パレスチナ 新停戦構想

シオニストもバイデンも狙いは第一局面食い逃げ
停戦はネタニヤフとハマスにはジレンマに

ジルベール・アシュカル

 5月最終週以来、ガザ回廊での進行中のジェノサイド戦争に関係するニュースが、バイデン米大統領が公表した停戦構想によって曇らされてきた。この構想は、イスラエルの統治機関がそれを承認済みと明示しないまま、イスラエルのものだとされた。

ネタニヤフが播く混乱の種


 メディアの評論家は、イスラエルの公式情報源によって公表される代わりに、ひとつのイスラエルの提案が米大統領によって公表されていると、むしろ奇妙さに気がついた。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相がいくつかの条件を断言することでこの構想から距離をとりたがっているように見えたとき、この混乱は拡大した。その条件は、明らかに先の構想に反し、あるいはそれを分かりにくくするようなものであり、そのもっとも重要なものは、ハマスの軍事的、政治的能力が完全に除去され、回廊全体に対するイスラエル治安部隊の支配が保証されるまで、攻撃を継続することに関する彼の主張だ。
 真実は、この明らかなわかりにくさは主にネタニヤフ自身を軸に回転している実体的混乱状態を反映している、ということだ。これは、シオニスト指導者がふたつの苦難の間から抜け出せないことに起因している。つまり、イスラエルの野党によって、また「防衛」相のガラントが率いる彼自身の党であるリクード内部の1グループによって支持を受けた米国の圧力、およびそれに対抗して、シオニスト極右の立場に立つネタニヤフの連携相手が行使する圧力だ。これらふたつの相反する圧力の性格とは何だろうか?

極右の目標はガザの植民地化


 彼が権力に復帰することを可能にしたクネセト内過半数を得るために、1年半前ネタニヤフが連携したふたつのネオナチブロックからの圧力から始めよう。よく知られていることだが、これらふたつのブロックは、たとえ一時的だけだとしても、ハマスとのどんな協定にも結ぶ利点は全くないと信じている。またかれらは、進行中の戦争の目標はシオニスト国家にとって、ガザ回廊全体を奪取すること、そしてそれを川と海の間の「エレツ・イスラエル」(イスラエルの土地)の一部としてその領土に併合することでなければならない、とも信じている。(これは、シオニスト極右が「大イスラエル」構想を南部ではシナイ半島国境で、東部ではヨルダン川で止め、それを縮小するよう強要された後、一方ではそれをゴラン高原へと北へ拡張し、南レバノン部分を渇望しつつも、かれらの共通目標になっていた)
 シオニスト極右の指導者たちは、ガザ回廊からガザの人びとを追放する――あるいは厚かましい偽善で彼らが主張するように、ガザの人びとを「自発的に」そこから離れるようせき立てる――ことを、そしてかれらをユダヤ人入植者で置き換えることを切望している。さらにかれらはこの目標を、ハマスやガザの他のパレスチナ諸派によって確保されている残りの人質の命よりも重要だ、とも見ている。

米と親米派狙う地域的軍事同盟


 他方、米帝国主義の主なふたつの別働隊は、かれらの国家的利益はシオニスト国家とアラブのワシントンとの同盟国を含む地域的軍事同盟形成によって達成される、と見ている。ちなみに後者は、大西洋から湾岸まで広がり、モロッコ王国、エジプト、サウジアラビア王国、アラブ首長国連邦、および他の湾岸協力会議の諸首長、そしてヨルダン王国だ。
 それは、トランプがホワイトハウスにいたとき大いに骨を折った構想であり、彼の試みは彼の後継者であるバイデンによって続けられた。バイデンは、この「拡大された中東」に関しトランプとほとんど区別できない者になっている。
 しかしながらこの構想の達成は、それに支えを与え、こうしてアラブの世論を騙す(関係諸政権に対する信用の中で)と思われるような、「パレスチナ国家」の設立を基礎にするパレスチナ問題に対するひとつの「回答」を必要とする。
 このビジョンにしたがったガザの運命に関する限り、それはオスロ協定から出てきたものへの回帰になると思われる。つまり、住民が集中するパレスチナ領域の管理任務を任されたパレスチナ自治政府であり、それが、シオニスト軍がそれらの領域を包囲し、住民を先の自治政府に加えて治安のやり方で監督する中で機能する、というものだ。

自身による停戦がバイデンの切望


 しかし諸々の経験は、占領と協力するパレスチナ自治政府だけでは民衆の抵抗を統制できない、ということを示してきた。米国の当局者とかれらのアラブの連携相手もまた、現在のラマラを本拠とする自治政府は、シオニスト軍が回廊の居住地域から撤退すれば、ハマスがガザの支配を取り戻すのを阻止できない、ということで一致している。
 したがってかれらは、理想的解決策はこれらの居住地域にアラブの「平和維持部隊」を配置することだろう、と確信している。それは、占領と協力するパレスチナ自治政府が住民の統制にあたって頼りにすることもできる部隊だ。フィナンシャルタイムスは西側情報源を引用して、アラブの三ヵ国、つまりエジプト、モロッコ、アラブ首長国連邦がガザへの派兵意志を示した、と暴露した。
 バイデンは、米世論の前で、特に伝統的な民主党支持者の中で、いくつかの界隈で味わいそうな選挙上の後退を限定する目的で、彼の政権の努力に帰することもできると思われるような停戦を必要としている。彼の政府は、「アルアクサの洪水」作戦を受けて設立されたイスラエルの戦時内閣をもうひとつの停戦構想に合意するよう説得しようと、猛烈な努力を払った。
 その第1局面は、6週間の休戦であり、その間に、ガザの人口密集域からのイスラエル軍撤退(オスロ協定に規定されたように)と並んで、一定数のイスラエル人人質といつものように大人数のパレスチナ人拘留者が解放されると思われる。人口密集域とされるこれらの地域は、ガザ住民のほとんどが追い出されていて、限定された避難地域に閉じ込められているために、実際は相当に縮小されている。

シオニストの本当の狙いは


 この構想は、その中で残りのイスラエル人人質とパレスチナ人拘留者の追加的一団が解放されると思われる第2局面を規定しているものの、ネタニヤフは公然と、この同じ局面の中でイスラエルがガザから完全撤退するという構想の約束に不同意を示した、そして、彼はこれを一度も受け容れたことがない、またシオニスト軍は回廊におけるハマスの潜在能力の完全な除去を確実にする以前に戦争を終わりにすることはないだろう、と強調している。
 しかしながら、バイデンとシオニストの戦時内閣メンバーが本当に求めていることは、世論の前に救われる可能性のある者たちを救い出すためにできるすべてのことをやった、と主張できるように、男の兵士を除くイスラエルの人質全員の解放に導く一時的休戦であり、それ以上のものは何もない。残りの者は、兵士が軍隊に加わった時払う用意ができている戦争の正常な犠牲とみなされるだろう。
 戦時内閣メンバーは、ラファ地域の占領完遂はガザ回廊内のハマス指導部が握っている最後のカードになっている人質の死という結果になりそうだ、と分かっている。それゆえかれらは、イスラエルの世論が我慢できるものまで、これらの人質の数を減らしたがっているのだ。

停戦構想へ進行は第1局面だけ


 構想のこの第2局面と第3局面(ガザ回廊の再建)に関する限り、休戦がその第1局面以上には進まない以上、達成されないだろう。そしてその第1局面こそ、この構想を最初に受け容れるようネタニヤフを納得させたものだ――彼の極右の連携相手はそれを受け容れないだろうと分かっていたがゆえに、渋々だとはいえ――。これがこの間の日々現れた分かりにくさと混乱の理由だ。
 その中でネタニヤフは、彼の連携相手を、彼との連携を壊さないよう、また彼の首相職へのかれらのブロックの支持を引き上げないよう説き伏せようとし、こうして彼を、戦時内閣に加わったガンツの党であれ、参加を拒否したラピッドの党であれ、野党に依存するよう強いている。そしてこのふたつの政党は、休戦、およびその背後にある、ガザ回廊の治安統制におけるシオニスト部隊を伴ったアラブ部隊の関与を基礎とした入植構想を彼が受け容れることを条件に、次期議会選挙までネタニヤフが彼の職にとどまることを支持する意志を表明済みだ。
 ネタニヤフが今日直面しているのは困難な選択であり、それは、それに比べればそのファシストの根にもかかわらずリクード党それ自身が「穏健」に見えるような、ふたつの過激グループに対する彼の依存が招いた不可避的な結果だ。
 ガザ回廊内のハマスの指導者たちが今逆側で直面していることも、等しく困難な選択だ。ガザ住民の追加的な大量死、特に子どもの死を避けるために必要な援助の大量搬入を伴う2、3週間の休戦と引き換えに、かれらの生き残りを保証している最後のカードを放棄するよう求められているからだ。(2024年6月4日、「アルクズ・アルアラビ」2024年6月4日掲載のアラビア語初出から訳出)(「インターナショナルビューポイント」2024年6月5日)

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