クルド民族に自決権を オジャランPKK党首の釈放を!

トルコ、イラク、イラン、シリアはクルド独立の権利を承認せよ

平井純一

世界各国で逮捕糾弾の闘い

 2月15日、ケニアのナイロビで、亡命し逃走中のアブドラ・オジャランPKK(クルディスタン労働者党――マスコミ報道ではクルド労働者党と表記されているが、ここではイスマイル・ベシクチ著『クルディスタン=多国間植民地』[柘植書房刊]の表記に従う。クルディスタンとは「クルド人の土地」の意であり、独立クルド人国家を創設しようとする意思が込められたものである)党首がトルコ当局によって拘束され、トルコに送還されて収監された。
 このオジャラン党首の拘束の経過は未だ不明な点が多いが、ギリシャ大使館に保護されていた同氏がトルコに引き渡されたことの背後には、トルコと同盟関係にあるアメリカ、イスラエルの情報機関が関与していた疑いが強いとされている。
 オジャラン党首の拘束に抗議して、ヨーロッパ各地やアメリカ、オーストラリア、日本でもクルド人たちによる大衆的な抗議行動がただちに起こり、各国でギリシャ大使館や国連機関などが一時占拠された。ベルリンではイスラエル総領事館に向かったクルド人の抗議行動に総領事館側が発砲し、四人が死亡した。
 一方トルコでは、軍によってクルド人の活動家が大量に拘束されるとともに、PKKの拠点とされるイラク領内のクルディスタンに対するトルコ軍の越境攻撃が続いている。
 オジャランPKK党首の拘束・トルコでの収監と、ヨーロッパ全体で150万人が居住するとされるクルド人の抗議行動は、全世界の人びとに「クルド人問題」の重要性とトルコによる弾圧政策の非人道的実態を改めて意識させることになった。

多国間植民地としての存在

 クルド人は、アラブ人、ペルシャ人とならぶ中東地域の先住民族であり、その地=クルディスタンはトルコ、イラク、イラン、シリアにまたがっている。クルディスタンの面積は約50万平方キロで日本の約1・5倍、人口も3000万人に及ぶ。しかし、このクルド人は「国家なき民族」とされ、一度も統一独立国家を形成したことはない(1946年1月にイラン領内のクルディスタンにおいて、ソ連軍の駐留の下で「マハバド=クルディスタン共和国」が樹立されたが、米英ソとイランの石油利権をめぐる取り引きの中で、ソ連軍が撤退。イラン軍の攻撃によって「マハバド=クルディスタン共和国」はわずか1年で崩壊した)。
 クルディスタンは第一次大戦後の帝国主義列強と現地支配階級の共同した分割政策によって、いわば「多国間植民地」とされ、第二次大戦後もそれが継続されることになった。シオニスト・イスラエルによって故郷を奪われたパレスチナ人民が他のアラブ諸国から、少なくとも「道義的」支援を受けていたのに対比して、クルド人の場合はアラブ諸国家からも完全に見はなされ、トルコ、イラク、イランの支配階級から激しい弾圧にさらされてきた。
 とりわけ1200万人のクルド人が住むトルコ(トルコの総人口は約6100万人)では、クルド人は民族としての存在さえ否定されている。クルド人は「山岳地帯のトルコ人」であり、クルド語は「トルコ語の方言」とされ、クルド語を話すこと自体が犯罪とされているのだ。たとえば、クルド人問題を研究してきたトルコ人社会学者のイスマイル・ベシクチは、その研究テーマゆえに軍事法廷によって12年の獄中生活を強制され、さらに新たに39年(!)の禁固刑に服役している。

トルコ政府は弾圧をやめよ

 しかしこうした弾圧にもかかわらず、クルド人はトルコへの同化を拒否してきた。その最大の政治勢力が、独立クルディスタンの創設をめざすPKKである。PKKは1970年代初頭に党首オジャランを中心に組織された非合法のクルド人マルクス主義グループに起源を持つが、1970年代後半にクルディスタンの独立を掲げて武装闘争を開始した。1980年のトルコ軍部によるクーデターで大きな打撃を受けたが、1984年から北クルディスタン(トルコ領内クルディスタン)で武装闘争を再開した。
 このPKKの闘争を弾圧するために、トルコ政府は全予算の15%を投入していると言われる。しかし、PKKへの支持はクルド人の中できわめて高い。われわれは、伝えられている誘拐による兵士徴募などのPKKの戦術について、それが事実だとすれば、支持することはできない。しかしクルド人に対するトルコの国家テロに反撃し、弾圧からPKKを防衛することが、批判にあたっての前提である。
 トルコでは既成政党が社会民主主義者から右翼まで、こぞってクルド人弾圧に手を貸している中で、第四インターナショナルトルコ支部も参加する新しい連合的左翼政党・自由連帯党は、クルド民族の自決権の承認を公然と主張して闘っている。
 トルコ政府によるオジャランPKK党首の収監、クルド人弾圧糾弾! トルコ政府は全政治犯を釈放せよ! クルド人の独立国家形成の権利を承認せよ!   

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