沖縄県民の意思を尊重することが日本の民主政治回復のカギ

辺野古新基地建設・ミサイル配備断念を

沖縄報告 10月1日

沖縄 沖本裕司

玉城知事が国連人権理事会で「平和への権利」を訴え

 玉城デニー知事は9月19日、ジュネーブの国連人権理事会の場で、米軍基地が集中し様々な事件・事故・騒音、PFASなどの環境汚染、県民意思を顧みない辺野古埋立の強行など、沖縄の不条理な現実を流ちょうな英語でスピーチした。はじめに、「アメリカ軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている沖縄の状況を世界中から関心を持って見て欲しい」と呼びかけ、辺野古について「県民投票という民主主義の手続きで明確に埋立反対という民意が示されたにもかかわらず、日本政府は、貴重な海域を埋め立て新たな基地建設を強行している」と非難した。この中で知事は、2016年に国連総会で採択された「平和への権利宣言」をあげ、平和への権利(Rights to peace)を沖縄で実現するよう訴えた。
 在ジュネーブ日本政府代表部は玉城知事の発言に対し、「基地集中は差別的な意図に基づくものではない」「辺野古新基地は法に従って進めている」「県民投票は重く受け止めている」などと、手前勝手な弁明を行なったのである。発言した塩田参事官も内心苦し紛れの弁明だと思っていたに違いない。記者の質問に対し、「日本政府の公式見解を述べただけです」と言い残して足早に会場から立ち去った。
 また知事は、国連で人権状況の調査を行う専門家のリビングストン・サワンヤナさん(ウガンダの市民団体「人権イニシアティブ財団」の創設者)をはじめ、特別報告者や独立専門家、国連人権高等弁務官事務所の幹部らとの会談を重ねた。サワヤンナさんは「日本政府が招待すれば是非沖縄に行きたい」と述べ、沖縄の人権状況を直接調査する考えを持っていることを明らかにした。2015年の翁長雄志知事以来8年ぶりの沖縄県知事による国連活動は画期的だった。沖縄県が日本政府から独立した行政主体として、世界に積極的に打って出ることが、日本政府の沖縄に対する横暴をはね返す力を強くする。

日本政府が埋立変更承認を「勧告」さらに「指示」

 玉城知事が国連人権理事会に出席しているさなかに、国交相は沖縄県に対し、9月27日を期限として辺野古埋立変更申請を承認するよう「勧告」する文書を送付した。沖縄県が「期限までに承認を行うことは困難」と回答するや、国交相は直ちに、10月4日を期限として承認するよう「指示」する文書を送付した。国交相は公明党の斉藤鉄夫だ。「平和の党」公明党や創価学会の皆さんは、基地に反対する沖縄県民を強権で踏みつける政府を容認するのか。斉藤国交相の辞任を求めるべきではないのか。
 辺野古埋立反対は県民の総意である。いかに政府の圧力が強かろうと、民意に反して沖縄県が埋立変更を承認することはあり得ない。岸田政権は最終的に、行政代執行をもって変更申請を県に代わって承認し大浦湾の埋立工事を強行していくつもりだ。まさに、「法治」をなぞった「専制」に他ならない。
 新たに入閣した閣僚も「普天間の移設のため辺野古が唯一」と繰り返しているが、本当にそうか。辺野古の工期は、知事の変更承認から12年以上とされている。その間「普天間の危険性」は放置される。仮に、大浦湾の軟弱地盤の「改良」工事で1万本以上の砂杭を打ち込むという大規模自然破壊の上に基地ができたとしても、その時東アジアの情勢はどうなっているか。現在の中国・米国(日本)の軍備拡張と緊張激化の局面が転換し、経済にとどまらず政治・軍事的に緊張緩和と相互の軍縮、平和共存の時代を迎えているかも知れない。滑走路・軍港・弾薬庫を備え日米両軍が共同使用する辺野古新基地のような攻撃型基地は不要になる。
 いかなるアジアをめざすのか。アジア各地と沖縄・日本を焦土と化した戦争の反省から、戦後のはじめ日本が国是とした「戦争放棄」の原点に返り、絶対に戦争はしない・軍事力は強化しないという原則の下で中国政府との対話を継続することが、日本が取るべき道である。アメリカは所詮太平洋の彼方の国だ。強大な軍事力をいつまでもアジアに置いておくことができる訳がない。日本と中国が協力すればアジアに平和と発展がもたらされる。不幸な19~20世紀のアジアを教訓とした新たな21世紀のアジアを誕生させよう!沖縄は「万国津梁」、平和の架け橋となる。
 辺野古新基地建設を白紙撤回し、大浦湾の埋立工事を断念せよ!
自衛隊ミサイル基地建設を中止し、ミサイル・弾薬を撤収せよ!

9.24「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」設立集会に800人

 9月24日(日)、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」設立・キックオフ集会が沖縄市民会館大ホールで開かれ、石垣・宮古からのズーム参加者も合わせ800人が結集した。開会に先立ち、知念良吉さんのコンサート、5・21北谷集会の映像放映が行われた。
 司会は神谷美由希さんと立田卓也さん。開会のあいさつで、神谷さんは「基地の島・沖縄を平和の象徴の島にしていこう」と述べた。主催者あいさつに立った瑞慶覽長敏さんは「度々災害に会う島々の人々が望んでいるのは、ミサイルではなく発電機、シェルターではなく電線地中化だ。11・23集会に大結集し県民の声を出し続けよう」と訴えた。
 赤嶺政賢さんは来賓あいさつで、「安倍政権の集団的自衛権から7年。アメリカ防衛のための日本と南西諸島の軍事化が進んでいる。新たな戦前の準備に他ならない。岸田政権には外交がない。沖縄を再び戦場にさせないためうりずんの会も国会で頑張る」と決意を述べた。そのあと、県議会与党会派の渡久地修さん、オール沖縄会議共同代表の金城徹さん、第32軍司令部壕の公開・保存を求める会の垣花豊順さんが発言した。
 記念講演は「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクト発起人の谷山博史さんが「分断を乗り越え“作られる戦争”を止めよう」と題して行なった。谷山さんは「母は糸満出身で、私は国際NGOで12年間活動した後、3年前に沖縄に戻った。紛争の現場をたくさん見てきた。ほとんどアメリカが関わった戦争だった。台湾をめぐって米中の争いが起きると最大の被害者は沖縄と台湾になる。対話が途切れたところに戦争は始まる。戦争はつくられるが、戦争は止められる」と熱意を込めて語った。
 各地からの報告では、石垣島から内原英聡市議、宮古島から下地茜市議、うるま市から照屋寛之さん(ミサイル配備から命を守るうるま市民の会共同代表)、沖縄市から中村未央県議(自衛隊の弾薬庫等建設に反対する沖縄市民の会共同代表)、与那国島からは急きょ会場からマイクを握った狩野史江さん(与那国島の明るい未来を願うイソバの会)がそれぞれ報告した。
 そのあと、9月16日に結成されたばかりの「辺野古新基地建設に反対し、沖縄の自治の底力を発揮する自治体議員有志の会」のメンバー十数人が壇上に上がると、ひときわ大きな拍手と歓声が上がった。代表してマイクの前に立った北谷町議の仲宗根由美さんは「祖母はサイパンで生まれ育った。戦争のときは7才。左足に受けた傷に砲弾の破片が8つ残っている。命のバトンがつながった。沖縄の底力を発揮する時だ。ゆるぎない民意を背景に、辺野古反対・玉城デニー支持、沖縄の自治、希望に満ちた子供たちの未来を闘い取ろう」と力強くアピールした。
 若者からは阿利斎生(いつき)さんが「石垣出身で、県民の会の運営委員を務めている。11月の県民集会に若者チームとしてプロジェクトを作って参加する。必ず成功させよう」と呼びかけた。行動提起は、山城博治さんと平良友里奈さん。万人規模の集会への結集を呼びかけると共に、大きな魚に対し小さな魚たちが団結して闘う「スイミー」からヒントを得て、「スイミーバイ」の巨大な絵を多数の参加者で描き上げるプランを提起した。集会宣言案は、長堂登志子さんが読み上げて提案し満場の拍手で確認された。会場カンパは47万円余になったことも報告された。
 閉会あいさつに立った具志堅隆松さん(県民の会共同代表)は、「軍隊は住民を守らない。軍隊のある所が戦場になる。米軍基地に加えて自衛隊ミサイル基地が配備され沖縄がまた戦場になることを真剣に考えなければならない。かつての沖縄戦でもし日本軍が配備されなかったら米軍が上陸しても地上戦になることはなかった。自衛隊に言いたい。ミサイルも持って帰ってくれ、と。日本人はアジア人だ。ところが、“脱亜入欧”を掲げた日本人がアジア人の立場に立ったことがない。ウチナーンチュはアジア人としての認識を持つべきだ。アジアの国々と連帯していこう」と訴えたあと、ガンバロー三唱をリードした。

2023.9.24 「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」設立・キックオフ集会に800人。壇上の市町村議員たち。

2023.9.24 「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」設立・キックオフ集会に800人。熱気あるガンバロー。

9.27ミサイル配備断念を求める市民大集会に520人

 9月27日(水)午後6時半から、うるま市民芸術劇場で、ミサイル配備断念を求める市民大集会(主催=ミサイル配備から命を守るうるま市民の会)が開かれ、県内各地から520人が参加した。司会はうるま市議の国吉亮さん。はじめに、主催者を代表して共同代表の照屋寛之さんが「昨年3月から展示会を積み重ね12月にうるま市民の会を結成した。ミサイルは恐ろしい武器だ。国の専権事項では済まされない。市長の対応は間違っている。命どぅ宝だ」と訴えた。
 激励のあいさつには、現前国会議員4人が行った。「うるま市の自衛隊ミサイルは日本の国を守るものではない。アメリカの国家戦略に基づくアメリカのための軍事基地だ。力を合わせて止めよう」(赤嶺政賢衆院議員)、「自衛隊は日本全国にミサイル配備を計画している。憲法第9条を捨て、アメリカのために日本が戦場になっていいという危険な軍事政策だ」(伊波洋一参院議員)、「米国のアジアでの共同軍事訓練には、災害救助を主な課題とするものがあり、中国も毎年参加していることを知るべきだ」(屋良朝博さん)と述べた。
 連帯のあいさつでは、島袋恵祐県議(自衛隊の弾薬庫等建設に反対する沖縄市民の会共同代表)が「市民の会を7月に立ち上げ毎週スタンディングを続けている。チラシの全戸配布にも取り組んだ。会に参加している最高齢の女性は平和の礎に行くことができないという。友人たちの名前が刻銘されているのを見ると、涙があふれて止まらないからだ。二度と戦争の悲劇を繰り返してはならない」と訴えた。
 嘉手納爆音訴訟団の福地義弘副団長は、団長の新川秀清さんのメッセージを読み上げ、3万5千人余が原告となり「静かな夜を返せ」と訴えた第3次訴訟の経過説明をした。普天間爆音訴訟団の新垣清涼団長は、「基地問題の解決のためには多くの人々の団結が必要。基地建設に賛成の人を決して当選させてはならない」と呼びかけた。ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会の山城博治さんは、「麻生は戦う覚悟を持てと言った。死ぬ覚悟をせよということだ。戦争に反対!平和を守り抜く」とアピールした。
 平和市民連絡会の北上田毅さんはパワーポイントを使って、「勝連分屯地の保安林違法開発問題」と題したミニ講演を行ない、「分屯地内の南東部は保安林地区だが、すでに違法に伐採・形質変更されて基地施設となっている。復帰前に米軍が保安林を伐採したとしても、返還にあたって日本政府は森林に戻す義務があった。しかし、陸自は基地機能強化のために土地の形質変更を続けた。“保安林解除”などということは論外。勝連の保安林は原則として解除が認められない“第一級地”であり、原状回復以外ありえない」と強く主張した。
 そのあと、うるま市議の伊盛サチ子さんのアピール、宮古島とミサイル配備に反対する大分県からのメッセージ、うるま市民の決意表明が行われた。現状報告と行動提起は事務局長の宮城英和さんが「勝連分屯地の実態」の写真資料をもとに行い、「勝連分屯地は現在90人のところ、ミサイル部隊などが増強されて計250人の部隊になる。ミサイルは命の問題。3万人を目標に署名活動を行う。期限は12月27日。ミサイル配備断念の声をぶつけよう」と提起した。集会決議文は東智子さんが読み上げた。閉会のあいさつは共同代表の照屋大河県議、ガンバロー三唱は山内末子県議が行った。

2023.9.27 ミサイル配備断念を求める市民大集会に520人。うるま市民芸術劇場。決意を込めてガンバロー。

2023.9.27 本部塩川港。土砂ダンプの前で、抗議の牛歩。

2023.9.27 琉球セメント安和桟橋入口ゲート。土砂ダンプの前で抗議の牛歩。

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