エクアドル:ノボア政権との全面衝突

蜂起か独裁か? 国際連帯を!

イアイン・ブルス

全国ストの発動
と大統領の暴挙

 9月18日、見たところ右翼的な新たなCONAIE(エクアドル先住民族連盟、エクアドルの強力な先住民運動)の指導者が圧力に屈し、全国ストライキを呼びかけた。ほとんどの基礎的必需品価格を一夜で2倍化することが決まるような動きの、ディーゼル燃料向け補助金廃止に対する抗議としてだ。
 同19日朝、大統領のダニエル・ノボアは、憲法改訂のための、そして彼の「麻薬との戦争」と言われるものでエクアドルの地で作戦するため米軍を招き入れることを彼に可能とさせるための、憲法制定会議を招集する計画を公表した。彼はこれまで、2008年の進歩的な憲法の中にしっかり規定された環境の権利と労働者の権利を取り除くか弱めると思われる一連の改革を求めて、圧力をかけ続けてきた。
 そして19日夜遅く、ノボアは、憲法裁判所が彼の動きの合憲性を審議する中、同裁判所を包囲し、立ち退かせるため警察を送り込んだ。ちなみに同裁判所はこの間、先の方向における彼のもくろみのいくつかを、不適当と裁定していた。
 エクアドルの諸々の社会運動は即座に20日朝、憲法裁判所を守る決起を訴えた。

社会運動と政府
衝突の激化継続


 この最新の袋小路は、先頭に立つ先住民コミュニティと一体になったエクアドルの社会運動と益々極右的になる政府との、高まる衝突が続いた1週間の結論として現れている。
 エクアドル南部における鉱山開発の大きな計画に反対する抗議の日々は、16日に巨大なデモで頂点に達した。ちなみにこの計画は、地域全体の環境的均衡、特にその水資源を危険にさらす。およそ10万人がこの国の3番目に大きな都市であるクエンカを貫いて行進した。
 政府は、パロ・クエマドやラス・ナベスのようなコミュニティ内での別の大きな鉱山計画を推し進めると約束しつつも、先の計画を少なくとも一時的に保留して後退するよう迫られた。一方前述した2地域の両者では、抵抗と抑圧が激しさを増してきた。
 平行して政府は、IMFとの取引の一部として、ディーゼル価格の急速な引き上げを公表した。反応は、燃料価格が先住民率いる蜂起に引き金を引いた2019年10月の反応に似ていた。交通諸労組のストライキ行動にはすぐさま、高速道路を封鎖し警察と衝突する先住民コミュニティが加わった。学生は首都のキトを貫いて行進した。
 抑圧もまた度を増した。政府が社会運動に対するその攻撃を正当化するために麻薬との戦争と言われるものを利用し続ける中、拘留された活動家に対する部隊による拷問に関する、ぞっとするような報告が出ている。
 しかし先住民運動もまた、そのかなりの社会的権力を行使し続けてきた。先月秘密警察要員がレオニダス・イツァ――CONAIEの前指導者で急進的抵抗の表看板――をあからさまにひき殺そうと試みた時、かれらは即座に当地コミュニティによって拘留され、現憲法によって保護されたもうひとつの権利である先住民裁判所に引き出された。
 かれらはいかなる点でも傷を受けていない。しかしかれらは、数日間綿密な尋問を受けさせられた。そしてその過程中でかれらは、社会運動に対する秘密警察の監視に関する驚くような詳細を暴露した。そこには、潜入者や偽ジャーナリストの利用が含まれている。秘密要員拘留の結果として、レオニダズ自身は今、拉致容疑で起訴されようとしている。

2019年10月
は再現可能か?


 先住民の同じ社会的権力は18日にも誇示され、その時CONAIE新代表のマルロン・バルガスが無期限全国活動停止を公表したのだ。いくつかの地域的な活動停止と数日前から広がっている道路封鎖に基づいて、ノボア大統領は数州に非常事態を宣言していた。そしてマルロン・バルガスは「コミュニティ非常事態」を宣言したが、それは、軍と警察が先住民コミュニティやその領域への進入を許されないだろうということを意味していた。
 バルガスは2ヵ月前、ノボア政府との間でビジネルを行い、挙国一致を進めると約束して、中道派と明白な右翼の連合のトップとして選出されたばかりだった。それは、レオニダス・イツアが率いた先住民運動内急進派勢力にとって深刻な敗北のように見えた。
 しかしこの数週間に、現実はその挙国一致を掘り崩している。バルガスがかつて率いたCONAIEアマゾニア支部といくつかの州連合は、それらが政府との関係を今断っていると公表した。地方の諸コミュニティはすでに直接行動に入っていた。
 ものごとは急速に展開し続けてきた。しかし、この全国活動停止が今後6年で3回目の完全に熟した反乱に発展するかどうかを言うのはまだ早過ぎる。多くは、先住民運動指導部内部で起きることにかかるだろう。また、大統領のノボアがエクアドルのすでに弱まっている民主的な諸制度を顧みずに勝手にふるまう点でどこまで進むか、もまだはっきりしていない。ノボアは、彼の人気が下落しているとはいえ、住民諸部分内でまだかなりの支持を保っているのだ。この政府は、左翼のある者たちが示唆し続けてきたような独裁ではまだない。しかしそれは今その方向に向かっているのかもしれない。
 いずれにしろエクアドル人民は国際的な連帯を必要としている。今この時に!(2025年9月20日)
▼筆者はグラスゴーに住むジャーナリストでエコソーシャリストの活動家。またIVの元ラテンアメリカ通信員。『ポルトアレグレ・オルタナティブ:行動における直接民主主義』(IIRE〈調査・教育国際研究所〉)の著者でもある。 

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