東南アジア 当地域での国境の緊張
「王朝」、資本、人民との戦争
Raul Urbano(フィリピン、ミンダナオ)
最近のカンボジア・タイ間の武力衝突は、人命を奪い、コミュニティを離散させ、生活を破壊した。メディアでは「国境紛争」として扱われているが、実際はもっと根深いさまざまな力、つまり、植民地主義の遺産、強固なエリートたちの強欲、地政学的支配と超大国間の対立、そして東南アジアを支配し続けている軍国主義の論理といったものの暴力的な表現なのである。それは単なる国境線をめぐるものではない。誰が権力を握り、誰が紛争から利益を得て、誰がそのために戦争で血を流すのかということなのである。
帝国主義の
置きみやげ
この紛争の起源は植民地時代にある。その当時、フランス帝国当局は自らの戦略的・経済的利益のために東南アジアを一方的に各領土に切り分けたのだった。カンボジアの場合、フランスは817kmにわたってカンボジア領としたが、この決定が、特に国境付近の古代寺院をめぐる長期にわたる紛争の種をまいた。しかし、植民地時代の地図に国境線が引かれた一方で、今日の暴力は、ナショナリズムを煽り、自らの失敗から目をそらすために歴史的不満を操作する支配階級によって支えられている。
国境紛争は
汚職を隠す
カンボジアでは、プノンペンを拠点とする金融帝国であり、Haowang Guarantee、Huione Pay PLC、Huione Cryptoなどの子会社を通じて、しばしばタイ経由で数十億ドルの資金洗浄を行ったとして告発されているフイワン・グループと与党一族とのつながりが、大規模なスキャンダルによって暴露された。そのトップであるフン・トーは、現上院議長や首相に直接関係している。
カンボジア中央銀行からの警告や国際メディアでの暴露は、改革や正義をもたらしていない。それどころか、国境紛争が勃発したことで、支配者一族は自らをナショナリストの擁護者として再ブランド化し、監視の目から逃れることができるようになった。この再燃のタイミングは、スキャンダルに対する国民の関心がピークに達した時期と重なり、戦争がいかに政治的な煙幕として展開されうるかを明らかにしている。
ナショナリズム
は王朝守る道具
カンボジア指導部が、軍事的内紛にタイ首相が関与しているという電話をリークしたことで、緊張が深まった。タイでは、タクシンの娘でインラックの姪であるペートンタール・チナワット首相が、もうひとつの王朝を象徴している。カンボジアもタイも、権力が寡頭政治一族と軍部の間で揺れ動くサイクルに陥っており、民主的な制度は弱く、簡単に覆されてしまう。
この寺院をめぐる紛争は、国際法廷ではカンボジアに有利に解決されたにもかかわらず、タイ国家によってナショナリズムを結集するための武器にされている。ここでのナショナリズムとは、国民の主権を守ることではなく、政治的生存のための道具なのだ。
最大の苦しみは
被周縁化民衆に
7月24日、紛争は公然たる戦争へと発展した。民間人と兵士が死亡した。ASEAN議長でマレーシアのアンワル・イブラヒム首相の停戦イニシアチブは、タイが停戦を破ったことで失敗に終わった。国連は会議を予定したが、暴力は続いた。
最大の苦しみは、支配階級のエリートではなく、家を追われ、土地を捨てざるを得なかった貧しい人々、すなわち農民、漁民、先住民族コミュニティの上に降りかかっている。彼らは、戦争の発端となった決定に対して何の発言権も持たなかったにもかかわらず、戦争の最も重い重荷を背負っているのだ。
カンボジアの貧困率は依然として18%近くに達し、飢餓と健康状態の悪化の割合が高い。タイでは230万人が貧困にあえいでいる。フィリピンも似たようなパターンに直面しており、政治王朝がほとんどの州を支配し、農民、漁民、先住民の貧困を深めている。この地域全体で、植民地構造に根ざし、資本主義システムによって支えられているエリート支配は、大多数の人々の基本的ニーズが組織的に無視されていることを意味する。
人民と無縁な
和平プロセス
停戦でさえも、外交の勝利というよりは地政学的な駆け引きの表れであった。このことは、このような文脈における「平和」が、人権や道徳的要請としてではなく、帝国主義的・経済的利益のための交渉の切り札として扱われることがいかに多いかを明らかにしている。
カンボジアがドナルド・トランプをノーベル平和賞に推薦したことで、茶番劇はさらに深まった。
この紛争は、単に土地や領土をめぐるものだけではない。ポスト植民地主義支配者が維持する植民地的国境、少数者を富ませる資本主義的利潤追求、権力追求のために人命を消耗品として扱う軍国主義など、システムに関するものである。ここでのナショナリズムは変革的なものではなく、支配エリートが反対意見を封じ込め、軍事化を正当化し、真の抑圧者に対してではなく、民族を互いに対立させるために用いる武器である。
こうした連鎖を断ち切るには、反植民地主義的連帯に根ざし、王朝支配と軍事支配を解体し、資本家による土地と労働力の略奪に抵抗し、すべての人民の人権を擁護する道を進まなければならない。私たちは、国内の支配者か外国の帝国主義者かという誤った選択を拒否しなければならない。私たちが求める真の主権とは、搾取、軍国主義、支配から解放され、自分たちの土地、資源、未来をコントロールする共同体の力である。そして、下からの連帯は、すべての関係者、とりわけ抑圧され、搾取され、疎外された人々によって取り組まれ、強化されるべきである。
東南アジアの未来は、王朝や軍隊、億万長者によって確保されるものではない。それは、銃声に黙らされたり、権力者の貪欲さを覆い隠ためのの振りに惑わされたりすることを拒否し、国境を越えた人民の組織的で団結した闘いによって勝ち取られるのだ。
The KAKEHASHI
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


