原発・核燃からの撤退を
脱原発政策実現全国ネットワーク関西・福井ブロック主催
【大阪】脱原発政策実現全国ネットワーク関西・福井ブロック主催の集会が9月18日、大阪ドーンセンターで開かれた。大阪平和人権センター、原発反対福井県民会議が共催し、「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク、緑の大阪が協賛した。
池島芙紀子さん(ストップ・ザ・もんじゅ)が開会のあいさつをし、東海村再処理工場で事故が起き、高レベル廃液の冷却が止まるとどのような事故になるのか、40年前の高木仁三郎さんの警告を紹介。東京から大阪の向きに秒速5mの風を想定すると、中部・近畿・中国・四国と九州の半分が100mシーベルト以上に被曝し、全域が避難区域となると警告している。続いて大島堅一さん(龍谷大学政策学部教授、岩波書店「原発のコスト」の著者)、内藤新吾さん(日本福音ルーテル稔台教会牧師)の講演と鴨下美和さん(いわき市から東京に避難)の報告があった。
大島堅一さん「原発・核燃は時代おくれだ」
大島さんは、岸田GX政策がいかに時代おくれかを講演した。
①岸田政権の原子力政策の転換
岸田首相は、経済社会全体の改革つまりGX(経産省の政策用語)を実施するため、わずか6人ほどの閣僚だけでGX実行会議を開き、原発の再稼働、運転期間の延長、新型炉の開発と建設の指示をした。そして今年2月、GX実現に向けた基本方針を策定し、今年の通常国会で関係法が成立している。この原発回帰の理由付けは、需給ひっ迫・気候変動問題、価格高騰だ。
② 電力需給逼迫
この電力ひっ迫の原因は、電力需要が低い梅雨明けに、記録的な猛暑という既設外れの異常気象の発生であって、原発が停止していることと何の関係もない。この10年に1回という事態の数十時間程度のことに対処するのに、原発を再稼働する必要はない。今年の夏は記録的な猛暑だったが、電力ひっ迫は起きなかった。
③電気料金と原発
価格高騰の理由には、電力市場の設計問題がある。大手電力会社は、電源の8割以上を所有している(寡占)。通常は内部取引を優先し、余分な電力を発電しない。したがって、電力市場に電気がまわらない。だから、ひっ迫した時、電力市場での電力価格が高騰する。そこにウクライナ戦争が勃発し、燃料の高騰などで電力価格が一層高騰した。これに対する対策は、全発電量を市場に供出する必要がある。したがって、価格高騰も原発が停止していることと何の関係もない。
福島事故後(2011年~2022年)の原発のコストは、原子力発電費(20兆円)+ 国費投入(5・3兆円) + 事故対処費用(廃炉費用8兆円)で、約33兆円である。これが福島原発事故後に原発にかかっているコストだ。実は、さらにここに放射性廃棄物処理費が加算される。これらのコストはすべて電気料金で賄われるから、原子力は電気料金の底上げに貢献したと言える。
原発再稼働すると、火力燃料費が大幅にいらなくなるので、確かに電気料金は安くなるように見える。しかし、今後発生する原発事故費用と原発政策費用が必要だ。福島原発事故による負の遺産は、福島原発の燃料デブリを始めいろいろあるが、低レベル廃棄物だけでも28万2068トンと膨大だ(日本原子力学会のデータ)。事故が起きる前に予想されていたのはわずかに200トンであるから、事故によって1400倍増加している。
④戦争と原発
戦争中も原発は稼働しているが、武力攻撃に耐えうる原発は存在しない。日本は沿岸に立地が集中しており、特に六ヶ所再処理工場には、大量の放射性廃棄物がある。原発に対する攻撃の影響について、外務省国連局軍縮課長は次のように言っている、「原子力施設に対する攻撃が行われた場合の影響を知っておくのは必要不可欠であり、かかる観点から、日本国際問題研究所に対して、この分野の委託研究を依頼した」と。
⑤GXは原子力産業保護政策
2020年度、電力供給面で見ると再エネは約20%、原発は3・9%(その後再稼働で少し増加)で、原子力はベースロード電源ではない。2021年第6次エネルギー基本計画の2030年度目標は、原発を20~22%としているが、電力広域的運営推進機関の2023年度供給計画とりまとめでは、原子力6%、2032年電源構成で原子力は5%となっている。
原子力産業は存続の危機に瀕していて、原子力事業では撤退が相次いでいて、再処理は破綻している。なのに、GX推進法とGX脱炭素電源法が成立した。これは何を意味するのか。
それは、国家による原子力産業保護を規定したものだ。
原発の設計寿命は40年とされていた。そのために、原発の運転は、原子力規制委員会が所管していた。それを、運転期間を定める主体を経産大臣にした。原子力基本法を改定し、「原子力事業者が安定的にその事業を行うことができる事業環境を整備するための施策」を行うとしている。つまり、原子力産業の永久化をめざしている。新設・リプレースを問わず、長期脱炭素電源として原発を指定する。巨額の初期投資の回収を可能にする。100万キロW原発なら1000億円が毎年払われる。原子力の役割は非常に小さくなっているのに、エネルギー政策の中心に位置づけられており、気候変動対策の妨げにもなっている。
原子力を増やすとCO2が減らない。それは、原子力発電と再エネの利用は相互に矛盾するからだ。原子力には時間がかかり、気候変動対策に間に合わない。
原発が新設されると、22世紀、23世紀の未来を縛ることになる。例えば、新規原発建設(2025年)、運転開始(2040年)、運転終了(2100年)、廃炉完了2130年。放射性廃棄物処分(?年)。さらに、原発の倫理的欠陥・原発の「無責任構造」・原発の「不可視の構造」(福島原発事故ですら全容が把握できない)。原発ゼロ社会を実現しよう。ドイツは、次世代に負の遺産を残すべきではないとの考えに基づき、今年、脱原発を完了した。このような倫理的な視点も重要である。
大島堅一さん
鴨下美和さん「原発事故は身も心も生活も破壊する」
鴨下さん家族5人はいわき市から東京に避難し12年になる。ずーとローンと固定資産税を払い続けてきたいわきの自宅を昨年手放した。行く度にセシウムが検出され落胆した。いわきに家を作ってからは、毎月届く「アトム福島」に目を通していた。原発の周辺地域に与える放射線の線量が年間0・025シーベルト以下の目標が設けられていて、実際は0・001シーベルト以下に管理されている、年間1mシーベルトどころかその千分の1だと書かれていた。原発事故以降、そんな数字はなかったかのように消されれしまった。2011年3月の空間線量は23μシーベル毎時と報道。年間換算で200mシーベルトを超えている。避難指示が出された範囲は、実際の汚染に比べ非常に狭い範囲だった。鴨下さんらは、まるで偽避難者だと言わんばかりに大声で罵られたり、避難先から出て行けといわれたこともある。罹災証明書がないことで、病院の診察を断られたことも。いわきから来たというと、ボランティアも離れて行った。事故当時8歳だった息子は、今年20歳になり、法廷で意見陳述をした。母親にも言えなかったいじめの数々を涙ながらに訴えた。原発被害者の受けた傷はいまだに生傷のママだ。いまだに安心して暮らすことができない。2011年、賠償金が出ないので、夫はいわきに戻って業務を再開したが、携帯しているシンチレータの甲高い音が鳴っていた。夫は、土日を使って250km離れた私たちに会いに来てくれたが、夫が痩せていくのが分かった。
4歳の次男は父親がいわきに帰ると、布団の中で泣いていた。福島で生活している友人や子どもも被曝が原因と思える病気で苦しんでいたが、福島県内では言えない、けど県外に避難している私には言えると話してくれる。これこそが原発被害だ。先月いわき市に帰ったとき、駅前のスクリーンから、いわき市民の急性心筋梗塞死は全国平均の2倍だという声が聞こえてきて驚いた。いわき市は、市民の運動不足のせいだときめつけているが、本当か。原発から北西に周囲30kmの狭い地域しか避難指示が出なかったため、避難した人がみんな自主避難者と呼ばれ、ないものを怖がるヒステリックな人たちと蔑まれた。(汚染マップを見ながら)ヨウ素の汚染は北西方向だけでなく南にも広がっているが、いわき市の方は観測データがない(測定ヘリが飛ばなかった)ので、汚染マップに色が付いていない。避難指示は政治的に決められた感じがする。私のように被曝の実態を訴える者は風評加害者とよばれる。それを先導しているのがこの国だ。本来責任をとるべき者を免罪してしまう。恐ろしいすり替えだ。避難していることを隠して生活している人もいる。この国を訴えた原発被害東京訴訟の判決は12月26日だ。 最後に、鴨下さんの息子さんのビデオアピールがあった。
鴨下美和さん
内藤新吾さん「原発と核問題」
米国の歴史学者ガー・アルベロビッツは、『原爆投下決断の内幕』で投下は戦争終結のためではなかったことを明らかにした。原爆投下で采配を振るったのはルーズベルトやトルーマンではなく、国務長官のバーンズだった。彼の背後には巨大な財界がいた。バーンズは政界から身を引いて、巨大財閥モルガンの重役に収まった。原爆は、政治主導ではなく、財界の軍需関係が主導していた。ウラニウムは自然界にはわずかにしか存在しない一方、プルトニウムは原子炉さえ用意できれば簡単に作れる。しかも核分裂で放出される中性子がウラニウムの1・5倍だから、プルトニウム型原爆が本命となった。米国が原発を売ることにした理由は3つ。1つ、核兵器を売り、技術とプラントを維持するのはお金がかかるか借りすぎる。そこで、原発を売ることにした。買う国には核兵器を作らせない約束をさせた。2つ、すでに開発ないし開発中だった大国以外の核拡散を防ぐために。3つ、核兵器に対する核アレルギーを和らげるため、まず日本に売る、である。日本は当初から、原爆開発の野望を持っていた、原爆投下に抗議したのは、戦後直後の鈴木貫太郎だけだ。原子力予算の議案提出をした中曽根康弘はその時、原子力兵器を使用できる能力を持つことが先決問題だと述べている。
核武装と核商売をめざす財界
岡倉古志郎は、原子力産業は表の顔で、裏の顔は産業だと言っている。核武装論者の中西輝政は潜水艦に核を搭載すればという。NHKの日高義樹は、核兵器を持つかどうかは日本次第、すでに米国は認めている、というキッシンジャーの話を紹介している。核武装論者の本もいろいろ出ている。日本が核燃料サイクルをやめない理由は核武装のためだ。プルサーマルは、本命の高速炉が復活するまでのつなぎだ。ある外務省幹部が1992年の朝日新聞の取材で、「日本の外交力の裏付けとして、核武装選択の可能性を捨ててしまわないほうがいい。核保有の能力は持つが、当面、政策として持たないという形で行く。そのためにもプルトニウムの蓄積とミサイルに転用できるロケット技術を開発していかなければいけない」と、取材で言っている。
核武装は、法的にはどうか。以前の国会で、核武装に関する野党の質問に、与党は「自衛のためなら、小型の核兵器を持つことは合法であると言っている。ではなぜ持たないのか。それ同盟国に売ることまで考えて、改憲が必要だからである。憲法9条の精神が、どんなに捻じ曲げて解釈しても、核商売までは絶対に許せないからだ。政府と財界は長年、核武装と核商売というゴールを目指し、改憲を狙ってきた。しかし今、ゴールそのものをなくせる時代に来ている。あと一歩のところだ。六ケ所再処理工場を廃止すれば、国が長年持ってきた野望も果たせなくなる。そういうわけで、原子力行政を問い直す宗教者の会のなかまが母体になり、「宗教者・信仰者が核燃サイクル事業廃止を求める裁判」を日本原燃・六ケ所処理工場相手に東京地裁に提訴した。注目と支援を!。
最後に、国会議員アピールとして、大椿ゆうこさん(社民党衆院議員)、宮本岳志さん(共産党衆院議員)、大石晃子さん(れいわ新選組衆院議員)からあいさつがあり、辻元清美さん(立憲民主党参院議員)のメッセージ紹介があった。また、浅石紘爾さん(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団代表)からのメッセージ紹介があった。 (T・T)
内藤新吾さん
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