「死の商人国家」への道を断て!

1.20とめよう改憲! おおさかネットワーク

殺傷武器輸出を拡大する日本

杉原浩司さんが講演

 【大阪】「とめよう改憲!おおさかネットワーク」は1月20日、PLP会館で「許すな!憲法違反の武器輸出」と題する講演集会を行った。
 岸田政権は安保3文書を改定し、大軍拡路線を推進してきた。軍事費の倍増、軍需産業を強化するための法律の制定、武器輸出の推進等々である。そして今、武器輸出三原則を完全に破棄する「殺傷武器輸出」を解禁するための協議が密室で進められている。
 講師の杉原浩司さんは「武器取引反対ネットワーク=NAJAT」代表で、共著に『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(あけび書房)、『亡国の武器輸出」』(合同出版)があり、「世界」2023年7月号に「軍需産業を強化する日本」を寄稿している。

 中北龍太郎さ
 んの遺志継ぐ

 主催者あいさつに立った松岡さんは冒頭、会の共同代表の中北龍太郎弁護士が昨年12月8日に病で亡くなったことを報告、哀悼の意を表し、「中北さんの遺志を引き継ぎ、憲法を守り、憲法を活かす運動に取り組んでいこう」と訴えた。
 そして「岸田政権は昨年、戦争を準備する国へと日本を一段と前進させた。大阪の市民運動はこうした動きに対して闘ってきたが、軍需産業支援法に対する闘いは弱かった。その反省の上に立って杉原さんの講演会を企画した」と、この講演集会の趣旨を語った。

ミサイル基地の
拠点になる大分

 杉原さんはまず、「23年度の軍事予算は22年度から26パーセント増の6兆8219億円になった。予算には敵基地攻撃兵器のトマホーク400発、3千億円超も含まれている」と指摘し、「24年度の軍事予算は7兆9496億円を計上している」と述べた。
 弾薬庫確保に9249億円、施設強靭化に6313億円、研究開発費に8225億円、防空ミサイル防衛に1兆2284億円、イージスシステム搭載艦2隻の建造費3731億円、日英伊共同の戦闘機開発費、中距離空対空誘導弾開発費、12式地対艦誘導弾改良型の取得費等である。
 杉原さんは「トマホークや長射程ミサイルを保管する弾薬庫が、大分市に造られる。そのミサイルを運用する部隊を湯布院の駐屯地に配置する。大分が先制攻撃用ミサイルの拠点になる。反対運動が起きているが、全国的課題として盛り上げていきたい」と力を込めた。

武器輸出3原則を破棄
する軍需産業強化法

 次いで、「1967年から70年代にかけてのベトナム反戦運動等の平和運動の広がりが、76年の三木首相による武器輸出を全面禁止する三原則になった。憲法9条によって自動的に定められたのではなく、平和運動と野党の追及に自民党政権が追い込まれていった結果だった」。
 「しかし、安倍政権は閣議決定のみで武器輸出三原則を撤廃、防衛装備移転3原則を策定し武器輸出を可能にした。しかし国際競争力がなく、そこで制定されたのが軍需産業強化法=防衛生産基盤強化法で、大軍拡を担い、武器輸出ができる産業へと育成するためである」。
 「この法律は軍需工場国有化法案であり、事業継続が困難な場合、一時的に製造施設や設備を国有化することを可能にした。また、武器輸出支援法でもあり、輸出先に応じて武器の仕様や性能を変更する際の費用を助成する。さらに、軍需産業の従業員に守秘義務を課し、違反者には刑事罰を科すという秘密保護法の大改悪法案である」と厳しく批判した。

市民運動の力で立憲
民主党を動かそう

 さらに、「この法案の審議時間は立憲民主党が賛成したこともあり、衆参あわせてわずか5時間に過ぎなかった。衆議院の安全保障委員会は30人だが、反対したのは共産党の赤嶺さんだけだった。市民運動の対応も弱く、院内集会等色々やったのだが、参加者は毎回5~60人に過ぎなかった。残念だったのは、総がかり行動がこの課題に取り組まなかったことだ。立憲民主党が賛成した法案に正面から反対するのは難しいのかなと思った」。
 「市民運動は政党の下請け機関ではない。2年前の土地規制法の衆議院での審議の際、立憲民主党の立場は曖昧だった。しかし、市民運動や立憲の自治体議員の抗議で、参議院では徹底的に抵抗した。市民が声を上げれば、立憲民主党は軌道修正する余地はある。今度の国会には秘密保護法を大改悪するセキュリティ・クリアランス制度導入の法制化の動きが出てくる。市民運動の力で立憲に反対させることが非常に重要になってくる」と続けた。 

殺傷武器輸出を
推進する岸田政権

 そして、杉原さんは「岸田政権は昨年12月、殺傷能力のある武器の輸出解禁を国会の審議を経ないまま決定した。武器輸出をしないという立場からの歴史的な大転換である。この方針を自民党7人、公明党5人の密室の協議会で決めた。座長は自民党の小野寺五典、公明党の佐藤茂樹が座長代理、石川博崇が公明党の事務局長で、この公明党の二人は大阪選挙区、大阪の皆さんには、この二人の事務所の前で抗議行動をしていただきたい」と訴えた。
 「問題なのはアメリカとドイツへの輸出、この二か国はイスラエルに武器を輸出している。日本から直接イスラエルに輸出しなくても、両国がイスラエルに輸出した武器を補うために日本製の武器を輸入することはあり得る。その結果、両国はイスラエルに武器を提供しやすくなる。日本がイスラエルの戦争犯罪に手を貸すことと同じである」と弾劾した。

 日英伊共同開発の戦
 闘機の輸出を許すな

 「重大なのは日英伊で共同開発する次期戦闘機の輸出の可否だ。日本のみならず、英伊の輸出が問題となる。かつて英伊共同開発のユーロファイターがサウジアラビアに輸出された。サウジアラビアはイエメン内戦に介入し、ユーロファイターで無差別空爆を行った。そのサウジアラビアがこの共同開発に参加を希望してきた。日本政府は参加に反対しているが、当然、英伊はこの戦闘機をサウジアラビアやイスラエルに輸出しようとするだろう」。
 「12月に日英伊防衛大臣会談で共同開発のための調整機関設置条約に署名した。今度の国会でその条約を承認する。立憲民主党に条約に反対させる。共同開発をやめろという声を私たち市民があげていく。いかねばならないと」と、杉原さんは語調を強めて訴えた。

良心的軍事拒否
の国家になろう

 杉原さんは最後に、「世論調査では6割以上の人が、殺傷武器輸出に反対している。こうした世論を背景に、国会だけではなく企業に直接訴えかけることが重要だ。日本の軍事企業の軍需比率は低い。死の商人と非難されると民需に響くからである」と述べ、「日本は死の商人国家に堕落しようとしている。非軍事でも国際貢献できる。気候危機、貧困、難民問題、災害、軍縮とやれることはたくさんある。日本こそが西側諸国にイスラエルへの武器輸出をやめろと言わなければならない。非常に困難な時期ではあるが、日本を良心的軍事拒否国家にすることを目指して、一緒に頑張っていきましょう」と講演を締めくくった。  (山三)

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