アフリカ・コロナ禍の現実

経済的・社会的危機一層進行

ポール・マーシャル

 新型コロナウイルスのパンデミックは、アフリカの経済・社会・食糧危機を悪化させている。この悪化によって、人々は大きな打撃を受けているが、その打撃はもっとも不安定な人々において著しい。
 新型コロナウイルスのパンデミック以前のアフリカの状況は、二〇一四年から二〇一五年にかけての商品市場の崩壊の結果として、経済の弱体化が目立っていた。その結果、多くの国で経済の基盤となっている原材料の輸出が大きな危機を経験してきた。これは明らかに石油輸出国の場合に当てはまるが、銅に関してはザンビアとコンゴ民主共和国、ボーキサイトに関してはギニアも同じ状況であった。
 これらの国々の多国籍企業への極端な依存は、収入が変動することを意味している。富裕国における危機はアフリカではさらに増幅しており、何らかの手段をとる予算的余裕がなく、社会的な保護もない中で、民衆に深刻な結果をもたらしている。

帝国主義の責任
を隠す不況予測


新型コロナウイルス危機は明らかにこの状況を悪化させるだけである。IMFは四月には国内総生産(GDP)の成長率が一・六%低下すると予測していたが、世界銀行は二・一%から五・一%の間というより高い数字を予想していた。
IMFは六月に計算を修正し、現在は三・二%の景気後退を予測しているが、これは世界銀行の悲観的な予測に近い。
フランスの開発機関(FDA)の東アフリカ地域ディレクターは「東アフリカ:新型コロナウイルス後に何を変えなければならないか」と題したコラムの中で、「大陸内の貿易上のつながりが、国際的なつながり以上に弱まっている」と述べている。その筆者は政府や行政に責任を押し付けている。それは事実ではあるが、この状況がどのようにして生じたのかを一度も自問自答していない。
アフリカの富裕国への依存は、何世紀にもわたる植民地主義、そしてその後の帝国主義的な政策の結果である。ヨーロッパは、アフリカにレント経済(訳注)を押し付け、地域市場の発展を犠牲にして、アフリカを単なる原材料備蓄の役割に限定してきた。それ以来、アメリカと中国を筆頭とする先進工業国は、世界規模でのこうした役割分担の恩恵を享受してきた。われわれが何年も聞かされてきた美辞麗句にもかかわらず、国民のニーズを部分的にでも満たす地域経済の発展を促進するためには、富裕国の政策変更をあてにしてはならない。
フランスでは、自由主義的なシンクタンクであるモンテーニュ研究所が、アフリカにおけるフランス企業の状況についての分析を発表している。この種の研究に見られる決まり文句を超えて、この研究所はフランス企業が景気回復に乗り遅れることを主な危険だと考えている。
「モンテーニュ研究所の評価をさらに詳しくするために二〇社ほどの企業を集めたところ、われわれは主なリスクが活動の再開を逃すことであるという結論に達した。すなわち、われわれは安全を確保しつつ、迅速に行動しなければならない」。
ヨーロッパ企業はすでに食品産業で準備を進めている。EUの補助金を活用して、乳製品企業は売れ残りの牛乳を粉末状に保存し、西アフリカでそれを販売しようとしている。その原理は「一定数のメーカーが乳脂肪を使ってバターを生産し、非常によい価格で販売してきた。そして、残った脱脂粉乳はパーム油を使って再び油脂化され、新興国では現地の牛乳よりも安い価格で販売されていた」というものである。
それは武力紛争によって大きな被害を受けているアフリカ大陸の畜産部門を危機に陥れるものである。

対外債務帳消し
が絶対的に必要


債務は、アフリカの経済的絞殺のもう一つの例である。新型コロナウイルス危機の間、アフリカの金融機関あるいは政治機構の長たちがむしろ控えめな態度をとっていたのは事実である。債務の帳消し、および国家財政に影響を及ぼす返済の帳消しを要求するのではなく、彼らは単にモラトリアム、つまり一時的な債務返済の停止を要求しただけだった。その一方で、富裕国は同時に、特に大規模産業への巨大な援助を通じて、経済を再生させるために数千億ユーロを支出することを発表した。
いずれにしても、このようなモラトリアムは債務全体には適用されず、貿易メディアが示すように「アフリカは、非二国間債権者に返済するための手段を外貨で見つけなければならないだろう。この非二国間債権者とは、アフリカ諸国が発行したユーロ債や他の銀行融資に投資した民間投資家のことである」。
CATDM(不当債務帳消し委員会)は、その論文の一つで、低所得国では債務返済の割合がGDPの平均七・八%であるのに対し、医療に対する支出はGDPの一・八%しか占めていないと指摘した。
食料をめぐる状況はすでに困難な状況にあった。二〇一九年末には、七三〇〇万人の人々が栄養失調の犠牲者となっていた。三年間の干ばつに続く大規模なバッタの侵入に直面して、東アフリカの作物の多くが大きな被害を受け、数千万人の人々が脅威にさらされている。中央アフリカ共和国、南スーダン、ソマリアのような国にとっても、軍事的紛争が続いているがゆえに、状況は非常に危機的なものである。
新型コロナウイルスの流行は栄養状態の問題を悪化させ、他の地域でも緊張を生み出している。とりわけもっとも不安定な人々を直撃している。
国連の報告は西アフリカと中央アフリカにおける飢餓に言及し、食料不安を抱える人々の数が一三五%も増加したと述べている。同様に、南アフリカにおいても食料不安を抱える人々の数は九〇%も増えていることも報告されている。
アフリカにおいても他の地域と同じように、新型コロナウイルス危機は、人々の社会的ニーズを満たす方向へと経済を再編成する必要性を示している。そのような変革は、アフリカの指導者や富裕国の政策課題には過去においても現在においても存在しない政治的意思を意味している。唯一の解決策は、民衆が政治の場に大衆的・爆発的に登場することなのである。
(訳注:レント経済とは、「レント」=石油や鉱産物などの天然資源収入に依存した経済システムのこと。)
(『インターナショナル・ビューポイント』二〇二〇年七月二〇日)
(ポール・マーシャルは、『インターナショナル・ビューポイント』の通信員。フランスの第四インターナショナル・メンバーで、『闘うアフリカ』の編集者)

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