ドイツ 左翼党議員インタビュー:戦略的真空の克服(下)

若者の希望希求に応えよう

草の根に根付いた鮮明な左翼の建設は可能だ

ヴィオレッタ・ボック

大衆的な結集点としての左翼党

――左翼党について話せるか? その全般的な路線とはどういうものか? 何が若者の大量流入という衝撃力になったのか?

 左翼党を十分に理解するためにはその歴史を知らなければならない。党は当初、ふたつの分派の合同の結果だった。つまり、東における元国家政党の後継政党であるPDS(民主的社会主義者党:訳者)、および西ドイツに現れた「労働と社会的公正のための選挙オルタナティブ」(WASG)だ。
 WASGは、シュレーダー政府(社民党:訳者)の社会的成果に対する根底的な攻撃、いわゆる「ハルツ改革」に対する反抗として2000年代半ばに登場した。それは、SPD(社会民主党:訳者)の幻滅した党員によって、しかしそれ以外にその多くがマルクス主義路線を保持していたより急進的な左翼出身の部分によってもエネルギーを与えられた。
 まさにはじめからはっきりしていたことは、左翼党が単なるもうひとつの政党ではなく、むしろ政治的にまた東と西の間という双方の、さまざまな経験と伝統を結集した産物、ということだった。その外見はその歴史を通じて幾度か変わってきた。そしてそれは今後も進化し続けるだろう。その成功がこれまで常に新しい社会的力学に適応するその能力に結びつけられ、今後もそうであるからだ。
 今日左翼党――そしてこれは、しばしば誤解が起こるところだが――は用語の古典的な意味における党というよりも、ひとつの大衆組織、ひとつの大衆的な結集点だ。
 私はそれによって何を言いたいのか? 党は確かに諸々の政治路線を明確にしている。しかしそれは、それらに一枚岩で従うことを押しつけてはいず、運動内の討論に向けそれらを提起する方を選好している。それが全般的な分裂や排除や連帯の欠如に導くことなしに、プラグマチックな左派社会民主主義者と革命的な社会主義者の両者を結集している。全員が、それはさまざまな潮流を収容可能となるべき共有の構想だ、と自覚している。その中心的目的は、東西ドイツの歴史とさまざまな運動の観点の両者から発する多様な経験を考慮に入れつつ、社会的展望のための論争と闘いと関連させて、社会的成果を防衛することだ。
 それゆえ左翼党の政治路線は、単一な章句でまとめることは困難だ。そしてこれがまさに、多くの観察者がつまづくところなのだ。かれらは断定的で曖昧さのない言葉を欲している。しかしそれはこの党の機能のあり方ではないのだ。その方向決定はそこで活動している人々によって決定される。
 これはその強みのひとつだ。つまり、参加するようになった者たちが党活動がどのように進むかに影響力を発揮できる。中心的な問題に基づいて辿られた路線は常に進化中であり、諸運動に適応される。
 極右の台頭にいかに取り組むかに関する論争はひとつの例だ。あるものは議会内のものを含む反AfDの広範な連携を訴え、他方他の者は、資本主義の中には巧みなやり方の空間がもっと多くあると示したがっている。たとえば私は、両者の立場に反対している。現実に、欧州内の、特にドイツにおける改良主義戦略に向けた巧妙なやり方の客観的な余地は、脱工業化と権威主義という脈絡の中で縮んできた。
 われわれは現在、むしろ安泰な、しかし困難な状況の中にいると気づいている。つまり党は倍化以上になった党員を確保しているが、多くは社会運動から直接到来し、他は政治化するようになり始めたばかりに過ぎない一世代に属している。
 これらの若者たちは左翼党をかれらの組織にすると決めているという単なる事実が、早くも意味をもっている。かれらはこうして意識的に、しばしばリベラル左派と見られている政党の、しかし現実にはリベラル右派の政策を唱える党の緑の党から顔をそむけつつある。この世代は、ドイツ内の政党システム全体が右に移行したということ、また左翼党だけがその場に、希望の勢力としての、排除と選挙権剥奪に反対する極としての場にとどまっているということ、に気づくことになった。

希望もたらす反対派への志向

――それでは、これらの若者は党に何を期待しているのか?

 私の考えでは、かれらが欲しているのは特定の要求の満足ではなく、むしろ希望をもたらす反対派の一部であることだ。最良ケースのシナリオとしてかれらは左翼党の中に、またこれは私が多くの場で見ていることだが、政治の中で効果的に行動できる空間を見ている。
 またこの点に達することを可能にしてきたことは、党がザーラ・ヴァーゲンクネヒトの離党以後周知の仲違いから何とか逃れることができてきたという事実だ。また党が家賃問題という形で中心的な主題を見つけ出すことができたという事実、さらに戸別訪問運動によって、基盤的レベルで活動し始めることが可能になり、人々が日々経験していることを基礎に小さな閉じられたサークルの外で人々との接触確立が可能になっているという事実も、先の点に達することを可能にした。
 われわれは、ここで歴史的な好機を得ている。議員と党の役員は、このやり方で政治での経歴を積むことなど不可能と見えた時に先の計画に乗り出すと選択したがゆえに、今の地位にいる。昨秋時点の最近まで、左翼党は終わったと見られていた。選挙に立候補した全員が、左翼のオルタナティブが必要との深い確信に基づいてそうした。これこそまさに、われわれが未来を建設するために今日を利用できるものだ。

パレスチナ連帯―困難と可能性

――パレスチナ連帯に関し、特に労働者階級と移民の居住地内で新しい推進力はあるか?

 パレスチナ連帯運動は現在、ドイツ内で最大の運動のひとつだ。それは主として移民に先導されている。多くの国と同様、弾圧は厳しく、レイシズムにさらに燃料を注ぐ役に立っている。したがって、「掲載された」意見と世論の間を見分けることが常に重要だ。全体としての住民内部では、ドイツからの兵器輸送に反対する多数派があるが、しかしこれはまだ街頭に明らかになっていない。
 パレスチナ連帯をみなさんが幅広くひとつの問題、あるいは「反ユダヤ主義」と特徴づけるとすれば、みなさんはもはや若者に、それだけでなく多くの労働者にも住民全体の一定の部分にも達することができないだろう。しかしこの見方は、特にドイツの恐るべき歴史のゆえに社会的左翼に長い間浸透してきた。
 もちろん、日々の生活の中で国家諸制度に人々が結びついていればいるほど――仕事を通じてであれ、あるいは私的な暮らしの中であれ――、「国家の根拠」という古い圧力がそれだけ多く感じられている、というのは今なお本当だ。これは障害であり続けている。
 しかしこれは社会主義戦略に大きな問題を提起していない。われわれが今話しかけているのは、何よりもシステムに統合されておらず、そこから苦しんでいる者たちに対してだからだ。そしてこれはまさしく、あらゆる攻撃にもかかわらずパレスチナとの連帯が新たな推進力をもつようになっているところだ。

――抑圧に反対する闘いはどのように進行中か? その克服は可能か? 運動は抑圧より強くなれるか?

 もちろん抑圧は、特に国家にもっとも近いところで働き行動している者たちに、あるいは何らかの形で国家諸制度に依存している者たちに一定の効果を発揮している。いくつかの場では抑圧が見えるものになろうとしている。たとえば、イスラエルの政策にはっきり反対していることを理由に、ユダヤ人女性が公然とはっきり声に出すことを禁じられるような場合、あるいは、法廷が催し後の警察の残忍な介入に有罪判決を下し、その後一定のスローガンに関する禁令を取り除くような場合だ。
 連帯運動の中でわれわれは、新たな住民部分が運動に加わり、相当な突破が実現しているように、新たな前進をいつも見ている。
 益々多くの組織がもはや背を向けることができないという事実もまた、先のことに力を貸している。かれらの怖れを一旦何とか克服できた者たちは、なおのこと決意を固めている。国家の姿勢がシステムに対する人々の原理的な信頼を今揺さぶっている。連帯運動内には、人道的要求への強調から反シオニズムの立場まで、今なお立場に関する幅広い広がりがある。
 当面ドイツでの大きな問題はまったく異なっている。つまり、出口がまったくないという憂鬱や感情と対決する闘いだ。連邦政府は長い間、イスラエルに圧力となるかもしれないことについて決定することを頑なに拒否してきた。それゆえわれわれは国家に反対している。しかし国家は意見を変えない。ドイツの「国家の根拠」があらゆるものの上をうろつき、外交政策全体に染み込んでいるのだ。
 したがって多くの活動家は、かれらが独り相撲を取っているかのように感じている。何十年もパレスチナとの連帯でキャンペーンを続けてきた者たちの場合、この時期はガザ、西岸、またこの地域全体で今起きている恐ろしさで圧倒されている。
 そして同時に、この局面は前進への大きな1歩も刻んでいる。すなわち、あらゆるイスラエル批判は本質的に反ユダヤ主義という考えにはもはや縛られていない、活動家と党員の新たな一世代が前面に現れたのだ。この進歩に即座の影響力はないかもしれない。しかしそれは、今後の年月にそこからもっと急進的な国際主義的な展望を築くことができる堅固な基礎をつくり出している。

議会内活動と現場の根の密着へ

――この情勢下であなたは、議会メンバーとしての自身の役割をどう見ているか?

 私は議員としての役割に、議会、諸運動、そして心中の党の間の関係という問題に基づいて変わることなく取り組んでいる。
 幸運なことに近年、左翼党の内部には多くの論争とはっきりした進歩が生まれてきた。われわれは、この関係がどのように構造化されるべきか、また的確な役割をどのように持ち込んできたのかについて、数々の教訓を学んできた。たとえば、金銭の支払いや社会的諮問の定期的開催に向けてのことだ。
 非常に明確だが、今日私が共に活動している議員たちは、職業的野心からではなく信念から立候補した。もちろん、党内の機能に関する古いやり方は依然残っている。そしてその中で議員は小さな作業グループに自身を組織しがちだ。そうした傾向は、組織的な理由から定期的に再表面化する。しかしわれわれはこの論理を壊し始めている。そして私は、われわれがほんの始まりにいるにすぎないとしても、われわれは正しい軌道上にいると考える。
 具体的に私は、私の活動に3つの側面を区別している。
 先ず私は、運動が現存の資源から利益を得ることを確実にしなければならない。私は主要に金銭についてではなく、むしろ情報やネットワークや声が聞き届けられる機会について今語っている。これはしばしば、単なる資金的支援に切り縮められている。しかし決定的なことは、分析、論題、評価、効果、さらに敵対者に対する良好な理解を運動に提供することだ。これらは議員としてのわれわれの自由になる資源だ。
 第2に、それはひとつの役割モデルであることに関わっている。われわれはこの役割に、いつの日か力ある者と政府からなる支配ブロックの一部になるという目標を貼り付けてはならない。私は議員として、国会内に入ったとたん消え去ることはない、と示さなければならない。私はカッセル(ドイツ西部ヘッセン州の都市:訳者)で多くの同志と共にコミュニティセンターを創建した。私の選出後、多くが私が今や「去った」のか知りたがった。
 しかし私の場合、ひとつのことは明確だった。つまり、議会内の活動と現場の根は対立してはならないということだ(注2)。それが私が社会的相談を行い続けている理由であり、借家人運動――この危機的な情勢の中で党全体の活動の中心的分野になっているが、これは偶然の一致では全くない――を支援する理由だ。われわれはこのやり方で、「議会人」になることなくブルジョア議会内で活動することが可能だ、と今示している。
 第3にわれわれは、標識的やり方で議会の演壇を利用しなければならない。この戦争と気候破局の時代、気候正義を求め帝国主義の利益に反対する闘いに可能な限り最大の可視性を与えることが重要だ。これはわれわれの前にある大きな任務だ。しかしそれは、階級闘争が現に展開中である中でそれから切断されてはならない。逆に議会の任務はその延長だ。
 もし2年か3年の内にこれらの問題――組織化活動、草の根の活動、さらに労働者階級に向かうそしてかれらと一体化した活動――が的確にわれわれの党の内部的論争に対し基礎をつくるならば、私は嬉しく思うだろう。そう言うのも、左翼と草の根に根を下ろしたひとつの方向が、漫画的ではなく2極化という時代に成果を上げる余地を現にわれわれに残している、と私がすでに示したからだ。(2025年9月1日)

▼アントニー・ララーシュは第4インターナショナル指導部の1員。
▼ヴィオレッタ・ボックは、ドイツ内の第4インターナショナルメンバー。
(注1)ヴィオレッタ・ボックは、ロスアンゼルスの労働/コミュニティセンター代表のエリック・マンによる標識的な著作『変革力ある組織化理論の7つの要素』のドイツ語翻訳者。
(注2)また彼女は、わが同志のトマス・ゲスと協力して、『不適当な提案? エリートと右翼に反対する左翼ポピュリズム』を書き上げた。かれらがその中で主唱するのは、「普通の人々のための社会主義」、および「希望の実験室と連帯の後背地を作り上げる目的の対抗権力組織化」だ。かれらはまたザーラ・ヴァーゲンクネヒトを「破綻したポピュリスト」と描いている。(「インターナショナルビューポイント」2025年9月30日)

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