10.21 2023秋・関西のつどい

止めよう 戦争への道 めざそう アジアの平和

 【大阪】関西のつどい実行委員会(呼びかけ:大阪平和人権センター・しないさせない戦争協力関西ネットワーク・戦争をさせない1000人委員会大阪)主催の、止めよう!戦争への道・めざそう!アジアの平和2023秋・関西のつどいが10月21日、エルおおさかシアターホールで開かれ、500人超の人々が参加した。
 司会は関谷和人さん(全港湾大阪支部)。主催あいさつは米田彰男さん(平和人権センター理事長)。米田さんは、日本が戦争できる国に進んでいることを指摘し、「若い人たちと共にこの流れを止める運動に取り組みたい」と語り、最後に、辺野古埋立てでの最高裁判決について玉城デニー知事のコメント(判決に従わず、沖縄県民の立場に立つ)を紹介した。
 続いて、布施祐仁さん・山城博治さんの講演に移った。

布施祐仁さんの講演から


 布施祐仁さんは、20年ほど安全保障の問題を取材してきたフリージャーナリスト。2016年の自衛隊南スーダン派遣部隊が作成した日報の隠蔽を告発し、稲田朋美防衛相辞任のきっかけをつくった。「岸田大軍拡の本質を暴く」と題して講演をした。

3文書の基調は米国の国家安全保障戦略

 今大阪と言えば万博。当初決めた予算がどんどん増えていく、辺野古埋立ても全く同じ、また防衛費も同じだ。43兆円では済まない。自民党政調幹部は、「2割は確実に上回る」と断言。国防族からは、「足りなければ社会保障費を削るなど、政府全体で財源を出せばいい」など増額要求も出ている(9月2日北海道新聞)。岸田軍拡の根拠は2022年12月16日の防衛3文書だが、その1年ほど前の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、【日米の戦略を完全に整合させ・共に目標を優先させる】ことで合意している。さらに2カ月前の2022年10月、バイデン政権が「国家安全保障戦略」を発表した。ここでは、中国を唯一の競争相手と規定し、この相手に打ち勝つために国力のあらゆる要素を活用すると述べ、米国の力の基盤への投資・強力な国家連合の構築・米軍の近代化と強化を基本に、中国に対する永続的な優位性の維持を優先すると明記されている。

前線は自衛隊が担い、基地を強靱化

 2020年4月米国インド太平洋軍が米議会に提出した報告書によると、第1列島線沿いに同盟国が地上配備型ミサイルを増強し、精密打撃ネットワークを必要とするとある。有事の時は、この第1列島線上に築かれた「ミサイルの壁」により中国を封込める戦略:遠征前進基地作戦をとる。米海兵隊は南西諸島の島々に分散して臨時の軍事拠点を置き、そこに対艦ミサイル部隊を展開、海兵隊は島から洋上の中国軍艦をミサイルで攻撃、自衛隊がそれを支援する。また、中国本土へのミサイル攻撃も行う。
 中国のミサイル攻撃を回避するため、在日米空軍・海軍の主力(アウトサイド部隊)は一旦日本から脱出し、中国のミサイルの脅威圏外へ移動。中国のミサイルの射程圏内で戦う部隊(インサイド部隊)は、自衛隊が担う。
 日本も長射程ミサイルを大量取得する。現在の射程200キロから1000キロ以上に変更。
 高速滑空彈は射程1000~2000km。極超音速誘導弾は射程2000~3000km。米国から、トマホーク(海上発射式)も400発購入する。インサイドで戦うことになる自衛隊の基地はミサイル攻撃を受けても継戦できるように、5年間4兆円で強靱化するとしている。

ASEAN(東南アジア諸国連合)

 台湾有事は起きるのか。中国の基本方針は平和統一。「台湾独立」は武力行使してでも阻止する方針だ。台湾有事を阻止するには、台湾が現状維持を継続すること。米中間の緊張を高めないことだ。インドネシアのルトノ外相は、「世界戦争を防ぐもう1つの選択肢は、ゼロサムではなく、ウインウイン、競争ではなく協力、封じ込めではなく包摂のパラダイムだ」と述べている。ASEANは独自のインド太平洋構想を持っている。競争ではなく対話と協力のインド太平洋を目指す。誠実な仲介者であり続ける。
 冷戦期の東南アジアは域外の大国の代理戦争の草刈り場であったが、ベトナム戦争終結後は、平和共存を目指す。対話により、アジア太平洋地域の紛争を予防する目的でASEAN地域フォーラムを開始し、2005年に東アジア首脳会議を開始した。長期的には、「東アジア共同体」を展望する。
 「東南アジアはアジアのバルカン半島として、分裂と戦争の発信源だったが、今や地球規模の紛争を平和的に解決する発信源の1つに浮上した」、これは、2015年11月のマレーシアのナジブ首相の発言だ。米国もASEANを無視できなくなっている。

日本の選択が問われている

 「抑止」論を乗り越え、平和だけでなく暮らしを守るために、日本は米国に追随して、大軍拡・日米同盟強化で中国との軍事的緊張を高める方向に進むのか、それとも平和憲法を活かし、ASEANと力を合わせて外交により米中の緊張緩和を図り、戦争を予防する方向に進むのかで、日本とアジア、世界の未来は大きく変わる。
 フィリピンの「二重外交」は示唆に富んでいる。フィリピンは、最近は米国に接近しているように見られているが、マルコス大統領は2023年1月のダボス会議で述べている、「象が互いに争えば敗者になるのは草だけ。われわれは、踏みつぶされたくはない。・・フィリピンが軍備を増強する意味はないと信じている。・・重要なことは、解決策は軍事的なものではないということだ。なぜなら、このままでは最悪な結末を迎えるからだ」。
 沖縄県の翁長知事は、「沖縄は『平和の緩衝地帯』として貢献したいと考えています。沖縄が、日本とアジア、日本と世界の架橋となる役割を存分に発揮していく。そんな時代が来ることを私は夢見ています」と『闘う民意』で述べている。また、玉城デニー知事は「独自の地域外交でアジア太平洋地域の平和構築に貢献していく」と述べ、地域外交室の設置を表明している。

日本は独自のアジア外交を

 日中国交正常化(1972年9月29日)を実現した田中角栄首相は、1972年11月9日参議院予算委員会で「アメリカと中国の間で何でも話していただいたらどうですかと、中国と日本はまた正三角形で何でも話しをいたしますと、そうすることが平和に寄与することでございますと、(北京では)こういう話し合いをしたわけでございますから、封じ込め政策などということをやったときから考えると、今昔の感にたえないぐらい緊張緩和ということだと思います」と述べている。田中角栄に米国は激怒したといわれるが、日中国交正常化の6年後、日中平和友好条約(1978年8月12日)がつくられ、日本国民の多くは日中国交正常化を支持した。そして、やがて米国も1979年米中国交正常化を実現している。国民が支持すれば独自の外交を展開することはできるのだ。

布施祐仁さん

山城博治さん

山城博治さんの講演から

 講演の2人目は山城博治さん。元沖縄平和運動センター議長、現在は、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会共同代表。講演テーマは「止めよう!沖縄・南西諸島の軍事化」。
 
玉城デニー知事を支えよう
 
 9月4日、辺野古埋立てで沖縄県が国の指示の取り消しを求めていた訴訟の最高裁判所判決があり、沖縄県の請求は棄却された。軟弱地盤があり、工事は環境負荷が大きすぎる、20年30年海が汚され、その間普天間基地の危険性は継続する。このような基地建設は承認できないとする県の判断に触れることなく、辺野古が唯一という国のいうことが正しいとした判決。沖縄の認識でいえば、国会・司法・政府の3権は一体の権力だ。国は、デニー知事に対し「裁判所の決定に従わない違法な知事」と呼ぶ。私たちはデニー知事を支持している。安保関連3文書では島々の港や空港を軍事利用すると明記されているのに、反対を表明しない知事をわたしたちは批判してきた。日米地位協定がある以上仕方がないと県知事や県の幹部がいうのには腹が立った。現在、共同軍事訓練が九州沖縄でやられている。島々の港に米軍艦船が入っている。だんだん分かってきたが、事務方の認識と、政治家としてのデニー氏の認識が引き裂かれていた。事務方はいつでも国のいうままだが、予算等で国に頭を下げるのも彼ら。知事は、判決が出てもそれには従えないと言った。そして、中国に行って、沖縄は平和友好で行きたいという意向を伝えた。地域外交室を設けて活動しようとしている。そのような知事に政府もマスコミも束になって襲いかかってきている。代執行に向け30日から裁判の口答弁論が始まる。このような国の蛮行を許さない声を全国で上げてほしい。
 
これは米国の陰謀だ 
 
 沖縄戦では、住民を助けてくれず、避難壕から追い出し、そこに雨あられと砲弾が撃ち込まれた。その後は27年間米軍に放り投げられ、復帰後は沖縄県民に謝罪の言葉もなく、それから50年、基地はいらないというのに基地をつくる、地位協定は変えてくれない、そして今、新たに戦争の準備をする。与那国では、戦争が近づいているなら、逃げられる準備やシェルターはあるのか。住民との間で、そのような交渉がされているようだ。町長は、出て行くというなら、いくらかは資金出すから行きなさいと。なぜわれわれの島々が戦場にならねばいけないのか。これはアメリカの陰謀だ。米国がみんなと仲良くし、皆で経済発展できるようにするのが政治だ。それが大国の責務だという認識に立てば、こんな話にはならないはずだ。
 アメリカはいつまでも最強で、台頭する中国を押さえこむのだと思っているからこうなるのだ。軍事同盟なんかいらない。住民に、怖いなら出て行けという。どこに出て行くのか。どのくらいいればいいのか。そこで暮らしはできるのか。帰ってくる島はあるのか。米国は1000億ドルの軍事支援をウクライナとイスラエルにするという。信じられない。もしかしたら世界戦争になるかも。自分たちはやらずに、日本にはやれやれという。沖縄の海兵隊は皆逃げ、安全な後方から指示をする。この米国にのうのうと従う安倍・菅・岸田。どんなに看板が変わっても中身が変わらない。こんな有様だから、本当に私たちは奮起しなければいけない。
 
再び戦場にさせないために

 敗戦後27年の期間の復帰運動。復帰が両3年で実現すると決まったのが1968年だった。その両3年まで祖国復帰だと叫んでいた。ところが、核もあり、基地はそのまま、地位協定で日米共同支配だということが分かったとき、これはまずいと思った。復帰51年の今、再び戦場がやって来ようとしている。どうして、こんな国を祖国だといってきたのだろう。この国は祖国たり得るのか。怒りが沸き上がる。声を上げよう。こんな国の餌食にされるわけにはいかない。自衛隊も住民を守らないだろう。逃げようがない。
 この7月に沖縄を再び戦場にさせない県民の会を立ち上げた。オール沖縄会議という立派な組織があるのになぜ別の組織をつくるのか。いわれていることは分かるが、オール沖縄会議は辺野古基地建設反対の組織だ。宮古・石垣・与那国に基地建設が進んでいる。中国は脅威だという宣伝が広がっている。辺野古のことで頭がいっぱいになっているとき、その裏から自衛隊がどんどん入ってきた。これについても声を上げないといけないと思った。

まさか・・と思ったら行動を

 与那国の港に2007年に米軍の掃海艇が入ってきたとき、座り込んで上陸を阻止した。そのときに、町長に「彼らは友好親善で水の補給できているのに、なぜ帰れというのか。帰るのはお前たちだ」といわれた。その町長が与那国の自衛隊基地建設に賛成するのだが、「そのときはまさか中国とミサイルを撃ち合うような戦場になることは考えてもいなかった。沿岸警備隊のようなものなら置いていいだろうと思っていた」と言った。民主党政権時の防衛大臣だった北川さん、与那国の自衛隊基地開設を求めた張本人だが、テレビの取材に答え、「まさか自民党政権が、敵基地能力だといってミサイルのような兵器を置くとは思わなかった」と発言した。そう思うのなら、東京に行って、デニーさんを攻撃するのではなく、軍拡を止めるようにいうべきだ。自民党にも立憲民主党にも。田中角栄さんのことは今は評価しているが、当時は金の田中と言われ批判されていた。米国を越えて中国と仲良くしたから、ロッキード事件で告訴され志半ばでたおれた。鳩山首相は、辺野古基地は最低でも県外といって、変人扱いされ、政界から追放された。沖縄慰霊の日に総理を迎えるときの翁長知事の眼光鋭い表情には鬼気迫るものがあった。米国に抵抗した政治家はみんなこうなる。でも、そういう政治家を支えきれなかった私たちが悪い。
 
11月23日県民大会、若者が中心に
 
 11月23日に大きな県民大会を持つ。辺野古を支えていた人たちからどの程度理解が得られるのか、それがカギだ。オール沖縄の代表もあいさつをすることになった。辺野古の闘いもがんばる、与那国・石垣・宮古の闘いもがんばる。そのような考えで、23日は全国集会と銘打ってやる。全国交流集会も持つ予定だ。沖縄では20代30代の若者たちが動き出している。沖縄の市町村議員800人のうち、120名の有志の議員が集まって、辺野古新基地建設に反対し、沖縄の自治の底力を発揮する有志の会もたち上げた。30代40代の若手が中心、学生たちも入ってきた。いつまでもわれわれの世代で運動を仕切ろうとするのは間違いだ。若者に譲ろう。君たちが好きなようにチラシもつくれといって、できあがったのがこのチラシ。一見して何のチラシかよく分からない。チラシに魚の絵がある。小魚たちが集まって大きな魚に対抗していくという絵であるらしい。一人一人は弱いが、団結して、日米の巨大魚に対抗しようという絵だ。どうか皆さんも参加してほしい。

 講演が終わり、集会のまとめは垣沼陽輔さん(しないさせない戦争協力関西ネットワーク共同代表)。「ウクライナ、ガザで突然戦争が始まって、多くの民間人や子どもたちが死んでいく。こんな世界を許さないと声を上げる必要がある。11月3日の憲法集会にも参加を。大阪から反戦平和の声を上げることは大事だし、万博IRでは軟弱地盤に建設するために1・9倍もの建設費がかかる。万博には断固反対していく」と述べ、デモ行進の説明を行った。
 集会後、扇町公園までの道順でシュプレッヒコールをしながらデモ行進を行った。      (T・T)

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