3.31美浜全国集会
老朽原発ただちに廃炉
大阪高裁の不当判決に怒り!
【大阪】老朽原発動かすな!実行委員会主催の美浜全国集会が3月31日、美浜町保健福祉センターはあとホールを参加者で満席にして開催された。
判決は容認できない
3月15日、40年を超えて稼働している関西電力の美浜原発3号機の運転差し止め仮処分の可否が争われた即時抗告審で、大阪高裁は差し止めを認めない判決を出した。能登半島地震の被害の衝撃が裁判所を揺り動かすだろうと市民は予想していたから、この判決は容認できないものであった。美浜全国集会は今までにない盛り上がりで開催された。
集会は、山本貴美子さん(福井県敦賀市会議員)の司会ですすめられ、主催者あいさつを中嶌哲演さん(原子力発電に反対する福井県民会議)が行った。
続いて、井戸謙一弁護士が「老朽原発運転差止仮処分について」と題して特別報告をした。
冒頭、井戸さんは、なぜ仮処分を求めるのかについて語った。それは、差し止めの決定が出れば、ただちに原発は運転を止めるからだ。本訴の場合は、判決が確定するまで止まらない。
3つの仮処分(美浜3号運転差し止め仮処分申立て(9人)大阪高裁即日抗告・同じく美浜3号仮処分福井地裁申立て(10人)・高浜1─4号仮処分福井地裁申立て(2人)は全て却下された。
仮処分裁判の争点
この裁判の主な争点は、①老朽原発の危険性の有無 ②基準地震動が低く過ぎる ③震源極近傍地震動の特別考慮 ④経験式のばらつきの考慮の必要 ⑤避難計画は絵に描いた餅、の5点であった。
100万キロW級の原発1機を例に取ると、配管の全長170km・ケーブルの全長1700km・溶接点の数6万5000点・各種弁3万台である。これを関電はどのように点検するのか。目視点検できる部分は目視する(本当にできるのか)、超音波探傷試験もする。類似器機はグループに分け、同じグループは代表器機を選定して検査する。同じグループならどれも同じと考えるのには無理があるが、裁判所は、この関電の手法は合理的であると判断した。
美浜3号機の基準地震動993ガル(ガルは加速度の単位)に設定されているが、1000ガルを超える地震はいくらでもある。今年の能登半島地震は2828ガルであった。ハウスメーカーは3000─5000ガルに耐えられる建物を販売しているという。しかし裁判所は、観測記録の比較は、それぞれの地域の特性を踏まえていないから、関電の主張を覆せないというのだ。
震源極近傍の地震動を考慮しない、経験式のバラツキを考慮しないということは、随分と雑な判断をすることになる。経験式は平均値を意味するのだから、バラツキを考慮しないなら、平均値そのものも意味がなくなるのではないか。
避難計画は絵に描いた餅である。これは今年の能登半島地震でも多くの人が思い知ったことである。これに対する裁判所の判断は驚愕に値する。「原発事故が起こる具体的な危険があることの疎明がない以上、避難計画の実効性について検討するまでもない」。これは恐ろしい考えである。実効性の検討は、事故か起きてからやればいいということだ。
地震のことはまだ何もわかっていない
井戸弁護士がまとめとして話したことは、地震のことは学問的にもまだ何も分かっていないということ。避難計画は絵に描いた餅だということ。断層の存否や位置あるいは規模、地震の強さ、地盤の隆起は全く分からないと、専門家はいう。だから、原発事故の時の屋内退避は不可能だ。道路や港湾は壊れ、空港も使えないから、被害から逃げることができない。モニタリングポストは計測できず、放射能測定できない。自治体職員は、住民避難対応できない。最後に、世界地図に地震帯(火山帯)を重ねた図を示し、米国や西欧の原発立地は地震帯と見事に分かれているが、日本は完全に重なっていることを強調し、例え西欧ができても、日本は脱原発しかないと述べた。
引き続き控訴審で闘う
続いて3つの仮処分申立てをした方たちが登壇し紹介された。そして、大阪高裁の抗告審の上告はせず本訴をめざすこと、残りの2つは控訴審で闘うことが発表された。
最後に、全国各地からの発言として、北野進さん(北陸:志賀原発を廃炉に!訴訟原告団長)と草地妙子さん(名古屋:老朽原発40年廃炉訴訟市民の会共同代表)がアピールをした。
北野さんは、能登半島の珠洲原発の立地域であった寺家に原発がなくてよかった、高屋に原発がなくてよかったと、今年の能登半島地震の前と後のこの地域の様子を写真で示した。寺家は珠洲原発の炉心が置かれる予定であった場所だが、現在は1メートル隆起している。海岸には岩場が出現している。髙屋の海岸は岩場になっている。
さよなら志賀原発!全国集会に結集を
珠洲原発反対運動のあった当時、原発反対派の市長候補は現職の賛成派に敗れたが、不正選挙糾明運動に切り替え、1996年最高裁で選挙無効が確定した。粘り強い運動の結果、2003年関西・中部・北陸電力3社は珠洲原発からの撤退を表明し、運動は勝利した。
北野さんは最後に、活断層に囲まれた志賀原発の廃炉をめざして訴訟を提起したことを報告。6月3日金沢市で「さよなら志賀原発全国集会」を開くことを述べ、結集を訴えた。
草地さんは、名古屋で提起した訴訟が最終段階を迎えたことを述べ、これからも共に闘っていく決意を語った。
全国からメッセージを届けた団体・個人を紹介しておく。北海道:後志・原発とエネルギーを考える会共同代表 藤井俊宏さん、みやぎ脱原発・風の会 館脇章宏さん、原発いらね!ふくしま女と仲間たち 黑田節子さん、東海村議 阿部功志さん、首都圏連絡会 志田文広さん、再稼働阻止全国ネットワーク 木村雅英さん、柏崎苅羽原発絶対反対地元有志代表 近藤容人さん・高田勝広さん、浜岡原発を考える静岡ネットワーク代表 鈴木卓馬さん、滋賀原発を廃炉に!訴訟原告団長 北野進さん、さよなら原発・ぎふ、老朽原発40年廃炉訴訟の会 柴山恭子さん、ふるさとを守る高浜・おおいの会(高浜町)東山幸弘さん、おおい町・宮崎慈空さん、若狭町・石地 優さん、原発ゼロ宮津・与謝ネット(京都府)、福知山地方労働組合協議会議長 奥井正美さん、さよなら島根原発ネットワーク 芦原康江さん、上関の自然を守る会句共同代表 高島美さん、美登里さん、上関原発を建てさせない山口県民連絡会、伊方から原発をなくす会 名出真一さん、ストップ川内原発!3─11鹿児島県実行委員会共同代表 向原祥隆さん。
集会後、美浜町内をデモ行進した。所々で住民が手を振ってくれた。また、右翼の街宣車が10台ほど動員されていた。若狭で右翼の街宣車に出会ったのは、今回が初めてだった。
(T・T)
大阪高裁の不当判決に一層の決意を固め(3.31)
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