フランス・ヨーロッパ議会選挙にLCRがLOと共同候補者名簿で立候補
「得票率5%」の基準突破めざす
欧州議会選挙をめぐる情勢と左翼陣営の政治構造
【編集部】本号では、来るべきヨーロッパ議会選挙に向けたフランスのLCR(革命的共産主義者同盟、第四インターナショナル・フランス支部)の闘いを紹介する。LCRはヨーロッパ議会選挙に向けて、労働者の闘争派(LO)とブロックを組み、共同候補者を擁立して闘うことを決定した。
本号で紹介する選挙の共同声明は、昨年十一月に両組織によって発表されたものである。その後、LCRは今年一月十六日、この選挙方針に関する臨時全国大会を開催した。この大会には、百五十人以上の代議員が出席し、労働者の闘争派とのこの共同の選挙運動方針は圧倒的多数の七八・八六%の支持を得て承認された。その翌日の一月十七日には、両組織の共同記者会見が開かれ、アルレット・ラギエ(労働者の闘争派)を第一位に、アラン・クリヴィンヌを第二位とし、両組織のメンバーが交互に名を連ねる共同候補者名簿が明らかにされた。
労働者の闘争派はどんな組織か
労働者の闘争派のこれまでの活動は、「セクト主義的労働者本隊主義」とも言うべきもので、企業内での労働者の闘争に自己の活動をほぼ限定してきた。そのために、この派は、フランスで発展しつつある失業者運動、移民の運動などの社会運動の闘争にほとんど参加せず、これらの闘いに参加してその組織化のために実践的に闘ってきたのはもっぱらLCRであった。
これとは対照的に選挙運動のレベルでは、労働者の闘争派は、常に大量の候補者を立候補させ、精力的な選挙キャンペーンを展開してきた。六八年五月以来の革命派の主流としてのLCRが、社会党、共産党の左に位置する大衆的な革命派潮流の建設に向けて、その時々の、その地域毎に他の革命派の情勢に応じて、選挙ブロックや選挙戦術を変更せざるを得なかったのに対して、そうした責任から自由な労働者の闘争派は、一貫して労働者の闘争派として選挙運動に登場し、そのスポークスパーソンであるアルレット・ラギエの大衆的人気にも助けられて、「左翼も右翼もだめだ」とする「第三の道」的キャンペーンで、LCRを上回る票を獲得してきた。
大衆的革命潮流の形成めざして
だが、こうしたLCRと労働者の闘争派の両組織の歴史、伝統、文化、政策の相違は、社共の左に位置する大衆的革命潮流の形成に向けて、ヨーロッパ議会選挙のために共同行動を組むことをけっして妨げるものではなく、この間、両組織は相互討論、それぞれの組織の内部での討論を積み重ね、共同の選挙キャンペーンを展開することを決定したのであった。今回の共同選挙キャンペーンの目標は、ヨーロッパ議会の最低基準である五%の得票率を突破することであり、四名の議員を当選させることである。
両組織は、二月五日のパリ集会を皮切りに、全国百カ所以上で共同集会を開催し、六月六日のパリの共同集会で最高潮を迎えることだろう。それと並行して、LCRは、組織がまだ存在しない地区をも含めて全国数十カ所で独自集会を開き、三月二十日にパリ集会を開催する予定である。
労働者に背を向けるジョスパン政権
ヨーロッパ議会選挙では、左翼陣営からは社会党、共産党、緑の党、そして労働者の闘争派―LCRの革命派の四つの主要潮流が争うことになる。社会党、共産党、緑の党はいずれも現ジョスパン政府(多元的左翼政府)を構成する勢力であり、ジョスパン政府は、その政府を押し上げた有権者大衆の要求と期待を裏切り、すべての社会運動に背を向け続けている。
つまり、社会党を中心とするジョスパン現政権は、ヨーロッパ統合を推進するための、緊縮財政の実施、公共サービス、公共部門の削減という政策を続けている。つまり、この政府は、ネオ・リベラリズム政策とけっして根本的に手を切っていないのである。
そのために、共産党内部では、特に労働者党員を中心に、社会運動の要求よりも社会党との連立政権の維持を優先する党中央ユー指導部の路線に不満が高まっている。そのために、地方都市の共産党組織の党員がほぼそっくりそのままLCRに結集するという事態も起こっている。
死文化する社会党
と緑の共同綱領
また、ジョスパン政権の以上のような路線の結果、社会党と緑の党の共同綱領も死文化している。
本紙98年11月16日号のルッセ論文が明らかにしているように、原子力問題でジョスパン政府がやったことはわずかに、スーパーフェニックスの操業中止と原子力産業の密室的体質を打破し、その透明性を確立するということだけであり、ジョスパンは改めてフランスの原子力産業資本を前にして、原発の継続と新たな開発を約束している。
こうしたジョスパン政府の原子力問題の姿勢は、使用済み核燃料処理の禁止を打ち出したドイツの社会民主党と緑の党の連立新政権との対立としてさらに表面化した。こうして、ジョスパン連立政権の中の緑の党は、この政府の反人民的政策を覆い隠し、いぜんとしてそれが人民のための政府であるという見せかけを維持するための隠れみとして役割を果たさせられている。
コーン・バンディの変節と緑の党
この緑の党は、一九六八年五月のヒーロー、コーン・バンディを候補者名簿のトップにして選挙運動を展開する。しかし、コーン・バンディは、もはやかつての闘士ではなく、一九九一年の湾岸戦争では帝国主義のイラク攻撃を支持し、一九九五年十二月の公務員労働者のストライキ闘争に反対するというその姿勢に見られるように、「節を曲げた」人物である。その意味では、社会党との連立政府を形成するという緑の党の現在の政治路線にはむしろ似つかわしい候補者と言えるかもしれない。
この選挙戦で重要なことは、労働組合運動をはじめとする現実の社会運動における左翼の統一戦線をあくまでも追求しながら、それを本当に実現する力を構築するためにも、左翼内の改良主義派(社会党、共産党)と革命派の政治的な力関係――この力関係は現実の社会運動の中ではすでに変わり始めている――を変える闘いを開始することである。ヨーロッパ議会選挙の選挙運動はその重要な第一歩の闘いである。
アラン・クリヴィンヌに聞く
LO(労働者の闘争派)との共同選挙戦の意義と課題
違いを超えて共闘する必要がある
――あなたたちにはアルレット(ラギエ)と「くっつく」よりももっとましな選択はないのか?
この種の質問をあなた方マスコミに吹き込んだのはコーン・バンディである!
社会の動員を支援するためには、リオネル(ジョスパン首相)とよりもアルレットと「くっつく」方がより好ましいと思う。われわれと労働者の闘争派との間の距離は、われわれと多元的左翼(社会党、共産党、緑の党などから成る現在の左翼連立政権)との間の距離に比べて十倍近い。
確かに、われわれ二つの党を連携させるには、余りにも多くの違いが存在するが、われわれの政治的発言は非常に類似しているので共同候補者名簿が実現されなければ、人々にはどうして両組織がいっしょにやらないのか理解してもらえないだろう。
――それは、ヨーロッパ議会選挙で得票率五%を超えて四議席を獲得するための、一時的な同盟なのではないか?
それは議会主義的マヌーバーではない。労働者の闘争派とともに、われわれは、三〇年来はじめて革命派が選挙で驚異的前進を実現することができると思っている。なぜなら、多元的左翼は人々を失望させているし、右翼は分裂しているからである。
有権者は、ヨーロッパの考え方についてだけでなく、ジョスパン政府の二年間の収支決算についても、自らの決断を下すことになるだろう。共産党と緑の党は、マーストリヒト条約に対する公然たる反対と、社会的排除を強めるヨーロッパ統合条約に直結する政府の政策への自らの連帯との間で悩んでいる。
路線的相違をどう考えるか
――あなた方はマーストリヒト条約に反対票を投じたが、アルレットはそれに棄権したのでは?
その点では意見の相違がある。アルレットは、民族的、排外主義的右翼と同じ陣営に身を置かないためにマーストリヒト条約反対を表明したくなかったのだが、それは同時に、マーストリヒトに対する左翼の側から反対することの重要性をまったく過小評価しているのである。
――また、あなた方とは違って、アルレット(労働者の闘争派)は「ラ・フロン」のような反国民戦線(反ネオナチ)運動に参加していないが?
たとえ、労働者の闘争派が社会運動の建設に参加していないとしても、反ファシズムをめぐって、失業者運動、ホームレスの運動、サンパピエの運動(移民の運動)への支援について、われわれは労働者の闘争派との間で基本協定を結んでいる。労働者の闘争派は、それだけであるとは言わないが、企業レベルの活動への政治的介入に自分の力の重要部分を注いでいる。
――数カ月前に、あなた方がセクト主義的、スターリニスト方法であると批判していた組織との選挙でのブロックを有権者にはどう説明するのか?
労働者の闘争派はスターリニスト的な党派でないとしても、われわれ両組織の間の相違は過去に関係しており、政治組織の機能のタイプをめぐるものである。
労働者の闘争派の機能のタイプは第三インターナショナルの初期のものを継承したものである。たとえば、われわれの大会は公開であるのに対して、労働者の闘争派はいぜんとして非公開である。だが、われわれはわれわれの有権者に労働者の闘争派も、LCRも、どちらの組織も単独で支持するよう求めてはいない。(…)
共産党と緑への共同呼びかけの試み
――緑の党や共産党との共同候補者名簿を実現しようとするあなた方の試みはなぜ失敗したのか?
緑の党はどの勢力との同盟も望んでいなかった。そして、共産党指導部は、政府レベルでの連帯を保持することをあまりにも強く望んでいた。しかしながら、その戦闘的な基礎組織はジョスパン(社会党)の政策に反対である。われわれは、共産党の基礎組織がヨーロッパ議会選挙において、われわれの共同候補者名簿に投票する用意があるという状況を承知している。この選挙でより結果を得ることができれば、それはこの大政党の中でわれわれが建設したいと思っている、急進的、反資本主義的、フェミニスト的、エコロジスト的左翼を結集する助けとなるだろう。『レクスプレス』誌(98年11月26日号)
議会選挙に向けたLCRとLOの共同宣言
失業に対して抜本的対策をとるヨーロッパのために!
諸民族間の国境なき統一ヨーロッパ
だが、建設されようとしているヨーロッパは、労働者、失業者、青年の利益とは何の関係もない。それは、産業経営者と金融グループに奉仕するものである。かれらのヨーロッパは、搾取のヨーロッパであり、エルフ、シェル、ブイッグ、トムソン、シーメンス、アルカテルなど多国籍企業の砦である。このヨーロッパは、貧困諸国の人民と自国の給与生活者の両方の犠牲の上に利益を増やすために構想されたものである。
かれらのヨーロッパは民主的ではない。ヨーロッパ議会は、各国政府間の駆け引きから生まれ、金の力に従属したEU(欧州連合)の思うがままの絶大な権力の隠れみのにすぎない。
だが、給与生活者や失業者や青年が必要としているヨーロッパ、それは次のようなヨーロッパなのだ。
住民が決定を統制する民主的権利のヨーロッパ。
そこに生活し、働き、学ぶすべての人に選挙権をはじめとする平等な権利を与えるヨーロッパ。差別的なすべての法規は廃棄されなければならない。すべてのサンパピエ(居住権を認められていない移民)に正式の権利が認められなければならない。
男女間の真の社会的、市民的平等を。
どこでも自由で無料の堕胎を保障するヨーロッパ。
最大限の利潤を求めてやまない資本主義の論理が女と男を犠牲にするだけでなく自然をも犠牲にしているのに対して、環境を尊重し、汚染産業を統制し、いっさいの核から脱却したヨーロッパ。
銀行への返済額の何倍にもなっている第三世界の債務を取り消すヨーロッパ。基本的必要を満たすことを目指す、第三世界との協力にもとづく開発を計画するヨーロッパ。
統一通貨のための緊縮政策と大失業
二千万人以上の失業者と六千万人以上の貧困者を伴いつつ今日形成されているヨーロッパは、失業、不平等、貧困、人種差別主義に悩まされている。
しかしながら、われわれを失業から守ってくれるのは国境ではない。われわれの各国政府は、ユーロやヨーロッパ条約に先立って緊縮政策を実施している。統一通貨やヨーロッパ中央銀行やマーストリヒト条約/アムステルダム条約に向かう過程で実施されているこれらの諸政策は、ヨーロッパ規模での社会予算の削減を全般化し、各国で同一歩調をとってその削減が実施されてきた。
各国政府は統一通貨のための合意にようやくこぎつけたが、その実施のために、大資産を攻撃するのではなくて、民営化を推進し、公共サービスを解体し、農村住民にも世界の飢餓にも配慮しない農業政策を導入することによって勤労階級を攻撃して雇用と給与を犠牲にするという道を選択した。
右翼については、ヨーロッパ統合を支持する者も支持しない者も、搾取され、抑圧された人々を攻撃する経営者寄りの政策を支持している。
ルペンについて言えば、それはあらゆる点でわれわれの最悪の敵である。彼は、移民をはじめとする労働者大衆をよりいっそう攻撃することによって、以上の政策をさらに強化したいと望んでいる。
大資本に譲歩するジョスパン政権
だが、ジョスパン政府は、それまでの政府と同様に、大企業の膨大な利潤の中から必要な資金を吸い上げることを拒否している。これこそ、失業と不安定雇用の解消に必要な十分な量の有効な雇用創出のための資金を調達できる唯一の手段であるにもかかわらずである。
ジョスパン政府は、人員整理を推進し、不安定雇用労働やパートタイム労働を全般化させ続けるという大企業経営者への贈り物を倍加させている。その第一の犠牲者は青年と女性である。年金生活者にますます多くの税金やますます多額の社会保障基金を支払わせているのに対して、金持ちの側では大資産に対する税金はテレビ視聴料金よりも少ない額にしかなっていない。
選挙での公約は守られていない。政府は、(前政府が打ち出した緊縮政策の)ジュペ計画の実施を追求し、国営エール・フランス航空や(電信・電話部門の)フランス・テレコムを民営化し、社会的最低保障の引上げを拒否している。その政策は、ヨーロッパ経済の「安定協定」に合致するものであって、永続的な緊縮政策を押し付けている。
選挙の時期だけ戦闘的なポーズをとって語気を強めるが、政府に真に反対してはいない共産党のように、政府の政策を支持しながら同時に「ヨーロッパの転換」を主張するなどというのは、真剣に受け取ることはできない。
われわれの当面する要求は何か
一九九五年冬の(公共部門の)大ストライキ、失業者運動とそのヨーロッパ行進は、資本主義的論理への拒否を示すと同時に、全ヨーロッパにおいてそうした運動への共感を呼び起こした。これは、住民の圧倒的多数の利益を擁護する共通の目的にもとづく給与生活者と失業者とサンパピエの集団的闘争である。
この国の五百万人以上が全面的または部分的失業であるという個人と集団の悲劇に終止符を打つためには、経営者や金融業者から、彼らが行使している経済への絶対的支配権を奪い取らなければならない。大企業が蓄積した利益は、経済を大破局の危機にさらしている金融界をうるおすのではなく、失業をなくすために役立てられなければならない。
次のことが必要である:
補助金、減税、社会保障分担金の減額など国家による大企業へのいっさいの贈り物(恩恵)を廃止せよ。
このようにして節約された資金を、病院、公共交通、国民教育の分野で国家が雇用を創出するために使用せよ。
高品質の公共サービスを優先し、公共サービスの民営化を中止し、水道、製薬産業など住民の初歩的要求に基礎をおいて存続してきた企業にまで公共部門を拡大せよ。
集団的解雇を禁止せよ。巨額の利益をあげているにもかかわらず、解雇をおこなっている企業の運営をそのまま経営者の手に委ねたままにしておいてはならない。そうした企業の利益は徴発されなければならない。
給与を据え置いたままで、しかも経営者の意のままに勤務時間を自由に変えられるようにするフレックスタイム制を伴うことなく、三十五時間から三十時間への労働時間の全ヨーロッパ規模でのいっせいの大幅削減を実施せよ。
団体協約の内容を給与生活者の最良の成果の基準に合わせること。
労働者の間で競争を持続させる現在の不均衡をなくして、最も高い国に合わせたヨーロッパ最低賃金を保障せよ。
高所得にはより多く課税し、投機的利益には重税を課さなければならない。全銀行システムとヨーロッパ中央銀行を管理下におかなければならない。そしてこれらの措置を空文にしないようにするために、大企業の実際の帳簿とそれらの大株主である銀行の帳簿を公開させ、給与生活者と消費者と全住民が現在秘密にされている経営を管理下におくようにせよ。これは同時に政財界の癒着と腐敗事件に終止符を打つ最良の手段ともなるだろう。
LOとLCRの共同名簿に投票を!
それは、住民にツケを支払わせるのではなく、危機に責任があり危機から利益を得ている連中にそのツケを支払わせる根本的政策に同意する。
それは、失業も貧困もないヨーロッパのために、資本から経済に対する支配権を奪い取らなければならないことを確認する。
それは、可能な最良の左翼に投票する。それがまた、右翼に対する反対を表明し、極右を抑止する根本的なやり方でもあるのだ。
それは、政府によって推進されている政策に対する断固たる反対を表明する。
それは、すべての民族主義的閉じこもりに明確に反対する。万国の労働者は同一の利益をもっており、価値ある唯一の国境は搾取者と働き人々とを分かつ境界線である。
アルレット・ラギエとアラン・クリヴィンヌが推進する候補者名簿に投票することによって、ヨーロッパ議会において、労働者の利益を擁護し、自らの約束に忠実で、諸君の側に立って明日の集団的闘争を準備するであろう、女と男を選出することができる。
『ルージュ』(98年11月26日号)
※ヨーロッパ議会選挙はすでに行われ、トロツキスト当選。詳しくは続報をお読み下さい(編集部)
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