1・6の混乱を経てバイデンと左翼の蜜月などあり得ない

かけはし 第2649号 2021年1月18日

必要なもの求める自立した闘いへ

デイビッド・フィンケル、ソリダリティ全国委員会

 2021年1月7日、11月の選挙結果を覆そうとする敗北した大統領の主張やドナルド・トランプによって扇動された「反乱」未遂に直面して、「アメリカの民主的な憲法制度の強さと回復力」について、今後数週間で多くのことが語られることになるだろう。バイデン/ハリス選挙人団の勝利を正式に議会で批准することをめぐる混乱は、1月20日の大統領就任式では繰り返されないと予測するのが妥当なところだろう。

右翼テロの不吉な脅威の実在


 ここで起こる可能性がある現実はもっと複雑で、バラ色ではない。そうした神聖なる「制度」は実際には反民主主義的な改ざんに対して非常に脆弱である。というのは、一つには制度がそもそも民主的であるようには設計されていなかったからだ。トランプの「盗まれた選挙」というゲームは多くの理由で崩壊したが、異なった、しかし完全に考えうる状況の下では、もっと脅威をもたらすものになっていたかもしれないのだ。
 いくつかのもっとも重要な事実を見てみよう。
 1.アメリカの民主主義はこんなものなのだが、黒人有権者が大挙して選挙で投票したこと――そして、激戦州ではラテン系や先住民の有権者が投票したこと――によって救われた。そうした人々の投票が否定できないほどの大差をつけ、トランプを打ち倒したのである。とりわけジョージア州のようなところでは、これは選挙区を都合よく改変した右翼的な州議会がおこなってきた組織的な有権者弾圧策を克服した長年の草の根の組織化への賛辞である。こうした英雄的な努力は、悲惨な新自由主義に主導された民主党にはもったいないと言いたいところだが、それがアメリカの政治に歴史的な変化をもたらしたことは間違いない。
 2.この長期的な闘いは決して終わってはいない。共和党員がトランプの沈没船から離脱する――その多くがトランプのもっとも悪名高い後援者だった――とき、共和党はトランプ氏の「遺産」をめぐって、さらには中道新自由主義のバイデン政権と共存・協力するか、それともバラク・オバマの当選以来追求してきた遵法的妨害行為を継続するかをめぐって分裂することになるだろう。共和党を、とりわけ州レベルで団結させているものは、有権者への弾圧である。これは、アメリカ合衆国の有権者に占める白人の割合が高齢化して減少する中で、共和党が政権を維持する唯一の方法だからである。
 これはただの脅しではない。夜に入って[催涙ガスの]煙が消えたあと、選挙結果を支持すると主張している共和党議員の演説に注目してみると、「州が選挙を運営する権利に介入できる」のは連邦議会ではないと述べていた。その演説者の一人がランド・ポール上院議員で、ジョージア州での決選投票の前に、より多くの人々に投票するよう働きかければ、「選挙結果を変えてしまう可能性がある」という見解を述べていた。冗談じゃない!
 実際に必要とされているのは強力な連邦選挙権法であり、州議会や州政府が――ディープサウスだけでなく――有権者名簿の粛清を行い、登録を妨害し、コロナウイルス危機の只中で11月の選挙の投票率を歴史的に大きくするのを助ける期日前投票や郵送投票を制限し、あからさまに黒人コミュニティのための投票所を減らし、人種差別的なゲリマンダー[自党に有利になるような選挙区割り]をおこなっている州にきっちりと介入することである。
 バイデン/ハリス政権が投票する権利のために、口先だけではなく闘うかどうかは、非常に大きな問題になるだろう(この先には、選挙人団なる「神聖な機関」を排除するという大きな憲法上の問題がある。それが全国的な一般投票を無力化し、僅差で争われている州での悪質ないたずらを可能にしているからである)。

右翼テロの不吉な脅威の実在


 3.政治家とメディアは、昨日起こったことを「反乱」と表現している。これは反乱の名を汚すナンセンスなものである。
 連邦議会議事堂への攻撃は、計画的で潜在的に殺人的な暴徒の行動として、確かに非常に深刻であり、来るかもしれない右翼テロの不吉な脅威である。警察の残虐行為に対するブラックライブズマターの多くの抗議行動への残忍な対応と、昨日の侵入者が建物内で逮捕されたとしても、みたところほとんどいなかったという事実との対比を誰も見逃すことはできない(その後の逮捕は、その日の出来事のあと出された外出禁止令違反のためだった)。
 トランプは、盗まれた「地滑り」的勝利についての嘘を繰り返す水曜日朝の集会で、集会参加者と一緒にいることを示しながら、「連邦議会議事堂への行進」を群衆に呼びかけた。もちろん、彼はその後、テレビ画面が壁一杯にあるホワイトハウスの地下室に引きこもった。1月6日にワシントンへの結集を呼びかけたとき、トランプはその日は「ワイルド」なものになるだろうと言っていた。これらがウイルスの超拡散イベントであるという事実を除けば、それは確かに暴徒の扇動だった。
 しかし、「反乱」とは、権力を掌握しようとする試みを意味するのか? それには、政府機関への半自然発生的な攻撃以上のものが必要である。左翼から見れば、抑圧的な政権に対する反乱には、ゼネストを実行できる、そして軍事機構の分裂を強制することができる大規模な大衆運動が必要である。右翼から見れば、クーデターは補助的に暴徒の暴力を使うかもしれないが、実際の行動は、路上での戦車、標的を絞った一斉摘発や逮捕、反体制派に対する組織的なテロである。昨日の首都ワシントンにはそのようなものは全くなかった。これは、白人至上主義極右および選挙が「盗まれた」と考える現実から遊離したイデオロギー世界に暮らす多数のトランプ支持者からもたらされる現実の脅威を過小評価しているわけではない。

米国民主主義のあやうさ明白に


 4.トランプ/共和党による「盗まれた選挙」キャンペーンの脅威は、「誠実な政権移行を支援するプロジェクト」[ジョージタウン大学教授のローザ・ブルックスなどが参画した超党派組織]とその創立者たちによって事前に理解され、広く議論されていたが、これは冗談ではなかった。それが崩壊したでたらめなやり方で、われわれを欺くことはできない。
 もし、11月の選挙結果がもっと接戦だったら、トランプ一味の選挙後の動きがより効果的に組織され、調整されていたら、法的手段が辛うじて生きているに過ぎないルディ・ジュリアーニの手に渡らなかったら、州判事および連邦判事のうち数人でもトランプ自身と同じくらい腐敗していたとしたら――そしておそらくミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンの州知事が2018年以降も共和党の手中にあったら、アメリカ合衆国は、2世紀以上にわたってそのエリートたちにとてもよく仕えてきた憲法制度に対する実存的な脅威に本当に直面していたかもしれない。
 アメリカ民主主義のいまにも壊れそうな状態は、政府や企業のコンピュータシステムがロシアのハッキングに対して脆弱であることが判明したのと同じように、内部からの破壊に対して脆弱なのである。もう一つの「盗まれた選挙」のシナリオが極端にまで推し進められれば、今ではなくその道筋のどこかで、ひょっとすると国を分裂させる可能性がある。そう、それは、ここで起こる可能性があることなのだ。
 5.昨日の暴力的失敗は、トランプ大統領に残されていたものを粉々にしてしまった。そして、おそらく(確信は持てないが)トランプ自身と彼の犯罪的家族の将来の政治的な展望をも破壊してしまった。ラッシュ・リンボー[保守派の代表的なラジオ・パーソナリティーで、トランプの支持者だった]は(1月7日のラジオ放送で)「もしワシントンで生活したいなら、いまやトランプを非難しなければならない」とそのことを実に正確に示した。このような突然の共和党への転向の偽善を理解するのに、リンボーのファンになる必要はない。
 ついに、企業を支配している階級の中心的グループが声を上げ始めた。たとえば、ツイッターやフェイスブックがトランプのカルト信者へのアクセスを停止し、全米製造業協会が修正第25条で彼を排除するよう求め、ゴールドマン・サックスのデビッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)やジェイミー・ディモンなど、トランプの政策によって許しがたいほど金持ちになった金融業界のリーダーたちがトランプに反旗を翻したのだ。トランプはこうした人たちにはもはや用なしなのである。

最大問題はトランプ主義の持続
 
 2024年にトランプが立候補すれば、永久に共和党を破壊してしまうかもしれない。たとえ今はトランプなしに進まなければならないとしても、それはトランプ主義と呼ばれるものの終わりを意味するものではない。
 この点では、1月3日にジャコバン誌に掲載されたサミュエル・ファーバーの分析「トランプ主義は持続するだろう」が非常にお勧めである。昨日のトランプの自爆前に書いているにもかかわらず、ファーバーは重要なポイントを指摘している。「トランプ主義を理解するためのもっとも有用な方法は、おそらく経済的衰退と認識された道徳の崩壊という客観的条件に対する右翼の反応として理解することである」。
 この文脈では、「認識された道徳の崩壊」は、あまりにも多くの白人男性が所与のものとして考えてきた地位や特権がいまや挑戦の対象となっていることへの右翼の怒りを軸として起きているものだ。これは、ここではできないほどのより深い議論を必要とするが、アメリカ社会の一つの現実の核心に迫るもので、とりわけ社会主義的左翼のわれわれが直面している中心的な問題に達している。労働者階級の相当部分が、特に白人労働者の間では、権威主義的で右翼的なレイシスト的政治に勧誘されている。
 そうした人々の忠誠心がトランプへの帰依から新たな指導者へと移せるかどうかは、依然として見守っていくべきである。しかし、それは、労働者階級の「トランプ主義」が、勝ちとって維持されるべき真剣な改革を獲得しようとする闘争の大きな障害として残り続けることに比べれば、二義的なものに過ぎない。
 なぜ、どのようにしてそれが起こったのかを理解するためには、われわれの状況の二番目の現実を理解する必要がある。つまり、バイデンと狭い意味での民主党が支配する議会を待ち受けている危機の客観的な巨大さである。新型コロナウイルスの大惨事、医療システムの崩壊、ワクチン導入の混乱。何千万もの労働者や中産階級の家族が直面している立ち退き、永久的な失業、破産、借金と医療費による破滅。どうしようもないほど水面下にある州政府や地方自治体。そして、トランプ大統領の4年間によってさらに悪化した、そのことすべてを覆い尽くす、絶え間ない気候変動と環境災害。
 その状況は、絶対的に巨大な政策を必要としている。つまり、大規模な景気刺激・救済策、予防接種を実現するための医療資源とおそらくは軍事資源の動員、化石燃料産業からの「急速な」移行、真のグリーン・ニューディールとメディケア・フォー・オール[国民皆保険制度]、でたらめな営利目的の移民収容所の即時閉鎖などである。民主党が与えられた権力をどう使うかを考え、共和党側は「超党派」になるのか、「妨害主義者」になるのかを考えているときに、両党内の「穏健」勢力を称賛した人々は何を期待するのだろうか?
 左翼と社会運動にとっては、それだからこそ重要なことは、活動的で、動員を維持しながら、わずかばかりのパン粉のためにではなく、必要とするもののために闘うことである。トランプの自壊を祝うことは確かに正常なことだが、バイデンと左翼との蜜月関係は絶対にそうではない。
2021年1月8日
(『インターナショナル・ビューポイント』1月8日)

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