英国2・1全国行動成功を受けて
生活危機突破、反労組法粉砕へストライキの波の全国的集中を
一般組合員の決定権が尊重される体制今こそ
保守党が大急ぎで採択しようとしている反動的な反労組法への対決を呼び掛けた、2月1日のTUC(英国労組会議)の全国抗議行動は、いくつものストライキを含めて民衆的な決起となった。より一層の闘いの強化が求められている。そこで問題となる人びとと労組の現状、そこでの課題を英国の同志が以下のように伝えている。新しいストライキの波がどのように復活しているのかも知ることができ、ストライキが極度に消えている日本での課題を考える素材としても紹介したい。なお、2月1日の行動に向けた諸労組の動向を伝えた導入部分は、本紙2月13日号の記事と重複する部分が多いため割愛した。(「かけはし」編集部)
民衆的なストライキ支持は明白
そこで働く人びとを支援して学校の外のピケットラインに親たちや生徒が加わったという報告が数多くある。UCU(大学教職員組合)のストライキを支援して大学の学生たちも、英国中のキャンパスでピケとデモに加わり、学生の連帯諸グループは今キャンパス生活の特色となり始め、さらに、現在は大きく見えていない何百万人もの学生にのしかかっている生活費の影響という問題をも掲げ始めている。
2月1日の行進は、支持を示してして鳴らされたバスや自動車の警笛で、また職場や家から出て来て一緒に唱和し拍手する人びとで迎えられた。労働者階級の数を増す民衆は、危機的な生活費は職があろうがなかろうが、また世代を横断してわれわれすべてへの攻撃だ、と認識している。デモの参加報告は印象的だった(詳細は割愛:訳者)。
参加者数と同じほど重要だったことは気分――諸労組が押し出した賃金主張は完全に正当、そして労働者が提供するサービスとかれらの賃金は緊縮の10年以上によって悲惨なものにされてきた、という確信――だった。ひとびとは、「最低限サービス法案」――反労組法案の公式名称――は、スタッフ不足と過重労働が特にNHSでサービスがぼろぼろになりつつあることと同義で、現行法がまさに過酷であるこの国ではひどくむかつく冗談だ、とはっきり分かっている。
英国の諸労組はストライキを妨げる極めて制限的な諸法――労組は電子投票ではなく郵便投票を行わなければならず、高い投票率が必要で、争議は政府のような統制機関ではない個々の雇用主に対してのみ可能、ストライキには14日間の警告が与えられなければならない――を前にしている。その無視は、裁判所による労組資金の押収と役員と組合員の訴追に導くと思われる。
英国の主流メディアは今、年金に反対して2011年には2倍以上の多くの労働者がストライキ行動を行った、という事実を大量に載せ続けている。しかし状況は比較にならない。ほとんどの労働者は当時、2011年の行動はほんの申し訳程度の抗議でしかなかった、と分かっていた。2月1日は、いくつかの労組――そしてまだ十分波に乗っていなかったかもしれない労組――にとって7カ月もの長さにわたる行動の波の1部なのだ。
スコットランドとウェールズでは、部分的に権限を委ねられたSNP(スコットランド国民党)と労働党の政府(前者は緑の党の支持に基づいた、後者はプライド・カムリ〈ウェールズ党〉の支持に基づいた)が、保守党の英国政府よりもましな賃金提案を行おうと試みてきた。それによりいくつかのストライキは、それらの国のひとつあるいは両者で回避された。
これら4つの公式に圧倒的に社会民主主義の影響下にある政党すべては、労組の要求とストライキ権に共感をもっている。しかしながらそれらは、英国政府がもつ法的なあるいは財政的な権限をもっていない。そして社会民主主義のこれらの政党は英国の地方自治事務委任の内部に囚われている。それらはその制約から自由に決裂できなければ、結局のところ解決というよりもむしろ問題の一部になるだろう。
100万人以上がスト態勢確立
2月1日に6つの労組がストライキを行ったが、そこには現在争議行為に取りかかっている労組すべては含まれていない。看護士労組も当日のストライキには全く登場しなかった。しかし主要な4つは、2月6日から10日までイングランドで行動する予定だ。RCN(王立看護師学院)は2月6、7日にストライキの予定だ。RCNは100年の歴史のほとんどの間、ストライキについて世論の無言の圧迫を受けてきた。したがって現在の行動は相当な変化を刻み付けている。
GMB(全国都市一般)とユナイト労組の救急労働者もまた、イングランドで2月6日にストライキの予定であり、他方第3の労組であるユニゾンは、イングランドで2月10日のストライキを指令中だ。公認理学療法協会は2月9日のストライキに向かっている。それゆえその週は、公衆衛生労働者の行動予定が全くない日は1日しかない。BMA(全国医療協会)のイングランドの見習い医師もまた、賃金に関するストライキ行動について投票中であり、そのストライキは3月に続く可能性もある。ウェールズではGMBが、ウェールズ政府からの新たな提案をその組合員に諮る目的でかれらの行動を保留している。
他の2グループにふれなければならない。通信労働者を組織するCWU(通信労組)内の郵便労働者は、クリスマスにいたる間賃金と労働条件に関し延べ18日のストライキを行った。実際かれらは2、3週間置いて別々にふたつの投票を行った――私が話を聞いた者で理由を分かっている者は皆無――。行動のためのかれらの権限委任は賃金に関し使い尽くされ、かれらは再び投票しなければならなかった。最初は賃金に関し、2番目は労働条件についてだった。その条件について言えば、管理当局は全般的に生産性引き上げに、そして配送車運転手に自営業者になるよう強要し、ロイヤルメールをアマゾンのような宅配企業に変えようと挑んでいる最中だ。
現行の反労組法下では、賃金に関するかれらの権限委任は再投票を迫られ、残念ながらその結果は2月16日まで分からない。そしてストライキの意図について必要とされる雇用主への14日間の警告は、この問題でのストライキ再開が3月始めまで不可能、ということを意味している。その間にかれらは、現場の管理当局が一方的に変更を強要中という状況の中、労働条件に関し2月16日のストライキを告げた。
消防士の労組、FBU(消防士労組)は、投票率73%、イエス投票88%という英国規模の見事な投票結果を1月30日に公表した。かれらは、組合員に諮ることが可能と思われる提案の上乗せを行わせるため、2月9日まで雇用主と政府に10日間を与えた。FBUは3万5000人以下しか組合員のいない相対的に小さな労組だが、極めて戦略的な位置にいる。
一方2月1日にストライキを行った労組すべての場合、その日は、労組や産業に応じたさまざまなパターンをとった一連の行動における1日にすぎなかった。おそらく3月始めのもう1日の協調的行動に関する討論がいくつかある。そして特に反労組法反対キャンペーンに参加しているわれわれのような者は今、この新法に反対する全国デモを要求中だ。どのような割合であれ、2月1日を受け以前より志気が高まっていることに疑いはまったくない。現在100万人以上の労働者がストライキ行動権限委任を確保しているが、英国中での協調行動は2月1日が初めてだった。そして多くは、将来のもっと大きなレベルの協調を今見守っている。
英国労組の現在までの傾向
あらゆる国で、労働組合の歴史、パターン、伝統にはさまざまな違いがある。英国の普通ではない特徴は、全国にわたる労組連合がTUCひとつしかないことだ。ほとんどすべての労組がその傘下にある。
例外はある。RCNはTUC傘下にはいない――そして元々は、労組というよりも職業団体の色彩がはるかに濃かった――。他方もっと小さな労組もいくつかあり(詳細は割愛:訳者)、それらは自らを伝統的労組よりも民主的と考え、しばしば組織化がかち合っているギグ経済(たとえばウーバー的業態:訳者)のグループに目標を定め、またTUCからも独立している。
スコットランドでは、1世紀以上の間労組組織の自立したセンター――STUC――が存在してきた。しかし組合員は多くがTUCと重なり合い、相互の認知があり、STUCは主としてその国における統一した労組組織として機能している。
TUC傘下労組の中では相当な違いがある。いくつかは単一産業内で組織する産別労組だ。他方他は、多くの領域でメンバーを募っている一般労組だ。多くのの労組は、北アイルランドを含む連合王国の全体に存在しているが、いくつかはアイルランド共和国の中でもメンバーを募っている。スコットランドでのみ組織している教員労組のEISがあり、ウェールズでのみ組織している小さな教育労組もある。不思議なことだが、イングランド・アーティスト・ユニオンはそこに住むアーティストしか支援しない。
伝統的にほとんどの労組は、ホワイトカラー職や公務部門で組織した者たちがほとんど労働党員ではなさそうだったにもかかわらず、労働党に加盟していた。その加盟は諸労組に、労働党の政策作成に公式に影響力を行使する余地を与えている。しかしそれはまた多くの労組指導者に、「ボートを座礁させるな」という論拠でストライキに反対の主張をする余地をも与えている。こうした忠告は、労働党が政権にあるときだけではなく、総選挙を前にしている場合も、保守党たたき出しの実現が最も重要な――時には唯一の――ことという論拠で適用される。しかしTUC自身が同じ方向をとっていることを前提に、そうした主張は労働党に加盟していない労組にも影響をおよぼしている。
労働者組織内階層における違いは大きい。1984―85年の炭鉱ストライキの敗北以前には、ショップスチュワード――職場および実際には同じ職務を行っている労働者層の中で選出された代表――の相当な成長と協調があった。これらの活動家は経営と紛争を抱える労働者の声として活動したが、それだけではなく組合員への労組メッセージのベルトコンベアとして、また労組専従者が組合員に広めようと図っていた社会的パートナーシップ理念に対する反逆者としても活動した。
今が労組のつくり変えに挑む時
しかし鉱山労働者と他の鍵的なストライキの敗北後、戦闘性をもつその層は、大規模整理解雇や産業中に広がる工場閉鎖を含む、職場と政治の敗北によって深刻に弱体化された。さらにその層は、労組指導部の圧倒的多数が社会的パートナーシップかある種の「サービス業」モデル――より安い保険その他を得るための労組加入――、あるいはその組み合わせを推し進めていたという条件の中で、拡大中の公務やサービス部門ですら重要な新しいより若い活動家を引き入れることもできなかった。
この右への移行は普遍的というわけではなかったが、より小さくもっと戦闘的なRTMやFBUのような労組は力関係全体を動かすことができなかった。ストライキ損失日数は――特に私企業部門での労働組合員数と共に――歴史的な低さにまで落ち込んだ。英国の被雇用者に占める労働組合員数の比率は2021年に23・1%まで下落した。これは、われわれがもつ比較できるデータの英国被雇用者記録上、最低の労組組織率に相当する。TUCは1979年に労組員数1300万人と称したが、2022年には550万人でしかなかった。
この7ヵ月のストライキはこの状況をひっくり返し始めた――より多くのメンバーを引き入れ、より多くの活動家に動機を与え、かれらの集団行動の力に対する初めての経験を多くに与えて――。保守党の英国政府――多くの場合賃金レベルに直接的にか間接的にか責任がある――がまさに非妥協的で憎まれているという事実が、この勢いに影響を及ぼしている。私企業部門の何人かの雇用主がストライキなし表明あるいは相対的な短期の紛争を経てふた桁の賃上げ回答で決着に至らせたところで、先のような公務部門の大ストライキではここまで動きの兆候は全くないのだ
これが意味することは、英国の幅広い世論調査の中で労働党が保守党を大きく
リードしているという事実があっても、「ボートを座礁させるな」のレトリックを使おうとするどんな試みも戦闘性に大きな影響を及ぼしそうにはない、ということだ。ストライキ労働者と連帯するより幅広い社会運動もまた発展し始めつつある。そこではしばしば、1984―85年に存在した――そして評判をとった映画「プライド」中で描かれた――「鉱山労働者支援グループ」からひらめきが引き出されている。地方の労組組織――労組評議会――は何十年も周辺的だったが、多くが大きな役割を果たし始めている。
多くの労組では、一般組合員が選出する人びとよりもむしろ専従役員が、紛争をどのように動かすか、またストライキをいつ宣言するか、に主な発言権を確保している。ほとんどの労組における左翼の活動家グループは弱体で分裂している――しばしば雇用主か労組官僚のどちらかに対すると同じほどを互いに論争することに時間を費やし、職場の急進化に新しい活動家をいかに巻き込むかに事実上一切焦点を当てず――。
これはふたつの戦略的な論争の必要があることを意味する。一方には、現在のストライキにどう勝利するか――エスカレーションや調整のスローガンを軸に急進左翼の相当な量の一致がある主題――を討論する必要がある。しかしこの先で、またわれわれがあらゆる事例でわれわれの生活基準、労働条件、団結権への襲撃を撃退することに成功しようがしまいが、われわれは背を伸ばし、われわれの労組をどうつくり変えるかを深く考える必要がある。行動をいつどのように行うかを彼らが雇った者たちではなく組合員自身が決定できるように、それらの効果を鈍らせたり窮地に追い込むためではなく、その決定の実行を助けるためにそこにいるべき者が決定できるようにするためだ。
▼筆者は第4インターナショナルと協力関係にあるソーシャリスト・レジスタンスの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2023年2月5日)
The KAKEHASHI
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