南京大虐殺83年12・20映画と意見交換会 ③

かけはし 第2659号 2021年3月29日

私たちは南京・中国の人々とどのように手を結んで行くことができるのか?

報告まとめ(南京・沖縄をむすぶ会事務局長 沖本裕司)

2.日本の中国侵略と南京大虐殺

ミニー・ヴォートリンの日記

 ヴォートリンは1912年から28年間、キリスト教伝道団として中国での女子教育に従事。1919年から、金陵女子大の教師に。南京安全区国際委員会のメンバーで、南京での日本軍の様子を日記に記録した。1940年、疲れ果て帰国し、療養生活の後、1941年、ガス自殺。
12月1日 今晩の記者会見で、安全区の存在を公表。食料、住宅、財政、公衆衛生の4つの委員会。南京市から米と2万ドル。
12月4日 1年前の活気あふれる、明るくて希望に満ちた南京を思うと気持ちが沈んでくる。分別ある人間がどうして戦争を阻止できないのか。
12月11日 何日間も城外・城内に激しい砲撃。市街は悲惨。マギーの情報では、たくさんの死骸が。
12月13日 中国兵の略奪、爆撃、大砲による砲撃という三つの危険は去ったものの、四番目の危険が目の前に。私たちの運命は勝利軍の手中にある。
12月15日 日本軍は掠奪、学校の焼き払い、市民の殺害、女性の強姦。武装解除された1000人の中国兵は、国際委員会は助命を要望したが、連れ去られ、射殺か刺殺されているだろう。
12月16日 食料、寝具、金銭も奪われた。今夜トラック1台が通過。8~10人の少女が乗っていて「助けて」と叫んでいた。……軍事的観点からすれば、南京攻略は日本軍にとって勝利とみなせるかもしれないが、道徳律に照らせば、日本の敗北であり、国家の不名誉だ。
12月17日 疲れ果て怯えた目をした女性が続々と校門から入って来た。昨夜は恐ろしい夜だったようだ。12歳から60才の女性が強姦された。……日本の良識ある人々に、恐怖の事実を知ってもらえたらよいのだが。
12月20日 強姦しようとした兵士を将校が叱責して放免。その程度では、卑劣な行為は止まらない。

石川達三の『生きている兵隊』(1938年)

 南京での日本軍の暴力の実態が世界に知れ渡った。知らされていないのは、当の日本の国民だけだった。日本政府は言論統制を強化。1937年9月、内閣報道部、11月、陸海軍に報道部を設け、検閲を徹底した。
『中央公論』特派員として南京攻撃の日本軍を取材した作家の石川達三は、帰国して直ちに『生きている兵隊』(中央公論、1938年3月号)を発表。初版自序に「あるがままの戦争の姿を知らせることによって、勝利に倣った銃後の人々に大きな反省を求めようとするつもりであった」と記した。
殺人、略奪、強姦、放火等の叙述が生々しい、「皇軍」の実態を描くこの小説は即日発売禁止に。発売禁止の理由は、「聖戦にしたがう軍を故意に誹謗したもの」「反軍的内容をもった時局柄不穏当な作品」とのことだった。作者の石川達三は、「新聞紙法違反」で出版社と共に起訴され、有罪に。判決理由は、「皇軍兵士の非戦闘員殺戮、掠奪、軍紀弛緩の状況を記述したる安寧秩序を紊乱する事項」の執筆、と述べた。日本政府は言論統制で南京の真相を覆い隠した。
戦後、伏字を復刻して発行。日本の戦時暴力・加害と被害の実相を書いている。

南京の真相の証言

 『天皇の名のもとに』には、京都第16師団第20連隊傘下の2人の兵士、東史郎と上羽武一郎の2人が主に証言している。この連隊は上海から北側を通って南京へ攻めこんで行った。
東史郎さんの証言は『わが南京プラトーン一召集兵の体験した南京大虐殺』(1987年、青木書店)に詳しい。
また、京都16師団傘下の軍隊の暴力は、下里正樹『隠された聯隊史』正・続(1987年、青木書店)に詳しい。
松岡環さん編著になる2冊の本、『南京戦―閉ざされた記憶を訪ねて(元兵士102人の証言)』(2002年、社会評論社)『南京戦―切りさかれた受難者の魂(被害者120人の証言)』(2003年、社会評論社)は、南京の加害と被害の実相をあぶりだしている。
家族と共にアメリカに逃れた両親から南京大虐殺の話を聞いて育った、在米3世のアイリス・チャンは、南京大虐殺を「忘れられたホロコースト」と定義した。情熱を傾けて執筆した『ザ・レイプ・オブ・南京』(米国で1997年、日本語版は同時代社、2007年)は、欧米で大きな反響を巻き起こしたが、日本では右翼からの激しい攻撃を受けた。その後、アイリスはうつ病をやみ36歳の若さで自ら命を絶った。戦時暴力はいつまでも尾を引き人間を破壊していく。南京大虐殺を、侵略した国の国民は決して忘れてはならない。

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