8・6ヒロシマ平和へのつどい2023(上)
「被爆・敗戦78年 ヒロシマから非武装・非同盟中立の日本を~NATOの世界化に反対し、東アジア共同体をめざそう~」
【広島】8月5日夕方から広島市内で、「8・6ヒロシマ平和へのつどい2023」が行われた。
集会テーマは「被爆・敗戦78年 ヒロシマから非武装・非同盟中立の日本を~NATOの世界化に反対し、東アジア共同体をめざそう~」というものであった。参加者130人。
司会は、大月純子さん(福島原発告訴団・中四国)。開会あいさつを兼ねて、西岡由紀夫さん(広島県高等学校被爆二世教職員の会、ピースリンク広島・呉・岩国)が、「被爆・敗戦78年 ヒロシマから」と題して問題提起。
あからさまな
G7の欺まん
今年5月19日から21日に、広島でG7広島サミットが、1894年以来日本陸軍の出撃拠点・加害基地であった宇品の「グランドプリンスホテル広島」を主会場に、全国から警備に2万4千人も動員された「厳戒態勢」のもと開催された。
そのサミットで発せられたのが、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」である。そこには「我々の安全保障政策は、核兵器はそれが存在する限りにおいて防衛のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべき」とするなど核兵器と核
抑止論を明白に肯定している。G7参加国の米英仏の核保有は不問にする一方で、ウクライナに侵略し核兵器の使用で脅すロシアや、核戦力を増強する中国、核ミサイルの開発を進める朝鮮の核を敵視し、非難するばかりである。また原子力の平和利用も謳うNPT体制を重視しているが、核兵器禁止条約(2017年国連で採択され、現在92カ国が署名、68カ国が批准)や被爆者については一言の言及もない。「核兵器のない世界」「核廃絶」から「核軍縮」へすり替え、「核抑止論」の公然たる展開で、〈「広島ビジョン」と言えるのか〉とは中国新聞の金崎由美さんの署名記事の見出しだ。
サーロー節子さん
の深い失望と怒り
カナダから広島に帰郷していた被爆者のサーロー節子さんは、G7の全日程を終えた記者会見で「大変な失敗だった。首脳の声明からは体温や脈拍を感じなかった。」原爆資料館で「本当にわれわれの体験を理解してくれたのか反応が聞きたかった」「広島ビジョン」については「広島まで来てこれだけかと思うと、胸がつぶれる」「被爆者に対して大きな罪」と失望し怒りをあらわにした。
G7のごまかし
はね返す活動を
元広島市長の平岡敬さんは、「サミット前から広島を『貸し舞台』にしてはならないと懸念を示していたが、岸田首相が『ヒロシマの願い』を踏みにじった。広島では、本来は核が人間に与えた悲惨さを考える場であり、核を全否定し、平和構築に向けた議論をすべきだった。戦後一貫して核と戦争を否定してきた広島が、その舞台として利用された形だ。核兵器禁止条約に署名・批准した国と地域に『広島が核を許容した』と思われてしまう。こうした国々は広島を見ている。今後、広島が信用されなくならないか。ウクライナのゼレンスキー大統領が招かれたことは、いかにも政治的パフォーマンスだ」。
「G7首脳の間で軍事的支援の強化を約束した。岸田首相は戦争を是認し、激化させることを広島の地で許したことになる。ヒロシマをこれ以上利用するなと言いたい。広島を舞台にしてウクライナを議論するならば、一日も早い停戦と戦後復興について話し合われるべきであった。中国やロシアを非難するだけでは緊張が高まるだけだ。いかに対話するか、和解のシグナルを発信する必要がある。戦争の種をなくし平和を構築する。それが、岸田首相をはじめとするG7首脳たちに求められている」、と。
「広島を考えるとき、私は、いつからか父母の歴史的経験(生活)が広島の歴史的意味の両側面を表現していると認識するようになった。父は1940年3月宇品から日本軍兵士として中国に渡り、同年4月宜昌作戦(湖北省)をはじめとする侵略戦争に従事し、1945年8月四平(吉林省)で武装解除、シベリア抑留(チタ)を経て日本(舞鶴)に戻ってきた、日本陸軍兵士だった。母は、広島で生まれ育ち、17歳の時、爆心から2・6㎞の皆実町3丁目(旧)の家屋内で原爆被爆した1号被爆者だった。即ち広島には『軍都廣島』から原爆被爆を経て『平和都市ヒロシマ』という両面がある。その両面は欠くことができない」。
「2021年『黒い雨』訴訟は全面勝訴した。これを受けて広島県内では今年3月末までに4696人が申請し、184人は却下された。このうち23人が新たに被爆者と認めるよう第2次黒い雨訴訟を起こした。これまで無視され続けてきた放射性降下物、残留放射能、内部被爆について、その転換を進めていかなければならない」。
「韓国の尹大統領の『韓国人原爆犠牲者慰霊碑』参拝にかかわって、なぜ朝鮮半島出身者が被爆しなければならなかったのか? 被爆者数など実態や背景が解明されていないことが問われている。『被爆者はどこにいても被爆者』と訴え、勝訴を重ねて内外の格差はほとんどなくなったが、他方で朝鮮民主主義人民共和国に在住する『在朝被爆者』については国の支援などは全くないままである」。
「『広島文学資料保全の会』は、7月、峠三吉『原爆詩集』や日記、栗原貞子『生ましめんかな』、原民喜『記録手帳』、大田洋子『屍の街』の原稿など原爆文学について、『世界の記憶』(世界記憶遺産)への登録を市とともに申請すると発表した。三度目でぜひ実現してほしい。そして、広島市に文学館をつくってほしい。こうした地についた活動を広げ、積み上げて、G7で明らかとなった問題を跳ね返していかなければならない。『命とうとし』『核と人類は共存できない』」。
韓国とミャンマ
ーの問題も提起
次に、「朝鮮半島の平和実現のために」と題して、尹康彦さん(在日韓国民主統一連合広島本部代表委員)が発言した。「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改悪と韓国・米国・日本の歴史的関係、ユン・ソンニョル政権の対朝鮮敵対政策の実態と韓米日軍事同盟の強化、韓国民衆の尹退陣闘争について述べた。
次の発言予定者、広島市立大学のアウン チー ミインさん(Hiroshima Myanmar community代表)が急きょ来れず、代役に小武正教さん(ミャンマー(ビルマ)の市民の訴えを聞く会)が問題提起した。
広島の平和教育
の大変質に警鐘
「『はだしのゲン』削除が投げかけた問題とは―『はだしのゲン』が開けたパンドラの箱は閉まらない―」と題して、岸直人さん(教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま)が問題提起した。岸さんは、平和教育プログラム、検証及び改訂会議議事録、新旧平和ノート及び指導資料等を比較分析し、次のことがわかったと報告した。
被爆の実相を伝える教材や核兵器廃絶を求める被爆者・市民の強い願いが大幅に削除されたこと。アメリカの原爆投下責任を問わない教材が大きく取り上げられたこと。核兵器廃絶を求める学習から核抑止論を容認する学習へと変わったこと。日米の植民地支配や侵略戦争や加害の事実に触れようとしていないこと。つまり、平和ノートから教材『はだしのゲン』が削除されただけの問題ではなく、広島市教委の平和教育が変質したという「もっと大きな問題」だったのである。
沖縄からの高里鈴代さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)のメッセージを土井桂子さんが読み上げた。
福島からの武藤類子さん(福島原発告訴団団長)のメッセージを島村眞知子さんが読み上げた。
次に記念講演として、白川真澄さん(ピープルズプラン研究所)が登壇した。題して、「米中対立を超えて、非覇権・非軍事・連帯の東アジアへ」。サブタイトルに「―自立した循環型地域経済が横につながって、グローバル化と「経済安全保障」に対抗していくビジョンを考える―」と方向性を指し示している。
大テーマの白川さんの講演を60分聴いたあとに、最後に「市民による平和宣言2023」が提案されて採択された。
また、翌日の「8・6行動提起」を新田秀樹さん(ピースサイクル全国ネットワーク、ピースリンク広島・呉・岩国)が行った。
グラウンド・
ゼロのつどい
翌日早朝から原爆ドーム前に集合した100人は、7時45分から「グラウンド・ゼロのつどい」に結集した。
司会は、ピースリンク広島・呉・岩国の平賀伸一さん。発言は、西岡由紀夫さん、ピースサイクルの小田さん、関西共同行動の根本さん、アジェンダプロジェクトの藤井さん、人民の力西日本協議会の実国さん、小武さん、ピースデポの湯浅さん。8時15分、「追悼のダイイン」を3分間したあと、ATTAC Japan(首都圏)の稲垣さんが発言した。
8時30分より「8・6広島」デモに出発した。中国電力本社前までのコースで、「上関を核のゴミ捨て場にするな」と訴えた。
9時30分から10時まで、中国電力本社前での脱原発座り込み行動を行った。
まず、最初に一分間の黙祷をした。原爆犠牲者と核被害、原発被害者へ。
開会あいさつを司会の木原省治さん(原発はごめんだヒロシマ市民の会代表)が行った。
アピールは、原子力資料情報室共同代表の伴英幸さん、建部のぶるさん(大阪)、上関原発止めよう!広島ネットワークの渡田正弘さん、反戦タイガースの北田万寿雄さん、ピースデポの湯浅一郎さん。最後に、カードでのアピールコール行動で締めた。
上関を核のゴミ捨て場(最終貯蔵施設)にするな!
上関原発計画白紙撤回!
島根原発2号機を再稼働するな!
島根原発は廃炉!
核燃料サイクルは破綻、再処理工場やめよう!
福島原発事故の汚染水放出するな!
原発絶対反対、エイ、エイ、オー
(久野成章)
【編集部より】紙面の都合で、白川真澄さんの講演は次号に掲載予定。
追悼のダイイン(8.6)
8.6ヒロシマ平和のつどい2023(8.5)
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