液体放射性物資の海洋投棄反対
学習シリーズ
汚染水放流は、放射性物質の海洋投棄だ
除染が隠す暗部を暴く
始めに、昨年10月20日東京電力は福島第一原発(以降1F原発と記す)で作業員が退出基準(1㎝平方当たり4㏃)の190倍という高レベル被曝した事故の発生を発表した。それは汚染水を海洋放流に伴う前処理作業過程の事故だった。東京電力はこの作業を仮設の設備で行っていたのだ。図1はこの作業を実施していた設備である。東京電力はしかも事故の詳細を小出しで発表する隠ぺい体質を露呈した。
1F原発敷地内に保管中の汚染水の放流方針を国・東京電力が発表し、これまでの論議は専ら、処理水の安全性及び、1F原発廃炉への有効性に関しての論議だった。
工程全体の
再考が必要
今回の事故は、汚染水処理工程全行程について見つめる必要性を示唆していると考える。
汚染水とは液体放射性廃棄物である。国・東京電力は1F原発サイト内の汚染水を海へ放流する方針を決定した。東京電力・国が決定し実行している汚染水の放流はタンクだけではなく1F原発地下構築物中に滞留中の高濃度汚染水も流す方針であり放射能汚染水とは放射性物質を含む液体放射性廃棄物である。
除染とは液体放射性廃棄物中の放射性物質を分離し移動する行為である。私たちは、移動させた放射性物質の所在を記憶しなければならない。それが及ぼす被害を未然に防ぐ為に必要と考えるからである。
地震での破壊で
汚染水の流出へ
東京電力は2023年11月に1F原発の個体廃棄物の管理計画変更を発表した。同年2月に策定から僅か1年未満の改定であった。私の能力の問題もあり今回はその一部の紹介でご容赦願いたい。
2011年3月福島第一原発で炉芯(原発に装荷した核燃料)が冷却機能を失い熔ける事故が発生した。核燃料が核分裂し発生した放射性物質が排気塔から空気中に放出され多くの人が被曝し家屋などの構築物、及び樹木、土壌、農地等を放射能汚染物に変えた。そして一次冷却水(常時核燃料に直接触れた放射性物質を含む高レベル液体放射性物質)は格納用容器から海へ流出した。地震によりその各所には亀裂及び破断が出来ていたのだ。流失が漸く止まるまでに約1カ月を要した。しかし汚染水の流出が完全に止まったわけではない、量が減少したとは言え流出は続いているのだ。
放射性物質増加
はネズミ算的に
国・東京電力は福島県漁連との約束を反故にし、1F原発サイト内にタンク保管した汚染水を反対の声を踏みにじり海洋投棄を強行している。その理由を、1F原発の廃炉に資するとしている。
廃炉イコールサイトの更地として考えた場合、タンク設置地点には、新たに廃棄物棟の群れが出現し更地にはならないのである。この倉庫の群れを構成するのは13棟の廃棄物貯蔵庫である。既設の9棟に3棟の造成が予定されている。
容量は1~9棟が5・5万㎥、10棟8・0万㎥11棟が11・5万㎥とされている。12棟が造成中であり、13棟は設計が検討中とされている。何れも収納を想定されているのは固体廃棄物だが12、13は汚染水処理二次廃棄物であり、セシウム吸着塔は、現物保管となっている。放射性物質の吸着材の分離が課題とされているが放射線の線量が高く、人間が近寄れないため、分離技術開発の資料も遠隔操作による採取を余儀なくされているのが現状である。
施設の規模は第9棟が地上2階地下2階鉄筋コンクリートで床面積6千㎡高さ9m、10棟は3棟構成であり床面積がA・B4千500㎡、Cが9000㎡何れも高さは20mで1階建て、Cが床面積2500㎡高さ50m、11棟は2026年耐震指針改定対応となっている。まさしく巨大建築物である。12棟は地上2階鉄筋コンクリート床面積4千㎡超地上2階高さ23mであり、13棟は検討中となっている。
ネズミ算的に増加する廃棄物の収納を目的とした巨大な廃棄物倉庫の群れの継続的出現が予想される事態である。しかし、安全性という観点から見たとき、耐震指針改定対応は11棟のみであり、何れも放射性物質保管容器の収納であり、保管容器は耐久性に限界が存在する。放射腺による性能の劣化は避けられないので入れ替えは不可避なのである。更に大型保管棟に至っては、更に搬入対象物を調査してみると、吸着塔・廃スラッジ(建屋地下の貯槽沈殿物)・濃縮廃液スラリー(ALPS除去設備の沈殿物)・ゼオライト土壌であり、各量は吸着塔5662本、スラッジ427㎥濃縮廃液9473㎥となっており、液体放射性物質の除染とは液体中の放射性物質の移動でしかない現実を突きつけているのだ。更に液体放射性物質の海洋投棄は放射性物質を拡散させる結果となり、福島第一原発事故からの回復の困難性に拍車を駆けるのは必至である。液体放射性物質の海洋投棄は一刻も早く止めさせなければならない。
ALPS処理汚染水放流差し止め訴訟の勝利を!
最後に第一回福島公判に参加しよう!ちなみに1F原発事故により生じた損害からの回復について、東京電力と国の役割の分担を決定した。東京電力が負担するのは、事故により生じた損害と敷地内と原発の事故処理、国が負担するのは敷地外の除染だった。国は事故後、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法を制定し、官民共同出資する、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を設立した。それは要約すると、家庭や企業の電気料金などを元手に支払われる。東電の株主や債権者である銀行ではなく、事故後に生まれた若者や外国人も含む消費者に転嫁する仕組みとなっている。どこまで行っても無責任体質に変わりはない。福島原発刑事訴訟告訴団は東京電力旧経営陣に対して「全員無罪」の不当判決を下した。そして告訴団は最高裁判所へ上告した。
そういった意味において刑事訴訟の意義は絶大である。最高裁での闘いに注目し参加を! (浜西)
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