沖縄報告 軍事化に反対する新たな闘いへ

基地を造らないことが県民の「公益」だ

10月15日 沖縄 沖本裕司

10・12 戦争準備の日米合同訓練反対!

弾薬庫建設・ミサイル配備ゆるさない市民集会に1000人

 「離島防衛」を想定した国内最大規模の日米合同軍事訓練レゾリュート・ドラゴン(不屈の龍)23が10月14~31日、主に九州・沖縄を舞台に実施されている。参加予定の米兵の一部はすでに自衛隊ヘリで石垣に派兵され、陸自オスプレイも初めて石垣に飛来する予定だ。米軍の無人偵察機MQ9部隊の嘉手納基地への無期限配備も開始された。沖縄の軍事化がさらに急速に進展している。
 10月12日、嘉手納基地周辺の住民3万5千人が原告となった爆音訴訟の第3回口頭弁論が那覇地裁沖縄支部で開かれ、「人間としての尊厳があり我慢にも限界がある」「爆音で授業が毎日のように中断している」等の意見陳述が行われた。そして午後4時半からは、日米合同軍事訓練と弾薬庫建設・ミサイル配備に反対する大規模な集会・デモが行われた。主催は実行委員会(嘉手納爆音訴訟団、自衛隊の弾薬庫等建設に反対する沖縄市民の会、ミサイル配備から命を守るうるま市民の会、中退教、中部地区労、沖縄民主商工会、普天間爆音訴訟団など12団体で構成)。会場となったゴヤ十字路のミュージック・タウン前には、「日米合同軍事訓練ダメ!」「基地・爆音をなくせ!」「弾薬庫建設反対」などのノボリを掲げた参加者約1000人が集まった。
 司会は仲村未央県議(沖縄市民の会)。はじめに、集会実行委員会の共同代表4人がそれぞれあいさつに立った。新川秀清さん(嘉手納爆音訴訟団原告団長)は「イクサにつながるヤマトの軍事行動に反対」と述べて、前に並んだ嘉手納爆音の弁護団27人を紹介した。池宮城紀夫弁護士(嘉手納爆音訴訟弁護団長)は「コザ暴動を覚えていることだろう。自衛隊の仕事は国家を守ること。住民を守らない。軍事化に反対する新たな闘いをはじめよう」と訴えた。島袋恵祐県議(沖縄市民の会)は「パレスチナの事態には胸が痛む。双方が自制すべき。対話を通じて解決する以外ない。戦争はダメ。日米による戦争準備の合同訓練は許せない」と糾弾した。山内末子県議(うるま市民の会)は「イヤなことはイヤ。痛いことは痛いと声をあげることが必要。平和の未来に向かうのは大人の責任だ」と述べた。
 そのあと、新垣邦男さん(衆院沖縄2区)が「県民の思いを一顧だにしない政府に対し、心を一つにして闘い抜こう。屋良朝博さんが繰り上げ当選となったので、うりずんの会は5人になった」と述べた。県議会与党議員団の國仲昌二さん(宮古島市選出、立憲おきなわ)は「与那国、石垣、宮古で進む日米の軍事利用。政府の傲慢には限りがない。玉城知事は代執行に対し応訴の決断をした。共にはね返していこう」と訴えた。市民代表としてマイクを取った沖縄市の宜寿次政江さんは「私は息子が一人いる普通の市民。戦争が近づいているようで本当に怖い。命を守りたい」と訴えた。
 集会決議案は嘉手納爆音原告団の福地義弘副団長が読み上げ、会場の拍手で確認した。行動提起はうるま市民の会の宮城英和事務局長が行ない、①日米合同軍事訓練の監視行動、②防衛省に対する面談と抗議集会、③「日米合同軍事訓練ダメ!」のノボリの普及、の三点を提起した。そして嘉手納基地第2ゲートまでのデモ行進に移った。街宣車を先頭に「軍事訓練やめろ」などのシュプレヒコールをくり返す行進団に対して、ゲート通りを行きかう車からは運転席のウィンドウを下げて手を振る姿も見受けられた。

2023.10.12 戦争準備の日米合同訓練反対!弾薬庫建設・ミサイル配備ゆるさない市民集会。島袋恵祐県議。

2023.10.12 戦争準備の日米合同訓練反対!弾薬庫建設・ミサイル配備ゆるさない市民集会。ガンバロー。

岸田内閣は沖縄県知事に対する代執行訴訟を取り下げよ!

10・7辺野古ゲート前県民大行動に900人


 10月7日(土)午前11時から、キャンプ・シュワブゲート前で、オール沖縄会議主催の県民大行動が開催され、県内各地から900人が集まった。この間、コロナ感染の広がりや台風襲来のために中止を余儀なくされていたが、半年ぶりのゲート前県民集会とあって、各地の島ぐるみのノボリや「私たちはデニー知事を応援します」との手作りのプラカードなどを手に多くの参加者が詰めかけた。埋立工事現場の大浦湾でも、カヌーと抗議船が「新基地阻止」「違法工事やめろ」などのプラカードを手に海上行動を行った。
 司会は山城博治さん(オール沖縄会議現地闘争部長)。山城さんは、翁長雄志知事がよく口にしていたことに触れながら、「負ケティナイビランドー」と声を振り絞り、「止めよう!辺野古新基地建設」と訴えた。開会あいさつに立った糸数慶子さん(オール沖縄会議共同代表)は、「岸田内閣は県民の声を聞かないで一体誰の声を聞こうというのか。ゲート前座り込みは3380日になった。決して子や孫に沖縄戦の苦しみを味あわせてはならない」と述べた。
 沖縄選出国会議員の集まりである「うりずんの会」からは、赤嶺政賢さん(衆院沖縄1区)が、「うりずんの会には4人の議員がおり、交代で発言している。きょうは私の番だ」と前置きして、「玉城デニー知事の埋立設計変更不承認を取り消した国交相の裁決書を書いたのは国交省の一人の職員だ。これを国交省が認め、最高裁が追認した。公平性と民主主義がどこにあるのか。彼らの言う“公益”は、普天間の固定化であり、オスプレイの配備であり、辺野古の埋立だ。基地は県民の“公益”ではない。知事は勇気ある行動をとった」と述べた。
 県議会与党会派(24人)の県議16人がずらりと並ぶ中、当山勝利県議(てぃーだ平和ネット)が、「国の代執行の訴状を読めば読むほど不条理で、あり得ない。知事を支えて闘い抜く」と決意を述べた。「辺野古新基地建設に反対し、沖縄の自治の底力を発揮する自治体議員有志の会」は19人が前に並び、高山美雪さん(豊見城市議)が代表して、復帰運動当時の歌を歌った後、「私たちは復帰闘争を担った世代ではないが、基地のない平和な沖縄をめざして全力を尽くす」とアピールした。
 「代執行訴訟をはね返そう」と題したミニ講演で、徳田博人さん(琉大教授)は「9月27日、行政法の研究者が国会で記者会見を行い声明を発表した。賛同人は100人を越えた。日本全国の研究者の30%前後を占める数だ。国交相の代執行手続きは公平さを欠いており法理論的にもおかしい。政府は、県知事が設計変更申請を承認しないことを“公益を害する”と言っているが、基地を造らないことが県民の“公益”だ。県民の、県民による、県民のための行政。知事は筋を通して信託を全うしている。オスプレイも軟弱地盤も国は真実を曲げる。しかし、真実は世界を一周する。最高裁の言葉より玉城知事の言葉を信じる。そういう流れがつくられていく」と語った。
 糸満島ぐるみ会議の大城規子さんは「糸満・八重瀬から戦没者遺骨が眠る土砂を採掘し辺野古埋立に投入することは絶対に許せない」と述べ、摩文仁の10・21県民集会への参加を呼びかけた。県議の仲村未央さんは、「嘉手納基地を抱える中部市町村住民は日常的に苦しめられている。国際法の原則である軍民分離がまったく無視されている」と述べ、10月12日の市民集会への結集を訴えた。桜井国俊さん(PFAS汚染から命を守る連絡会共同代表)は「沖縄には素晴らしい自然がある。ジュゴンは辺野古に帰りたがっているのに、基地建設工事が帰れなくしている」と述べ、報道の自由度ランキング60位台に転落した日本のメディアを変える必要性を訴えた。OEJP(沖縄環境正義プロジェクト)の吉川秀樹さんは「知事の声明にほっとした。勇気をもらった」と切り出し、「軟弱地盤改良工事が環境への負荷なく可能、などと言うのは日本政府だけだ。米軍独自の評価は公表されていない。情報公開で明らかにしていきたい」と語った。
 統一連の瀬長和男さん(現地闘争部長代行)は、辺野古ゲート前、海上、本部塩川港、琉球セメント安和桟橋など、辺野古新基地建設を止める現地への結集を呼びかけた。そのあと、「沖縄いまこそ立ち上がろう」を全員で歌い、高里鈴代さん(オール沖縄会議共同代表)が閉会あいさつを行ない、ガンバロー三唱をリードした。

2023.10.7 キャンプ・シュワブゲート前。半年ぶりの第一土曜日県民大行動に900人。自治体議員有志の会。

2023.10.7 キャンプ・シュワブゲート前。半年ぶりの第一土曜日県民大行動に900人。

9・4行政法研究者有志一同の声明(一部抜粋)
 「………私たちは、国土交通大臣に対しては、上記の問題点を孕む本件判決に依拠することなく、憲法の保障する地方自治の本旨や地方自治法の定める原理原則に立ち返り、ただちに代執行手続を中止し、沖縄県との対話によって紛争の解決を図ることを求めるとともに、沖縄県および知事には、辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票(2019年2月24日実施)で示された県民の意思を尊重する立場を引き続き堅持し、仮に代執行手続が続行されたときは、自治の担い手としてこれに正面から向き合うことを切に願うものである。
 呼びかけ人  大田直史(龍谷大学教授)ら13人」

国交相による辺野古埋立代執行訴訟


 政府は10月5日、県に代わって埋立変更承認をするための代執行訴訟を起こした。
 訴状によると、2013年の仲井真知事による埋立承認から、2015年の翁長雄志知事による承認取消し、続く2018年の承認撤回、2021年の玉城知事による埋立変更申請不承認という経過を追いながら、「本件埋立事業が普天間飛行場の危険性の除去等の公益性の高い目的を実現しようとするもの」と繰り返し主張している。
 沖縄防衛局長が2023年4月10日付で国交省水管理・国土保全局水政課長にあてた書面によると、「本件変更承認申請が承認されない状態が続けば、本件埋立事業が事実上停止しかねない状況にある」と危機感を露わにして、「本件変更承認申請を承認しない被告の違法な事務遂行を放置すると、我が国の安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という公益上の重大な課題が達成されず、普天間飛行場の周辺住民等の生命・身体の危険を除去できない上、日米間の信頼関係や同盟関係等にも悪影響を及ぼしかねないという外交上・防衛上の不利益が生ずる」と記述している。
 そして訴状は結語として、「……すでに最高裁判決を経て司法の場で決着済みの事柄であり、それにも関わらず、かかる司法判断にも服さず、依然として本件変更承認申請を承認しないまま放置する被告の違法かつ異常な事務遂行が許容される余地がまったくないことは明白」として、10月20日までに口頭弁論期日を指定し即日結審を求めている。
 厚顔無恥とはこのことだ。「普天間飛行場の危険性」を放置してきたのは他ならない政府だ。「普天間の7年以内の閉鎖・返還」が当時の橋本首相とモンデール駐日大使との間で合意され大々的に報道されたのが1996年であった。この27年間、日本政府は何をしてきたのか。「普天間の危険性の除去は緊喫の課題」と口では言いながら、実際に行ってきたことは普天間の放置と辺野古の埋立である。「普天間の危険性の除去=辺野古埋立」は政府周辺だけに通用する論理であり、破綻している。仲井真知事が埋立承認と引き換えに当時の安部首相と約束した「普天間の5年以内の運用停止」もどこへ行ったのか。「普天間の5年以内の運用停止」などという「甘美なウソ」がなければ県知事による埋立承認はできなかったに違いない。

第1回口頭弁論は10月30日午後2時

 代執行訴訟の訴状は10月10日に沖縄県に届いた。1944年の10・10空襲から79年。のべ1400機、5波にわたる米軍機の攻撃で那覇をはじめ各地が炎上して1500人の死傷者を出した事実上の沖縄戦の始まりの日だ。翌11日、玉城デニー知事は県庁で会見して、代執行訴訟の弁論に自ら立つことを明らかにした。第1回口頭弁論期日は、10月30日午後2時、福岡高裁那覇支部で開かれることが決まった。知事は「国の主張と県の主張があまりにも食い違う。県民の受忍限度をこえている状況をこれ以上さらに押し続けさせるわけにはいかない、という現状に鑑みた結果、承認する立場には立てないため応訴する」と決意を述べた。地元紙も「当然の結論だ。堂々と不条理を問うべきだ」(琉球新報2023・10・13社説)と玉城知事を応援する主張を展開した。10月30日、裁判所に結集しよう!
 県民の多数は知事の決断を支持している。県民にとっての「公益」は辺野古に基地を造らないことだ。では、宜野湾市民にとってはどうか。宜野湾市民にとっての「公益」は普天間飛行場の運用停止と返還を早期に実行することであるが、そのために行なうべきことは、早朝深夜の飛行禁止、外来機の飛来制限、オスプレイの撤去などであって、辺野古に新基地を造ることではない。米軍基地の自由使用を認めた上に、米海兵隊と陸上自衛隊が共同使用する辺野古新基地建設を強行する日本政府が沖縄を軍事植民地として固定化し続けている元凶なのだ。
 また知事は、「行政の長として法を守る立場」と「政治家として選挙で民意を託された立場」とを「いろんな角度からさまざまな意見をもとにして考えた」とも述べた。
 かつて翁長雄志知事は、2016年の最高裁判決の際、行政の長として最高裁判決を受け入れ、埋立承認取り消しを自ら取り消した歴史がある。翁長知事は日本の司法・行政を最後の一線で信頼しなければならないと考えていたのだと思う。ところが、日本の司法・行政を担っているのは、翁長知事の誠実さに反して、法を捻じ曲げて恥じない鉄面皮な人々だったのである。以来7年。沖縄の闘いは、県民投票などを経てさらに強くなった。民意こそが政治家としても、行政の長としても拠り所にすべきものだ。最高裁判決は5人の裁判官が決めるものに過ぎない。数十万人の意思が持つ価値に及ばないことは当然だ。
 県民はもはや、かつて天皇制下で屈服に甘んじた戦前の県民ではない。県民は決して屈しない。11・5オール沖縄会議主催の3000人県民集会、11・23沖縄を戦場にさせない県民の会の1万人大集会へ向かって進んでいく。米軍政に対する長い抵抗闘争と復帰運動を闘い、施政権の返還後も日米両政府に対し、軍事基地に反対し平和と自治と豊かな暮らしを求めて闘い続ける県民の底力を軽んじるべきではない。米軍政末期・復帰前夜のコザ反米暴動のように、あるいは、1995年以降に何度も行われてきた10万人規模の県民大会のように、何かのきっかけで、県民の反感・不満と怒りが爆発しうるのである。

週刊かけはし

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