4.19「ウクライナについて語ろう」
被害の現状と戦う人々の気持ち
國谷光司さん(ウクライナ研究会)の報告から
【東京】4月19日午後2時から、巣鴨地域文化創造館で、171回目の草の実アカデミーが開かれた。テーマは「ウクライナについて語ろう」。報告者はウクライナ研究会の國谷光司さん。國谷さんは2022年からウクライナに通い支援を続けている。彼のリアルなウクライナ報告だ。
戦死者の葬式に参加して
2022年と202
3年、通算で4カ月弱ウクライナに滞在した。2023年はレンタカーを借りて、一人でやばくて行けないという以外のウクライナをほぼ回った。この前スミのど真ん中に、巡航ミサイルが2発撃ち込まれた。
国境地帯を取材していたら葬式があった。知り合いの親戚が東部のあたりで戦死して、1100キロ離れたベラルーシに近い町まで運ばれてきた。可哀そうだったのが、亡くなった知らせがあってから遺体が届くまでお母さんが、家で着ていたセーターと写真を抱えてずっと泣き続けていた。キーウではない所で、友達と交代してたまたま撃たれた。
すごい田舎だ。ウクライナは幹線道路があって、脇道にそれると雑木林があり、そこを入ると田舎道になる。そこに入った所から花が敷き詰められていた。ここで軍服を着ている人たちが郷土防衛隊だ。
妹3人がいる。すごいお兄ちゃん子だ。(父母親や妹たちが遺体を囲み、泣きじゃくる映像が流される)小さな村なので、村人が総出で葬式を行った。
ロシアがドンバスの方に侵攻してきて、一番多く出兵したのは西ウクライナの人たちだ。一番きつい所に行かされている。ナショナリズムが強い。ルビシンの街は基本ウクライナ語しか通じない。
何でウクライナがこんな目に遭わなければいけないのかという、怒りが湧いてきている。
爆撃されたスミの街
最近のミサイルで襲われたスミの崩壊した街の様子。建物から火が出て、死体が道路にころがっている。センターには僕の知り合いも住んでいた。軍の施設など普通の大学や民間の建物のある所が襲われた。
戦争が始まってから3年経っている。スミというのはハルキューにも近い。どちらかといえば、ロシア語話者がほとんど。今の警官が話しているのはウクライナ語だ。ロシア語圏内だった所がみなさんウクライナ語でしゃべるようになった。それだけ「ノーモアロシア」になっている。
私がウクライナに関与してから20数年経つが、家族みたいな人たちばかりだ。私の周りにいた人たちが戦場に行くようになっている。私はバイクに乗る。ウクライナではバイクに乗る人が多い。ギャングのバイカー集団がいて、彼らはいま全世界組織。2022年にその中の一人が志願して戦場に行った。右足撃たれて戻ってきて、治ってゆっくりしているところだ。つい最近また戦場に行った。
ロシア軍に攻撃されて、破壊された小学校とかを修復して、シェルターを作っている人がいた。彼がすごく可哀そうだったのは全部手弁当で、おカネがあるうちは修理を一生懸命やるけど、おカネがなくなるとすぐ仕事に戻って、資金を貯めてまたやる。なかなか続けて出来ないので、修理にすごく時間がかかった。たまたま私が知り合いになった在日ウクライナ人のNPO法人がある。救急車とかをウクライナに送ったりとか、脚をなくした人の義足とかを兵士のリハビリのためにやっている。日本で一番信頼できる支援団体だ。彼らとつないで資金援助を行った。
愛する人のために戦う
キーウは古い街なので歴史的建造物がたくさんある。それが結構壊されている。それを修理して、後に残そうと活動をしているグループ。そこの代表だった彼に連絡したら、徴兵されていまドローンの操縦をやる研修を受けている。
いいやつがどんどん戦場に行っている。悔しいのは彼らに対して、何もしてあげられない。彼も本当は行きたくない。でも3年間ずっと休みなく戦場に出ている人たちもいる。新しい兵士は絶対的に必要。誰かが行かなくてはいけない。見送る方としては非常につらい。知り合いの何人かが亡くなっている。
救急医療チーム、前線の近くでベースを持っていて、戦場でケガして、今度やばいよと言うと、護送車のような救急車で迎えにいく。応急処置をして、大丈夫であれば、近くの病院へ。重傷であれば、ドニエブロまで送って緊急手術。
「何のために君らは戦うのか」と聞いたら、「大統領のためでも国のためでもない、自分の家族とか恋人とか愛する人を守るために戦う」と答えた。彼らは戦争が好きなわけでもない。喜んで戦っているわけではない。自分たちがそうしないと、ウクライナを守れない。ウクライナを守れないとなると自分の家族もどうなるかわからない。彼らはブチャの惨劇を知っている。ロシア軍が入ってくればどうなるか分からない。それを食い止めるためには、僕らがやらなければいけない、という強い信念。でも亡くなった。
ウクライナに行き現状を見て欲しい
今ウクライナに行こうと思ったら行ける。日本人に対しては退避勧告が出ている。出来れば行かないようにと。細心の注意を払うのは前提だが、できれば行って実際に見てもらいたい。今の日本人、戦争を経験している人はいない。戦争って何か分からない。例えばキーウに行けば、空襲もあるけれど、ごく普通の生活もある。だけど、その中でスミのように戦争を目の当たりにする。そこをもう少し日本人として、感じてもらいたい。
その反面、ロシア人観光客がヨーロッパは入国が難しいが、東京の観光地にロシア人すごく来ている。ヨーロッパで制限しているものをなぜ日本はそのままビザを出して受け入れているのか、僕は首をかしげるところがある。
ロシア人の6割はプーチン支持で、戦争についても支持していて、ウクライナが悪いと思っている人たちがいる。心の中は反戦を思っている人たちもいる。それで日本に来ておカネ使うのなら、もっと別にやることあるだろうと思う。ロシアとどう付き合っていくべきか考えてほしい課題だ。
実際に出来る支援を
2023年はオデーサの訓練施設。これから前線に行く兵士のための応急手当の講習をやってそれが終わったら前線に行く。この中の何人が生きているのか。首とかを撃たれた場合に、どうやって止めるか、そういう講習を彼らは受けて、これは撃たれた時に銃創とか穴があく、血を止めるのに、包帯をどんどん詰めていく。トレーニングの用具、人間の肌みたいな銃創のような形になっていて、赤いパイプがあるけど、赤い液を常に押して出るようになっている。これで詰めていって血が出なくなったら、止血がちゃんとできますという分かるような機械だ。こういうのを彼らは求めている。
ウクライナに行くと普通に一杯市内を軍服を着て歩いている。戦地に行く人たちに会っているが非常につらい。彼らの無事が確認できないと病んでしまいそうなくらいつらい。でも、何かしないと、彼らにとって、彼らが生きる術、ケガをしても出来るだけ死なないように止血帯を日本から送るとか持って行くとか、銃で撃たれた所に空気が漏れないように、抑えるシールがある。そういうものを送るとか、何とか命を繋ぐための支援をやっていって、精神的に持っている感じだ。
みんな明るい。だから余計に辛い。
(М/文責編集部)
質疑応答
◦ウクライナに行くには幾らぐらいかかるのか。
パスポートさえあればいつでも。ポーランド経由もあるしウィーン経由も。ウィーンから1本だけ列車が出ている。飛行機代はエジプト航空でウィーンから成田まで6万余円。
空襲を受けて、崩れたガレキ、実物は迫力が全然違う。焼け焦げた臭い。爆撃は普通に住んでいる所を、生活がそのまま崩れる。子どものおもちゃとかクレジットカードとかが現場に落ちている。多摩ニュータウンぐらい大きな地域が全滅。その中を上がって行ったが洗濯機やレンジが黒焦げ。電気も水も止まっているが他に行くところがない人が住んでいる。可哀そうだ。何か買っていって渡したけど。
◦ウクライナへのNATOの拡大が原因だという意見や強制的な徴兵制への批判があるが。
徴兵する部署があって、街を歩いている人を連れていってしまう。実際にあって問題になっている。もう一つは汚職の問題。ずるいことをしているのに。きちっとみんなやっているのであれば、いやだけど行くよ。徴兵逃れとか汚いことをやっている人もいる。問題になっている。
NATOの拡大が問題だという意見があるがそれは関係ない。国連憲章にも違反し、国際法にも違反しているロシアが侵略し、ウクライナ人を凌辱していい権利なんて一つもない。どっちもどっちは絶対にない。120%ロシアが悪い。それにつきる。
プーチンが育った環境、彼がKGBに入って、国民を管理するというところを見せつけられて、自分のものにしていった。古き良きロシアとかソ連にノスタルジーを感じる人もいるが、プーチンが考えている支配をそれとリンクしてしまった。ロシア人の中でもプーチンを支持する人たちが増えてきた。後は教育の問題だ。

報告する國谷光司さん(4.19)
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