「アジアの買売春に反対する男たちの会」
よびかけ
男たち、とりわけ「アジアの買売春」の現状に心ひそかに痛みを覚えている男たちに私たちは訴えます。
「ジャパゆきさん」と呼ばれるアジアからの出稼ぎ女性のことや、「フィリピン花嫁」と呼ばれたアジアからの花嫁さんのことがマスコミなどに取り上げられて騒がれたのはつい最近だったのに、今はもうあまり報道されることは少なくなってきています。
けれどもそれらをめぐる実態は決して消滅してしまった訳ではありません。それどころか事態はいよいよ深刻さを増していることは実際の数字が示しています。
この国がいくら「忘れっぽい」国民性をその特色としているといっても、許されることではありません。
これら大規模に進行している「アジアの買売春」が突如としてこの何年かの間に現れてきたわけではないことは、この国の現代史をひもとけば自明のことです。
第二次大戦中の帝国軍隊が推進したかの「従軍慰安婦」の創設からはじまって、戦後の「キーセン観光」と称される日本の男たちによる観光買春を経て、今日の国内版「アジアの買売春」の盛況!がもたらされているのです。
「アジア女性への性侵略」と呼ばれるこれらの連綿とした負の歴史は、軍国主義や経済発展を前提としてアジアの国々を支配・隷属・植民地化していく過程で生み出されたものであることは言をまちません。
しかしながら、いつもいつも「国」の政策が悪いのでしょうか。
実際に手を下し、手を汚した日本の男ひとりひとりのあり方が問われないのでしょうか。アジアの国々を見下し、女性を差別し続ける日本の男たち―まさに私たち自身の性意識が「アジアの買売春」を一方で強力に推し進めてきたのです。歪められ、自然らしさを失い、人を傷つけてやまない性意識が。
飽くことないさまざまな形での性侵略への欲望は「セックス・アニマル」と名づけられ、アジアの国々から批判され続けてきています。
私たちはもうこれ以上手を汚すのはイヤなのです。長い性侵略の歴史になんとか終止符を打ちたいのです。まさしく当事者である日本の男自身として。
同情や憐れみや「道義的責任」といった客観的な気持ちからではなく、このまま「セックス・アニマル」「モンスター」として生きることを強いられるのが苦しいのです。人を踏みつけ、犯し、蹂躙するのはたまらないのです。
日本の男たちに呼びかけます。このような気持ちを少しでも広げるために、私たちとともに「いやだ!」の声を響きあわせませんか。ささやかでも多くの声がより集まれば、いつの日にか、「アジアの買売春」をストップできるかもしれません。
「モンスター」の鎧を脱ぎ捨てたとき初めて、私たち日本の男は解き放たれるのです。
1988年10月
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