夢洲万博は中止せよ
9.7「夢洲万博」を考える討論集会
「維新」は責任のがれをやめろ
【大阪】どないする大阪の未来ネット、NPО労働と人権サポートセンター・大阪の共催による「夢洲万博」を考える討論集会が9月7日、大阪国労会館で開かれた。
高井千彰さん(どないする大阪の未来ネット代表)が主催者あいさつ、「今の万博をめぐる状況を見ていると、まさに維新ならではと思う。維新がもっていたものがあからさまに出てきた。本当にいい加減なやり方で、責任者は国だという(維新の責任のがれ)。岸田首相が、国が全面的に行うと言ったとき、ひょっとしたら次の選挙で岸田政権は引きずり下ろされるのではないかと期待した」と語った。 続いて、公金支出について(どないする大阪の未来ネット馬場徳夫さん)、労働時間規制について(在間秀和弁護士)、万博協会・大阪市への質問書の回答内容について(夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会:武田かおりさん)の3人から問題提起があり、質疑討論が行われた。
馬場徳夫さんの提起
深刻な財政危機
誰が費用を負担するのか
①公金を湯水のごとく
夢洲は、建設残土・産業廃棄物・浚渫土砂・家庭ゴミなどの廃棄場として、予定総額3350億円で通常埋め立てでつくられた。さらに、「万博・IRカジノ」用地の開発費用として、
計4569億円の公金が支出される。具体的には、夢洲インフラ整備(1141億円)・IR用地土壌改良(788億円)・万博跡地土壌改良(790億円)・万博会場建設(1850億円)である。さらに、万博が終了した後の会場撤去費がこれに加わる。これに淀川左岸2期工事(2957億円)が追加される。新大阪から万博会場までのシャトルバス運行も計画されている。
特別会計の一つである港営事業会計の2022年度末決算では、1214億円の累積欠損金と1392億円の起債残高となっている。さらに2482億円が夢洲開発費として負担させられる。港営事業は、施設提供事業と埋め立て事業で構成されているが、IR用地の賃貸料は、1㎡428円であるのに、夢洲の土地整備原価は1㎡12万円を超えている。大阪市の港営事業会計は危機的な状況にある。
一方、万博運営による収入は? 入場料は、大人7500円、中人4200円、小人1800円だ。入場客による収入は、平均入場料4000円、入場者数2850万人として、収入140億円と見込んでいる。しかし、これほどの入場が期待できる状況ではない。不足は誰が負担するのか。
②万博をめぐる状況
参加予定国は153カ国だが、現在時点で参加しパビリオン建設を表明しているのは59カ国、貸し出しパビリオン30カ国、共同出展70カ国である。あまりにも少ないので、日本が箱形建物を建設し、費用を後から請求するタイプを新設した。国内パビリオン25社で、申請書が出たのは40%である。
万博予定地に建物を建設するため、地盤沈下対策として50 cmの杭を打つ、万博終了後は杭を抜き更地にするのだが、汚染土壌対策は未解決のママだ。建設・運輸業界の労働者不足の上に、「時間外労働規制」問題がある。建設資材は高騰し、費用の高騰が続いている。会場建設費が、①で述べた1850億円をさらに上振れする公算が大だが、財界は不足分の負担を拒否している。国も渋っている。最後は大阪府・市にまわってくるのだろうか。また万博に関する市民の関心は極めて低い。
③国際博覧会条約では、延期するときは改めて参加申請が必要である。
日本の登録申書によると、中止した場合は、博覧会国際事務局に入場料想定の2%、約16億円を支払い、参加受諾国に対し、参加のために発生した費用を補償することになっている。今なら、まだわずかの金額で済む。ぜひ万博の中止を!
在間弁護士の提起
「万博協会側が、大阪万博に関する施設の建設については、2024年4月1日から建設業において適用される時間外労働に関する罰則付の上限規定を適用しないよう要望する」との報道が、2023年7月27日にあった。これに対し西村経産大臣の対応は「要望があり検討している」であり、加藤厚労大臣の対応は「上限規制の例外を認める考えはない」であった。
①2024問題
この労働時間規制は、2018年6月に成立した「働き方改革関連法」に基づく。働き方改革の最大のテーマは、労働者のためではなく「生産性の向上」つまり、労働時間を短縮して、効率よく働かせるためであって、罰則付で時間外労働の上限規制を設けた。
原則限度時間は、月45時間、年間360時間以内。通常予見することができない業務量の大幅な増加等臨時的に必要のある場合、特例限度時間として、年間720時間以内、月45時間を上回る回数は年6回まで、単月100時間未満・2~6ヶ月の月平均80時間とし、2019年4月1日より施行された。但し、中小企業については、2020年4月1日からの施行となったが、さらに、自動車運転業務、建設業務、医師の場合は、2024年4月1日からの施行となった。さらに特例として、労基法付則139条に、工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る)の場合、「当分の間、単月100時間未満・2~6ヶ月の月平均80時間以内」の規定は適用しない。
②万博協会労働者の人権に敵対
厚労省の立場で、「過労死」の元凶となっている長時間労働(時間外労働月100時間は過労死ライン)を認めることはできない。建設業における労働時間規制の基本的視点は、発注者の適正な工期設定を前提とする。今回のように万博協会の都合で労働時間規制を無視することは許されない。労働者の人権に正面から敵対する「万博」は中止すべきだ。
武田かおりさんの解説
同じ内容の質問書を7月末に万博協会と大阪市に提出し、9月4日に回答があった。大阪市の回答を、ポイントをしぼって解説する。
①IR用地の1月・m²当たり賃貸料428円はあまりにも低額だ。答:専門家である不動産鑑定業者が鑑定したものであり、見直すつもりはない。
②国は、大阪IR区整備計画案を認定した際に、7つの条件をつけた。地盤沈下や液状化への懸念にどう対処するのか。答:液状化については、IR事業者による追加調査や詳細分析の実施、これらを踏まえた具体的な検討を始めているが、高い安全性の確保を前提に、十分な対策を講じる。
③IR事業者が開業判断の時期延長を求めたようですが、理由は何か。夢洲のIR用地の土地対策788億円の増額はないか。答:事業工程や開業時期の再調整、前提条件の見極めなどを協議中で、大阪IR株式会社の解除期限を延長した。通常の想定を著しく上回る大規模な地盤沈下や陥没が生じた場合を除いて、大阪市が費用負担しないことを前提としている。IR開業に必要となる土壌汚染、液状化対策等にかかわる大阪府の負担額は、債務負担行為の限度額788億円の範囲内である。
④運送業者に昼夜の交代勤務を組む余裕はない。もしやるなら、時間外労働となるが、どう考えるか。答:時間外労働の賃金保障を大阪市としてする計画はない。
⑤建設関連も深刻な労働者不足だ。大阪都心ではタワマン建設ラッシュだが、夢洲の開発に集中できるのか。答:2024年12月の完成に向け順調に進捗している。
⑥夢洲開発事業現場の労働安全衛生法・労基法・派遣労働チェック体制、外国人労働者の雇用形態のチェック体制等に誰が責任を持つのか。答:ご指摘のチェック体制は、受注者(万博協会)の責任で実施される。
⑦管理型最終処分場にはメタンガス等の放出のため、1区には79本のガス抜き管が設置され、ガスはいまだに放出されている。この区域は売店や野外イベント会場だが、どうするのか。答:万博協会からは、ガス抜き管の機能は維持すると聞いている。
⑧環境影響調査の手続きは、事業者からの方法書に対して、専門委員会報告書と市長意見が出された段階と考えていいか。準備書の提出はいつ頃か。答:専門委員会の答申を踏まえ、事業者に対して市長意見は2019年8月10日に述べた。準備書は今秋を予定していると聞いている。
⑨環境影響準備書を経て、説明会の実施、評価書確定後、事業者の工事着手と考えてよいか。答:環境影響評価の広告が行われるまでは、工事実施はできない。
⑩夢洲駅駅舎及び、シールド工法によるトンネル掘削工事は予定どおり進んでいるか。
答:駅舎の躯体構築工事は、地下2層構造のうち地下2階、地下1階ともほぼ完成している。2024年度中の開業に向けて順調に進捗している。
質疑討論
ポイントの第1。万博が大きな赤字をもたらすことが見えてきたこと。市や事業者にとって土壌汚染対策、液状化や軟弱地盤対策が、大きなネックになっている。つぎ込まれている巨額の公金がさらに増額することが大いに危惧される。事業計画を国が認定はしたが7つの条件(土壌汚染・液状化・地盤沈下などの対策)が実行できる確証がない。そのこと自体が、事業者が事業を開始するまで3年間もの間、違約金なしの撤退権を市が認めざるを得なかった背景にある。しかもこの3年間に工事は続いているのだ。
第2。労働者不足問題と2024問題。万博協会は労基法違反行為を臆面もなく要求している。そこまで危機的な状況なら、中止すべきだ。万博のために、外国人労働者を強制労働させたり、移住労働者特に女性の不安定な雇用条件による不安定労働を許してはいけない。この点は国・自治体には第1議的な義務がある。労働組合による相談や監視活動が必要だ。
今まで、万博反対は経済成長に反対するようで言いにくかったとの表明もあったが、共産党も最近ようやく中止を表明した。70年万博の時は、労働者は釜ヶ崎を通して集めることができたが、いま労働者はいない。大阪都心のタワーマンション建設がラッシュで、ブラック現場の夢洲には集まらないだろう。関西万博が予定通りに開かれる見込みは薄い。しかし、延期ではなく、中止を要求しよう。
第3。その他、万博開催中は工事をしないと言っていたのに、やるのなら、その問題も指摘しよう。アクセスルートは二つしかないのに、ここを工事資材運搬車両、物流の車、労働者を運搬する車、万博客が通る。それは無理ということだ。その他、空飛ぶ車の交通法規上の問題、ギャンブルで負けた者のお金を資金にする倫理的問題、ギャンブル依存症対策など当初からの問題もある。大阪市議会へ陳情書を出すことが呼びかけられた。
参加していた野々上府会議員には、本会議での質問で、違約金なしの撤退権を3年間も認めていること、労働基準法に違反して労働者を働かせようとしていることについて質問してもらいたいとの意見が出た。
最後に、枡田俊介(ストップ・カジノ大阪)がまとめをし、集会決議・要請書(日本国際博覧会協会会長。大阪市長、大阪港湾局長宛)を採択して終了した。(T・T)
財政問題の深刻さを訴えた馬場徳夫さん(9.7)
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