優生保護法問題の政治的早期・全面解決を!
最高裁判決を待つまでもない!
私たちの身体を私たちが決める権利を
院内集会に約650人
【東京】3月21日、衆議院議員会館で「最高裁判決を待つまでもない!優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3・21院内集会」がオンラインと併用で開かれた。定員300人の会場にはのべ約350人、超党派の国会議員と秘書が30人以上が参加し、超満員となった。主催は優生保護法被害全国原告団と優生保護法被害弁護団、優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(略称・優生連)の3者で、全国の自立生活センターや共同作業所など232団体が賛同した。
オンラインは224画面と接続。原告発言が行われた兵庫と大阪にはサテライト会場が設けられたほか、各地の賛同団体や書店、喫茶店、個人とも結ばれており、主催者は延べの参加者数を会場発表で「少なくとも600人以上の方が参加」、後日の発表で約650人としている。
集会のさいごに、以下の4点を早急に着手することを強く求めるアピール文を採択。続いて首相官邸前でのアピール行動が行われた。
1、国は、2023年10月25日の仙台高裁判決、1月26日の大阪高裁判決の上告を今すぐ取り下げてください。また3月12日の名古屋地裁判決に対し控訴しないでください。
2、原告・被害者の大半は高齢であり、一刻の猶予もありません。国は直ちに被害を受けたすべての人に謝罪と補償を行なってください。
3、国は、国会が行なった調査結果を基本に、二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、当事者や関係者等を含めた第三者による検証体制を確立してください。
4、国は、優生思想をなくすため、障害者権利条約第8条で、加盟国に義務付けられている「社会全体の意識を向上させ、障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成する」ことについて、直ちに具体的な取り組みを開始してください。
多彩な連帯アピール
集会ではまず、2月1日に73歳で急逝した熊本原告の渡邊數美さんを偲んで黙とうが行われた。渡邊さんは「幼いころから、変形性関節炎のため、足を少しひきずっていた。10歳頃に血尿が出たために病院にいったところ、医師から優生手術を勧められて、母が同意した。手術は睾丸摘出であった。本人は、中学生の頃に、母から、優生手術を受けた、と聞かされた」(集会資料から)。3月13日に行われる予定だった福岡高裁での判決公判は7月17日に行われる。
社民、自民、立憲、共産、れいわ、国民の国会議員、秘書が参加し、連帯のあいさつが行われた。社民党の大椿ゆうこさんは、原告団の一人の鈴木由美さんを神戸で介助していた経験に触れ、「強制不妊手術は国の犯した大罪」「地域で障害者が共生できるような社会にしたい」と話した。元新宿区会議員の依田花蓮(よだかれん)さんは「性別移行したトランスジェンダー女性です。立場は違いますが、同じマイノリティどうし、少数者どうし、力を合わせてこの世にはびこるあらゆる差別をなくしていこうとともに活動います」と自己紹介し、れいわ新選組の木村英子のメッセージを秘書として代読した。
時間の都合で読み上げられなかったが、元国連女性差別撤廃委員会委員長で弁護士の林陽子さん、『ハンチバック』で芥川賞を受賞した市川沙央さん、聴覚障害者の両親をもつ作家の五十嵐大さんなどからもメッセージが寄せられた。宮城県塩竃市生まれの五十嵐さんは『聴こえない母に訊きにいく』(2023年4月/柏書房)で、原告をはじめ全国の被害者と同時代に生きた両親と家族、そして自身の葛藤を綴っている。
日本障害フォーラムの阿部一彦さん、全国手をつなぐ育成会連合会会長の佐々木桃子さん、作家の雨宮処凛さん、群馬大学教員の高井ゆと里さんは会場でメッセージを読み上げた。高井さんのメッセージはトランスジェンダーに関連する最高裁判決に関連付けながら次のようにまとめている。高井さんは6年前から佐藤さん、飯塚さんの裁判の支援で仙台に通ってきたという。
「トランスジェンダーが子どもを産むと社会が混乱する」といった曖昧な理由に基づいて、この人権侵害が放置されてきた状況は、自分の身体を生きる権利や、子どもを持つか持たないかを自分で決める権利という、すべての人がもつはずの権利を日本国家が尊重してこなかった歴史があるからです。わたしはトランスジェンダーの権利擁護者として、優生保護法のもとで被害に遭った方たちへの一刻も早い謝罪と賠償を求めます。国は早く動いてください!
最高裁弁論は5月29日に
5月29日水曜日、午前と午後にわたって5つの高裁判決について最高裁判所大法廷での弁論が行われる。性別変更での生殖不能の手術要件は「違憲」とした最高裁判断は、昨年9月27日に弁論が行われ、10月25日に判決がだされている。
最高裁でたたかうのは、2022年2月22日大阪高裁判決の原告、空ひばりさん、野村花子さん、野村太朗さん。同年3月11日東京高裁判決の北三郎さん。2023年3月16日札幌高裁判決の小島喜久夫さん。同年3月23日判決の高尾奈美恵さん、小林寳二さん、鈴木由美さん。そして同年6月1日仙台高裁判決の佐藤由美さん、飯塚淳子さん。
優生連では昨年9月から「国が放置してきた優生保護法の被害に対し最高裁判所に人権の砦として正義・公平の理念にもとづく判決をもとめる」署名100万筆をめざして運動が展開されてきた。
期限を迎える救済法
旧優生保護法をめぐっては2019年4月に議員立法で成立した救済法による5年間の一時金請求期限がこの4月23日に迫っていた。3月13日、衆院委員会で救済法改正案を本会議に提出することを全会一致で可決。一時金320万円の請求期限を2029年4月まで5年間延長する見通しとなっている。
いっぽう、被害者と家族ら被害者の訴えの多くは憲法違反である強制不妊手術の賠償として3300万円(裁判によって違いがある)の支払いを求めたものであり、救済法では救済にならない。損害賠償をめぐっては、将来得られたはずの「逸失利益」をどのように算出するかをめぐって障害者差別が横行している。2018年に大阪市で起きた聴覚障害のある小学生の交通死亡事故では、加害者側が提示した「逸失利益」は、女性労働者平均の40%という低い水準だった。被告側準備書面には「聴覚障害者は思考力・言語力・学力を獲得するのが難しく、就職自体も難しい」と書かれていたという。
救済法は都道府県が窓口となり、被害者や家族などが申し出ることになっている。しかしいくつかの県では、行政側が手術記録などをもとに当事者をたずねて一時金請求の方法を伝えている。旧優生保護法下で不良な子孫の出生を防止するとして行われた手術件数の約2万5000件に対し、一時金の認定件数は2月2日現在で1094件である。優生保護法被害者救済への道はまだまだ厳しい。この国家から「自分の身体を生きる権利や、子どもを持つか持たないかを自分で決める権利」を剥奪されてきた者どうしの連帯の深まりをあらわした集会だった。
引き続きカンパや署名などでの支援を。連帯を。詳しくはまず支援連のホームページで。(KJ)
支援連HP
https://sites.google.com/view/yuuseiren/home
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