2.10馬毛島基地建設の現状と種子島の反対運動
馬毛島を軍事要塞にするな
和田かおりさん(西之表市前市議)講演
【大阪】2月10日大阪PLP会館で、西之表市の前市会議員の和田かおりさんを招いて、「自衛隊基地建設が進む種子島からの訴え」と題する講演集会が行われた。主催は「南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会」、以下の文章は和田さんの講演趣旨である。
完全に失われた馬毛島の自然
「馬毛島の軍事基地に反対するのは、戦争はいやだ、平和に暮らしたいという一念からです。軍事基地は戦争に直結しています。戦争はどんな大義名分を掲げようと人殺しです。世界中から戦争も武器も基地もなくしたい。その一歩が目の前にある馬毛島の基地問題だと思い、反対運動をしてきました」
「基地建設が始まってから、馬毛島で何が起きているのか、西之表市に住む私たちには何もわかりません。20年前までは馬毛島は緑に覆われた自然豊かな島で、日本鹿の固有亜種の馬毛鹿が住み、ウミガメの産卵地があり、多くの渡り鳥の休息地になっていました。伊勢海老、ミズイカ、トコブシ等の魚貝類が豊富に取れ、宝の島と言われていました」
「その島が丸ごと軍事基地になってしまう。漁協は漁業権を手放しました。島の中央を貫いて2450メートルの主滑走路と、1830メートルの横風用の滑走路が建設されます。軍港、空港関連施設、弾薬庫、米空軍の艦載機の訓練場も建設されます。もう島には緑はほとんどありません。馬毛鹿はどこに住んだらいいのでしょう」
馬毛島基地の位置付け
「馬毛島の基地は自衛隊のオスプレイや水陸機動団等の訓練拠点であり、琉球弧の島々での戦闘を後方支援する拠点基地であり、米空母艦載機の離着陸訓練の恒久施設です。種子島にも管理事務所、隊員宿舎、車両の整備工場、悪天候時の訓練場が造られます」
「馬毛島の基地は岩国や九州から与那国島までの第一列島線の軍事化の一環です。馬毛島個別の問題ではなく、与那国、石垣、宮古、沖縄、奄美と繋がって反対していかなければなりません。そうした意識が、今、南の島々で闘う人たちの共通認識になってきています」
「軍拡の動きは日本列島各地で展開されていますが、南の島々では戦争間近と思わせるほど急速に軍事化が進められています。頻繁に実施されている奄美大島での日米合同軍事訓練、与那国島でのPAC3の展開、石垣島の駐屯地の拡大等々です」
工事着工以来、種子島で起きていること
「種子島の人口は約2800人、工事関係者は最大6000人になります。4000人が馬毛島に住み、2000人が種子島に住む予定です。人口が少ない島に多数の工事関係者が入ってくれば混乱するのは当たり前です。昨年の12月末現在、種子島に1800人、馬毛島に1000人位の工事関係者が住み、宿舎はホテル、旅館、民宿等です。宿舎は常に満室、観光客も帰省者も宿は取れません。老人施設で亡くなった親の葬儀に帰ろうにも宿が取れず、帰れなかった人が何人もいます。レンタカーも借りることはできません。地域医療も逼迫しています」
「工事関係者用のコンテナハウス、プレハブ住宅、アパートがどんどん建っています。家賃も急上昇、5~6倍になったと言われ、借家を追い出される地元住民も出ています」
「地元の住民も賃金の高い基地建設関連の仕事に移り、島本来の産業の担い手が減り、存亡の危機におちいっています。島の基幹産業である砂糖キビやサツマイモの収穫作業員が集まらない。サトウキビを運ぶ運転手も、工場の従業員もいなくなっています」
「漁業はもっと深刻です。漁協は漁業権を売り、漁師は魚を取らず、漁船で作業員を島へ運ぶ仕事をしています。一日の日当は7~8万円だとか。魚の水揚げがなくなり、魚を加工していた人たちも、廃業の外ないという声も聞こえてきます」
「建設業や不動産業以外の人も大勢入ってきました。島にはなかったキャパクラのような店もできました。そうした店と一緒に反社会的勢力の人たちが入ってくるのが怖いのです」
再編交付金で基地容認に転じた市長
「基地の建設費は当初予算では8000億円でした。しかし、離島であることを理由に工事は随意契約でなされており、建設費は一兆円を超えるだろうといわれています」
「西之表市は再編交付金で小中学校の給食費を無償にしました。給食費を無償にしてくれたから、基地に反対できないよねという声も出てきています。西之表市は今、金を使うために余分な事業を見つけ出すという事態になっているのです」
「矢板市長は2017年の選挙では、基地反対を表明し当選しました。基地反対を表明した候補者は3人いて、基地反対派の候補の票は70数パーセントでした。しかし、彼は当選すると基地反対ではなく、賛否を判断する材料を集めて判断すると言い出しました。それでも二期目の選挙時には国の計画には同意できないと表明し、賛成派の候補者と一騎討ちになり144票差で勝ちました。その時点でもまだ、反対派は多かったのです」
「しかし、彼は22年2月には再編交付金や市内への隊舎建設に特段の配慮を求めるという要望書を防衛省に提出しました。つまり、交付金を貰ったわけです」
「そして、22年9月の議会に馬毛島の学校跡地と種子島にある市有地の防衛省への売却及び、馬毛島の市道廃止を提案し可決させました。基地反対の重要な足掛かりを防衛省に売ったわけです。私たちは市長のリコール運動や売却の不当性を訴えた住民監査請求もしましたが、うまくいきませんでした」
「市議会は反対派と賛成派が7人対7人ですが、議長が賛成派なので常に反対派は1票差で負け、賛成派の思惑通りに事態が動いています。西之表市議会は10年以上馬毛島基地に反対してきたのですが、今や賛成の立場になってしまったのです」
住民訴訟、そして私たちは闘い続ける
「馬毛島の小中学校跡地と市有地の防衛省への売却、馬毛島の市道廃止等は違法であるとして、住民訴訟を行っています。第一回の期日は3月12日、鹿児島地裁で開かれます」
「種子島はもう自衛隊の訓練場になっています。そこはウミガメが産卵に来る海岸です。しかし、私たちは軍事訓練反対の運動に取り組めていません。離島や過疎地では自衛隊員になる人が多く、米軍はともかく、自衛隊には反対しにくいという雰囲気があるからです」
「屋久島では武力攻撃事態を想定した鹿児島への住民避難の実動訓練が行われ、南の島々でも避難ということが公然と語られています。マスコミは武力攻撃されたらどうするかではなく、武力衝突しないために何をするのかを伝えて欲しいと思います」
「種子島の美しい海、環境を失いたくありません。緑の馬毛島に戻したいと強く願っています。福島から移住された方がこう言いました。沖縄も種子島もどちらも良い所だが、種子島には基地がない、だから種子島に住むことにしたと。種子島を基地の島にしたくない、皆さんと共にできることをしっかりやっていきたいと思っています」(山三)

馬毛島自衛隊基地建設反対の講演会(2.10)
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