辺野古代執行による埋立強行は大浦湾と地方自治の死

辺野古NO! ミサイルNO! 沖縄の島々の軍事基地化を止めよう!

沖縄報告 沖縄 沖本裕司 1.15

 この年末年始の1か月は沖縄基地をめぐって事態が急速に動いた。

辺野古側埋立に5年、代執行による大浦湾側埋立は破綻する

12月14日は2018年12月の辺野古埋立の土砂投入から満5年。辺野古側の埋立予定区域はほぼ完成した。投入された土砂の量は約318万㎥。辺野古・大浦湾の埋立予定総量の約15%にあたる。政府は大浦湾の埋立を9年3カ月で終えるとしているが、最深90m、広範囲に及ぶ軟弱地盤が広がる大浦湾の埋立は最新の土木技術をもってしても困難を極めるだろう。結局、長期にわたる難工事の末、生物多様性の海・大浦湾の生き物を深刻に破壊し、埋立完工のめどが立たないまま中途挫折してしまう可能性が大だと言わざるを得ない。日本の政治の無責任構造から、辺野古新基地建設強行に関わった政治家・役人・裁判官たちは誰も責任をとることなく収拾が図られるだろうことは目に見えるようだ。
 翁長雄志知事の警告がいよいよ現実味を帯びてきている。2015年に埋立承認を取り消した翁長知事は、次のように述べた。
 「おそらく工事はどこかで中断するでしょう。結局、……工事の残骸が残ることになります。日米政府にとって、最後まで基地建設の工事を続けられなかったという意味からすれば、そうした事態は完全な“敗北”でしょう。ではその時、私たちは“勝った”のでしょうか。私たちが守ろうとした大浦湾の美しい海は汚れてジュゴンがいなくなれば、それを“勝利”とは決して言えないと思います。……この工事は誰にとっても“勝ち”はないのです」(『戦う民意』、角川出版)。
 大掛かりに始めてみたものの破綻が明らかな国策を立ち止まり検証することのできないことは、日本の国の持病ともいえる病。国家権力を掌握する政治家・官僚の頑迷さと自己保身を示すものだが、琉球新報2024・1・15は、宍道湖淡水化を40年かかって止めた島根の住民運動を一面トップで紹介し、「諦めないで」とのメッセージを掲載した。

沖縄の自治と民意を踏みにじった代執行


 2014年の県知事選挙で、埋立承認を行なった仲井真知事を破り約10万票の大差で翁長知事が当選して以来、はや10年が経とうとしている。その間、知事選や国政選挙で示されてきた県民の意思は一貫して、辺野古新基地建設反対!埋立ストップ!であった。「辺野古唯一」を掲げて埋立を強行する政府に対し、沖縄県は、県知事の行政権限を行使して、埋立承認取消、埋立承認撤回、埋立変更申請不承認を行なってきた。埋立の許認可権は県知事が有している。玉城デニー知事が埋立変更申請を不承認する限り、政府防衛局は大浦湾の埋立工事に入ることができない。そのため政府は、法律を捻じ曲げ裁判所も抱き込んで、県知事の権限を取り上げて自分勝手に埋立変更申請を「承認」することによって、大浦湾の埋立工事に着手したのである。
 こうした県知事の権限を奪う地方自治法に基づく行政代執行は日本の政治史上初めてとのことだ。自治と民主主義に対する日本政府の反動性が歴史に刻まれることになった。国策に従わない知事の権限を奪い国の政策をごり押しするというのであれば、戦前の天皇制下の任命知事制と内容において何が異なるのか。戦後憲法は戦争放棄と地方自治を唱っているが、現実の政治は戦前の天皇制の遺物を引きずっている。沖縄県と日本政府との非和解的な対立が代執行にまで到ることによって日本の政治の実態が明るみに引きずり出されたのだ。沖縄県民は屈しない。玉城知事の下でさらに結束を強め、辺野古ノー!埋立ストップ!の闘いを強力に進めていくのみだ。

「本土メディアの不作為」について

 琉球新報1月10日付の「記者ノート」欄に、東京支社の南彰記者による「報じない本土の責任は」と題する次のような短文が掲載されている。
 「12月27日夜。視聴率の高さで有名なテレビの報道番組を見て愕然とした。トップニュースは民間デパートの“崩れたクリスマスケーキ”。……“辺野古代執行”のニュースは、約1時間の放送枠で1秒も流れなかった。この日は玉城デニー知事が代執行を巡り、最高裁への上告を表明。“沖縄だけの問題に矮小化せず報道してほしい」と記者会見で訴えていたにもかかわらずだ。番組関係者は“沖縄ごとになっている”と話す。……代執行という異常な先例を許しているのは、99%の有権者がいる本土の情報不足だ。本土メディアもこれ以上、不作為を重ねてはいけない」
 南記者の指摘はもっともだ。しかし、メディアがあまり報じないのは沖縄に関することだけでなく、政治・社会・外交・軍事・国際など国の政策に関する報道全般だと思う。韓国のKBSやМBCの報道番組の充実に比べてみても、NHKも含めて日本のテレビ局は報道番組が圧倒的に少ない。これではものを知り考える国民は育たない。身近なこと、卑俗なことを取り上げ視聴率を稼ぐことがメディアの役割なのか。現状のままでは、メディアが自滅の道をたどり、体制翼賛へと進むことになりかねない。

日本全体と沖縄の島々の軍事主義化の進行

 この1カ月間の動きをざっと見るだけでも、日本全体と沖縄の島々の軍事主義化が急速に進展していることが分かる。一昨年12月、安保3文書の閣議決定という独断的方法で日本の軍事主義化をなし崩し的に進めた岸田の路線が雪崩を打つかのように進行している。今年度の軍事費は2年前に比べて実に1・4倍。攻撃型自衛隊への転換。軍事利用の民間施設への拡大。岸田は、歴代自民党政権の中でも最悪の軍国主義者として現れている。
 こうした一連の動きの中で、辺野古新基地建設・大浦湾埋立のための代執行を見ると、日米同盟の名のもとに、戦争放棄と地方自治を投げ捨て軍事主義へと突き進む日本の姿が浮き彫りとなる。ほんとうに嘆かわしい現実に、決意を新たに立ち向かわなければならない。

1・12辺野古ゲート前行動に900人

 代執行による大浦湾埋立工事の着工が10日に開始されたことに怒りをもって強く抗議し、1月12日(金)午前10時から辺野古ゲート前で、オール沖縄会議主催の県民集会が開かれた。平日の午前中にも関わらず、全県各地から各種バスや乗り合いで約900人が結集し、岸田内閣の埋立強行を糾弾した。
 はじめに、稲嶺進さん(オール沖縄会議共同代表)は「代執行は令和の琉球処分。埋立強行は容認できない」と訴えた。続いて、司会の福元勇司事務局長のリードで、「代執行を止めよ」「工事を中止せよ」とのシュプレヒコール。玉城知事はメッセージで、「代執行による埋立強行は、丁寧な説明という言葉とは真逆の極めて乱暴で粗雑な対応。必然性・合理性のない埋立工事の強行がもたらしている甚大な問題を直視し、沖縄の苦難の歴史に一層の苦難を加える新基地建設を直ちに中止し、沖縄県との真摯な対話に応じていただくよう求める」と述べ、「グスーヨー、マジュンチバラナヤーサイ(皆さん、本当に頑張りましょう)」と結ぶと、会場から大きな賛同の拍手が巻き起こった。
 県庁前でハンストを続ける具志堅隆松さんはネットを通じて、「ハンストは3日目。まだまだ元気。遺骨が眠る土砂を辺野古の埋立に絶対に使ってはならない」と訴えた。国会議員を代表して、赤嶺政賢さん(衆院)と高良鉄美さん(参院)が発言し、「国会の中で皆さんと力を合わせて頑張る」(赤嶺さん)、「辺野古はまだまだ世界で知られていない。辺野古デモクラシーという概念で広げてほしいと言われた」(高良さん)と述べた。市町村議員有志の会は横断幕を掲げて前に立ち、糸満市議の嘉数郁美さんが「民主主義は育てていくもの。知事を支えていく」とアピールした。
 島ぐるみ各ブロックの発言は、北部(本部町の仲宗根須磨子町議)、中部(うるま市の照屋寛之さん)、南部(八重瀬の沖本裕司)がそれぞれ行なった。島ぐるみ八重瀬の会として私は次のように発言した。

 「政府は、沖縄の民意を踏みにじり、代執行による大浦湾の埋立に着手した。同時に、南部の土砂採掘の動きが進んでいる。魂魄の塔の横にある熊野鉱山に昨日行ってきたが、2台の重機が作業をして採掘は5mの深さまで進んでいる。戦跡公園は、沖縄戦を2度と繰り返さないという県民の意思の象徴。それを壊し土砂を珊瑚と生物多様性の海・大浦湾に投入するのは愚の骨頂。国策に同意しない知事の権限を奪う代執行は、戦前の天皇制時代の知事任命制とどう違うのか。戦後憲法の下では決して許されることではない。 
 いま世界では戦争と軍事化の波が広がっており、東アジアでも軍事化が進み沖縄の一層の軍事基地化が進展している。軍事力では平和はつくれない。非武装こそ平和を守り、人々の命と生活を守る。アメリカ海兵隊基地も自衛隊ミサイル基地もいらない。沖縄の闘いに呼応する動きが全国、世界に広がっている。
この手をご覧ください。阿波根昌鴻さんが5本の指の協力を語っていたように、5本の指が協力すると、このように拳になる。この拳で、丁寧な説明などという空疎な言葉で悪政を積み重ねる岸田をノックアウト! 力を合わせましょう!そして、必ず勝利しましょう!」。

 オリバー・ストーン監督やノーベル平和賞受賞者のマイレッド・マグワイアさんら世界の著名人が発表した辺野古反対の声明は、吉川秀樹さんが紹介し、「国際世論からの力強い味方だ。昨日段階で、声明賛同者は1600人を越えた」と報告した(次号掲載予定)。伊江島の謝花悦子さんは63年間、阿波根昌鴻さんと共に活動してきた日々を振り返りながら、「命を守るのは平和しかない。そして平和の武器は学習」と語った。そのあと、辺野古ゲート前行動の責任4団体(統一連、平和市民連絡会、平和運動センター、ヘリ基地反対協)があいさつした。最後に、高里鈴代さんがリードして「知事の不承認支持」「辺野古新基地建設NO」のボードを高く掲げてガンバロー三唱を行なった。


1・14うるま市民大集会に400人

 1月14日午後、陸自勝連分屯地への地対艦ミサイル配備・連隊本部創設をやめさせよう!をメインスローガンに、ミサイル基地拠点化反対うるま市民大集会が開かれた。
 会場のうるま市民芸術劇場ホールを400人の参加者が埋めた。司会はうるま市議の国吉亮さん。はじめに主催者から、照屋寛之共同代表があいさつに立った後、新垣毅(琉球新報報道本部長)が、沖縄をめぐる軍事外交問題をテーマに講演した。
 新垣さんは、米軍に忖度した岸田内閣の安保三文書の閣議決定、敵基地攻撃能力を持つことの危険性、今日の時代の軍事力の非対称性、日米関係、日中平和友好条約、辺野古マネーの利権、核密約とミサイルを配備しない意義、沖縄の自己決定権と自主外交、などに関して、一時間余りにわたって論じた。
 休憩をはさんで、意見発表に移った。嘉手納爆音訴訟団の新川秀清団長、自衛隊の弾薬庫等建設に反対する沖縄市民の会の仲村未央共同代表、屋良朝博衆院議員の発言のあと、宮城英和事務局長が、集約されたうるま市長と市議会議長にあてた市民の署名用紙の分厚い束を壇上に置き、この間の活動の総括を次のように行なった。
 「署名は本日まで、9772筆集めた。目標の3万には届かなかった。集め方は4通り。①封筒での送付で、1150筆、②各自のつてで、3779筆、③爆音訴訟団の各支部で、2361筆、④毎週日曜日の戸別訪問は10回、延べ145人参加して、2482筆。署名集めを通じて、多くの市民との対話を経て共感を得ることができた。80~85%は協力、15~20%が署名をしない、分からないという反応だった。ミサイルが陸揚げされることが予想されるホワイトビーチや中城湾港に対する監視活動を行なう。ゴルフ場跡地への陸自訓練場の新設・拡張が計画されていることも明らかになった。これからしっかり頑張っていこう」
 そのあと、市議の伊盛サチ子さんが大会決議文を提案、拍手で採択された。最後に、閉会あいさつ(照屋大河県議)、ガンバロー三唱(山内末子県議)で、二時間半に及ぶ熱気ある集会の幕を閉じた。
 同じ日、陸自訓練場の新設が計画されているゴルフ場跡地を抱える地元の旭区自治会では、臨時総会を開き陸自訓練場に関して議論した。その結果、出席した区民114人の満場一致で、陸自訓練場建設に反対する決議を採択した。

キャンプ・シュワブゲート前の県民集会。900人結集。ガンバロー。(1.12)

キャンプ・シュワブゲート前の県民集会(1.12)

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