結成された革命的労働者党(RPM)指導者に聞く
毛沢東主義の過去と決別し第四インターナショナルへ
フィリピンの革命的労働者党(RPM)は、1992~3年にフィリピン共産党(CPP)が分裂して以来、最大の組織的再結集である。新党を結成した諸グループは、この五年間以上にわたって毛沢東・スターリン主義の起源からの決定的な離脱を行い、革命的マルクス主義のダイナミックで複数主義的な要素を発展させてきた。それはフィリピンにおいては、きわめて新しいことであった。
1998年の結成大会において、新しい党はトロツキスト運動に起源を持つ第四インターナショナルの常任オブザーバーとしての資格を求めることを決定した。
数カ月の内にわれわれは、新しい党、現在の情勢やミンダナオ島における民族問題、そしてフィリピン版「解放の神学」に関する彼らの分析について紹介する。その連続企画の一回目として、本誌(「インターナショナルビューポイント」)スタッフライターのジャン・デュポンは、革命的労働者党の三人の代表――全国指導部のハリー、全国書記局のリカルド、マニラ首都圏地域指導部のジョナ――から話を聞いた。
――あなた方の革命戦略は、毛沢東主義の過去とどのように異なっているのですか。
ジョナ 以前には、他のすべてを決するものは武装闘争でした。私たちは中国革命に関する毛沢東の著作からひきうつしにした軍事的諸段階についての厳格な概念を抱いていました。私たちは政治的発展を、防衛、対峙、攻勢、そして革命という段階図式に押し込めようとしていました。今では、私たちはもっと柔軟な戦略的枠組みを持っています。私たちはさまざまな展開をこの軍事的枠組みに押し込んではいません。
ハリー 私たちは、軍事的力の蓄積が革命的可能性の蓄積へと成長していくと考えていました。今では、その逆こそが正しいのだと理解しています。
革命的発展は、たんに武装の力に依存するものではありません。革命的意識と動員の成長や後退に影響を与える多くの要因があります。今や私たちは、公然たる大衆運動や選挙活動の重要性、さらには議会活動の重要性さえも認識しています。こうした諸要因の重要性は、場所や時期によって異なります。もう一つの重要な要素は、抑圧された人びとの政治的権力の機関を発展させ、打ち固めることです。たとえば、私たちのゲリラが作戦を展開しているミンダナオ地域での先住民族の地域的自治といったものです。
――それはあなた方の武装勢力にとって大きな変化を意味するに違いありませんね。
ハリー 私たちの武装勢力(革命的プロレタリア軍――RPA)は現在は防衛的役割を担っています。彼らは警察活動を行い、私たちの力が比較的強力な地域で達成された成果を防衛しています。かつて私たちは、私たちの政治的利益を軍事的目標に従わせていました。私たちは、それが地域住民にどのような結果を与えるかにかかわりなく、武器を捕獲するために攻撃を行いました。今、私たちは目標をもっと注意深く選んでいます――その目標とは軍隊の指揮官や、とりわけ反動的地主たちです。
ジョナ 私たちの軍は、自らの新しい役割に入念に適応しています。以前私たちは、政府と人民との間の内戦の印象を作りだすために、可能なあらゆることを行ってきました。当時私たちは、軍は大衆運動の産物だと言っていましたが、実際はそうではありませんでした。実際、私たちの兵士徴募の主要な要因は体制のファシスト的性格に対する人民の反撃にありました。それは今日では存在していません。
リカルド 私たちは武装勢力の方向づけをやり直し、再組織化を行っています。私たちはそれを確立しようとつとめています。私たちは、軍を大衆運動に奉仕させようとしているのであって、それ以外のことをやろうとはしていません。
ハリー しかし私たちが抑圧されたマイノリティーの自己組織化を進めるにつれて、武装勢力に参加することを望む人びとの数が大きく増大しています。自衛はこうした新たな政治権力機関を建設する上で必須の一部分なのです。とりわけ、土地問題は先住民族と貧農が急務とする中心課題だからです。そして、地主と戦争屋の軍人たちは自らの軍隊を持っています。そして、どの地元資本家の私兵としても機能しているフィリピン軍は、彼らにカネを出そうとしています。
私たちは、軍、党、大衆組織の相互関係を変えているところです。私たちが人民権力機関を打ち固めるにつれて、私たちは人民が統治のあらゆる側面を作り上げることを助けています。
軍はもはや党の一部ではなく、自己統治機関による回答なのです。統治諸機関は兵士の徴募を管理しており、戦士たちの家族の世話をしています。これは党から巨大な組織的負担を取り除き、今や党はゲリラのイデオロギー教育に集中し、闘争のための全般的方針と政治的指導性を与える支援を行っています。
――大衆活動についてはどうですか。
ハリー 革命とは反動的国家に打撃を与えるだけのものではありません。私たちは、人民権力の機関のようなオルタナティブを作りはじめる必要があります。革命を行うことには、私たちが前進するにつれて種をまく活動も含まれます。私たちのようなマルクス主義者は、私たちの活動とNGO、民衆組織、教会などによってなされた前進を結び付けなければなりません。
私たちは選挙と議会の活動を開始しました。私たちは地下党です。したがって私たちの候補者は他の広範なリストで立候補します。また私たちは、私たちの隊列以外の進歩的候補への支持のために動員を行います。ミンダナオでは、私たちはモロ解放戦線との共同リストを提出しています。
前回の選挙以来、私たちの代表と議会連絡員は、人民組織が強力な地域への開発援助のルートを通すことができました。革命的な地方政府を持つ自治体に対しても、それができる場合もあったのです。これまでのところ、議会と議会外活動のこうした結びつきは、民衆の生活を継続的に改善するための積極的なファクターとなってきました。
リカルド オルタナティブな発展戦略が私たちの過渡的綱領の中心になっています――それは具体的な改革と民衆運動を前進させる要求を結合した党の戦略です。
政府は公式の発展戦略「フィリピン二〇〇〇」を持っています。私たちは、それを新自由主義戦略だとして非難するだけですますことはできません。私たちは、現在の民衆の要求と入手しうる手段に適合したオルタナティブを提示する必要があります。私たちの革命活動のすべての側面は、この過渡的綱領に一致したものであるべきです。
合理的な農業システムのための私たちの提案の中心は土地改革です。こうした提案は、とりわけ人民権力の機関、あるいはバナナや砂糖のプランテーション労働者のような農村の貧しい人びとを代表する組織の形成に向けられたものです。私たちが強いところでは、私たちはこうした改革を実行しようとしています。
私たちは今、来るべき憲法改正と選挙の中で優先させられるべき課題に関して大衆運動に諮(はか)っているところです。私たちは、この領域で私たちの活動の全分野を導く立法的・憲法的な中心テーマを作りだしたいと思っています。それはたんなる宣伝の問題ではありません。私たちは、自分たちが強力なところではどこでも、今まで実現できたことを行っていくでしょう。
――最近のあなた方の大きな成功はどんなものですか。
ハリー 私たちは5年かけて私たちの誤りを分析し、私たち自身の毛沢東・スターリン主義の毒を浄化しようとつとめてきました。共産党内の大分裂は、「再考と改組」の長い痛みに満ちたプロセスの始まりでした。党の諸グループは孤立の中で活動しましたが、私たちが党準備の局面に入り、最終的に新党を創設したことにより、私たちは私たちのすべてが同じプロセスをくぐりぬけていたことを理解しました。
毛沢東�\スターリン主義の党は今なお強力です。ミンダナオでは、私たちは彼らが支配する地域に多かれ少なかれ包囲されています。そして彼らは私たちに対してきわめて敵対的です。したがって私たちが存在すること自身が大きな成功なのです。
現実に、私たちが再建労働者党のイデオロギー的基礎を発展させるにつれて、私たちは新たな内部的力を発見しました。1992~3年の「ビッグバン」で大きな代価を支払いましたが、私たちは毛沢東・スターリン主義路線を拒否する潮流をなんとかして拡大してきました。
狭いドグマ的な図式と反民主主義的な政治文化に何年にもわたって拘束されていた後で、私たちは自分たち自身の構想を、開かれたダイナミックな雰囲気の中で定義することができるようになっています。それはとても私たちを元気づけることです。
リカルド 今、私たちは、自分たちが欲する党を持っています。新党を結成するために集まったさまざまなグループが、私たちの活動の全分野をカバーし、私たち自身の歴史の強さと弱さを検証する基本文書に関して合意に到達しました。
私たちはまた、ルソン、ビサヤ、ミンダナオというフィリピンの三つの主要な島に強固な基盤を持つ全国党を確立しました。共産党から分裂した他のグループの多くは、いまだに党を形成する以前の段階にあるか、ないしはある特定の地域に限定された存在です。
――それではあなた方の弱さとは主にどの点にありますか。
リカルド 私たちは、依然としてこれまで話してきたような新たな認識を確立し、深化している最中です。私たちは、カードルのレベルでその理解を「レベルアップ」し、新しい考え方を大衆的ベースに広げていく必要があります。三十年にわたって「持久的人民戦争」戦略を堅持してきた毛沢東主義の党を変えていくのは、とてつもなく大変な課題です。
ジョナ 私たちはこれまで、すべての左翼運動の羅針盤として行動する一枚岩的で覇権的党として自認してきました。しかし私たちは今、フィリピン共産主義運動の新しい時代に直面しています。多くのラディカルで革命的な組織が存在しています。一部は毛沢東主義者で、一部は私たちの考え方に近いものです。
今は、こうしたグループがどのように一緒に活動できるかを判断するという状況です。毛沢東主義の党は依然として最大の存在です――それは分裂し続けていますが。毛沢東主義路線を拒否するグループの中では、分散化の局面から再結集の局面への移行がなされています。
ハリー 自己確立の過程はまったく不均等なものでした。私たちが党の構造を安定化させた現在、活動の各部門を見つめ、異なった地域の同志たちのネットワークを作りだし、全国戦略を明確なものにし、最良の実践と新しい考え方を広げていく必要があります。幾つかの地域では、私たちの労働組合活動はうまく発展しています。ビサヤなど他の地域ではそれほとではありません。
新党の弱点は、私たちがさまざまな部門や地域に介入しようとするにつれてはっきりしたものになっていくでしょう。
ジョナが述べたように、複数主義はフィリピン共産主義運動にとって新しい現象です。新党の内外での複数主義の処理の仕方は、私たちにとって大きな挑戦であるかもしれません。
毛沢東主義の展望においては、部門別組織とは上から実施される単一政策のたんなる伝導ベルトでした。しかし今では、一つの例を挙げれば、私たちは三つの主要な島別グループの中で三つの異なった党青年組織を持っています。こうしたグループをどのように統一させるのでしょうか。彼らは一つの組織を作るのでしょうか、それともよりゆるやかな連合を形成するのでしょうか。こうしたことは新しい、重要な問題です。
――新党の中に世代ギャップは存在しますか。
ジョナ 私はあるとは思いません。革命運動の中には連続的な契機が存在していました。マルコス独裁の崩壊は、国家内部のファシスト的要素の一部のソフト化を意味しました。しかし新政権は根本的に異なったものではありませんでした。たとえば教育システムにはラディカルな変化はありませんでした。より広範な民主主義的スペースは存在しますが、人びとが直面する根本的問題は以前と同じです。したがって共産主義グループへの新たな獲得は、あらゆる変化にもかかわらず持続してきました。
ハリー おそらくある種の世代ギャップがありました。マルコス独裁後、多くの同志たちは情熱をもって合法活動の分野に戻りました。一部の同志たちの中に、制度的思考の発展が見られました。非政府組織(NGO)で活動した人びとは、ますます自分自身のキャリアに関心を持つようになり、彼らが提供するサービスはますます官僚的になっていきました。一部は中産階級になりました。他の者は、私たちが彼らに期待した党活動のレベルを不快に思いました。一部は反党的要素になりました。
共産党内で大きな民主主義的討論が噴出した時、こうした人びとはこのチャンスを捉えて活動から離れました。彼らは毛沢東・スターリン主義的方針を拒否しましたが、私たち自身が押し進めた潮流のような、すべてのオルタナティブをも拒否したのです!
この五年以上にわたって、最もシニカルで幻滅した人びとの多くは離れていきました。新党は、NGOや制度的領域の中で、より真剣で調整された活動を確保することができる希望があります。しかしこの過程で私たちは同志たちを失ったことも確かです。
――左翼の側で、より大規模な協力を行う展望についてはどうですか。
ハリー 党の内部的発展が本質的な問題です。私たちは自分たちの組織を開かれたものにし、真に他の人びとと活動したいと思うようになれるでしょうか。私たちは、他のグループが一定の活動領域においては私たちよりも良い活動を行っているということを受け入れられるでしょうか。結局、私たちは私たちこそが最良の存在であり、私たちは唯一正しい路線を持っていると考えるような訓練を受けてきたのです。この種の思考をどのように投げ捨てるのでしょうか。それは非常に痛みをともなうプロセスなのです。
多くの外部的要因が、すべての左翼グループがもっと緊密な協力を考慮するよう促しています。自分の力だけで一九九九年の立憲議会に介入できる力を持っていると思っている者は、私たちの中にだれもいません。アメリカがアジア全域に介入する巨大な軍事基地としてフィリピンを再び使用することを認める新VFA(米軍一時駐留地位協定)に政府が賛成するのを阻止しようと考えるならば、私たちは共同して活動しなければなりません。
ミンダナオでは私たちの武装部隊はモロ解放戦線と良好な関係を持っています。私たちは多部門にわたるキャンペーンで団結しています。軍事的闘争とならんで大衆活動の必要性を彼らが次第に受け入れているので、私たちは彼らを支援しています。また私たちは共同の選挙プロジェクトも持っています。
他の諸国においてと同様に、広範な左翼とともに活動する方が、CPPの中で私たちと共通の過去を持っている他の革命的グループと活動するよりも容易なことがしばしばです。したがって、反毛沢東主義潮流は今なおきわめて流動的なのですが、密接な協力を行うにあたってのあらゆる類の刺激物や障害物が存在しているのです。しかし私たちは、98年4月大会の直前に幾つかのグループを統合することができました。
そして今、私たちが存在している以上、他の「党準備」グループはそれ相応の立場を取らなければならないでしょう。
――なぜ、あなた方は第四インターナショナルに引きつけられたのですか。
ハリー 私たちが毛沢東主義の構想を捨てるにつれて、革命構想は一国に限定されるものではないことについて十分に認識しました。
私たちは世界中の進歩的・革命的グループに手を差し伸べたいと考えました。第四インターナショナルを除けば、国際的レベルでこの必要な役割を果たしているグループを私たちは見いださなかったのです。
リカルド インターナショナルは異なった諸国と異なった時代からの豊かな経験を蓄積しています。私たちは、その討論に参加し、綱領を鍛えることで、短期のうちに多くを学ぶことができます。
インターナショナルの複数主義的伝統はわれわれの展望を広げる支援となり、CPP内で支配的だった「一つの真実の道」といった思考法への解毒剤です。
――インターナショナルに参加することで、あなた方はそれを変えようとしている……
ハリー 私たちのインターナショナルとの関係は象徴的なものです。両方の側が他方に貢献し、この過程で双方が変わります。
私たちは、インターナショナルが組織する世界大会の直前に、私たちの第2回大会を開催することにしています。そこで討論は二つのレベルで行われるでしょう。
具体的なレベルでは、私たちはインターナショナルに力を付加します。私たちは長い歴史を持ち、わが国内に堅固な基盤を持った大きなグループです。
第四インターナショナルはアジアでは弱体であり、アジアで私たちは革命的でラディカルなグループのネットワークの発展を支援するでしょう。
もちろん私たちは、それが有益なものであれば、インターナショナルがフィリピンの他のグループと友好的な関係を維持することに異議はありません。
(「インターナショナルビューポイント」99年1月号)
The KAKEHASHI
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