9・18「止めよう改憲!大阪ネットワーク」総会と講演会

岸田政権─
自覚なき戦後最悪の反動政治を問う

 【大阪】9月18日、大阪のPLP会館で「止めよう改憲!大阪ネットワーク」の第15回総会と講演会が行われた。総会では昨年来の活動報告と、この秋からの活動方針、実質改憲を許さない運動=安保法制の廃止と安保3文書の撤回、大軍拡・敵基地攻撃能力の保有反対、南西諸島・沖縄の対中軍事要塞化反対の運動を強化することを採択し、講演会に移った。

沖縄、広島、福島の戦後を
否定する岸田政権


 講師の広渡(ひろわたり)清吾さんは東京大学の名誉教授であり、日本法社会学会理事長、民主主義法律部会理事長などを歴任、「市民連合」や「学者の会」の呼びかけ人でもある。
 広渡さんは「ヒロシマ・フクシマ、オキナワの問題は戦後の日本にとって決定的な問題であり、この問題に岸田政権はどう向かい合っているか」と話を始めた。
 そして、「岸田政権は安倍政権を越える戦後最悪の反動政権。防衛費を倍増し、安保法制3文書を閣議決定して外国を先制攻撃できるとした。集団的自衛権どころの話ではない。日本の戦後のあり方は日本国憲法下の体制である。中曽根と安倍はこの体制を変えようとしたが、岸田政権は安倍政治を越えた。憲法改正もやると言っている」と続けた。
 次に、「6・23 8・6 8・9 8・15 5・3につなぐ われら いま生く」(2010年朝日歌壇賞)と読み上げ、「この短歌は戦争の悲惨、沖縄の悲惨、原爆の悲惨、その上に日本国憲法は制定された。その憲法を社会の基本にすることが私たちの課題だと歌っている。3・11の原発事故は3度目の被曝であり、大江健三郎さんは、今が2度目の戦後だとする」。
 しかし、「岸田政権は他国の領土の攻撃を認め、G7広島サミットで核抑止論=核兵器があるから核戦争は抑えられていると宣言。原発回帰、推進を決め、南西諸島へのミサイル基地の配備等を行い、那覇の第15旅団の強化を進めている。最高裁判所は沖縄県の申し立てを上告棄却し、辺野古沖の埋め立てを認めた。まさに、沖縄の再戦場化だ」と糾弾した。

憲法9条は核兵器禁止条約に
一直線に結びついている

 「自民党の憲法改正推進派は、憲法に手を付けられないことが戦後の日本国憲法体制の最も重要なポイントだと考えている。憲法を変えないと、この体制下の日本は変えられないと思っている。しかし、彼らは9条改正の国民投票で負けるかもしれないとも思っている。他の条項でもいいから一度憲法を変えたい。これが岸田政権の先送りできない課題である」。
 「憲法は岸田政権を止める国民の力の源泉であり、明文が変えられない限り、憲法の効力は国民の力を背景に持続し続ける。しかし、実質的には憲法は様々な形で無視され、足蹴にされている。この状況を、どう変えていくかが重要だ」とこの項を締めくくった。
 広渡さんの話は進む、「ヒロシマは憲法9条の歴史的、国民的基礎であり、憲法9条は核兵器禁止条約に一直線に繋がっている。核不拡散条約では核軍縮が進まなかったため、2017年に国連総会で、核兵器禁止条約が採択された。この条約では核兵器の存在を認める一切の行為を締約国に禁止している。現在、署名国92ヵ国、批准国68ヵ国になっている。日本の世論もこの条約に参加するよう求めているが、日本政府は参加していない。日本政府は核抑止論の立場に立っているからである」。 
 「核抑止論とは相手国の核の先制使用に対して、その攻撃を上回る核で報復するという威嚇政策であり、相互の核軍拡を意味する。核兵器使用の非人道的惨禍を認識するならば、真の問題は核兵器を絶対に使用しない、させないという状況をつくりださねばならない。核兵器禁止条約を有効に活用しての外交交渉・国際政治の道しか選択肢はない」。

フクシマを忘却し原発推進に回帰 

 次いで福島の問題に移り、「岸田政権は原発産業を推進するという新規定を制定し、原発稼働40年原則上限規制(最長60年)を廃止し、稼働期限決定を規制委員会から経産省に移した。ドイツは2011年に脱原発法を定め、22年末には全ての原発停止を連邦議会全員一致で決定し、脱原発を実行した」。
 「戦後のアメリカの原子力戦略は、軍事利用が原爆であり、商業利用が原発であった。この両方を管理する世界システムとしてアメリカが創ったのが国際原子力機関=IAEAである」。
 「日本の原発推進は国策であり、国策民営であった。国の原発行政は経産省が管轄し、原発が儲かるように推進した。そのことが福島の事故につながった。福島の現状は何も変わっていない。避難しなければならなかった人たちの問題は何も克服されていない。去年の6月、最高裁は国家賠償責任を否定し、原発事故の責任は国にはないと判決を下した。裁判所は国の政策を応援している」と国と同時に最高裁判所を批判した。

憲法9条のない国に変えてしまった沖縄

 「大江さんは沖縄の問題を考えると、自分は日本人ではありたくないと言い、高橋哲也さんは沖縄と福島は日本の犠牲になったと言う。福島に原発を造らせ、自分たちはのうのうとその電力を消費していた。つまり沖縄と福島は差別と犠牲の県だと言っている」。
 「近代日本は琉球という国を併合した。1910年に韓国が併合された時、沖縄のある知識人が琉球は長男、台湾は次男、韓国は三男と言った。沖縄は台湾と朝鮮と同じく植民地として扱われていると言った。琉球王国は1879年3月に廃藩置県という形式で、日本に併合されたが、琉球の支配層の多くは、日本への専属を拒否し清国政府に援助を求めた」。
 「沖縄戦で沖縄がどんなにひどい目にあったかは、皆さんご承知のことだ。そして、沖縄はアメリカの占領下に置かれ、1972年5月15日に沖縄返還協定が発効した。沖縄の人にとっての祖国復帰の意義は憲法9条の下にかえることだったが、沖縄返還は本土と沖縄の新たな差別体制をつくることになった」。
 「佐藤首相は核抜き本土なみ返還を公約したが、アメリカは返還後も沖縄の軍事利用を従来通り確保しただけでなく、本土から沖縄への基地移転を進め、米軍基地面積に占める沖縄の割合は、平和条約締結時1割、沖縄返還時には5割だったのが、現在では7割を占めている」と批判した。

台湾有事を戦争にしてはいけない

 最後に、広渡さんは台湾有事の問題に言及し、「現在、台湾有事が現実的な戦争の危機だと考えられている。台湾有事とは、中国が武力で台湾併合を企て、米軍が台湾防衛のために参戦、日本も集団的自衛権行使によって、参戦するということである。沖縄は主戦場となり、本土も危険になる。この時、留意しなければならないのは米国本土にも、中国本土にも双方からの攻撃はないということだ。もちろん、台湾有事の可能性はゼロではないだろう。しかし、それをゼロにするのが政治の力・知恵であり、国民の力・知恵なのである」と語った。
 そして、「もし9条がなくなったら、日本には沖縄の居場所はない、居る必要はない。9条がなければ沖縄は本土に差別され、不平等な軍事負担を押し付けられる関係だけである。9条だけが沖縄と本土を結ぶ生命線である」。
 「憲法9条は世界の国々に信頼をもって受け止められている。多くの国が憲法9条の存在を知っている。だから日本への期待がある。そういう信頼のある憲法9条の上に立って、これからの日本をどうするか考えていかなければならない」と講演を締めくくった。
 講演の後、山本建治(日独平和フォーラム大阪)さんの「ウクライナに平和を」、山元一英(大阪総がかり行動)さんの「新たな戦前に抗う」、山口光枝(緑の大阪)さんの「福島第一原発の放射能汚染水の海洋投棄に抗議」というアピールを受けた。 (山三)

9条の重要性を力説した広渡清吾さん(9.18)

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