4・28サンフランシスコ講和と5・15沖縄返還

沖縄を軍事のくびきから解放しない限り
日本は自立した国になることはできない

5.15平和とくらしを守る県民大会に2300人

宜野湾に響きわたる基地のない平和を求める声!

沖縄報告 5月20日 沖縄 沖本裕司

全国の仲間が沖縄に

 今年の5・15平和行進と県民大会は、5月18日(土)に行われた。午前9時、宜野湾市役所から南北二コースに分かれて普天間基地の周囲を歩いた行進団は、宜野湾市立グラウンドで合流し、復帰52年5・15平和とくらしを守る県民大会を開いた。主催者発表によると行進参加者は2190人であったが、県内各地から直接会場に足を運んだ参加者も多数見受けられた。
 県内・全国からの参加者の各種ゼッケン、各団体のノボリが林立する様は壮観だ。茨城、三重、広島、福井、福岡、愛知、神奈川、大分、千葉、東京、長野、埼玉、徳島、大阪、愛媛、北海道などの都道府県、全港湾、全水道、全労金、新聞労連、私鉄、沖教組、全糖労、自治労などの組合旗も目に付いた。若い労組員が多い。毎日、読売など全国紙の記者もカメラを手に取材した。

平和で誇りある時代を

 司会は高教組副委員長の宮国麻弥子さん。幸地一さん(前高教組委員長)、染裕之さん(フォーラム平和・人権・環境共同代表)に続いて、演壇に立った玉城デニー知事は「ハイサイ、グスーヨー」と切り出し、「イスラエルによるガザ攻撃は、県民としても胸がつぶれる思いだ。沖縄県は21世紀の万国津梁(しんりょう)を掲げ、平和のかけはしとなる地域外交基本方針を策定した。東アジアを再び戦場としてはならない。平和で誇りある新時代をつくりあげよう」と呼びかけ、満場の拍手を浴びた。
 国会議員は、新垣邦雄さん(衆院)、高良鉄美さん(参院)が発言した。高良さんは「憲法前文の“恐怖と欠乏から免かれ平和のうちに生存する権利”は、世界中がそうなっていない。主権者として憲法を取り戻そう」と、身振り手振りを交えてアピールした。与党県議の代表としてマイクを取った山内末子さん(うるま市区)は、「エマニュエル駐日大使が米軍機で与那国・石垣に行き、自衛隊基地や海保を訪問した。沖縄は植民地ですか。沖縄のことを全国に伝えてほしい」と訴えた。
 新垣清涼さん(普天間基地爆音訴訟団団長)は、「今日は米軍機が一機も飛んでいない。普段は朝から晩まで、時には夜中の12時を過ぎても訓練をくり返している。パイロットの顔まで見える低空飛行だ。騒音もひどい。アメリカ本国ではこんなことはない。日本を本当の民主主義国家にしよう」と述べた。

抵抗の心を刻む


 韓国からは、ピョンテク平和センター・「平和の風」・「開かれた軍隊のための市民連帯」などで構成する「基地平和ネットワーク」、済州島江汀(カンジョン)の住民、「共生と平和の海」のソン・ガンホ船長ら合わせて24人が参加した。数枚の横断幕を掲げて前に立ち、申載旭(シン・ジェウク)さんが「アンニョンハセヨ。沖縄に来るのは5年ぶりだ。辺野古の工事が進み姿を変えた現場を見た。基地と戦争の現場に立つことは歴史を記憶することであり、抵抗の心を刻むことだ」と連帯のメッセージを送った。
 そのあと、平和行進団の報告が行なわれた。北コース団長の前底信幸さん(自治労県本委員長)、南コース団長の澤岻優子さん(沖教組組織部長)、本土代表の中條貴仁さん(東京平和運動センター議長)、本村政敏さん(佐賀県平和運動センター副議長)がそれぞれ、報告と決意を語った。大会宣言を採択した後、参加者全員で「月桃の花」を歌い、ガンバローを三唱した。

琉球の大交易時代と万国津梁の銘文

21世紀の万国津梁をめざす県の地域外交方針


 1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約発効から72年。1972年5月15日の沖縄返還・本土復帰から52年。米軍の直接占領から施政権が日本政府に返還されたが、沖縄の東アジアの軍事的要衝という役割は変わらない。
 かつて琉球には14世紀末から16世紀にかけて東アジア・東南アジアに広がる交易の中心地として栄えた「大交易時代」の150年間がある。150年間というと、1879年の琉球併合から現在に至るまでの期間にほぼ相当する。当時の琉球王府は、アジアの架け橋としての琉球国の気概を、梵鐘「万国津梁の鐘」の銘文に刻んだ。首里城正殿に掲げられていたこの梵鐘は、沖縄戦での破壊を奇跡的に免れ、現在、沖縄県立博物館に所蔵されている。レプリカは首里城正殿に入る高台の供屋に展示されている。万国津梁の銘文を写した屏風が県庁知事室の応接室にあることはよく知られている。
 銘文は漢文で記されているが、書き出しの部分を書き下し文にすると以下のようになる。
 「琉球国は南海の勝地にして三韓の秀を鐘め大明を以て輔車と為し日域を以て唇歯と為して此の二つの中間に在りて湧出せる蓬莱島なり。舟楫を以て万国の津梁と為し異産至宝は十方刹に充満し地霊人物は遠く和夏の仁風を扇ぐ。……」

 琉球の大交易時代と万国津梁の精神は代々受け継がれて現在に至る県民共通の記憶である。琉球・沖縄が中国大陸の大陸棚と北西太平洋間のラインに沿って位置する地理的要衝であることは今も昔も変わらない。琉球を併合した天皇制国家は「帝国の南門」とし南方侵略の進出基地にすると共に本土防衛の戦争で沖縄を壊滅させた。沖縄を占領した米国は「極東の要石」という名の軍事の要塞とした。いま沖縄は、米軍が主導し日本政府が追随する中朝ロシアに対する攻撃基地となっている。
 国家権力を掌握する支配者たちは沖縄を軍事主義の眼でしか見ない。どこに飛行場・通信基地・弾薬庫・訓練場を造り、攻撃および迎撃ミサイルをどのように配置し、飛行訓練・パラシュート降下訓練・射爆撃訓練・ジャングル戦訓練などをどう効果的に行うか、飛行場・港湾をどう利用するか、等々。いい加減にせよ。琉球列島には150万をこえる人々が暮らしている。沖縄の軍事利用をやめよ。沖縄県は今年4月、「21世紀の万国津梁」を掲げる地域外交方針を策定した。日米両国家による軍事のくびきから解放されれば、沖縄はかつての大交易時代のように、アジアの平和のかけはしとして、アジアの国々の平和共存と物的人的な交流の発展に大いなる力を発揮するに違いない。虎に翼を!沖縄に力を!

軍事外交政策の根本的転換を!


 安倍・菅の時代からさらに露骨に悪化した岸田の軍事優先路線は沖縄だけでなく日本を破滅に導く。「軍備増強こそ抑止力」という主張は欺瞞だ。軍備は増強すればするほど戦争が近づいてくる。台湾との国境の島、与那国町の糸数町長は、5月17日、米軍機で与那国・石垣を訪れたエマニュエル駐日米大使と共に、対中国の米軍・自衛隊の連携強化を強調した。糸数町長は5月3日に東京で開かれた「改憲派」フォーラムで、「憲法第9条を変え交戦権を認めるべき」「中国と一戦を交える覚悟が全国民に問われている」と述べていた。さらに、比川地区の新港湾建設について、「43兆円の争奪戦が始まっている」と、防衛省の軍事予算に食いついてインフラ整備を行なおうと懸命になっている。しかし、与那国の人々は町長の考えに同意していない。「与那国町の明るい未来を願うイソバの会」や、自衛隊の誘致ではなく台湾との経済圏の形成により島の発展を展望した人々は、「町長一人の島じゃない」と怒り、反発を強めている。
 琉球列島の島々に軍事基地はいらない。軍事に頼らない非武装の平和交流のみが島々の平和と安全を保障する。岸田内閣の支持率低下を、単に自民党の金権体質の問題にとどまらず、米軍追随と中国敵視の軍事外交政策を打ち破るところに集中させなければならない。

復帰52年5・15平和とくらしを守る県民大会。平和行進団の報告。マイクは沖教組組織部長の澤岻優子さん(2024.5.18)

復帰52年5・15平和とくらしを守る県民大会。2200人が行進。全港湾の先導車に続く行進団。(2024.5.18)

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