8.19しないさせない戦争協力関西ネットワーク総会&講演会

小林 節さんが「野党共闘」を訴える

 【大阪】しないさせない戦争協力関西ネットワーク(シーサーネット)の総会・講演会が8月19日、大阪PLP会館で開かれ、74人が参加した。22年度の活動報告(事務局:山本将嗣さん)、会計報告(事務局:齋藤郁夫さん)23年度活動方針提起(共同代表:垣沼陽輔さん)があり、今年度の組織体制と活動方針の柱が確認された。休憩を挟んで、小林節さん(慶應義塾大学名誉教授、立憲デモクラシーの会呼びかけ人)が、「岸田大軍拡・改憲に反対する」と題して講演をした。以下要旨。
 質疑応答があったが、省略する。
 この後、全港湾大阪支部・全日建連帯労組関生支部・南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会からアピールがあった。
        (T・T)

小林 節さんの講演
岸田大軍拡・改憲に反対する

 悪しき憲法破壊
 確立の感

 与党は汚れ切っている、野党は汚れきっていない。政治は政権交代をするシステムだから、選挙制度改革の審議の時も参考人として呼ばれ、その趣旨で賛成した。ところが、自民党が公明党とくっついて政権交代できない仕組みにしちゃった。自民党は天皇をいただく会派であり、創価学会は日蓮聖人が真ん中にいて、天皇の権威は認めていない。教祖は教義を曲げなかったため、治安維持法違反で弾圧され獄死した。創価学会にとっては、自民党は敵だ。今、政権批判しても、われわれに政権交代させる力がないから、制度は変えられない。しかし、今の政府に勝たなければいけない、だから野党共闘なんだ。
 ひどい時代になった。安保3文書の改定があった。自民党の元防衛大臣・副大臣たちが秘密会議でいろいろな文書を作って、それに基づいて閣議決定して、国会で問われると、防衛秘密だから言えないという。これはひどい。国会を通して主権者に説明しなければいけないはずだ。国会は、野党が質問しそれに答えるところだ。国会は与党だけのものではない。説明もせずに、議決だけをして終わりにするなら、3権分立を壊している。悪しき憲法破壊が確立された感じだ。だから、政権交代しなければいけない、憲法は一度も変えられていないのだから、閣議決定の集団的自衛権なんかは、政権交代したら、停止すればいい。平和安全法(戦争法)などは廃止する。国民は明らかに貧しくなっている。30年間給料が上がらず税金は上がり、ここに来てむちゃくちゃ物価、電気代も上がっている。

「安全保障環境の激変」に騙されるな

 防衛3文書に出てくる安全保障環境の激変という表現。ロシアがウクライナに攻め込んだ、中国も台湾周辺でいろいろやっている。でもこれは激変とは思わない。反撃能力は、憲法との関係で専守防衛だから、朝鮮動乱の時にミサイルが飛んできても撃って出れないから、ピンポイントでミサイル発射基地にミサイルを撃つ。これは理論上は可能だ。そこで長距離ミサイルをそろえようとなっているが、論理が違う。反撃能力はほとんど攻撃能力だ。このすり替えに騙されてはいけない。
 防衛費を2倍に。恐ろしい話だ。防衛省にいる教え子に、来年から2倍使っていいと言われたらどうすると聞くと、困りますと。旧軍の師団司令部を修理するとか、公用車を買い換えるとか。それでは戦力にならない。米国の武器をセットで、言い値で買う。
 自衛戦争は国際法上合法だ。侵略戦争は違法に決まっている。ウクライナが隣にあったらロシアは存続できないといって、ロシアがウクライナ侵攻をはじめたが、それは違法だ。ウクライナにとっては、おそわれた戦争、だからバックアップする。ウクライナには勝ってもらわないと困るが、勝つまでにはどんどん人が死んでいく。この点は人びとが悩むところだと思う。
 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本のものだが(どの国も管理していない島を見つけたら、平和裏に行政管理する)、1970年頃に海底油田が見つかり、政治的に領有権はお互い触らないようにしておこうとなった。台湾は元々中国文化圏であるが、中国文化圏の独立国家という主張はあり得る。ただ、戦争に負けた国民党が逃げていって占領しているから、中国政府の管轄下にあると言う理由は成り立つ。福建省がすぐ前に見え、台湾がずっと後ろにある金門島(台湾の領土)。緊張感はずっと以前から続いている。道具立てが変わっているだけで、緊張関係は同じだ。ロシアとウクライナ、中国と台湾の緊張はずっと以前から続いている。北朝鮮は、日本を狙っているのではなく、米国に独立国家として認めてくれ・金政権の体制をじゃましないでくれといっているだけだ。朝鮮半島に軍事紛争が勃発したら潰れる。安全保障環境の激変というのは、言葉で言うほどではない。中国や北朝鮮が力をつけてきたが、米国や日本もかなりつけている。日本も太平洋で、米国・オーストラリアと軍事演習をしている。フランスや英国も加わっている。これはすごい変化だ。惑わされてはいけないと思う。

 米軍の第2軍
 :自衛隊へ

 要するに、ずっと一貫して自民党と軍事産業・米国国務省がいってきたことは、日本は米国と一緒にならないとやっていけないよ、自衛隊は米軍の2軍にならないといけないよということ。こう主張してきた者にとってウクライナ戦争は好機であった。結果として、日本の能力を超えて日本は破綻状態、かつ、できもしない米軍の戦争に付き合わされることになった。日本はこのロジックにはまっている。米国の言うところに基地をつくり、米国の古い武器を1・5倍ぐらいの値段で買う。騙されている。異常に防衛費が使われるということ、防衛費を2倍にすること、国税庁が国民から税金を搾り取る、福祉の切り下げ、健康保険の自己負担金の増額、年金など、われわれの生活にしわ寄せをしておいて、米軍の武器購入は言い値で買うという大盤振る舞い、この構造はおかしい。これをどうして止めるか、残念ながら政権交代しかない。政権の支持率も下がっている。政党では自民党が30%、維新・立憲民主が各5%、共産・公明各2~3%、社民・令和が各0.5%位、無党派層が40%。今の政治にみんなうんざりしている。
 自民党政治に「うんざり」
鳩山政権。細川政権ができたときのことを覚えているだろうか。あのときも自民党政治にうんざりしていて、なんとか変えたいと思っていた。その後の野党(民主党)のふがいなさもあるが、自民党と官僚と財界の鉄の三角形の力が、野党政権の足を掬うために懸命に政権いじめをしたことで、国民の支持が消えた。この点は、われわれの愚かなところだ、自民党よりいいじゃないかと思えなかったことが。今回もここまで自民党政治にうんざりしているから、野党共闘が成立していること、いい候補者がでること、がそろえば政権政党に勝てる。共産党でも辰巳コウタロウさんはいい、名前も顔もいい。

憲法改正と野党
共闘について

 維新や国民民主がすり寄っているが、それ自体は怖くない。昔、社会党が健在だった頃は、憲法改正といわれても無視できた。でも、いま無視すると成立してしまいかねない。野党共闘をすると必ず野合という批判が来る。どうして野党は頭でっかちなのか。すぐオタオタする。野合と言えば自公連立が典型だ。公明党は、権力を持ち続けていたいために、自分たちにとって一番大切な教義まで捨ててくっついている。まさに野合だ。頭でっかちの野党は、政策一致が大切だともめてまとまらず、市民連合が間に入ってようやくまとまる。公明党は、自民党と連立するとき、憲法は政策合意に入っていないといっている。だのに野党は、憲法についてぐらいは一致しないと(共闘できない)というが、自公は憲法をはずして連立しているのだ。

「憲政を立て直す」を野党共闘の中心政策に

 野党は、憲政を立て直す(違憲の法律は廃止し、元に戻す)これを柱にすればいいではないか。児童手当、これは政権取ってから議会で論議をして決めればいい。今は、憲法という大黒柱がぶっ倒されているから、立て直す。これが最大の共通政策だ。共産党を入れるか入れないか。都教組執行部が社会党から共産党に変わるとき、都教組の副委員長をやっていたが、その後辞して現場に戻って校長をやった。共産党に反発する気持ちはあるが、今それを言っていたら自公と維新に対抗するのは危うくなる。争っているときではない。野党共闘ができていて、それなりの候補者が出ていたら、自公政権に対抗できる。維新は(関西で)ためらいなく政策を素早く実行する。この点は賢い。
 安倍さんがまだ野党の時、2012年に憲法全文の改正案を出した。これに私は、一部天皇制について係わった。文句言ったら、「天皇は元首だ」といった部分だけを借用され、それ以上のことについては口を封じられた。2018年の4項目の改正草案がつくられたとき、2012年の改正草案は撤回すべきだといったが、拒否された。2012年案が自民党の本心なのだ。これは「大日本帝国憲法(明治憲法)」の現代語訳だ。読んでいるうちに腹が立つ。今の憲法は、99条で、天皇・国会議員・裁判官・公務員には憲法擁護義務がある。2012年草案では102条で、一般国民の憲法尊重義務、政治家・公務員の憲法擁護が記されている。これは国民主権ではない。

4項目改憲
案について

 今改憲案と言えば自民党が党議決定した2018年の4項目改憲草案だ。①緊急事態条項の新設・②自衛隊の明記・③参議院の合区解消・④教育の充実(これを提案した維新は本当に教養がない)である。
 ①現行憲法でも、12条、13条に、自由の権利と濫用の禁止・個人の尊重と公共の福祉が規定され、人権の制限に触れているし、国民保護法や災害対策基本法、感染症対策基本法が整備されている。だから、新設は必要ない。
 ②自衛隊を明記すると、自衛隊の存在は違憲でなくなる。安倍さんは、自衛隊を明記するだけで他はないも変えないと言った。自衛隊は防衛省が管理するが、自衛隊明記によって、管理する機関より、管理される自衛隊が上にランクされる。これはおかしい。自衛隊を明記しても現憲法では海外派兵が違憲であることに変わりはない。
 9条の1項は、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄するとある。戦争は国家しかできないから、この条文は変だ。【国際紛争を解決する手段としての】をなくせばいい。これには伏線があった。1928年パリ不戦条約が締結された。第1次世界大戦では、初めて軍人よりも民間人がたくさん殺されるという悲惨な戦争を経験した。ダイナマイト・戦車・飛行機・機関銃が使われた。悲惨さに気づいた各国は戦争を止めようという条約を結んだ。その条文が【国際紛争を解決する手段としての戦争をやめる】だった。この条文の解釈は、【侵略戦争を放棄するのであって、自衛戦争は放棄しない】である。これは国連憲章に受け継がれた。
 9条2項は、凶暴な日本は二度と戦争できないように、陸海空軍その他の戦力(軍隊)の不保持と、交戦権の否認を規定している。だから自衛隊は法的には軍隊になってはいけない。第2警察ならいいということになる。警察は自分の国内でしか活動できない。PKОで海外に行くときも、自衛隊は、自ら軍隊ではないと主張した。戦争法成立の時、われわれは議論では勝ったが、政治で負けた。日本国憲法の下で、どういう理屈を使っても海外派兵できないことは明かだ。
 ③「1人1票の原則」を否定し、過疎地の世襲議員の議席を温存するだけの案だ。
 ④改憲は必要ない。法律と予算で実現できる。そのために800億円もかかる改憲をやるなんて馬鹿げている。
 最近、自民党のホームページで4項目案を探すことはできないようだ。従って、与党による改憲国民投票の提案を待たずに、こちらから積極的に自民党案を批判して「ばかにする」ことで改憲案を出せない空気をわれわれがつくるべきだ。

小林節さんが熱弁(8.19)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社