい。全国農民会総連合などもゼネストを支持し政権退陣をかかげている。
 退陣運動を展開している過去の政権勢力「民主党」との関係、退陣後の社会の展望を考慮することなしに、当面と党威と怒りだけで退陣運動を進めるなら、政権期間内の「国民の力」と根本的な差がなかった民主党の政権継続だけを助けるもではないかという懸念がある。しかし一方、反資本主義的社会運動の勢力が弱い中で、極右保守政権の継続を防ぐために民主党などとの関係を考えなければならないというジレンマもある。

中小の組織化の困難

 全北本部が管轄する全羅道地域は人口176万人。事業体従事者は4人以下の事業場が31%、5~99人以下が50%で、300人以上は9%。全北本部はこのような状況で、組織率を高めねばならない。ケア労働、プラットホーム労働など、産業変化に対応して努力してきた。韓国は、日本と同じで企業別交渉制度を採用していて、労組活動に対する敵対的な雰囲気が蔓延している。地域別団体協約、業種別団体協約が法的制度的に難しく、困難をきたしている。
 これに対する適切な解決策は、フランスのように団体交渉の効力を個別企業の労組が加入していなくても協約が適用されることだ。憲法では認められていても、小さな事業場労働者の権利を下位法である労組法が剥奪している。民主労総は原則として産業別労働組合の連合体であるが、どんな業種でも加入できる器ミソユニオン(未組織小規模事業労働組合)を地域本部直加入で創設した。担当者が足で駆け回りいろいろな事件を解決し、行政の労働部の誤った慣行を正すなど成果はあった。しかし、事件が解決すると当該組合員が脱退したり、一人では活動しにくい事例があった。

徴兵制を若者はどう思っているか

 韓国リサーチ2023年4月の調査(韓国成人男女1000人)によると、性別・年齢・理念指向・北朝鮮に対する認識とは関係なく全般的に北朝鮮に対する評価は「否定的」だ。分断後70年が過ぎたにもかかわらず、北朝鮮を同じ民族と認識するという意見が確固たる過半数以上を占めている。単一民族とはみなさないという意見もかなり増加している。
 韓半島危機管理のため、優先すべき対北朝鮮推進策は、持続的な南北対話提案34・7%、国際協力強化21・1%、軍事的対応強化15・8%だ。
 徴兵制は1951年から実施されている。19歳で兵役判定検査を受け、軍入隊の可否を決定される。判定結果は、現役入隊、補充役、戦時勤労役、兵役免除に分かれる。現役入隊の場合、かならず、35歳までに1年6カ月は入隊しなければならない。政治家や芸能人の兵役回避が明らかになれば、その都度大きな批判世論が起きる。若者にとっては、元々行かなければいけないものという印象が強い。このような状況で、個人が徴兵制に対して異見をもつことは非常に大きな勇気がいる。軍隊に行くと、精神教育という名で北朝鮮が韓国の安保を脅かす敵だという趣旨の教育を受ける。イさんも停戦ラインから450キロのところで軍隊生活を送った。

イ・ジュンサンの考え

北朝鮮に対する大衆的認識が良くないのは事実だ。核武装とミサイル実験が行われるたびに、北朝鮮に対する否定的世論が上昇する。しかし、現在構成されている東アジアの情勢は非常に複雑な歴史的事件と理念がぶつかりながらつくられたものであり、北朝鮮を悪魔化したからといって、解決は難しい。尹錫悦政権は「力による平和」を叫びながら好戦的な姿ばかりを見せている。人道的次元でも対北朝鮮制裁を緩和したり、対北朝鮮軍事訓練である米韓合同軍事訓練の縮小、朝鮮戦争終結宣言などの平和的措置が実行されるよう各国の社会運動が努力しなければならない。
 日本の平和憲法の廃棄と再武装は、中ロ朝からなる反対ブロックでの相応の措置をもたらすだろう。韓国は、それを名分にさらなる軍備増強をするだろう。韓国社会の一部には、北朝鮮の核武装やミサイル実験に対して、西側の圧力による不可避的な措置であるから、むしろ支持すべきだという意見もある。この意見にはイさんは同意できないという。
 徴兵制については、募兵制という対案もあり、論争がある。募兵制に変われば、事実上貧困世帯の青年が経済的徴兵制の対象になる可能性が高い。日本で心配はないのか。
 最後に米田彰男さん(平和人権センター)がまとめをした。    (T・T)
                          
 

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社