アメリカ労働党が第1回大会

二大政党支配を突き崩す 大衆的労働者党の建設へ

ジョン・ヒンショー

百万人以上の労組員を代表

 昨年11月、アメリカ労働党が第1回基本組織大会を開催した。労働党の大会には、6つの全国労組、200以上のローカルユニオンが参加している。それは、長きにわたって続いてきた民主・共和二大政党制を突き崩そうとする、アメリカ労働者階級の新しい挑戦である。新自由主義に対する大衆的で階級的な反撃が始まる。

  98年11月13日から15日までピッツバーグにおいて、6つの全国労組、200以上のローカルユニオン、労働党の39の支部のそれぞれの代表1400人以上が、党の第一回の基本組織大会に集まった。
 全体で百万人以上の組合員(そして数千人の党員)を持つ労働組合を代表する大会代議員は、1996年、クリーブランドでの創設大会で採択された包括的な綱領を党に再度付託した。
 1996年の大会は、党の枠組み、その組織構造と綱領を形成することにほとんどが費やされた。党建設の特別の戦略を発展させることについては、ほとんど時間がなかった。こうして、クリーブランド大会から2年たって、代議員たちには、課題別キャンペーン、選挙キャンペーンを通して党をいかに建設するかについて詳しく明らかにしていく必要があったのである。
 四大課題(「公正な医療」の旗の下での家族医療制度、社会保障の民営化反対、労働者の権利法、公正な貿易)のキャンペーンが始まった。それは、党を組織労働者の闘争に根づかせ、党員を大衆的に獲得するのに資するよう計画されている。このキャンペーンは、すべての人に生活維持賃金を得る雇用を保障しようとする憲法修正28条の運動を補充するものである。
 また大会は、現在死刑執行のおそれのある「労働者階級の権利の勇敢な防衛者」ムビア・アブ=ジャマルの新しい裁判を求める、党の黒人協議会が主導した決議を採択した。
 労働党は将来の選挙において候補者を擁立することを可決したが、候補者の対象は党員のみ(すなわち「連合」候補ではなく)であり、また労働者の支持や財政的支援が信頼するにたる運動を盛り上げていくのに十分な諸地域にのみ限られる。

労働者階級の政党が必要だ

 労働者階級に属するアメリカ人のほとんどは、自らの置かれている状況、そしてこの国の状況について困惑している。また十分な賃金や補助的支給のある雇用がないこと、医療、保育・介護や教育の高価格について困惑している。彼らは、自分たちが退職した時には社会保障が存在しないことにおびえている。
 労働組合活動家の多くは、北米自由貿易協定(NAFTA)のような諸政策が、アメリカ合衆国、メキシコ、カナダの人びとや環境にとって最善の利益をもたらすものではないということを知っている。
 労働組合を組織しようとしてきた人びとは、言論や結社の実質的な自由、そして組合協約を獲得するためだけでも、一連の火の輪を飛びぬけなければならないことを知っている(資本家や政府はその輪にガソリンをひたしている)。
 大企業が、2大政党や政府の政策を過剰なまでに支配しているという確信は、広くいきわたっている。そして前回の選挙でも、国会議員選挙に立候補した現職の九五%以上が再選された。AFL-CIOは、NAFTAに賛成した政治家を、彼らに対立している連中はもっと悪いという理由で支持し続けている。
 それは勤労人民の、勤労人民による、勤労人民のための組織としての労働党をひるませるような問題である。それはダビデに匹敵する労働者が企業のゴリアテに対して立ち上がる、ここ数十年で初めての試みである。
 企業は驚くべき額のカネを持っており、それは彼らがマスメディアの大部分と、ほとんどすべての政治家を所有することを可能にさせている。労組活動家は、民主党が彼らの足首を切り落とすことを理解しても、共和党はひざから始めることを知っている。さらにほとんどの人びとは民主党内であまりにも長く活動してきたので、彼らはどのようにしてそこから決裂するのかを想像することもできないのである。
 事態はさらに悪化している。労働者の八五%は労組に組織されてさえいない。こうして労働党の諸問題は、アメリカ政治システム、資本主義、そして労働運動の複雑な諸関係の核心に立ち入ることになる。
 この挑戦、あるいはその利益が次の世代に生じそうな、体力を酷使する政治的マラソンを楽しむ人びとだけが、理解すべきである。臆病者はここで理解するのをやめることができる。

党の選挙闘争をめぐる討論

 労働党がメディアの関心と分析を引きつけてきたのは、その選挙戦略の問題であった。1996年の創立大会は、連合や支持や労働党候補の擁立の決定を排除したが、それはほとんどの政治的分析をあからさまに混同してしまう措置であった。
 左翼ジャーナリストの多くは、『ネーション』誌のアレクサンダー・コックバーンとジョアン・ワイピジュスキーの取った見解に従った。彼らは、選挙に立たないという立場を民主党との真の決裂に気が進まないことの証拠として見なしたのである。
 ベテランの労働ジャーナリストであるジェーン・スローターやキム・ムーディーのような支持者の中でも、懐疑主義が支配していた。『レイバー・ノーツ』の最近号で、ムーディーとスローターは、ほとんどの人びとは選挙をやらない政党などについて推測することができない以上、労働党は独自候補を擁立すべきだと主張した。
 こうした意見は、選挙プロセスは党員やオルガナイザーやローカル・ユニオンの支援を獲得すると主張する党員の一部の気持ちとぴったり合うものである。来るべき数年のうちに、候補者を擁立するのに熱心な各支部が党の地域、州、全国レベルでその提案を行うのにつれて、この理論はテストにかけられることになるだろう。
 党は、「政治への組織化アプローチ」を呼びかけた。これは労働者と左翼の双方による過去の実践からの決別へのサインであろう。AFL-CIOは、支持やカンパやスタッフやメンバーの動員を通じて、候補者を当選させることに有効な役割を果たしてきたが、「親労働者」の政治家が労働者に忠実であることはきわめて稀であった。
 民主党が議会と大統領職を支配していた一九九三年においてすら、組合運動はその償いとしてNAFTAを与えられた。クリントン・スタイルの民主党は、「二つの悪のよりましなもの」というよりは、「二つのろくでもない悪」の証しである。
 AFL-CIOは近年の選挙において疑いなく民主党を支援してきたが、こうした政治家たちがなんらかの実質的な改良を法律化してきたかについては極度に疑わしいものがある。
 左翼の典型的な選挙運動をとってみれば、その本質において「教育的」なものであり、社会主義諸政党を現在ある形での活動家チームにしていくものであった。労働党内のだれも、歴史教科書の中の二%の脚注的存在になろうとは思っていない。
 党とその政綱の建設が労働党員の目標である。ラルフ・ネーダー(訳注:著名な消費者運動の活動家)が大会であいさつしたが、労働党員のほとんどは、彼が「緑」(その政綱への支持を彼は拒否した)の選挙名簿で大統領選挙に立候補したことは、労働党の付属的取り決めの受け入れがたい違反であると主張した。労働党は、ほとんどもっぱら民主党を選任してきた新党(the New Party )との合同というアプローチをも拒否した。
 そして「緑」がニューメキシコ州とメイン州の多くで第三党になることに成功した一方で、いわゆる「妨害立候補者(スポイラー)」として行動する選択は、労働党には受け入れられなかった。それを望もうが望むまいが、この点で共和党右派を選出する実践的帰結は、労働党を沈没させかねない労働省内部の「津波」を引き起こす可能性が大きかった。

戦闘的労組内で強力な支持

 これまでのところ、組合活動家の支持は十分に広範なものであるが、企業との衝突を恐れない諸労組内で最強である。それは一般的に言って中規模の組織であり、とりわけ全米電機労組(UE――3万人)、石油・化学・原子力労組(8万人)、カリフォルニア看護労働者連盟(2万8千人)、全米鉱山労組(4万人)である。
 幾つかの大きなローカル・ユニオン、たとえばチームスターズ705(1万5千人)、国際デュポン兄弟社労組(2万3千人)、ディストリクト1199P(1万2千人)、SEIU250(4万人)も出席した。
 前回の大会以後、労組の中での支持は拡大してきた。たとえばUMWAは二年前にはほとんどだれも参加していなかったが、今回の大会には数多くのローカル(支部)から七十五人の代表が出席した。
 党員権を持つ者は不均等に存在している。マサチューセッツ州のUEのある小さなローカルには四十五人の労働党員がいるが、ペンシルバニア州の3500人の別のローカルでは党員は17人である。
 いくつかのSEIUローカルは労働党に参加しており、そのプロセスは、彼らに対するアンディー・スターン委員長の労働党大会への参加の招待状によって支援されていた。おそらく前回の選挙ラウンドでの民主党の成功のために、スターンはそれ以後、労働党を未成熟であると非難しはじめた。
 しかし、労働者は新しい思考の方法に比較的オープンであるというサインは、大会で発言した忠実な民主党員である鉄鋼労組の委員長ジョージ・ベッカーのような人の中にさえ示されている。ベッカーはその発言の中で、企業の欲深さを激しくののしったが、労働者が階級闘争に直面していると述べることを拒否し、むしろ民族主義的保護主義に依拠した(とりわけ、アジア通貨危機によって安価になった鉄鋼の輸入に反対した)。
 次のスピーカーであるカナダ自動車労組委員長のバズ・ハーグローブは、「階級闘争が存在しており、勤労人民は自らを代表する党が必要である」と主張した。

労働者の権利法案の組織化

 ひとたび党が百万人のメンバーを有し、さらに広範で深い労組の支持を獲得することになれば、労働党は、ありきたりの企業政治に代わる希望に満ちた真実の政治的オルタナティブを代表することになるだろう。問題は、こうした喜ばしい地点に到達するための容易な道はないということである――魔法の得票を得るような確実に勝利を収める候補者や、宣伝や、課題キャンペーンは存在しない。
 労働者が現にあるような苦境に立たされるまでには五十年以上かかった。ここから抜け出すのに同じ時間をかけるべきではないが、それには長い時間、多大な労苦と魅力的ならざる活動を要しそうである。デービッド・キャンベルが述べたように、階級闘争の本質を考えれば、われわれは単に自らを権力に選出するだけではすまないだろう。
 労働党は、メンバーや労組をその課題に獲得し、究極的には党に獲得するために五つの課題別キャンペーンを計画してきた。
 主要に工業労働者に向けた一つのキャンペーンは公正な貿易である。NAFTAから五年後、労働組合員はいまだにこの法案に激しく怒っていること、その影響が工業労働者に損害を与え続けているため、それはなんら不思議ではないことを、労働党員は報告している。
 労働者の権利法案の組織化は、職場を変革するための長期にわたるキャンペーンである。ほとんどの労働者は、職場におけるわれわれの自由な言論の放棄に慣れ親しんできたため、企業の言論の自由を守ることはNLRBが防衛する広範な反労組戦術の正当化だというアイロニーにほとんど気づかない。
 権利法案を職場にまで伸長することは、労働者を守るだけではない。それは企業の特権に鋭く切り込むものである。結局、現在のところ憲法修正一条はわれわれを政府から守るだけで、企業から守るものではない。
 社会保障キャンペーンは主として防衛的なものである。それは、部分的なものであれ全面的なものであれ社会保障の民営化の訴えを、たんなるあからさまな不当利得追求行為として拒否する。よく言われている経済成長や家族サイズの現実的な数値に応じられなくなった「危機」など存在しない。あらゆる不足(労働党は社会的セーフティー・ネットの広範な改善を主張している)は、カネ持ちへの課税によってまかなわれるべきだ。
 社会保障キャンペーンと、「公正な医療」制度の呼びかけは、理解することが容易で、すべての人の生活を実質的に改善する改革をめざして闘うために、非労働党員(あるいは将来の党員と言うべきか)の支持を引きつけるよう設定されている。

女性の選択権をめぐる論争

 保健医療キャンペーンは、大部分、女性の選択権をめぐる表現に焦点を当ててきた。結成大会は、普遍的な保健医療システムと結び付けて「全面的な家族計画と男と女に対するリプロダクティブサービス」という表現を採用した。今回のピッツバーグ大会は、「妊娠を継続するか中絶するかの権利をふくむ。われわれはあらゆる形態の強制的不妊化に反対する」と付け加えて、この表現を強化した。
 一部のグループは、政綱に堕胎という用語を入れるよう要求したが、この動きは大会全体、そして女性コーカスによってきっぱりと拒絶された。この部分を削除しようとする企ても、完全に打ち負かされた。
 討論のしめくくりにあたって、農場労働者組織委員会(FLOC)委員長のバルデマル・ベラスケスが大会で発言した。彼は、彼と彼の委員会のメンバーが人生は妊娠によって始まることを確信しているが、階級闘争における団結はもっと重要だと感動的に訴えた。
 ベラスケスが強調した問題は、FLOCが労働党を受け入れるかどうかということではなかった。もちろん彼らは受け入れる。問題は、労働党がFLOCを受け入れるかどうかということだった。その回答は総立ちの拍手だった。

次の時代を切り開くために

 どの党員がこうしたキャンペーン、課題、選挙を行うかは、大部分彼らにかかっている。原則化された労働者の政策を実践的なものにしていくための闘争は、この世代の中軸的な闘争である。われわれの子どもたち、そして彼らの子どもたちの運命は、その結果に大きく依存している。
 労働党に関心ある人びとは、労働党の全国事務所、加盟労組、あるいはあなたの近くの支部に連絡されたい。
(米「アゲンスト・ザ・カレント」99年1・2月号)

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