12.7包括的差別禁止法をつくろう
国連・人権勧告の実現を
無視を決め込む日本政府を許すな
【東京】12月7日、国連・人権勧告実現を!実行委員会は、衆議院 第一議員会館 1階 多目的室で「国連・人権勧告の実現を! 〜すべての人に尊厳と人権を〜 第11回 包括的差別禁止法をつくろう〜海外の動向も踏まえて〜」集会を行った。
国連の各種人権条約機関は、日本政府に対して人種差別や性差別を禁止する法律の制定、政府から独立した国内人権機関の設置、国連の人権条約機関への個人通報制度の制定を勧告してきた。しかし、日本政府は勧告を無視し続け、差別による被害を放置し続け、被害者が続出している。実行委は、この現状を変革するために人権問題に取り組む個人や団体が連帯し2013年に発足した。毎年、12月10日の「世界 人権デー」前後に集会を開催してきた。
与党議員の差別
発言許さない
集会は、野平晋作さん(実行委)の開催あいさつから始まった。
基調講演は、前田朗さん(朝鮮大学法律学科講師)が「包括的差別禁止法をつくろう!」をテーマに行われた。
前田さんは、①差別とヘイトの動向②差別されない権利③差別禁止法の必要性④差別禁止法のために─について問題提起(講演要旨別掲/文責編集委)した。
特別報告が①田中宏さん「関東大震災100年の年に」②朴金優綺さん「朝鮮学校差別の今」③織田朝日さん「入管難民法の問題とこれから」④多原良子さん「緊急アピール」から行われた。
最後に集会アピールが提案され、採択された。
集会アピールは、「近年ようやく障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法、アイヌ新法などが制定されましたが、それらは差別を禁止する法律にはなっていません。また、本年改訂された『出入国管理難民認定法』は、一年の経過期間を置きつつも在日外国人労働者への不当な差別のおそれは払拭されていません。性的マイノリティに対する差別禁止法もなく婚姻の平等の法もなく、国際社会からの遅れが際立っています。現状では政府与党の国会議員による民族差別発言すら止められず、ますます差別発言はエスカレートしています。これ以上の差別の放置を許してはなりません」と強調。
さらに「差別解消のために共通する課題の解決にあたっては、個別法に委ねるのではなく、包括的な差別禁止法を制定することが効果的です。個別の差別禁止法と包括的な差別禁止法は『車の両輪』です。マイノリティが差別されない権利の擁護は同じ社会に生きるマジョリティの任務です。差別禁止法の制定のために共に頑張りましょう」と訴えた。(Y)
前田朗さんの講演
マイノリティの権利を保護する包括的反差別法に向けて
2021年9月27日、東京地裁は、「全国部落調査」復刻版出版事件」(鳥取グループ・示現舎による差別〈差別格さん〉)に対して「全国部落調査の公表により結婚や就職で差別を受けるおそれがある」と認め、多くの原告がプライバシー侵害されたことを認定し、「全国部落調査」復刻版差止め、インターネット上でのデータ配布禁止、二次利用の禁止を命じるとともに、被告に対して原告らに448万6500円の損害賠償を支払うよう命じた。
だが判決は、第一に「差別されない権利」を法的保護を受ける権利として認めなかった。第二に部落出身者であることを自ら公表している者(23人)のプライバシー侵害を認めなかった。第三に「全国部落調査」一覧表に直接掲載されていない16県については差止め対象対象から除外した。
23年6月28日、東京高裁は、「全国部落調査」復刻版出版事件」に対する控訴審判決について①全国部落調査」復刻版差止めを認める ②差止範囲を一審判決25都府県から31都府県に拡大 ③「部落解放同盟関係人物一覧」については一審同様に差止めを認めず ④損害賠償について約550万円に増額した。
とりわけ判決は、「差別されない権利」をつぎのように認めた。「部落差別は、……同和対策事業特別措置法による改善があるにしても、差別意識が依然として存在していると確認する。……憲法一三条、一四条一項は、すべて国民は法の下に平等であることをそれぞれ定めており、その趣旨等に鑑みると、人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有するのであって、これは法的に保護された利益であるというべきである」と結論づけた。
そのうえで確認しておかなければならない視点がある。ひとつは国連人権高等弁務官事務所及び平等権トラスト「マイノリティの権利を保護する─包括的反差別法を発展させるための実践ガイド」(2023年)の提起、「被害者中心アプローチ」から「性暴力被害者保護─学んだ教訓」(2018年)(①被害者中心アプローチ ②被害者の特定 ③脅迫、障害者、身体的悪の危険への対応 ③精神的社会支援 ⑤スティグマとの闘い ⑥保護計画の財政確保 ⑦結論)だ。
本来なら憲法一四条に基づいて差別禁止法を制定するべきであった。人種差別撤廃条約を批准した一九九五年に法制定するべきであったのに日本政府は立法を否定した。国際人権機関からの勧告が続いているにもかかわらず、差別禁止法の検討さえしないのはなぜであろうか。植民地主義と人種主義が影を落としているのではないだろうか。
立法事実の検証、国際人権法に立脚した立法の理念・目的の確認、そして差別の定義、差別の禁止、そのための制度設計と機能的な委員会の設置、差別行為やヘイト・スピーチの法的禁止(刑事規制、行政規制、民事訴訟の在り方の検討)、被害者中心アプローチに立った被害者救済制度の創設、さらにはインターネット上のヘイト・スピーチへの対処など、論ずべき課題が多い。
(発言要旨:文責任編集部)

前田朗さんが差別を放置する日本の現状について問題提起
(12.7)
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