ビルマ(ミャンマー)と日本~植民地支配の歴史を考える
ミャンマー問題を考える会
講師:田辺寿夫さん(ビルマ研究者・ジャーナリスト)
【東京】6月9日立川市で、田辺寿夫さん(ビルマ研究者・ジャーナリスト)を講師にし、「ビルマ(ミャンマー)と日本~植民地支配の歴史から考える」の学習会がミャンマー問題を考える会の主催で行われた。講師の田辺さんは、NHKの国際放送局でビルマ語番組の制作を担当し、アウサンスーチーさんの通訳などを務めた。
講演の前に「在日ビルマ労組ここにあり」という映画上映を予定していたが音声が出なかったので中止となった。
講演ではサッカーの話から、久保田徹君の逮捕や釈放、恩赦のこと。南機関と三十人志士やビルマ独立義勇軍。世代交代しながらも続く民主化運動など。いろいろな思い出話も含めながらわかりやすい講演だった。
「教える」から「学ぶ」へ
田辺さんは最後に次のように訴えた。
「ミャンマーの現状を見て『なんとか助けねば』と口出ししようとする人が多い。もちろん善意から発している。しかしミャンマーの人々は生命を賭して戦っている。かつては植民地政府に、そして日本軍政に、さらには国軍の支配に」。
「やっと手に入った民主的な政治が軍のクーデターによってつぶされた。軍への怒りが今ミャンマーに燃えあがっている。あの穏やかな人々が3本指を立て、職場を離脱(CDM)までして、生活苦のなかで必死に戦っている。私たちは学ぶべきではないか? 反権力闘争を日本人は本気で闘ってきたか? 軍人支配の中で人権・民主化に向けて闘ってきたか? 今また『大東亜戦争』には評価すべき点もあったとのたまうような風潮に有効な反撃ができているか? ミャンマーの人たちの戦いに学びたい」。
最新のミャンマー情勢
主催者の大洞さんが最近の状況について語った。
「昨年の秋から状況が変わってきている。三つの少数民族が一度に攻勢をかけて、軍側の拠点も次々に陥落した。軍の方が押されている状況になってきている。非暴力で闘った大衆的な反対運動に対して、ミャンマー軍は平気で銃を向け、人々を次々に殺した。この時点でミャンマー軍は終わっていた」。
「ミャンマーは、軍による完全支配だ。国会とかを通さなくても自分たちが勝手に財源を使うことができている。NLD政権の時代にも二重権力状態で、軍の力を打ち砕くことはできなかった。少しずつでも変えていこうとして選挙で勝利して、憲法を変えていこうとした時に、クーデターが起きた。戦いはまだまだ続いている。すぐに軍政を倒せるとは思わないが闘い続ける人たちがいるかぎり、日本での支援を続けていきたい」。
質疑応答
以後、講師との質疑応答の一部を紹介する。
――日本と国軍の繋がりついては?
なかなか表に出てこない。日本財団の笹川陽平が何をしているのか。2020年の選挙、彼は国際的選挙監視団の一員として、ビルマを訪問して不正はなかったと言った。そのすぐ後にクーデターが起きた。笹川は少数民族和平大使、日本政府は彼の力を利用しようとしている。少数民族の人たちにも影響力がある。軍事政権を実質的に認めている。とんでもない人だと私は思う。何十回とビルマを訪れ、いろんな立場の人と話をしてきている。そんな日本人はめったにいない。軍との利権については分からない。
日本ミャンマー協会の渡邉秀央とその息子はやばい人たちだと思う。在日のミャンマーの人たちは日本の外務省に抗議デモをするが、その次に行くのは日本ミャンマー協会だ。軍と手を組むのはやめてほしいと。どういう形で手を組んでいるのか、日本ミャンマー協会に加盟している建設会社とか、商事会社などが軍と結びつけて大きな事業をやらせる。日本がもうかるようにしたりしている。これも表に出ない。
このままいくと軍はますます劣勢になるだろう。去年の10月から、国軍の士気はどんどん衰えている。投降する兵士が増えている。50万の兵士が今や30万人を切っていると言われている。だけどこれが完全に、ひっくり変えるところまではいかないだろう。日本政府は何をすべきか。まず、軍との関係をきちんと切る。ODAを使ったものだとか、軍と日本の大企業とのゆ着をただしていく。
そして、民主派の政府、国民統一政府(NUG)をきちっと日本は認めるべきだ。これが実現すればすばらいしいが。私も何度か通訳したが、ミャンマーの民主化を支援する国会議員連盟が日本にある。議員会館などで集会を開いている。日本の政府が人道援助をミャンマー政府を通して援助している。だけど議員連盟はそうじゃなく、タイを通してNGOを利用して、ミャンマーの実際に必要な民主派の人たちの所に、援助が届くようにすべきであると主張している。こうしたことが積み重なっていけば、ますます軍の力を弱めていく。
ウクライナがありガザがあり、ミャンマーへの関心はどんどん薄れていくという危機感、あせりを在日ミャンマーの人たちは持っている。そういうじゃなくて、しっかりとミャンマーにも支援をしていく。日本政府はミャンマー軍に対して制裁を加えることだ。
――在日ミャンマー人のことについて
ミャンマー人が日本で住むことはたいへんなことがある。健康保険とか年金とか、子どもの教育などいろんなことを抱えている。それに対する支援を日本社会はもっと考えるべきた。出入国管理法で、制限をしようとしている。難民申請を3回以上した場合には強制送還の対象になると言い出している。人命を断つ人も出てくる可能性があり、けしかんことだ。
難民としての決定を認めないことに対して取り消しを求める訴訟でビルマ語の通訳をしたことがある。これは本当にすさまじい。検察庁・入管側が例えば反対尋問で、人をばかにしたような質問をする。あなたは日本人の女性と結婚したビルマの男性がいたとする。結婚相手が日本人なので在留資格を得る可能性が増える。それを、本当に通訳して恥ずかしかったが、あなた結婚したのは本当ですか、こういう聞き方をする。いっしょに住んでいるのですか。同じ部屋に寝ているのですか。こういう失礼な質問をして、ベットですか布団ですか。
日本の当局の人はあいつらのやることは信用できないと見る。そう簡単に在留資格を認めない。いまの世界に逆行している。そういうものを改めていく。この世界にミャンマー人も日本人もいっしょに生活しているんだ。彼らの状況を理解し、困っていることを助ける。日本社会全体が考えなければいけない。
ミャンマー問題を考える会は今後とも講演会・学習会を継続するとのことです。期待したい。 (M)

「ミャンマー民衆は軍への怒りが燃えあがっている」
と報告する田辺寿夫さん(5.1)
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