「爆弾ではなくパンを!」 民族主義に抗する左派の闘い
モハメド・ファルーク
核競争は民衆の苦難を増すだけだ
カシミールでのインド-パキスタン戦争と両国間の軍備競争に果敢に反対してきたのはラディカル左翼だけである。
カシミールの休戦ラインに沿ったインドとの小競り合いは、ナワズ・シャリフ首相にとって何よりの天恵である。パキスタン・ムスリム同盟(PML)政権は、インドとパキスタンによる12カ月前の相互しっぺ返し的核実験の後に起こった民族主義的熱情に再点火しようと、絶望的な試みを行っている。戦争は、政府が直面する政治・経済危機の激化から注意をそらす歓迎すべきできごとである。
国営のTV・ラジオや、長年にわたる反インド感情の鼓吹によって眼をくらまされてきた多くの新聞は、核兵器の冒険を賛美して政府に手を貸している。
政府の支持者は、大衆的な核兵器支持の感情を示そうとする宣伝で、首相の地元であるラホールの市街をうめつくした。しかし3000以上の平和運動活動家が5月28日にパンジャブ州議会の建物のまわりに結集し、核兵器の錯乱に対する反対の意思を表明した。彼らは「爆弾ではなくパンを! 爆弾ではなく教育を!」と叫んだ。
このデモは、パキスタン労働党と共産主義者のマスドール・キサン(労農)党が協力して組織したものだったが、政党、コミュニティー組織、労組、学生自治会など社会の各分野をつらぬいたグループの代表も参加していた。
残念ながら、公式の旗やポスターの大きな背景画は、通行人の一部にこれは核兵器賛成のデモではないかと混乱させるものだった。しかしその他の多くの人びとは、この抗議行動の性格を理解するやただちにVサインを送った。
名高い左翼のリーダーであるタヒラ・マザル・アリは、多くの人びとが経済的辛苦に駆り立てられている中でなされる公式の祝賀行事は自殺的だ、と遺憾の意を示した。「それはまったく愚かなことだ。われわれには爆弾ではなくパンが必要だ。われわれには住む家、着るもの、教育、そして非核地帯が必要だ」「支配者が祝っているのは飢餓、貧困や、自殺なのか」と彼女は述べた。彼女は、この地域における核競争をただちに止めるよう要求した。
パキスタン労働党のファルーク・タリク書記長は、パンジャブ州法相ラジャ・パシャラートが「平和運動活動家は『裏切り者』であり、『爆弾てはなくパンを』は『反民族的』スローガンだ」と述べたことを批判した。
タリクによれば「5月28日はバルチスタン州(核実験や核廃棄物の投棄が行われている州)では、暗い日と見なされている。シンド州も、政府が組織したいわゆる祝賀をボイコットした。ラホールでのこのデモは、パンジャブの労働者階級、コミュニティー組織は、労組、そして学生が祝賀行事に賛成していないことを立証している」。またタリクは、パンジャブの福祉相ピル・ベンヤミンが、非政府組織(NGO)に嫌がらせや脅しを行っていることを批判した。
元連邦政府閣僚で「平和と民主主義のためのパキスタン-インドフォーラム」の呼びかけ人であるムブハシャール・ハッサンは、「実効支配線」(LoC)でのインド・パキスタン間の砲爆撃の即時中止を要求した。彼はさらに、すべての問題への平和的解決を求めるテーブルに双方がつくことを求めた。「戦争は解決にはならない。それは勤労大衆にさらなる悲劇を付け加えるものだ」と彼は述べた。
サイド・アシム、テムール・ハッサンなどの著名な政治活動家も、この場で発言した。アスガル・アリはパンジャブの農民組織からの平和の歌を歌った。そのテーマは「システムが変化するまで戦争は続く」だった。(筆者はパキスタン労働党の指導的メンバー)(「インターナショナルビューポイント」99年7月号)
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