11・30 24けんり春闘発足総会・学習集会

ストライキで大幅賃上げ勝ち取ろう!
 全国に幅広い戦線拡大を

労働組合を労働基準を規制する主体へ

 【東京】11月30日午後6時半から、前途に控える24春闘に向け、全労協、全港湾、全造船関東地協労組、民間中小労組懇談会、おおさかユニオンネットワークを代表幹事組合とする「24けんり春闘」全国実行委員会が全水道会館を会場に発足総会を開催、同春闘の開始を確認した。合わせて同春闘の最初の行動として、日本労働弁護団常任幹事の嶋﨑量さんの「岸田政権の労働政策を問う」と銘打った講演を中心に学習集会が行われ、現在日本の支配層が進めようとしている労働規制解体策動への反撃と合わせて、切実な必要となっている労働者民衆の生活立て直しに向け全力で決起する意志を固め合った。

今こそストライキで要求実現を

 発足総会は、同春闘共同代表の渡邉洋全労協議長のあいさつで始まった。渡邉さんはまず、岸田政権が当初所得倍増といっていたものをいつの間にか資産倍増へと言い方を変えたことを例に挙げ、かれらに貧困の構造を変えるつもりがまったくないことを指摘した。そこで労働者の闘いが問われるが、連合要求が定昇込みで5%以上で昨年より高いと報道されるものの、ベースアップ分は平均物価上昇の3%以上に届かず実質賃下げだと批判。さらに問題はいくら要求を高く設定しようが要求に回答が届かない場合に何をするのかがないことと指摘し、全米自動車労組のストライキも教訓に、今こそストライキで要求実現を迫らなければならないと強調した。
 その上で最賃闘争の重要性を強調しその闘いの先頭に立つことを呼びかけた。そして今年全国加重平均で4%弱上がったが依然貧困温存のレベル、岸田が曲がりなりにも1500円/時に言及せざるを得なくなっている状況にさらに追い打ちをかけ、24けんり春闘の基本スローガンに掲げた「どこでも誰でも、いますぐ最低賃金1500円を!」の闘いを積極果敢に広げようと訴えた。
 もう1点の強調点は残業規制。医師、運輸、建設で24年問題などと騒がれていることに対し、この猶予期間で経営も政府も何もやらずにいてライドシェアや万博特例などと言い出す無責任さと安全無視の暴論を怒りを込めて批判、命を犠牲にする資本を絶対に許さない闘いを断固として推し進めようと呼びかけた。

春闘スローガン

 このあいさつを受けて以下の同春闘方針議案が関口広行同春闘全国実行委員会事務局長から提案された。
 まず大スローガンは「★誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を! 雇用/賃金/労働時間/労働環境/社会保障の要求をストライキで闘い取ろう! 軍備増強・改憲阻止!労働者市民の力で戦争を止めよう!」。その下で以下の闘いが3本柱として提起された。
◦貧困と格差の拡大を許さず、生活防衛と権利の向上、大幅賃上げ実現へ! 最低賃金の引き上げ…「誰でもどこでも、いますぐ時給1500円を!」。
 そこでは特に、最賃引き上げに向けた闘いについて、春闘の中から全国的な連携をつくり、労働団体の枠を超えた共同の闘いをつくる必要が強調された。さらに移住労働者の権利実現、同一労働同一賃金、ジェンダー平等の実現、ハラスメント撲滅の闘いを推進し、労働者総体で闘いを広げる春闘の再構築に結びつけることが訴えられた。
◦8時間労働制の破壊を許さない、労働者性の否定を許さない闘い。
 これは後述の嶋﨑量さんの講演と密接につながる問題。「新しい働き方」を謳い文句に狙われている労働基準法制の規制外しを絶対許さない闘いが呼び掛けられた。
◦改憲・軍拡・基地建設を許さない、原発の再稼働を許さない、汚染水海洋投棄を許さない闘い。
 そしてこれらの諸課題を目標に、正規―非正規、フリーランス、自営業など幅広い戦線を全国に拡大し、最低賃金など全国で統一した闘いを作り出し、地域の労働組合、市民運動、立憲野党との共闘を強化して闘い抜くことが呼び掛けられ、この全体は具体的行動方針、組織・体制・財政含め満場の拍手で承認された。なおけんり春闘としての賃金要求は、月額2万5千円以上の引き上げ、時給労働者の場合は150円以上の引き上げ、さらに物価上昇分の上乗せ、が確認された。

労働規制解体の攻撃はねかえせ

 続いて行われた嶋﨑さんの講演では、まず岸田の労働政策が、シェアリングエコノミーを表看板に極めて分かりにくい形になっているが労働規制の緩和路線はしっかり引き継がれていると強調され、十分な警戒が必要と注意が喚起された。特に問題になるのが、各領域に一貫する「不作為・不十分な規制」であり、個別的な問題に規制要求を具体的に対置することが闘いとして重要、と提起された。
 その上で以下の問題が詳細な資料に基づいて解説され、闘いの留意点が示された。
 第1は違法解雇の金銭解決制度。この具体化は今年の骨太方針から落とされているが、資本の要求は変わらず依然着々と検討が進められていることを指摘、特に「労働者に利益になる」との打ち出し、申立は労働者側に限定、で実現に道をつけようとの動きを許さない取り組みを呼びかけた。そして、違法解雇を棚に上げるような「労働者の要求」論のいかさまさを徹底的に批判しつつ、「小さく産んで大きく育てる」という派遣法で露わになった手法を二度と許さない闘いを進めようと訴えた。
 第2は、ライドシェア解禁問題。この問題について嶋﨑さんは端的に「白タク合法化」と本質を明確にした上で、運転手不足の根本原因(劣悪な労働条件)がすり抜けられていることに加え、容易に予想される多くの問題、特に安全の問題がなおざりにされていることを具体的に指摘した。しかもそれらの問題点はすでに多くの海外の先行事例で明確になり、先進国38カ国中30カ国でライドシェアが禁止になっていると明らかにし、「海外では解禁」というようなデマをまかり通らせない反撃を呼び掛けた。
 第3は「新しい時代の働き方に関する研究会」の危険な動き。この研究会は新しい時代に見合った労働基準法制をめざすというふれこみだが、嶋﨑さんは、労働者に代えて「働く人」という用語が多用されていることに象徴されるように、脱法的に広がっている偽装自営を規制するのではなく合法化する観点で貫かれ、新しい状況に必要な規制には言及がない、と厳しく批判した。そして、労働規制の主体、労働者の権利の守り手として、労働組合の役割が切実に問われていると奮起を促した。
 第4は外国人労働政策。まず今進められている技能実習制度改正論議について、人権無視の現状が温存される危険が大きいと、いくつかの問題点を挙げた。そして外国人労働者が現実の日常を支えている実情に立って、労働組合こそ単純労働者の受け入れを正面から議論し、かれらの要求を未来の労組メンバーの要求として労組の要求にしよう、と呼び掛けた。
 この講演に対する質疑では、労働基準法制での厚労省ヒアリングで、基本条項抜き取りの危険指摘に対し厚労省は一貫して答えないことをどう考えるか、との質問が出された。これに対し嶋﨑さんは、厚労省内に賛否があると明らかにした上で、何よりも労働基準法制変更をめざす動きは官僚主導ではないことに注意を喚起した。
 こうして今回の学習集会では、日本の支配層が一貫して労働規制の解体に執念を燃やしていることが示された。その意味で先に紹介した24けんり春闘の3本柱を一体的な闘いとして展開することの重要性が浮き彫りになっだ。

流山サービス分会の全員解雇との闘い

 この講演を受けて、参加労組を代表して、東京清掃労組、全国一般東京東部労組、全統一労組流山サービス分会の3労組が24年の闘いへの決意表明を行った。いずれもこの間の自分たちの闘いを報告した上で、要求を第三者に任せることなくストライキでの闘いを呼び掛けた。特に流山サービス分会の仲間は、経営者一族による資産防衛のための全員解雇攻撃との闘いが進行中であり、闘いで経営に責任をとらせると決意を述べ、合わせて支援も訴えた。
 これらの決意表明に、参加した仲間は連帯と共に自らの闘いの決意を込めて満場の拍手で応えた。そして参加した仲間たちは最後に全造船関東地協労組の宇佐見雄三さんの音頭で団結ガンバローを三唱し、24けんり春闘の本格的組織化開始に向け会場を後にした。

岸田政権を追いつめる闘いを

 生活破壊が日々進行していることを誰もが実感している中で迎える24春闘では、賃金、労働時間を含めた労働基準を労働者が連帯した闘いで規制する力を作り上げることがかつて以上に求められている。特に、エッセンシャルワークでの劣悪な労働条件と深刻な人手不足を放置するような「労働移動による賃上げ」論や「新しい働き方」など、あくまで条件引き上げは自己責任で、を基本路線とする支配層に対し、明確な闘いの対置が不可欠だ。
 今岸田首相は賃上げを連呼し、日本経団連の十倉会長は「今年以上の熱量をもって賃引き上げに取り組んでいく」(11・27記者会見)と応じ、連合芳野会長は「政労使意見交換」後に「政府も企業も組合も同じ方向を向いている」と語り、賃上げのムードづくりに躍起になっている。あたかも労働者は黙って待っていればよいかのようだ。そうであればなおのこと、このような労働者の中から連帯して闘うという選択肢を消し去る仕掛けを打ち砕き、人びとの中に闘いという選択肢を取り戻す春闘に挑まなければならない。
 特に最大労働団体である連合が闘いを放棄している中で、先の挑戦がどのような道筋で可能になるか今明確になっているわけではない。しかし非正規の仲間や、フリーランスと呼ばれている仲間を含め、個別的ではあれ新しい闘いは確実に生まれている。それは今後も確実に続くだろう。また、同じように岸田が賃上げを煽った23春闘が、結局は最低賃金を含め実質賃下げという結果だったという事実も、多くの人々に闘いの必要を薄々感じさせていると思われる。そして24春闘は、岸田政権が深い危機に追い込まれる中の春闘になる可能性が大きい。そうであればなおのこと、労働者の闘いを見えるものにすることの意味は極めて大きくなる。
 それらの可能性を注視しつつ、新しい闘いに機敏に対応し、大胆に連携と結合を作り上げることが求められる。そしてその中で、最低賃金や公共サービス再建や切実に必要な労働規制など、より広い仲間を加えて要求をさらに大胆に練りげ社会的な共有化をめざすことも重要な課題になる。
 24けんり春闘は、広範なナショナルセンターを横断する戦列形成も含めて、それらを内包する闘いを呼び掛けた。さまざまな闘いの現場からこの呼びかけを主体的に押し上げよう。そして自ら労働者民衆の闘いの復権に挑む主体になろう。
(神谷)

 24けんり春闘発足式(11.30)
けんり春闘経団連抗議要請行動(23年2.17)

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