シリア・コロナ下で新たな民衆決起

われわれは生きたい!

ジョセフ・ダヘル

 シリアは多くの社会・経済問題に直面している。世界的な新型コロナウイルス・パンデミックがそれらを激しくすることになり、新たに諸々のデモを巻き起こしてきた。今年三月半ばにこのパンデミックが爆発する前、シリア住民の貧困率は八五%以上と評価された。その時以来それは確実に高まってきた。加えて、シリアポンドの価値は米ドルに対し、五月はじめ以後でおよそ一〇五%下落、昨年六月以後ではほぼ三六〇%下落と、着実に落ち込んでいる。シリア住民大多数の生活条件はますます悲惨になっている。これには、戦争が引き起こした大々的な破壊、および専制的なアサド政権の継続的な権威主義的で新自由主義的な諸政策の結果が含まれる。ちなみに前者はおよそ五〇〇〇億米ドルと評価されている。

抑えようのない
抗議行動の続発


 六月七日以来、スウェイダとダラアの地域で、また首都ダマスカス外縁部にあるヤラマナ市で、民衆的デモが突発してきた。それらは、高い生活費を厳しく非難し、アサド政権の退陣とその同盟者のロシアとイランの退去を求めている。デモ参加者の主なスローガンは、さらなる社会的公正と民主主義を求める呼びかけとして、「われわれは生きたい」だ。
 シリア政権は、これらの抗議の影響を最小化しようとして、米国の制裁を糾弾する対抗抗議に乗り出した。その上で警察はスウェイダの町で、デモ参加者に暴力的な弾圧を加え、彼らを逮捕した。
 民衆蜂起に導いた諸条件は今も存在している。この体制はそれらを解決できてこなかっただけではなく、むしろ悪化させてきた。その外国の同盟者による全面的な支援にもかかわらず、またその回復力にもかかわらず、アサド政権は解決不能な諸問題に直面している。容赦ない弾圧と組になった、国の深刻な社会・経済問題を解決する上での失敗が、批判とさらなる抗議行動を巻き起こしてきた。

不可欠な政治的
オルタナティブ


 しかしながらこれらの条件は、特に九年以上になる破壊的で殺戮的な戦争の後では、新たな政治的機会へと自動的に転換されるわけではない。一つの組織された、自立した、民主的な、進歩的で包括的なシリア人政治的反政権派の不在が、多様な民衆諸階級を団結させることを難しくしている。全国レベルで再度体制に挑戦するためには、この凝集が必要になるだろう。
 これが主な挑戦課題だ。抑圧、貧困化、そして社会的混乱があるとしても、先のような抵抗の現場における表現の中で、一つの進歩的な政治的オルタナティブが組織されなければならない。
 ダマスカスと他の地域の首都は、変わることなく彼らの住民を敵視する大規模な暴力を頼りにすることで、その専制的な支配を維持できる、と信じている。しかしこれは、この地域の民衆的抗議の爆発が見せつけ続けているように、破綻することを運命付けられているのだ。

▼筆者は、スイス系シリア人研究者であり活動家。この地域の民衆的抵抗運動に関するいくつかの著作をもち、「シリア・フリーダム・フォーエヴァー」ブログの創設者。中東北アフリカ社会主義者連合の共同設立者でもある。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年七月号)

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