ALPS処理水海洋放出問題

政策決定撤回・放出中止を求める声続出

国・東電住民説明意見交換会

 【郡山】8月30日(水)に郡山市労働福祉会館での説明会・意見交換会には、150人が集まった。「理解なしにはいかなる処分もしない」との文書合意が踏みにじられ、海洋放出が強行された直後だけに、住民の怒りが渦巻く中で始まった。
 経産省、東京電力からの説明を受けた後の4人の実行委員による質問と意見そして会場からの質問には十数人が立ち「関係者の理解は」「農業者から」「モニタリングについて」「決定の仕方」「生態系への影響と立証」「中国などとの国際問題化責任」「廃炉計画は」「海洋放出費用」「地下水を減らす対策は」「被害事実論文の検証」「危険性の説明不足」「スラリーはどうなっているのか」「住民健診の必要性」「30年以上かかるようだが、子どもたちにどう説明するのか」と、次々と質した。

開き直った国と東電

 国、東京電力側は、政府決定と放出強行を背景に強硬な態度に転じ、「漁業者から一定の理解が得られた。1500回の説明を行った。」「規制基準以下で安全」「住民の健診は行わない」「今後の説明会実施は不明」と繰り返し、誠実さのひとかけらもなかった。6月、7月に開かれた南相馬、いわき及び郡山での説明会では、「約束は遵守する」を繰り返していたのに、手のひら返しの開き直り発言には、怒りの声が何度も上がった。
 様々な核種の存在などの指摘があるのに「科学的に安全」と強弁し「理解」を押し付け、理解が得られないとなると約束を踏みにじる、経産省と東電の強引で傲慢なやり方に正当性はない。今回の、東電はリスクコミュニケーターと称する広報担当2人の他、7、8名が随行し、その中の一人は会場からヤジがあがると司会席に寄ってきて、やめさせろと度々迫った。国・東電の本性があらわれた行為だった。

放出撤回・中止行動、差し止め訴訟へ

 閉会あいさつでは、海洋放出差し止め訴訟への参加呼びかけが行われ、最後に実行委員会による「海洋放出の即時中止を求める声明」が読み上げられると大きな拍手が沸き起こった。海洋放出は開始されたが、引き続き国と東電に放出方針の撤回と中止を求める運動を強力に展開していかなければならない。(世田)

声明

福島原発からのALPS処理汚染水海洋放出の即時中止を求めます

 2011年の3・11地震・津波と原発事故は、多くの人々の命と生活を破壊し、苦しめ続けている。この大災害がなぜ起こったのか、防げなかったのか、予兆はなかったのか、なぜ、対策は取られなかったのか。
 大津波や地震の警告は専門家たちから繰り返しなされていたし、福島原発では2010年に電源喪失による炉内の水位低下や部品の落下事故が起きていた。だが、これらに対する対策は、東電と政府によって妨害され続け実施されることはなかった。結果、原発爆発により広範囲な地域が放射能汚染され、住民は故郷を、生業を、学び舎を、家族・友人知人を失った。完全に人災である。私たちはこの事実を忘れることはできない。
 そして、今また、その愚が繰り返される現実を目の当たりにしている。
 2023年8月22日、政府は東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理汚染水の海洋放出を決定し、24日には東京電力は海洋放出を開始した。「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との約束、繰り返された「約束の遵守」は、どこに行ったのか。岸田首相が福島県漁連関係者とも話をしていないのに「一定の理解を得た」として海洋放出を強行したことは、本日の説明会・意見交換会を準備してきた私たちを含め、広く関係者を愚弄するものだ。
 放出は「廃炉作業のため」としているが、880トンのデブリは1グラムも取り出せていない。
 「処理水」と言うが「タンクにはトリチウムだけでなく、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留し、タンク貯留水の約7割で告示濃度比総和1を上回っている」と度々指摘されてきた。トリチウム以外の放射性物質が基準を超えている水を「二次処理して、基準以下にする」としているが、どのような放射性物質がどの程度残留するか、その総量は示されていない。2018年に海洋放出の費用は17〜34億円、期間は52~88か月だったのが、今や1200億円以上、放出期間は30年以上に及ぶとなった。一方、研究者等による「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」は、公の場では検討されてもいない。
 聞く耳を持たないどころか、「処理水安全広告」に巨費を投じて世論形成を図り、ALPS処理汚染水の海洋放出の影響を「風評被害」に矮小化し、あまつさえ、「風評加害」なるレッテル貼りで議論を抑圧しようとしている。岸田首相は、「数十年の長期にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで政府として漁業継続支援に責任を持つ」と表明したが、約束破りがどの口で言うのか!
 2011年3月の原発事故で、大量の放射性物質が環境中に放出されてしまった。今回の放出は、政府によって環境汚染を意図的に広げるものだ。「放射性物質は、集中管理し、環境への放出を行わない」という原則を守らなければならない。
 私たちは、これ以上地球環境を汚さないために、国及び東京電力が、福島原発からの海洋放出計画を撤回するとともに海洋放出を即時中止することを求めていく。
 そのための行動を持続し、「海洋放出差し止め訴訟」等への参加を広範な人々に呼びかけていくことを表明する。
   2023年8月30日

「国・東電の住民説明・意見交換会」福島県中地区実行委員会

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