9.22狭山事件の再審を求める東京集会

石川一雄さんの完全無罪勝ち取ろう

 【東京】9月22日、東京・台東区の台東区民センターで「狭山事件の再審を求める東京集会」が開催された。すっかり陽が落ち、秋の冷たい雨が降るなか、部落解放同盟と支援者ら200人が集まり、石川一雄さんの完全無罪を勝ち取る決意を新たにした。
 司会を東京教組書記次長の佐谷修さんが務めた。主催者あいさつとして、狭山東京実行委事務局長の桐田達也さんが発言した。「『袴田事件』はすでに再審が決まり、10月から審理が始まる。年内に結審するとも言われている。冤罪は警察組織の権威を守るために生まれる。私たち市民も活動家も、いつ狙われるか分からない。石川さんの無罪を勝ち取る運動を進めることが、私たち一人ひとりの人権を守ることにつながっている」。

鑑定人尋問を
実現させよう
 集会基調案を、同実行委事務局次長の近藤登志一さんが提起した。「事実調べ――鑑定人尋問を実現させよう」と呼びかけるこの日の基調案は、第3次再審闘争の現状と行動提起からなる。行動提起では、①「事実調べ」を求める緊急署名運動の展開、②SNS等での発信、オンライン署名の拡大、③地域と職場での取り組みの強化、④10・31中央集会への結集、⑤「再審法」改正を国会に求める、五つの方針で構成されている。基調は参加者が拍手で確認した。
 狭山弁護団の河村健夫さんは、「第3次再審と鑑定人尋問請求」と題する講演をした。河村氏は44枚のスライドを使い、事件の基礎知識と第3次再審開始のためのポイントをわかりやすく解説した。(講演要旨別掲)
石川一雄さんと早智子さんは会場には訪れず、ビデオメッセージで参加した。石川さんは「皆さんがた、暑いなか署名や活動をしていただきありがとうございます。目が悪いので書類が読めないが、鑑定人尋問を実現させたい」。「裁判所へハガキで要請をしてほしい。万年筆のねつ造を明らかにしたい」。「ぜひ声を届けてほしい。お力添えを心から願っています。よろしくお願いします」。

真実を自分で
話したいのだ
 続いて早智子さんが発言。「8月の三者協議で検察は不誠実な態度に終始した。腹が立って仕方がない」。「現調が再び増え始めた。コロナが終わったが毎日緊張の連続だ。石川一雄は皆さんに会うことが元気の源だ。真実を自分で話したいからだ。家に閉じこもっている時とは全然違う」。
 「狭山は60年の闘いだ。6月には51万筆の署名を提出している。10月31日は寺尾判決から50年の節目だ。皆さんに感謝の気持ちを伝えたい。本当にありがとうございます」。
続いて支援団体からアピールを受けた。
 狭山青年共闘会議のAさんは、「青年共闘は20年前に結成され、現調や情宣に取り組んできた。このかん、えん罪や差別問題への世間の関心が高まっていると感じる。来月も情宣を予定している」。
 部落解放同盟都連女性部のBさんが登壇。「各支部の女性たちが次々とマイクを握って訴えた。コロナで声が出せないときは、横断幕を大きく広げてアピールした。地域で、東京高裁前で、夫妻と共に闘ってきた。私たちも高齢化しているので工夫をしながら行動してきた」。
 「『23デー』ではビラの受け取りが良く、自分から取りに来る人もいる。現調も復活した。検察を許せない。大野裁判長の退官も迫る。皆さんもハガキを投函してほしい。共に頑張っていきましょう」。
 清掃人権交流会のCさんが発言した。「この交流会は1998年に結成された。清掃労働者に対する差別問題を出発点にしているが、原点は狭山事件だ」。「現調を27年間欠かさず続けている。今年もやった。私たちの活動の中心はフィールドワークで、映画化された『福田村』にも行った」。「交流会の幹事は20歳代。運動が広がり心強く感じている。石川さんを一日も早く取り戻す闘いに力強く突き進んでいく」。

再審開始決定
を勝ち取ろう
 この後、集会決議案「万年筆インク鑑定と鑑定人尋問を実施させ、再審開始決定を勝ち取るための決議」が朗読され、全体の拍手で採択された。
 部落解放同盟東京都連執行委員長の飯塚康浩さんがまとめの発言をした。「最後まで熱気あふれる集会だった。河村弁護士から何が必要かを指摘された。今日から、一人でも多くの人に狭山事件を知ってもらう。それが高裁に事実調べを行なわせる力になる。10月31日の集会にも参加してほしい。共に頑張りましょう」。最後に桐田達也さんの音頭で「団結ガンバロー」を唱和してすべてのプログラムを終えた。約200人の参加者の強い一体感を感じた集会だった。(佐藤隆)

河村健夫弁護士の講演から

裁判所は「世間の写し鏡」
えん罪も裁判所で作られる
再審開始決定かちとろう


 私は自分が「正しい」と信じたことをそのまま主張できるような仕事に就きたいと思い、弁護士という職業を選んだ。
 狭山事件当時は警察の失態が相次ぎ、「警察は明らかに無能」と世論の厳しい非難を浴びていた。警察庁長官は辞任し、篠田弘作国家公安委員長(当時)は「何としても生きた犯人を捕まえる」と発言。狭山の地元住民の排他的な差別感情もあり、被差別部落への見込み捜査が始まった。石川さん逮捕後は、手錠をかけたままの取り調べや厳しい面会妨害等、今では考えられない違法捜査のオンパレードだった。手拭い、脅迫状、万年筆、指紋など、「石川犯人説」へあらゆる証拠がこじつけられた。
 弁護団は寺尾確定判決を打破するために2022年8月、裁判所に「事実調べ」を請求した。その概要は11人の鑑定人尋問と1件の鑑定要求だ。そのなかでも石川さん宅で発見された万年筆が被害者の物ではないという確固たる証拠と、それを科学的に裏付ける「蛍光X線分析」という方法は、決定的に重要だ。
 万年筆のインクの成分が異なることを、X線を照射して証明するもので、被害者の万年筆のインクからは「クロム元素」が検出されたが、石川さん宅の鴨居に置かれた万年筆からは「鉄元素」しか検出されなかった。2種のインキを混合すると、両方の成分が検出された。これによって証拠の万年筆が被害者の物ではないことが明らかだ。
 裁判所の判断は大衆行動に左右される。カルロスゴーン事件、ロス疑惑などがそれを証明している。そしてえん罪も裁判所によって作られる。裁判所は「世間の写し鏡」である。(要旨・文責編集部)

石川一雄さんと石川早智子さんがビデオメッセージで訴え(9.22)

狭山事件、再審で石川一雄さん完全無罪を(9.22)

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