イギリス労働党から除名された労働組合(RMT)

労働者の政治代表を模索
基地を抱えない自治体もぜひ考えてほしい

投稿 浅見和彦(大学教員)

 トニー・ブレア首相の下で、イラク戦争・占領と新自由主義政策を展開してきた労働党は、今年五月の総選挙では議席の大幅な減少という結果に見舞われました。
 その後、ブレアの次期総選挙への不出馬声明もあり、党の求心力が弱まっています。例えば、「反テロ」を口実にして、逮捕後の拘留期間を九十日へ延長しようとする法案も否決され、議員提案によって二十八日に短縮せざるを得なくなるという事態も生じています。マスメディアではポスト・ブレアに向けた議論がなされ、ゴードン・ブラウン財務相への注目が集まっていて、一部の労組幹部のなかには「期待感」を表明する向きもあります。
 しかし、労働党の一般党員のあいだでは、むしろ「空洞化」が生じてきており、ブレアが政権についた一九九七年には約四十万人いた個人加盟党員は今や二十万人へと半減し、また労組の支部が選挙区労働党へ結集せず、機能しなくなっている組織が増えています。

「政治」代表のあり
方を考える会議


 こうした状況の中で、労働者の政治代表のあり方を議論する会議を開催するイニシアティブが出現しました。昨年、労働党から除名された鉄道・海運・運輸労組(RMT)が二〇〇六年一月に、労働者の政治代表のあり方を考える会議を開催することを提案したのです。
 また、社会主義党(SP、旧ミリタントの多数派)が「新しい労働者党をめざすキャンペーン」を展開し始めました。
 一方、RESPECTは、十一月に第二回大会を開催しましたが、いくつかの重要な問題点が指摘される結果となりました。
 鉄道・海運・運輸労組(RMT、約七万人)は、昨年、同労組の政治基金を労働党以外の政党への支出にも開放する方針をとった際に、労働党が同労組を除名していました。そして、昨年と今年の同労組大会では労働者の政治代表のあり方を検討する会議を開催すべきだという決議が採択されていました。
 ボブ・クロウ書記長(*1)は、社会主義労働者党(SWP)の週刊機関紙「ソシアリスト・ワーカー」九月十七日号のインタビューで、「われわれがしようとしているのは、労働者階級の[政治]代表について議論するために、労働組合、その支部や諸政党が[来年]一月に会議を開くことを呼びかけるというものです。労働者の要求が議会で真に反映されていないことによる代表制の危機があるのです」と述べています。また、労働党がかつての労働党に戻るような動きを感じるかとの問いに、「まったくありません。もう終わっています」と答えていました。
 インタビューで述べていた労働者の政治代表のあり方に関する会議は、来年一月二十一日に開催されることが明らかにされています。
 RMTは、労働党再生派の結集体である労働代表委員会(LRC)にも参加しています。昨年結成されたLRCには、労働党内の社会主義キャンペーングループに所属する左派系の下院議員と、RMT、消防士労組(FBU、五万二千人、昨年、労働党を脱退)、郵便・電通労組(CWU、二十六万人)、製パン・食品関連労組(BFAWU、二万六千人)の四つの全国労組、さらに新共産党(NCP、一九七七年に結成された親ソ派)などが参加しています。
 そのRMTが、今日の労働党に対する厳しい認識を示したものとして、注目されます。

SPも新しい労
働者党をめざす


 一方、社会主義党(SP)も、十一月中旬に開かれた同党のイベントである「ソシアリズム二〇〇五」において、「新しい労働者党をめざすキャンペーン」を開始する声明を発表する集会を開きました。RMTは新しい労働者党の結成と言っているわけではなく、あくまでも労働者の政治代表のあり方を討論しようとするものですが、SPのこのキャンペーンは新しい労働者党の結成をめざすものです。
 声明は、同党の党員である全国労組中央役員二十一人と地方議会議員四人が呼びかけ人になっていて、①イングランドとウェールズにおける新しい大衆的な労働者党の創立をめざすキャンペーンに賛成する②そうした党の創立へ向けた代表者会議を開催する③RMTが呼びかけた会議を含め、労働者階級の独立した代表を確立しようとするための他のイニシアティブも支持することを目的に掲げています。
 声明に名を連ねた労組役員には、公共・民間サービス労組(PCS、三十万人)の委員長、書記次長ら十人、公務員労組(UNISON、百三十万人)の五人の中央執行委員、郵便・電通労組(CWU、二十六万人)の二人の中央執行委員などが含まれていて、SPの労働運動における基盤の強さが示されています。
 この新党をめざす集会には、公共・民間サービス労組(PCS)のマーク・サーウォツカ書記長(無党派)や、消防士労組(FBU)のマット・ラック書記長(元SP党員)も参加し、それぞれにニュアンスはありますが、労働党に代わる政治勢力の必要性について訴えました。
 同党書記長のピーター・ターフが週刊機関紙や月刊理論誌に発表した論文によれば、組織論的には連合体型の労働者党を構想しています。左翼諸党派の現状を考慮すれば、RESPECTに比しても、結集しやすい組織論と受け取られる可能性があるでしょう。
 また、他党派のあいだでも、SPはこの間、青年を中心に党員数を増加させているとする指摘があります(*2)。

RESPECTの
停滞と問題点

 他方、十一月十九、二十日に約三百五十人が参加して第二回全国大会を開いたRESPECTは、イラク反戦や来年五月の地方選挙に対する方針などの重要問題を議論し、決議を採択しました。
 しかし、①ジョージ・ギャロウェイ議員の当選という大きな成果を収めた総選挙の後も、メンバーは約四千人のままで拡大できていないこと②また、組織運営が不十分であることや③定期発行の機関紙が創刊されていないこと④さらに、幅の広い左翼結集という点でも成果をあげていないことなどが問題となり議論されました。
 これらの問題に対して、主流派となっているギャロウェイ議員や社会主義労働者党(SWP)の幹部たちは、例えば「一万人のメンバーがいても十万票しかとれないよりも、四千人で二十五万票とれた方が良い」(ギャロウェイ議員)と答えるなど、正面から取り組む姿勢を見せませんでした。
 そのため、国際社会主義グループ(ISG、第四インター・イギリス支部)を中心に「ソシアリスト・レジスタンス」紙を共同で発行している活動家たちは、大会後の声明において、こうした点を「深刻な問題」と指摘したのです。
 RESPECTが昨年一月に結成される過程では、社会主義党(SP)やイギリス共産党(CPB)へのアプローチ(接触)があった事実が明らかにされていますが、その後はこの二つの潮流・勢力を結集させるうえでの具体的な努力がまったくと言っていいほど、なされてきませんでした。また、筆者が「政治・選挙連合」(本紙昨年二月二十三日号)と書かざるを得なかったRESPECTの性格についても改めて問われています。

新しい政治と
労働組合運動

 こうした動向と直ちに結びつくものではありませんが、この間の労働組合運動における新たな動きのなかにも見落とすことのできないものがありました。
 これまで政治基金制度を持っていなかった――したがって労働党に加盟していない――左派系の公共・民間サービス労組(PCS、三十万人)が先頃、政治基金制度の確立を決定したことです。同労組のマーク・サーウォツカ書記長は、これまでRESPECTやSPの集会で連帯の挨拶を行ってきていました。組織拡大の面でも顕著な成果を収めている、この労組の政治方針がどのように打ち出されるのかも今後一つの焦点となるでしょう。

四潮流の政治的
共同か対立か


 RMTの呼びかけた会議にどの労働組合や政治潮流が参加するのか予断はできません。
 しかし、政治潮流という点で言えば、①RESPECTに結集している主流派の社会主義労働者党(SWP)や、この連合の改革提案を行いつつ支えている国際社会主義グループ(ISG)②新たな労働者党結成のキャンペーンを打ち出した社会主義党(SP)③労働党の再生路線を打ち出している労働代表委員会(LRC)④労働党再生路線派とRESPECT支持派を共に擁するイギリス共産党(CPB)の四潮流の共同・連帯が進むのか、それとも分裂・対立が固定され、広がるのか――イギリス左翼は一つの重要な転換点にむかっているように思われるのです(*3)。


(*1)ボブ・クロウは労働党員であったことはありません。一九八三年、イギリス共産党(CPGB)に入党。その後、同党内の解党派=ユーロコミュニズム派に対抗して一九八八年に結成されたイギリス共産党(CPB)の執行委員になりました。しかし、一九九六年に炭鉱労組の指導者、アーサー・スカーギルが社会主義労働党(SLP)を創設すると、この党に移り短期間在籍した経歴をもっています。現在は無所属。
(*2)旧ミリタントは、そのピークの一九八〇年代末に約八千人のメンバー(読者・支持者)がいたとされます。一九九二年の多数派(ピーター・ターフ派)と少数派(テッド・グラント派)への分裂、さらにスコットランド社会主義党(SSP)を結成し、合流したスコットランドの組織の分離によって、「多数派も数百人に減少した」という指摘がグラント派からはなされていました。しかし、SPの「ソシアリズム二〇〇五」には九百人以上が参加していますので、現在ではこの数をかなり上回るメンバーを擁しているのではないかと推測されます。
(*3)今年二月に解散した社会主義連盟(SA)に加盟していた労働者解放同盟(AWL)やイギリス共産党臨時中央委員会派(CPGB・PCC)など九つの左翼小党派と無党派の個人が、十一月十二日、約三十人の代表者を集めて「社会主義連盟(再建)」を結成しています。

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