10.31狭山事件の再審を求める市民集会
無実を叫び60年!東京高裁はインク鑑定の実施を!事実調べ・再審開始を!
石川さんは完全無罪だ
【東京】10月31日午後1時から、東京・日比谷野外音楽堂で「無実を叫び60年!東京高裁はインク鑑定の実施を!事実調べ・再審開始を!」狭山事件の再審を求める市民集会が同実行委の主催で行われ、全国から部落解放同盟をはじめ、労働組合、市民団体が集まり会場を埋め尽くした。
集会の前段に「ジンタらムータ」楽団によるラテンアメリカの抵抗歌を中心に素晴らしい歌と演奏が披露された。西島藤彦さん(部落解放同盟中央本部委員長)の開会のあいさつの後、立憲民主党、社民党、れいわ新選組のあいさつと参加した議員が紹介された。
石川一雄さんの訴え 大野裁判長は再審の決断を
割れんばかりの拍手に迎えられ、再審請求人の石川一雄さんと連れ合いの早智子が発言した。
「よる年波により、意思はあるがたとえ命限りがあっても、この再審で無罪獲得までは石川一雄は死ねません。桜井昌司さんが一人で逝ってしまった。私は非常に残念だ。千葉刑務所で15年間、いっしょにいた。彼とこそこそと話をしながら、お互いに頑張ろうとそういう精神でいた。今の大野勝則裁判長はどのような結論を出すか分からない。最低でも事実調べをやる、何のために三者協議に出ているのか、そうしたことの苦言をていしたい。この12月に退官するが次の裁判官に託すとしても、長年三者協議に参加していたわけだから、弁護団から多くの証拠が出ているのは当然知っているはずだ。できれば職権で再審決定を出してもらいたい。裁判所に対して、要請行動を起こしていただきたいと心から願っている」。
連れ合いの早智子さんの発言。
「事件発生から60年、寺尾不当判決から49年、半世紀になる。84年の石川一雄の人生の中で一番悔しいのが10月31日の寺尾判決の日だと本人の口から聞いた。2009年12月、門野博裁判長は8項目の証拠開示勧告を出した。本当にうれしかった。大きく動く、これで勝ったと思ったがそれがなかなか動かない。開示勧告を出した2カ月後の2010年2月に退官した。大野裁判長は12月に退官だがまだ時間はある。無実の証拠はそろっている。大野裁判長の決断を信じたい。袴田さんは10月27日、静岡地裁で再審裁判が始まった。来年3月に結審し、5月以降に再審無罪判決が必ず出る。もうこれ以上袴田さんの人生を翻弄するのはやめて欲しい。次は狭山だ。何としても第三次再審を動かしたい。石川が生きて元気の間に無罪を勝ち取り、両親の墓にも手を合わしたい」。
狭山弁護団の竹下政行さんが新証拠を作成した11人の鑑定人の証人尋問と万年筆インク資料について、ひとつひとつ丁寧に説明し、石川さんの完全無罪を立証した。
最後の場面がきている
片岡明幸さん(部落解放同盟中央本部副委員長)が基調報告をし、二つの点を強調した。
「一つは第三次再審の現在の状況について。最後の場面を迎えている。決戦の時がきた。昨年8月29日に、再審弁護団は東京高裁に対して、鑑定人の尋問請求を行った。中でも万年筆のインクについては直接、裁判所が職権でもって、実際に鑑定をやってくれという内容の請求を出した。予想をしていたが検察側は鑑定人尋問に対して、いちいち11人全員について、そんな尋問をする必要はない、鑑定なんてやる必要がないと反論の意見を出してきた。それに対して、検察の意見は科学的裏付けがあるものではないが、弁護団としては改めてもう一回鑑定人の尋問は必要だと今年に入って作成し提出した。これが現状だ」。
「この上で、裁判所がどう判定するかという時点に立っている。いくつか選択肢がある。一番考えられるのは、検察側が引き伸ばしのために再反論するということが非常に高い。裁判官の退官も関わっていると思うがもう一回再反論するとなったらこの段階で結論を出すことはできない。それが出てくることを待ったうえで、もう一度判定を下すという構造になるだろう。いずれにしてもそんなに先にはいかない。早ければ次の三者協議で何か動きが出るかもしれない。向こうが再反論しないとなった場合、裁判官がもしかしたら、ここで結論出しましょうかとなるかもしれない」。
「今日の集会は最後の決戦に向けてもう一回、私たちが東京高裁に対して、鑑定尋問をやれ、万年筆のインクについてはぜったいにやってもらいたいと強く訴えたい」。
「二つ目。昨年の8月に、鑑定人尋問請求を出した時、全国一斉に署名活動をやろうと決めた。32県の部落解放同盟や支援団体を回って、最後の時を迎えているもう一回応援してもらいたいということで呼びかけた。その結果、52万余筆が集められた」。
「立教大学の人権講座に石川さん夫婦が招待され、石川さんの話を聞く授業があった。大学生なので二十歳前後の生徒の感想文をもらった。『99%が狭山事件知らなかった。本当にひどい話だ。石川さんの話聞いたら絶対やっていない。検察はなぜ鑑定をやらないのか』という感想ばかりだ。私たちが訴えれば、きちんとそうした反応は返ってくる。当面の活動として署名活動を訴え、狭山事件の真相をいろんな形で、映画の上映、パネルの展示、石川さんを呼んだ講演会を各地でやり、狭山の最後の闘いを盛り上げてほしい」。
袴田秀子さんが袴田再審について報告
次に、「袴田再審に続け 次は狭山だ」とえん罪被害者の皆さんが自分の事件を紹介しながら、国家権力のえん罪事件捏造を厳しく批判し、石川さんに連帯のアピールを行った。
袴田事件で再審裁判が始まった袴田巌さんの姉の袴田秀子さん。
「57年闘ってやっと再審開始になった。弟が30歳、私が33歳の時の事件です。90歳になって初めて、裁判というものに出た。10月27日に第一回の裁判があった。巌が出れないということで補佐人となった。私たちも事件のあった当時は、うちばかりこんな事件に巻き込まれたかと思った。それで何も言えなくて黙っていた。それが今では大勢の方がえん罪で泣いている。巌だけが助かればいいと思っていない。石川さんもそうです。大崎事件の原口アヤ子さんもそうです。皆さん、早く再審開始になってほしい。私たちはともかく来年の3月か4月には結審になる。それで遅くとも夏には無罪がもらえると思っている。石川さんも60年闘っている。何かきっかけがあれば、再審開始になると思う。石川さんも早智子さんも一生懸命がんばっている。ともかく負けてたまるかという気持ちでがんばってきた。これからも共に頑張っていきたい」。
続いて山崎俊樹さん(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会)が、袴田再審裁判を決めたのは裁判所が検察の持っている証拠開示を勧告にしたことにより、袴田さんの無実を証明する味噌樽に付けこまれていた衣類の血痕の鑑定になったこと」を報告し、証拠開示がえん罪事件を晴らすために決定的なことを明らかにした。
足利事件えん罪被害者の菅家利和さん
次に、足利事件えん罪被害者の菅家利和さんがあいさつ。
「石川一雄さんの応援にきた。石川さんは無実、明らかです。先日、袴田巌さんの静岡での初公判に行ってきた。袴田さんの再審が決まり、無罪になる。次は狭山事件の石川さんだ。私が怒っているのは私を取り調べた警察官、検察官そして無実の人たちにも謝ってもらいたい。いまだに謝ってもらっていない。絶対に許さない」。
東住吉事件えん罪被害者の青木惠子さん
東住吉事件えん罪被害者の青木惠子さんの訴え。
「私は1995年7月22日に、家が火事になっただけで、娘殺しの母親という汚名を着せられて、21年で再審で無罪になった。私は高校生の時に、大阪の矢田のグランドに『石川さんを救え』という看板があった。そこで毎日学校に通っている時に、なんだろうと思いながら時間が過ぎていった。私もえん罪に巻き込まれて、それで初めて石川さんがえん罪で訴えていた人なんだと知った。もっと早くに石川さんのことを知っていたら、自分の身を自分で守れたかもしれないという後悔もあった」。
「私はいま59歳だ。石川さんは60年闘っていることは皆さん、60年と口で言っても分からないですけど、私の人生を見てもらったら、60年というのは一人の人間が生まれて、結婚してそして子どもを生んで、そしてえん罪に巻き込まれて、そしてえん罪で闘って、それプラス1年の石川さんの人生。本当にえん罪だけで闘って、人生終わるなんて許せない。ですから一日も早く石川さんも無罪になって、裁判と関係なく、本当に当たり前の人生で心穏やかに過ごしてもらいたい。そのためにも、袴田さんが来年にも、間違いなく無罪になる。その後を追いかけて、石川さんも無罪になる」。
「大崎事件そして獄中にも無期懲役とか有期刑の人もいて、どれだけの人がえん罪で苦しんで獄中で無実を叫んでいるか。これだけの石川さんのように支援者・弁護団がいる人たちはまだ幸せだ。誰もいなくて一人で無実を訴えて、どうすることもできなくて、獄中で苦しんでいる人もいる。そんな人と巡り会って、その人のために支援している。平野義幸さん(よしゆき)という元俳優の人が無実を訴えている。彼も私と同じ放火ですから、初めて面会に行ったときに、『大切な人を殺しますか、青木さんなら分かるでしょう』と言われたときに、私も娘を亡くして、犯人だと言われた気持ちで共感した。この世からえん罪がなくなってほしい。証拠開示、一度勝ったら上訴しない、これが再審法の改正に向けて現実化すれば、いまえん罪で闘っている人は証拠が全部出て、無実が明らかになる。石川さんが勝ち、共に喜べるような日が一日でも早く来ることを祈っている」。
湖東記念病院事件
えん罪被害者の西山美香さん
次に、湖東記念病院事件えん罪被害者の西山美香さんが発言した。
「滋賀県にある湖東記念病院で入院患者さんが亡くなられた事故を事件にさせられて、えん罪に巻き込まれた。狭山事件はまったく知らずにいた。和歌山刑務所でいっしょだった青木惠子さんから、『今日は大阪で狭山事件の集会に行ってきた』という話を聞いた。埼玉県狭山市であったえん罪事件で闘っている人がいると知り、調べてみた。60年前の話で私はびっくりした。そこから青木さんといっしょに関西の集会に参加するようになった。今日もいっぱいの方が支援に来られてうらやましい」。
「石川さんは部落差別ですごいひどいことをされたと黒川みどりさんの本を読んで知った。私の時代は部落の人を差別するとかなかったので、分からなかったけど、おかあさんに聞くと昔はひどかったと言われて衝撃を受けた」。
「石川さんが再審決定が出て、無罪判決もらって、学校にもう一度行って、勉強しなおしたいと言っている。ただ、無罪になるだけじゃなく、きちんと勉強できなかった分、勉強しようとしているところは素晴らしい。えん罪犠牲者の会を桜井昌司さんが立ち上げられた時に、石川さんに初めて会った。早智子さんといっしょに、登場された時は、この人結婚したんだとうらやましく、すごく仲良くていいなと思った。しかし、まだ再審決定も出てなくて、審理中ということで、大野裁判官は12月に代わられる。私の時も、12月に後藤まりこ裁判官が東京高裁に移動になった時に、置き土産に再審決定というすばらい決定を得られたので、石川さんも東京高裁で再審開始決定をいただいて、再びまたいっしょに喜びあえる日がきたらすごくうれしい。私のできることは応援していきたい」。
続いて鎌田慧さん(市民の会事務局長)のアピール、集会アピールが読み上げられ、東京高裁を通り、霞が関を一周するデモで、「再審開始、石川無罪」を訴えた。 (M)
左から菅谷利和さん、袴田秀子さん、石川早智子さん、石川一雄さん、
青木惠子さん、西山美香さん(10.31)
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