関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年連続集会・行動

差別に貫かれた犯罪忘れない

日本政府は謝罪と補償をせよ

 【東京】関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年連続集会・行動が8月31日から始まり、9月2日午後7時から、国会正面でキャンドル行動が行われ、1700人が参加した。途中で少数ではあったが右翼の妨害があったが、集会はそれをものともせずに日本政府の責任追及と日本民衆自身への問いかけを含めて明らかにされ、朝鮮人、中国人との連帯を固めるものとなった。
 午後6時半からは、韓国京義芸総、中国人遺族のアピール、追悼のプンムル、アメリカ市民のアピールが行われた。
 午後7時に、集会が開会した。渡辺健樹さん(100年追悼大会実行委員会)が主催者あいさつ。

虐殺の事実を
認めさせよう
 「関東大震災時の日本政府の朝鮮人、中国人虐殺の責任を問う朝鮮人、中国人と一同に会して国会前行動を百年目にして、日本政府に虐殺の事実を認め、賠償を要求する大衆的キャンドル行動に立ち上がった。政府は虐殺に関連する資料は見当たらないとその事実すら認めてこなかった。しかし、事実は『朝鮮人が各地に放火』などのデマを拡散し、流言飛語が広がった。戒厳令の下で自警団が組織され、虐殺が起こった。今もヘイトクライムは後を絶たない。政府の隠蔽は表裏一体だ。多文化・多民族の共生のために、日本社会の隅々から立ち上がろう。政府の戦争動員に立ち向かいましょう」と訴えた。

「虐殺」認めぬ
松野官房長官
 在日朝鮮人からの訴え。金性済さん(日本キリスト教協議会総幹事)
 「8月30日、松野官房長官は『関東大震災での虐殺の事実を確認しない』と記者会見で発言した。良心のかけらでもいいから、人の心に恥を覚えることのできる心を官房長官捨てないでください。ドイツ政府は2021年5月、20世紀のはじめに、アフリカナミビアで起こした数万人におよぶ現地の人々に対する虐殺をついに謝罪し、賠償を約束した。あのバイデン大統領でさえ、2年前にオクラホマ州のカルサで300人黒人を虐殺した追悼集会に駆けつけて、謝罪演説をした。松野長官、日本政府は何をしているのでしょうか。みなさん、このことを忘れないでください」。
 「昨年9月30日、JR赤羽駅のプラットホームの横断幕に『朝鮮人殺す会』というヘイトが掲げられていることが、朝鮮学校無償化の運動をするオモニによって告げられた。子どもはもっと前から分かっていたけど、このことを先生に訴えたり、親に訴えたら、学校が何をされるか、うちの家族が殺されるのか、それが恐くて一カ月間がまんしていたという。関東大震災で虐殺を起こしたことに向き合えない、日本政府、国家・社会の姿であり、今日のヘイトと地続きであることを私たちは忘れてはならない。百年前に虐殺を止められなかった民衆の責任も考えましょう。大多数の民衆は沈黙を守った。社会的防波堤になれなかった。私たちは最後まで世界市民とともに、国家責任を追及するとともに、今度こそはヘイト集団、虐殺の不安におびえる在日コリアンとともに、虐殺のヘイトも許さない、社会的防波堤の連帯をつくりあげましょう」。

中国人700人
以上殺された
 在日中国人からの訴え。徐柱国さん(関東大震災虐殺された中国人受難者を追悼する会)
 「700人以上の中国人が殺された。合法的に日本に働きに来た人たちです。まさに中国人というだけで殺された。私の父も同じ時期に日本に来た。日本の侵略によってズタズタにされた祖国では食えないということで、日本にやってきて家族を養うためにがんばった。神戸に居たので、この虐殺には合いませんでした。しかし、在日中国人のなかで、関東大震災での虐殺は小さい時から教えられている。10歳上の姉がいる。家に常に武器を持っていた。襲われたときに反撃するんだと。そういうリアルな感性を私も子どもの時から持っていた」。
 「あの当時のことがまた起こるのだろうか。私は起こらないと思っている。ヘイトは言うまでもなくえげつないものだ。皆さんのような日本の民衆がたくさんいるということです。日中の友好運動が今日の状況を生んだと信じている。しかし、それには前提がある。この歴史事実を必ず訴え続けなければならない。生存者・遺族、被害者はこの声を語り続けます。私たちが声を閉ざしたとき、この歴史事実はなかったことにされます。訴えを受け止めてくれた日本の人たち、良心的人たちが受け止め多くの人に語ってください。これから百年後、関東大震災の事実は歴史として、私たちの目の前に現れると固く信じている」。

朝鮮半島遺族
からの証言
 朝鮮半島遺族証言。曺光交さん(藤岡事件遺族)
 「関東大震災から百年です。私のおじいさんのお兄さんが30歳の時に、亡くなった。韓国ではいい階層に属し良い暮らしをしていたが、植民地になって日本で少しでもおカネをもうけるために日本に来た。しかし、解放後にできた政府は私のおじいさんのお兄さんが死んだことも連絡くれなかった。もちろん、日本政府も何も知らせてくれなかった。イースマン、パクチョンヒ、チョンドファンという軍事独裁政権の下で、何の罪もなく犠牲になった人たちに、口を発するなと弾圧してきた。それを誰が知らせてくれたかというと、いっしょに働いていて、九死に一生を得て、ケガをしながら帰ってきた同じ村の後輩が知らせてくれました。日本はまったく反省していない。資料が必要なのに資料を公開もしない。韓国も同じだ。資料を公開するのは今からでも遅くない。資料で何があったか明らかにすべきだ。亡くなった人たちに新しい未来が見えるようにしてくれ」。

中国人遺族
からの証言
 中国人遺族証言。周松権さん
 「虐殺された同胞を追悼し、紀念するために集まった。この災難は私たちに限りない苦痛と悲しみをもたらした。私たちの同胞は残酷に虐殺され、多くの家族が破壊された。命を奪われた。この苦痛と傷は私たちの心のなかに、深く刻まれていた。日本と中国を往復し、追悼会に参加してきた。そして多くの会議も組織してきた。真実と正義を追求するためにやってきた。正義の実現を通してのみ、私たちの傷をいやすことができる。被害者とその子孫に慰めと尊厳をもたらすことができる」。
 「今年、日本政府に二回目の督促状を提出した。一点目は国家として責任を持ち、この歴史の事実を認め、遺族と犠牲者に謝罪しなければならない。二点目は1924年の日本の政府・内閣が決定した賠償の方針に基づき、現行の国際慣例・国家水準および犠牲者の数を修正したうえで、補償の実施をお願いする。三点目は歴史を次世代に語りつぐために、殺害された現地で記念碑を建て、記念館建設をお願いする。四点目は日本の歴史教科書にもこの事実を書き、若い世代に歴史を知ってもらい、ここから教訓をくみ取ってもらう。五点目は日本政府は、被害者が没収された金銭を遺族に返還すべきだ。毎年九月に遺族の代表を日本に招待し、政府は代表を追悼活動に参加させ、言葉を述べることだ。田中宏さんをはじめ日本の友好的な方に心から感謝申し上げる。あなたたちの声と力のおかげで、ここまで正義の実現を推進してきた。これからも手を組み、被害者のために正義を勝ち取り、平和と団結のために闘おう」。

殺された人た
ちの権利も
 韓国での取り組み。金鐘洙さん(「関東虐殺100周年忌追悼事業推進委員会」執行委員長)
 「関東虐殺を民間自警団のせいにしている。本当に卑怯な政府だ。殺された人たちの権利を尊重しない社会では生きているわれわれの人権も尊重されないということだ。殺された人たちの権利とは何でしょうか。彼らは何で殺されたのでしょうか。誰が殺したのか。殺されたのは何人か調査しなければいけない。国ができなければ、われわれ市民がやらなければならない。ここに集まったわれわれが殺された人たちの権利を尊重し、生きているわれわれの人権を勝ち取るために、いっしょに闘いましょう」。

米国の市民
からも訴え
 米国市民からの訴え。ジュティス・マーキーソン(サンフランシスコ「慰安婦」正義連盟代表)、キム・ミホ(エクリプス・ライジング)
 マーキーソンさんの発言。
 「今日、百年前の虐殺の証言をたくさん聞いた。その内容はすさまじいもので、多くの人々が殺され、暴力の加え方もわかり、とてもつらいものだった。遺族も参加して心が傷んだ。悲しさだけを感じたのではなく、心奥深くから怒りを感じた。日本の政府は何だと思っているのか。日本政府にのみ怒りを覚えているわけではない。米国政府は日本の裏で、何を許可するか決めている」。
 「例えば2015年の慰安婦問題の永遠に解決したという日韓合意は米国政府が許可して初めて成立したものだ。しかし、被害者のハルモニたちには誰一人として知らされてもいなかったし、交渉に参加することもなかった。断固許されない。バイデン政権が日本の軍事化を煽って、たくさん戦争経済を潤すがごとく、軍事化を進めて、そして軍がフィリピン、台湾その他の国に上陸することもすべて促している。私たちは戦争への道を許すわけにはいかない。いつまでも抵抗し続ける。来月APECのサミットがサンフランシスコで行われる。21カ国のリーダーたちが結集する。民衆としてそこに結集して、このメッセージをしっかり届けたい。みなさんもぜひサンフランシスコで抗議活動を行おう。私たちは関東大虐殺がホロコーストと同様に世界の歴史の中で、知られ続け決して忘れられない。そこまでもっていくためにがんばり続けたいと思う」。

日本政府の「二
枚舌」を許さぬ
  キム・ミホさんの発言。
 「アメリカに住んでいると日本の政府が二枚舌を使っているのがよく見える。慰安婦問題でサンフランシスコで連盟を結成して少女像を建てた。その過程で日本の政府をはじめ右翼団体とか幸福の科学が上陸して、歴史戦の戦場は次はアメリカだと言って歴史歪曲をフルに展開し始めた。カリフォルニアの教育校区の歴史の記述のなかで、慰安婦・日本軍性奴隷制度を記述することが可決されたにも関わらず、日本と韓国の領事館から横やりが入った。関東大虐殺の記述に関しては、ラブサイヤーというハーバードロースクールの教授が書いた書籍には、関東大虐殺が起こって朝鮮人が殺されたかもしれないが、それは犯罪人だから殺されてもいいんだというニュアンスで書かれている。ハーバードのロースクールという肩書があるので、これは知名度の高いアカデミックなジャーナルに出版されている。こういうふうな手口を使って、歴史認識を西洋圏の世界でも作ろうとしている。今回来日団を結成したのは日系の青年たちも含んでいる。私たちはアメリカという帝国の中で、日系人は戦時中人種差別のゆえに収容所に入れられた。先住民の人たちはジェノサイドを強いられ、その血まみれになった土地の上に、私たちはひしめいて住んでいる。過去の体験を通して、関東大虐殺を重ねてみると、国家暴力というのは差別自身の上に可能になり、その差別自身を常識化してしまう。そういった効果があると強く感じている。過去起こったことと今起こっているヘイトなど、つながりがないとは到底いえない。ホロコーストが歴史的に認識されると同様に、ホロコーストを否定することもヘイトを助長するものとして、きちんと認識するのが日本政府の役割だ。そのために、私たちはアメリカでもみんさんと連帯して抵抗していきたい」。

野党各党から
政府責任追及
 各政党より議員あいさつ。日本共産党小池晃衆議院議員、社民党福島みずほ参議院議員、れいわ新選組くしぶち万里衆議院議員。 日弁連より、森川文人弁護士がアピール。
 林伯耀さん(100年追悼大会実行委)が日本政府への抗議文を読み上げた。林さんは「虐殺された朝鮮人の兄弟たち、中国人の同胞の霊も集まってきていると思う。日本政府に対する抗議の声を出そうではありませんか。日本政府の罪状・責任をきっちりと明らかにし確認したい」と述べた。(別掲)
 歌と演奏。李政美がすばらしい声で「京成線」と韓国の抵抗歌「朝露」を披露した。藤田高景さん(100年追悼大会実行委)が集会総括を行い、シュプレヒコールでしめた。  (М)

差別・抑圧・偏見がもたらした大虐殺を忘れない(9.2)

資料

日本政府への抗議文

 100年前の関東大震災下、日本の軍隊、警察、自警団、民衆によって6000人以上の朝鮮人、750人以上の中国人が虐殺された。この大量虐殺は民族抹殺を計ったジェノサイドであり、重大な人権侵害である。この虐殺事件に対して日本政府には言い逃れすることの出来ない、重大な、法的、政治的、社会的、歴史的、道義的責任がある。
 政府の担うべき責任と罪は次の通りである。
 第一に、地震の後に内務省警保局長から各地方長官宛に、「朝鮮人ガ各地ニ放火シテ不逞ノ目的ヲ遂行セントシ」などの虚偽の事実を電文でもって通達し、社会と民衆に他民族への排外感情と敵愾心を煽り、「戒厳令」を布告し、軍隊を出動させ、自警団や民衆を虐殺に駆り立てた。
 第二に、政府からの同上電文による「鮮人ノ行動ニ対シテハ厳密ナル取締リ加ヘラレタシ」の指示によって各地に在郷軍人会などを中心に自警団が組織され、自警団と民衆は、軍隊、警察に付和雷同して朝鮮人、中国人を探し求めて虐殺した。同時に軍と警察は社会主義者や労働運動の活動家も拘束して虐殺し、自警団や民衆による朝鮮人・中国人虐殺を阻止しなかった。また朝鮮人、中国人と誤認された一部日本人も虐殺された。
 第三に、官憲は虐殺した遺体を焼却、埋め立て、河川や海への投棄などの手段で隠蔽し、朝鮮人、中国人による被害者の実態調査を妨害し、被害者の名簿を隠し、遺族が真相を知り、犠牲者を追悼する権利と機会を奪った。政府は、流言が事実でないことを承知の上で、虐殺を正当化するために、朝鮮人による犯罪があったかのようなデッチあげ工作をした。
 第四に、保護の名目で習志野収容所に強制収容された朝鮮人、中国人は劣悪な環境におかれ、虐待を受けた。軍隊は朝鮮人を恣意的に選別して、地元に配分して、村々の自警団に殺害させた。中国人の被害状況を調べるために現場に向かった旅日共済会会長の王希天を警察と軍は拘束し、「反日の頭目」として野砲第三旅団により密殺した。
 第五に、虐殺から100年経ても、政府は真相を明らかにせず、事実を隠蔽し続け、犠牲者と遺族にいかなる謝罪も賠償もしていない、この為に、犠牲者の尊厳と名誉は二重三重に傷つけられたままである。このような政府の姿勢は、今日、政府自身や公的機関、社会の底辺に、他民族を排外差別する風潮を作り出している。ヘイトスピーチ、ヘイトクライム、民族差別は後を絶たない。

 我々は、ここに、百年もの間、自ら犯したジェノサイドの歴史を隠蔽し、責任を回避し続けてきた日本政府に対して満腔の怒りをもって抗議し、以下の要求をおこなう!
 日本政府は、関東大震災下で自ら主導した朝鮮人・中国人虐殺の真相と原因を明らかにせよ!
 日本政府は虐殺犠牲者の名簿を公表し、遺族に故人を追悼する機会を与えよ!
 日本政府は、国家としての責任を認め、虐殺された朝鮮人・中国人犠牲者、及び全ての犠牲者とその遺族に対して謝罪し賠償せよ! 虐殺の責任者を公表し処罰せよ!以て、全ての犠牲者の尊厳と名誉を回復せよ!
 日本政府は事実に即した歴史養育をおこない、記念館を建てる等して後世に歴史の教訓を伝えよ!
 日本政府は、一切の民族差別的政策を撤廃し、人種差別禁止法の制定、ジェノサイド条約への加入等、再発防止の措置をとれ!
2013年9月2日
関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年犠牲者追悼国会前キャンドル集会参加者一同
 

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