5.23狭山事件の再審を求める市民集会
「無実を叫び61年!東京高裁は事実調べ・再審開始を」
【東京】5月23日午後1時から、東京・日比谷野外音楽堂で「無実を叫び61年!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」狭山事件の再審を求める市民集会が同集会実行委の主催で行われ、全国から部落解放同盟員を始め、支援の解放共闘、労働組合員、市民らが野音を一杯に集めた。
12時半から、川口真由美さん(シンガーソングライター)の様々な抵抗歌が披露された。西島藤彦さん(部落解放同盟中央本部委員長)が開会のあいさつをした。
「逮捕から61年が経ち、石川さんは85歳になった。何としてでも元気なうちに再審を勝ち取っていきたい。第三次再審請求から18年が経った。三者協議にピリオドを打ち、証人を入れた協議にしたい。検察が証人尋問などに応じないので、再審法の改正が必要だ。秋には再審法改正の集会を計画している。検察庁のための裁判であってはならない。石川無実は明々白々だ。石川無罪の集会にしよう」。
参加した政党の代表のあいさつ。
社民党党首・福島みずほさんが「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟が立ち上がった。再審開始決定に対する検察官の抗告禁止などを実現しなければならない」と話した。近藤昭一さん(立憲・企業団体交流委員会顧問)が袴田再審裁判で改めて死刑が求刑されたことを批判し、さらにそうした背景にはヘイトスピーチやジェンダー平等などに対して差別があり、国が処罰をすることなどを司法・行政でしめしていないことが問題だと指摘し、再審法改正の議連を紹介した。
大石あきこさん(れいわ新選組共同代表)は自らが狭山闘争を取り組むようになった経過を説明し、再審法議連での取組みをやっていくと表明した。
再審請求人石川一雄さんの訴え
「いよいよ狭山裁判は最終段階であります。元気なうちに無罪を勝ち取る。なかなか足が不自由で動けません。皆さんのお力添えで、仮出獄して30年になりました。30年も経っているのにまだ解決できていない。今日、家を出る時非常に私は苦しかった。非常に厳しい取り調べのことを思うと無念でならない。当時私を犯人とした3人のお巡りさんはいま家におりません。おそらく地獄にいるんじゃないでしょうか。石川一雄の無実を勝ち取るためにご支援を願っていますので、皆さんよろしくお願いします。」。
連れ合いの早智子さんがあいさつ。
「石川は最大限のご支援に応えることができないことに対して、すまなく思い、メッセージが書けないと言っていた。それでも力をふりしぼり、命をかけている。袴田再審裁判で検察は死刑の求刑をしたが必ず無罪の判決が出るだろう。次は狭山だ」。
「石川の耳・目・体は衰えている。しかし気力は衰えていない。自分から全国を回ることはできないが、その代わりに狭山現調に多くの人が来てくれている。それが励みになっている。無実を勝ち取りたい」。
狭山事件再審弁護団事務局長の竹下政行さんが11人の専門家の証人尋問とインクの資料の鑑定を求める根拠を説明した。
片山明幸さん(部落解放同盟中央本部副委員長)が基調報告をした。
「①4月に新裁判長に弁護団がプレゼンテーション、裁判の争点を説明した。検察は反対したが初めて実現した。新裁判長の下で新しい闘いをしたい。②闘い方。鑑定人尋問をするかどうかだ。いずれ裁判所の判断が出る。焦点は万年筆の実験をやらせることだ」。
「兄の六造さんへの取材をしたことがある。2回も家宅捜索をしたのに万年筆はなかった。3回目に刑事が突然来て立ち会ってくれとなり、鴨居に万年筆があった。『誰かが置いた』と刑事に言った。この万年筆はでっち上げであるが今まで証明できなかったが新たな鑑定によって、違う万年筆であることが証明できる。これが最大の争点だ。署名運動などをやっていきたい。③再審法の改正を。袴田事件は2014年に再審決定されたがそれから10年かかった。それは検察が不服申し立てをしたからだ。仮に狭山事件で再審開始決定があっても検察は不服申し立てをしてくる。これをやめさせるために再審法の改正が必要だ。最後の決戦の時期を迎えている。がんばろう」。
袴田再審に続け! 次は狭山だ!
菅家利和さん(足利事件えん罪被害者)と山崎俊樹さん(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会)が連帯アピールを行った。
菅家さん。「袴田再審決定のニュースを聞いて自分のことのようにうれしかった。今回の死刑求刑はとんでもない。無罪判決は確実だ。次は石川さんだ。私はいきなり犯人とされ、連れていかれた。『犯人はお前しかない。子どもに謝れ、ずるい・人間性がない』と言われた。私を取り調べた警察・検察は15年間謝らない。許せない。裁判所の前で謝らせていく」。
山崎さんが「昨日、公判が終了した。改めて死刑を求める検察官。再審公判は今までの主張の繰り返し。5点の衣類についた血痕は黒くなると決まっている。逮捕以来袴田さんは無実を訴えてきた。48年に渡る拘禁生活で拘禁反応が進み傷は癒えていない。9月26日午後2時から静岡地裁で判決がある。たくさんの人が傍聴に来て欲しい」と述べた後、姉の秀子さんの意見陳述を読み上げた。
鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)が「今までも重要な再審裁判で検察が死刑を求刑したがいずれも無罪判決が出た。警察は正義を破ることを公然とやっている。再審法を変えていく。袴田無罪判決、そして狭山の運動を盛り上げていく」とアピールした。
集会アピールの読み上げ、閉会あいさつ、がんばろうの唱和の後、裁判所を通り、霞が関を回るデモで、「石川無罪、再審勝利を」訴えた。
(M)
集会アピール
61年前のきょう、警察は当時24歳だった石川一雄さんを別件で逮捕し、女子高生殺害の取調べをおこなった。警察、検察は勾留の期限が近づくと、いったん保釈、その場で再逮捕し、厳しい取調べを続けた。弁護士や家族との接見を禁止し、兄を逮捕すると脅してウソの自白を強要したのだ。冤罪が作り出されていく背景に部落差別があった。
第3次再審では、裁判所の勧告で47年目にして、取調べを録音したテープが証拠開示され、61年前の冤罪の真相が暴かれた。「脅迫状を書いたことに間違いない。君には供述する義務がある」と自白を強要する警察官らの発言が録音されていた。脅迫状を書いたことも殺害の方法も話せない石川さんに、警察官らは犯行の筋書きを押し付け、誘導し、自白させていたのだ。取調べ録音によって、当時の石川さんが非識字者であり、脅迫状を書けたはずがないことも明らかになった。弁護団は開示された筆跡資料をもとにコンピュータによる筆跡鑑定もおこない、石川さんが脅迫状を書いた犯人ではないことを明らかにしている。
また、開示された証拠物の蛍光X線分析でインクの元素が異なることが明らかになり、有罪の証拠とされた万年筆が被害者のものとはいえないことが科学的に証明された。万年筆の発見経過のおかしさも心理学者による捜索実験で明らかになっている。
証拠開示と科学的鑑定によって、石川さんの無実と有罪判決の誤りが明らかになっている。弁護団は、東京高裁第4刑事部に事実取調請求書を提出し、有罪証拠の誤りを指摘した11人の専門家の証人尋問と、万年筆のインク資料の裁判所による鑑定の実施を求めている。
そして、先日の三者協議でプレゼンテーションをおこない、昨年末に就任した家令和典裁判長と担当裁判官に、新証拠によって有罪判決の誤りがいかに明らかになったか、検察官の意見がいかに誤っているかを説明した。東京高検の検察官は鑑定人尋問もインク鑑定も必要ないと主張している。弁護団は検察官意見書への反論を提出するとともに、証人尋問について具体的に協議を進めるよう求めている。今後、これら双方の意見をふまえて、裁判所は事実調べをおこなうかどうかを決定する。まさに最大の正念場だ。わたしたちは、弁護団と石川さんの訴えを後押しする世論をさらに大きくしていかなければならない。
足利事件では、東京高裁が有罪の根拠となったDNA鑑定の再鑑定をおこない、菅家さんの無実が明らかになった。袴田事件の再請求では、静岡地裁はDNA鑑定や証人尋問をおこない、東京高裁も鑑定人の証人尋問をおこない再審開始を決定した。つぎは狭山だ!東京高裁第4刑事部が証人尋問とインク鑑定をおこない、狭山事件の再審を開始するよう強く求める。
袴田さんの再審公判が結審した。わたしたちは、静岡地裁が、捜査機関による証拠ねつ造を厳しく指摘し、袴田さんに無罪判決をおこなうよう強く求める。そして、袴田さんの再審を教訓に、それに続いて、狭山事件の再審開始、石川さんの無罪判決をかちとるために全力で取り組む。事実調べ・再審開始を求める市民の声を東京高裁第4刑事部にとどけよう!
袴田さんは58年、石川さんは61年も冤罪を叫び続けている。こうした長い冤罪との闘いを強いている再審手続きの不備を早急に変えていかなければならない。先日、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が結成された。いまこそ、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止し、再審における証拠開示を保障する再審法改正を国会に強く求めよう。冤罪犠牲者や支援運動と連帯し、冤罪根絶にむけた司法改革、再審法改正を実現しよう。
事実調べを求める署名運動をさらにすすめよう!61年におよぶ石川さんの無実の叫びにこたえ「みえない手錠」をはずすまで全力でとりくもう!
2024年5月23日
狭山事件の再審を求める市民集会 参加者一同
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