5.22無実の「死刑囚」袴田さん第15回再審公判(結審)

「有罪立証」もできず死刑求刑
検察は恥を知れ! 判決は9月26日(木)

 【静岡】昨年10月27日から始まった再審公判は、5月22日に第15回公判を迎え、検察官による論告求刑と弁護側の最終弁論、姉のひで子さんによる意見陳述が行われ結審となり7ヶ月に及んだ再審公判は終了した。判決は9月26日に言い渡される。
 朝、8時半には支援者が次々と集まってくる。公判の度に9時前から支援集会が始まる。
あいさつに立った鴨志田祐美弁護士(日弁連再審法改正実現本部長代行)は、冤罪を生み出す温床になっているのが再審法(刑事訴訟法の再審規定)であり再審法の改定を拒む壁が法務省だと指摘、「突破するには政治の力と圧倒的な世論が必要」と訴えた。超党派の再審法改正議員連盟は現在285人であり、300~400を越えれば政府は改正をせざるを得ないと述べた。
 日本プロボクシング協会袴田支援員会を代表して松岡修会長からはボクシングをやるものに対する予断と偏見に基づいた死刑判決を許せない。逆転のクロスカウンターでKО勝利を!と訴えた。
 また元ボクサーでイラストレーターの森重水さん(清水市出身)は巌さんを描いたTシャツを着て入廷しようと思うと述べ、拒まれたら裸になってなどと皆を笑わせた。
 清水・静岡救援会の山崎事務局長からは、今日一日の裁判の流れと傍聴者以外の支援者の行動について街頭宣伝や午後の映画上映・記者会見の会場設営などの協力要請がなされた。
 9時45分傍聴希望者の抽選結果が張り出される。200人を超える傍聴希望者に回る傍聴席は僅か26席、毎度のことながら何度要望しても傍聴席の拡大に応じようとしない。10時30分過ぎにひで子さんと弁護団が入廷するので激励行動が地裁門前まで行われた。

ことごとく破綻した検察の主張

 22日公判では、被害者の孫(被害者の長女の次男、事件当時生まれていない)の意見陳述を検察官が代読する形で行うとして弁護団から陳述に反対する意見書が提出されていた。
荒唐無稽な「検察のストーリー」に沿った極刑を求める意見陳述がされるのではと危惧さ
れたが、陳述は「真実を明らかにしていただきたい」とする被害者家族としては当然の主張にとどまるものであった。
 昨年10月27日から始まった再審公判の中で検察官は、犯行動機も侵入経路も殺害方法も、何時から犯行に着手して、どうやって金を奪ったのかも何一つ立証できていない。にもかかわらず、裁判終了後の記者会見で「有罪が立証できた」とうそぶくのである。
 昨年3月13日の東京高裁差戻審での再審開始決定に対して3月20日に抗告断念をしたのは何だったのか。自らが行った1年2ヶ月に及ぶみそ漬け実験においても赤みが残らなかった。とてものことで抗告したら恥の上塗りとなることは承知していたはずだ。
 ところが有罪立証を取り下げるどころか再審公判のための三者協議の中で態度を明確にせず7月10日までずるずると引き延ばし、一転、有罪立証を行うとしてきた経緯がある。そしてその有罪立証は、漫然とこれまでの繰り返しに終始した。唯々、無罪判決を阻むための悪あがきである。

検察を圧倒した弁護団の闘い

 傍聴抽選に外れた支援者は静岡市の繁華街で宣伝活動を行う一方、午後からの集会・記者会見会場の設営を行う。 集会では、金聖雄監督の袴田さんの日常を丹念に追ったドキュメンタリー映画「夢の間の世の中」を鑑賞した。上映後には金監督のあいさつを受けた。
 午後5時を過ぎ、ひで子さん、弁護団、傍聴者が記者会見場に到着、マスコミ関係者を含め150人程が詰めかけた。
 ひで子さんは、「午前中の裁判で検察が死刑なんて言わないのかなと思っていたが死刑と言ったんですって、私には聞こえなかった。(会場が笑)、午後の弁護士さんの反論は素晴らしかった。もうこれで勝ったようなものだと私は思っています。本当に長い裁判で皆様にもお疲れでございましょうが本当にありがとうございました。きょう家を出るときに巌に静岡へ行ってくると言いました。巌は『あっそう』と言っていましたが裁判に行くことはわかっていると思います」と晴れ晴れした様子で話された。
 出席した9人の弁護人からひと言づつ発言があった。西嶋勝彦弁護団長の急逝から主任弁護人を引き継いだ小川秀世弁護士は「それぞれの担当弁護士が簡潔で適格な表現で素晴らしい弁論をやっていただいた」と述べた。検察の論告求刑での死刑求刑に対して怒りで思わず机を3度たたき裁判長から休廷を宣告された田中薫弁護士は、捏造された自白で捏造証拠が作られた点に触れ、「(捏造された)自白が無実を証明する」と述べた。
 角替清美弁護士は「無罪を書くだけならあっという間に書ける。事件と向き合い、濃い内容の判決を書くために4ヶ月(9月26日まで)が必要なのだと理解したい」と述べた。
 再審公判はひとまず終わったが清水では、58年前の1966年6月30日に合わせ6月30日(日)に完全無罪を求める集会がある。9月26日へ向け全国各地で同様な行動が行われる。完全無罪を勝ち取るためにガンバロウ!
 「今朝がた母さんの夢を見ました。元気でした。夢のように元気でおられたら嬉しいです
が、お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね」弟巌の手紙です。そして、47年7ヶ月、投獄されておりました。獄中にいる時は、辛いとか悲しいとか一切口にしませんでした。釈放されて10年たちますが、いまだ拘禁症の後遺症と言いますか、妄想の世界におり…(中略)…多少は回復していると思いますが、心は癒えておりません。…(中略)…今日の最終意見陳述の機会をお与えくださいまして、ありがとうございます。長き裁判で裁判長様はじめ皆さまには大変お世話になりました。58年間闘って参りました。私も91歳でございます。巌は88歳でございます。余命いくばくもない人生かと思いますが、弟巌を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます。

袴田巌さんは無実だ!(5.22)

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