イタリア 左翼の危機に立ち向かうための11の要点

別の歴史を始めるための「新しい出発」
反資本主義的左翼の建設には新しい政治的世代の関与が必要

シニストラ・クリティカ(批判的左翼)

 左翼全体が敗北について語っており、多くの場合混乱の中で、日和見主義的に、あるいは「新」主義的もしくは清算主義的仮説に基づいて敗北が語られている。しかしわれわれは、身近な事実に関する熟考を提出し、入れ物や公式ではなくより基本的なアイデアを示し、最初から真の基盤に基づいて新しい左翼の再建を始めたいと考える。

古い党のモデル
を一掃しよう

1 議会の議席を失ったことは、旧イタリア共産党(PCI)終焉後のイタリア左翼の敗北が終着点に達したことである。議席を得さえすれば、現実の中に根を持たず計画もなしにやっていくことができるという幻想は一掃された。古い党のモデルではもはや社会的団体の中で地位を維持することはできない。他の選挙で左翼が失った票の一部を取り戻す可能性を排除することはできないが、それで敗北が帳消しになることはない。それは根を持たない、下部労働者や社会の中に支持を持たない票の遺産に過ぎない。
 新しい左翼は、まず第一に敗北に責任がある古い指導グループを一掃することによって再建を開始するだろうが、何よりも、理解することから出発する。すなわち、解決すべき問題が明白であったにもかかわらず解決のために何もなされなかっただけでなく、イタリアの政治的生活の至るところで問題がますます深刻化したのはなぜかを理解することから出発する。

2 今日、改造よりも、新しい基盤の上に反資本主義的、階級的左翼の建設することを語らなければならないとわれわれは考える。
 根をおろすことは不可能であったが、その理由は、グローバリゼーションと二十世紀労働者運動の崩壊の文脈の中で制度的展望のみが強調され、官僚的遺産がこれらのあらゆる努力の効果をなくしたためであった。社会に根をおろすには長い時間がかかり、短期的には必ずしも選挙でむくわれない退屈な目立たない作業が必要である。特権や権力に対する個人的欲求に駆られている政治的層にとっては、最も容易な道は依然として体制の中で権力をともなう地位を手放さないことであり、このために必要なプロセスを行うことであるが、これは根をおろすのに必要な作業とはまったく異なる。
 また、われわれが現実に耳を貸そうとしないくたびれた指導部にもう一度やらせようとは思わない理由もここにある。われわれは、少数の議席を取り戻すための継承性にかかわる形式や日和見主義的マヌーバーにも関心はない。われわれが関心を持つのは、「新しい出発」、別の歴史を始めること、現在に対しても影響力を持つ二十世紀の官僚制のしつこい影響から解放され、別の左翼を建設するのに必要な想像力と動機を取り戻すことである。

広範な抵抗闘
争の組織化を

3 新しい階級的左翼は反資本主義的であるか、さもなくば存在し得ないだろう。女も男も、地球も、私的利益の絶対的規則の重みにもはや耐えることはできない。再軍備と戦争への動きにも、このものごとの状態が生産的であるという退行的錯覚にも、もはや耐えることはできない。
 簡単に言えば、これは資本主義反対を意味する。もう少し詳しく言えば、資本主義の代理人や守護者による支配は、実際に世界を変革することを望む左翼の再生を妨げることを意味する。政府から適切な距離を置くことは、単に革命的立場をとることに留まらない。改革に真剣に関与しようとすれば、現在の力関係の中で支配することはもはや不可能であることを認識しなければならない。

4 われわれは、反対派礼賛から始めることを提案する。われわれが少数派としての使命を持っているからだけではなく、この社会体制に対応する唯一の方法は運動、闘争、広範な自己組織化を通じて政治的・社会的反対派を呼び起こし組織化することだからである。二十世紀の労働者運動は反対派として重要な勝利を勝ち取った。
 今日、反対派として広範な抵抗を組織し、勝利を引き出し権利を勝ち取り、オルタナティブ仮説に実質を与えることは可能である。この理由から、全国レベルや地方レベルでPD(民主党、旧PCIを含む中道左派)とともに支配することは不可能である。すなわち、PDは最善の場合でも既存のものごとの状態を守るだけであり、行政的で権威主義的な態度をとっており、したがって右翼勢力に道を開いている。このようなPDとともに支配することは不可能である。ローマの事態が、このことを明白に物語っている。

参加と民主的規
則に基づく左翼

5 ベルルスコーニと北部同盟の勝利は、イタリアにおける漸進的な右への転換とすでに二十年にわたって退廃してきた社会的勢力の衰退を完成させるものであった。ベルルスコーニの「人民の自由」党(PDL)は、「まじめで責任のある」右翼政府の建設を試みようとしているが、社会的な根を生やそうともしており、フィーニの行動が示しているようにポピュリスト的・反動的性格を捨てていない社会的ブロックにも顔を向けている。
 同時に、コンフィンドゥストリア(イタリア産業連盟)に役立つようになろうと試みている。コンフィンドゥストリアは、労働者の獲得物に対する本格的な攻撃を開始することを望んでいる。彼らは全国労働協約から開始することをねらっている。彼らは全国労働協約に反対してPDの支持を得ることを追求するだろう。PDの側も同様な立場である。この理由から、イタリア政治の「二大政党体制化」の試みは前進するだろう。

 この状況に対する対応には政治的錬金術は関係がない。問題は社会的ブロックを識別すること、闘争の統一的枠組みと共同のオルタナティブ仮説にとって基準となる要素を識別することである。この意味で、階級闘争連合の再建、すなわちCGIL(イタリア労働総同盟)内の明確な強力な反対派から出発し、下部労働組合員の行動における漸進的統一を進めることは、決定的な楔(くさび)を表現することになる。
 これは、新たな反資本主義的左翼の企図にとって主要な地平である。闘争と運動の統一は、右翼勢力に抵抗し、階級闘争を担う左翼の建設に向かって前進するために今日不可欠である。

6 新しい左翼は、単一のアイデンティティを持つことはできない。過去の遺産が存在し、それらはもはや政治的表現に意味を与えるには十分ではなく、相互に弁証法的に出会わなければならない。
 われわれは反資本主義的、エコロジスト的、共産主義的、フェミニスト的左翼を提起するだろうが、一連の主観をでたらめに組み立てるのではなく、基準と共通作業プロジェクトの統一的枠組みを一緒に見つけることが必要である。しかし、この複数のアイデンティティを単純に宣言することはできない。それは実践されなければならない。すなわち、フェミニスト的左翼は、女性を主唱者として受け入れ、したがってまた、彼女らの闘いを受け入れる。

 エコロジスト的左翼は、環境の保護に関していかなる妥協も受け入れないことを意味する。共産主義的左翼は、既存の社会体制と手を切るために闘い続けること、既存のものごとの状態を廃止する真の運動を建設することを意味する。また、共通の理論的・実践的作業に基づいた国際的プロジェクトを構築することができる国際主義的左翼を意味する。この理由から、われわれはヨーロッパ反資本主義的左翼の経験に注目する。

7 絶対民主主義は、新しい出発の構築にとって決定的な手段である。われわれはもはや、カリスマ的指導者、無謬の指導部、不動の官僚主義、醜い立身出世主義や制度的衝動に基づいた左翼を、受け入れることも建設することもできない。
 われわれは参加と民主的規則に基づいた左翼を望んでいる。定期的大会と透明な規則だけでは十分ではない。厳密な対策が必要である。すなわち、あらゆるレベルの責任の厳格な交代制、イタリアの平均賃金に基づいた報酬、ジェンダー・パリティ、性的指向性の尊重、および自己資金による政治的活動である。指導者や不動の指導部の代わりに、あらゆるレベル(地域、テーマ、全国)において活動家集団が必要になるだろう。

再建のために
徹底した討論を

8 左翼は、権力やもっと悪いもののホールやサロンの中でではなく、矛盾や社会的対立の生きている世界の中で自己を構築するだろう。それは手作業であり、相互援助、社会的有用性、必要への応答性、闘争の組織と勝利の上に築かれ、そこからつくり出されなければならない。これは、一般的・抽象的ではない社会的な根をおろすことを意味する。
 これらの根は、新しい現実から、特に新しいプロレタリアート、移民をはじめとする現代の労働階級の新しい構成から成長しなければならない。それは、社会的自己組織化の形態と下層階級が発展させることができる政治的定着のタイプについての討論を意味する。それは官僚的な結晶化した機構によって達成できるものではなく、あきらめをしらない活動家の寄与にかかっている。これこそ、われわれを待っている任務である。急進性、とりわけ階級的急進性が、左翼政治を信頼できる参加型政治にするためのキーワードである。

9 また、左翼の再建には徹底的な討論も必要である。それらの討論は、われわれが望む社会と重要な地平についての厳格な、しかし儀式的ではない討論でなければならない。
 われわれは、私的利益でなく必要に基づいた、自己統治型の、民主的、社会主義的社会を提起する。それは主要生産手段という社会的財産の上に築かれ、エコロジー的で、性を区別し、解放的であるだろう。これは上からの抽象的モデルではなく、闘争と変化のただなかで正統性と力を獲得する、現実を変革する運動である。それは、この目的のために機能し闘うことができる政治的組織、自分を想定される真実の唯一の所有者とみなさない、過去の経験を猿真似しない、権力の役割と力関係を繰り返さない政治組織を熟考し建設することを意味する。現実を読み解き、その変換に参加することができる組織を意味する。しかし、われわれがこの主体であると主張するものではない。われわれはそれを実際に建設したいと望んでいるだけである。われわれが政治的運動である理由がここにある。それは自己を組織化し集団的プロジェクトを発展させることをあきらめることを意味しない。批判的左翼の建設もまた、このことを意味する。

別の世界、別
の社会は可能

10 新しい左翼は、いまここから、ベルルスコーニ体制と民主党のプラグマティックな順応が支配する危機の情勢の中で、建設されるだろう。優先課題は社会的反対派を組織することである。言葉の上でだけでなく真の必要に基づいてモデル化された社会的反対派を、である。
 われわれの意見では、この反対派にとって問題は依然として次のようなものである。すなわち、不安定労働に対する闘い、法律三〇号、「トロイの木馬」パッケージ(労働法改悪)と福祉パッケージの廃止を要求し続けること、最低賃金千三百ユーロと社会的賃金千ユーロを要求する闘い、全国労働協約の防衛である。さらに、アフガニスタンかレバノンかを問わず戦争と派兵に反対する闘い、ビツェンツァをはじめとする軍事基地および軍事費に反対する闘いも含まれる。
 また、以下も含まれる。すなわち、無益なまたは有害な大規模プロジェクトや民営化に反対して地域の環境を防衛する闘い。女性の自己決定権、(妊娠中絶および避妊に関する)良心的拒否に対するモラトリアムに関する法律一九四号の防衛。市民組合の認知を通じた性的指向性の完全な自由、人種主義・治安ヒステリア・新たな反ロマ排外主義に反対する闘い。また、この闘いは、ボッシ=フィーニ法およびトゥルコ=ナポリターノ法の廃止、移民とイタリア労働者の階級的統一、新しい市民権、恒久的居住者の地位、CPT(一時滞在センター)の閉鎖、移動の自由を目指す闘いでなければならない。また、これは右翼勢力に対する反対派の主要なテストとなり、すべての政治勢力が自己を測る領域となり、そこにおいては運動はただちに熟考と動員の適切な手段となるだろう。

11 反資本主義的左翼の建設には、新しい政治的世代の関与が必要である。この新しい世代は、崩壊については何も責任も負っていない。新しい政治的世代は、必ずしも最近の選挙で見られたような若者礼賛を意味せず、新しい社会的運動と全イタリアで発展を続けている闘いの最も純粋の表現を示すものでなければならない。
 発展を続けている闘いには、ビチェンツァやバルディスーザの「反乱する市民」、厳しい階級的闘いを続けている抵抗する労働者、自由にあれこれ命令されずに生きることを望むネオフェミニスト、バチカンが課している二級生活を拒否するLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア)活動家、新しい権利を求めて闘っている移民の闘いがある。新しい政治的世代はみならうべきモデルなしに成長したが、これが可能な最善の世界であるという考えに身を任せてはいない。さらに別の世界、別の社会が可能であると考えており、したがって闘う準備ができている。
「批判的左翼」全国調整委員会、2008年5月10日
▲ 「シニストラ・クリティカ(批判的左翼)」は、二〇〇七年一月に、プロディ政府への参加を拒否する共産主義再建党(PRC)少数派によって結成された。「バンディエラ・ロッサ」(第四インターナショナル・イタリア支部)の同志たちも含まれている。

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