アマゾン労働者全国スト決行
かけはし 第2663号 2021年4月26日
イタリア サプライチェーン横断する団結
はどのように可能になったのか
フランチェスコ・マッシモ
3月22日、イタリアのアマゾン労働者がこの企業の歴史上初めての全国ストライキを決行した。ジェフ・ベゾフの企業は労働者を分断するために長い間、下請け、臨時雇用、また迷路のように入り組んだ諸契約を利用してきた。しかし、倉庫スタッフの組織化は、外注化された配送ドライバーとの共同戦線を作り上げてきた。
あらゆる労働者を巻き込んで
彼らをかつて以上の緊張に押しやってきたパンデミックに入って1年、 アマゾン労働者はイタリア全土で24時間ストライキを決行した。この企業史上初めての全国ストライキでは労働者たちが、疲労困憊の労働強化、アルゴリズムによる専制的な管理、その雇用に対する企業の説明責任欠落に抗議するために、ピケットラインを張った。このストライキの1日は、それが倉庫従業員から配送ドライバーまでのあらゆるアマゾン流通労働者を巻き込んだがゆえに特に歴史的となった。
このストライキにとっての明白な鍵となる焦点は、数千の商品在庫を持ち、それが選び取られ箱詰めされる、アマゾンの大規模配送センター(「在庫センター」)だったが、それでもストライキは、中規模センター(諸々の箱が発送される)や小規模な「最終行程」配送センターまで広げられた。決定的なことだが、それはドライバーをも含んでいた。彼らは、アマゾンのアルゴリズムの直接的支配下で働いているにもかかわらず、外注化され、それゆえアマゾン従業員とは認められていないのだ。
この1日ストライキはこうして、参加率75%を宣言しつつ、労働運動にとっての――またアマゾンそれ自身にとっても――歴史的な画期を印した。それでも闘争は、その目的がアマゾンの流通操業に実体的打撃を与え、この企業のもっとも搾取的な行為を押し戻すことであるならば、国際レベルまでをも含むさらなる拡張が必要だ。
交渉中断によるストライキ指令
ストライキは、アマゾンイタリア・ロジスティカ(イタリアの7在庫センターを経営する子会社)と、労組連合CGIL(イタリア労働総同盟)、CISL(イタリア労働組合連盟)、UIL(イタリア労働連合)のロジスティックス支部間で行われていた交渉が突然中断された後で3月10日に指令された。各組合は1月の2回の会談の後、議論が進行中にあることへの満足を表していた。それでもこの企業は、労働条件、公衆衛生と安全、労働密度、作業日程、一時金、さらに食事券に関する企業レベルの労働協約を中心とした彼らの特定された要求に、具体的な約束をまったく行わなかった。
会社が議論すべてを拒絶することは不可能だった。イタリアでは、労組が今でも相対的に強力な制度的な力をもっているのだ。つまり、組織率はEU内で最高の部類にあり、諸労組は今も政策策定に影響力をもっている。
しかしアマゾンは、その古典的な戦略にピッタリ合わせ、労組の要求に応じるよりもむしろ時間稼ぎに励んだ。企業内の伝統的な労使関係の交渉は可能だろう、との諸労組の楽観論を吹き飛ばす形で、社会対話は話の通じない相手との対話であることが明白になった。
交渉は2週間前、下請け化されたドライバーに対する社会的責任を企業が認めることを拒絶した団交で破裂した。同社は、「顧客に向かうドライバーに対し、アマゾン・ロジスティックは第三者的なドライバー手配会社を利用している。したがってわれわれが信ずるところでは、正しい対話相手はその配送ドライバー手配会社とそれらを代表する業界団体だ」と力説する声明を出した。3組合は、交渉崩壊の責任は会社にあるとして、全国ストライキ――ドライバーだけではなく全国の配送ネットワーク全体をも巻き込む――を宣言した。
過去においては、流通の連鎖の異なった部分におけるさまざまな労働条件、さらに労組組織化のさまざまなレベルが、そのような全国規模のストライキすべてを妨げてきた。最も早い組織化は2011年に開業したピアチェンツィアの在庫センターで行われた。そこでの労働者グループの最初の組織化には5年を要し、2017年、そこは、イタリアにおける最初のアマゾンストライキの発祥地になった。その結果が、経営による労組認知、および労働時間と夜勤シフトに関するプラントレベルの労働協約明文化だった。
その時以来労組の戦略は、他の分野、特に一時金、公衆衛生と安全、そして情報に関する諸権利へと、この協約を拡張することになってきた。しかし会社は、これらの問題を真剣に議論することを拒絶した。そして、2019年と2021年に夜勤シフトに関する協約の年次更新を認めたにすぎなかった。イタリアと米国両者のアマゾン経営にとって、最初のストライキ後の協約は、例外であることを意味したにすぎなかった。その上諸労組は、動員する意志もなく、またその力ももっていない――また在庫センタースタッフも労組にそうするようまさに抵抗不可能な圧力をかけてもいない――ように見えた。
それでもこの最初のストライキ後の時期は、アマゾンイタリアの操業が、あらゆるEU諸国を貫いて伸びる垂直的統合を通じて、大々的に成長する期間となった。
2017年にアマゾンは、ヴェルチェリ(トリノとミラノの中間)とリエーティ(ローマ近く)で、2つの新規イタリア在庫センターを開設した。同社は2019年にトリノ郊外にもう1つを、2020年にはロヴィーゴ(東北部)、ポメーツィアとコッレフェッロ(ローマからそれほど遠くない)にさらに3つを開設した。
それはまた、配送ドライバーが自分の車に注文品を積み込み、彼らの配送行程を始める、25の事業所を抱えた自律的な配送支店をも開設した。この際には、組合組織化にはピアチェンツィアほどの時間はかからなかった。以前のストライキが組織化の努力を加速化し、リエーティとトリノは急速に組織化された。ドライバーたちも、最初は国のもっとも裕福な地域であるロンバルディア――彼らのほとんどが操業している――で、次いでローマ、ジェノバ、トスカーナで組織化された。
CGIL、CISL、UIL各労組連合の流通支部で代表されたドライバーたちは、アマゾンの労働力に加わったもっとも新しい部分だ。ピアチェンツィアが唯一の在庫センターだった2015年まで、配送は代わりに、UPSやSDAのような流通大企業あるいは国営郵便サービスに下請けに出されていた。しかしこの会社は2016年から、在庫センターから送られた梱包済みの箱を受け取るための、ミラノ郊外の、次いでローマ郊外の小規模な配送事業所を抱えたそれ自身の中間範囲のネットワークを構築し始めた。
各配送事業所を動かしている数十人の労働者はアマゾンによって雇用されている。しかし商品をまとめそれを顧客に届けているのは下請けのドライバーたちだ。今日、アマゾンの流通子会社は、4000人以上の労働者、加えて約1万人の臨時雇用労働者を雇っている(諸労組によれば、つまり公式数字はまったく公開されていない)。「最終行程」配送のためにアマゾンによって下請け化されているドライバーの正確な数字は、この労働力の極度の断片化を前提とすれば、判定するのも難しい。また季節的繁忙のピークに合わせて雇用され解雇されている臨時労働者や数が特定できないドライバーも約1万人いる。ロンバルディアのリカルド・チェスタのデータによれば、この地域には少なくとも1500人のドライバーがおり、彼らは、eコマース市場の20%を占めている。
異なる条件下の単一ストライキ
ドライバーであることは、在庫センターの労働者であることよりもさらに厳しい。両者共、過酷な労働リズム、恒常的な支配、そして自律性の全面的な欠如に対処しなければならない。しかしドライバーたちの諸条件は特に不安定だ。つまり、アマゾンは彼らの仕事を計画し監視する(彼らのルート、仕事量、時間、さらに評価)が、彼らを従業員としては数えず、彼らに対するどのような責任も受け入れないのだ。
ドライバーたちは、一連なりとなった指令の最底辺で、もっとも密度の高い搾取と最大の「柔軟性」に対処しなければならない。外注化された配送会社が繁忙ピーク季に何千人という単位で彼らを雇っている。これらの企業はアマゾンによって、より多く、またより早く配送するために、競争の中に置かれている。それは、次にはドライバーに加えられる圧力だ。
生産性の敷居は各シーズン毎に引き上げられ、経営者の要求とデジタル支配を満足させるために、労働者を強いてもっと多くを行わさせる。ピーク期の後には新たな生産性基準が維持されるが、しかし労働力の半分は解雇され、残りはより速くなったペースで続けなければならない。諸労組によれば、「2019年の最初の2、3週、アマゾンのドライバーは」この産業平均の「1日当たり2倍にも達する数の荷物を配送していた」。
これらの高まる労働負荷の背後にある事実は、アマゾンの市場専有率が、安定した職数の比例的な上昇なしに大幅に増大した、という事実だ。これがまた今でも、労働者内部の不満をも駆り立て続けている。そして彼らは、イタリアの主要都市内の交通を通り抜ける難しい仕事が過小評価されている、ということを分かっているのだ。
彼らがその下に置かれているこの強い圧力が、ドライバー内部で最初に現れたストライキの多くが自然発生的だった、ことの理由を説明する。労働者たちはこれらの行動の中で、管理上の虐待、間断ない生産性引き上げ、そしていわゆる認可システム、を終わりにするよう要求した。ちなみに最後のものは労働者に、交通違反の罰金や彼らの車への損害を理由として、彼らの雇用主に罰金を払うよう強いている。
2017年のミラノにおける最初のドライバーストライキには、2018年には他の者たちが続いた。この年の10月、諸労組連合と外注化された配送企業の業界団体によって――アマゾンそれ自身によるものではなかったが――、サプライ・チェーンレベルの集団協約が締結された。しかしながらこれは、労働者たちを満足させなかった。そして2019年1月、彼らはロンバルディアの地域中で諸労組連合と共にもう一つの業務放棄を組織した。このストライキは前進に向けた重要な1歩だった。すなわちそれは、この大きな地域を貫く協調を結果として伴ったのであり、それは、依然としてドライバーだけしか巻き込まず倉庫スタッフを欠いていたとはいえ、個人化されまた断片化された労働者内部のものとしてはなかなか立派な偉業だった。
分断持続化助けた諸労組の状況
イタリアは、アマゾンの労働者がストライキに打って出た唯一の国ではない。最初は2013年のドイツだった。その後に2014年のフランス、2017年のイタリア、2018年のスペインが続いた。これらのストライキは基本的に操業現場を基礎としていた。アマゾンの物流ネットワークの急速な成長が条件となって、諸労組は新規開業にペースを合わせることができず、操業拠点すべてで労組組織化を行うことができなかった。
部分的な例外はフランスで、そこでは労働諸法が義務的な職場選挙(労働者の職場代表の:訳者)を助けている。これが、あらゆる操業現場における労組の存在を、さらに在庫センターを経営する子会社、この場合アマゾンフランス・ロジスティク、における中央に集中化された団体交渉を力づけている。これが、パンデミック期間の中での協調された決起を助けた。その時諸労組は、在庫センターを貫く全国ストライキを呼びかけた。それでもこれが、小規模な配送事業所やドライバーにまで拡張されることはなかった。ドライバーは、分離されたアマゾンフランス・トランスポートによって雇用されるか、外注化されていたのだ。
アルプスの先のイタリアでは労組連合が、同じ問題に直面した。業態は同様であり、物流運営を担う一つの子会社(アマゾンインタリア・ロジスティカ)と、配送事業所のためのもう1つ(アマゾンイタリア・トランスポート)に基づいている。そして後者には、小規模と中規模の外注化された配送企業からなる一団が一緒になっている。
それでもここの諸労組には、労働力全体の組織化に向けた彼らの戦略という点で、もっと優れた先見の明があった。彼らは、最終行程配送がアマゾンネットワークでは一つの弱点であり、そこが搾取で最も高いレベルにある、とはっきりと理解した。したがって諸労組、特にCGILの物流支部は、ドライバー組織化に力を投じた。そして、2017年の最初の自然発生的な作業放棄が示したように、ドライバーたちは行動を起こす前に諸労組の青信号を待つ必要を認めなかった。
アマゾンの物流労働者にとっての共有された戦略を作り上げることはまったく楽ではなかった。そして、産業レベルの連合に固く分割された労組の連合構造が、ドライバーと倉庫スタッフの間の協調を難しくしている。たとえばアマゾンのイタリアでもっとも古いピアチェンツィアの在庫センターは、商業部門のための協約で扱われている。他方でその作業の残りは、物流と運輸の部門のための協約で扱われている。これが意味することは、同じ子会社に雇用されているが、異なった現場で作業している倉庫労働者は、2つの異なった労組連合によって代表される、ということだ。
そのような人為的な分割、二つの異なった協約を締結するというアマゾンの決定――そして諸労組の産業レベルの構造によって再生産された――の結果は、労働者と組合代表の間の協調を困難にしているだけではなく、彼らの思考にも枠をはめている。ある者たちはそのような協調に優先性があるとは考えていない。「商業契約下にある労働者は物流契約をもつ彼らの同僚と同じ問題を抱えているわけではない」からだ。
草の根の組織化が力関係変えた
しかしながら、賭けられているものは高かった。そしてそうした障害は遅かれ早かれ克服される必要があった。アマゾンは世界で最大の雇用主の1つであり、デジタル「革命」の前衛の位置にある。それは、労働規制から反トラストや税法までいたる、ゲームのルールの崩壊を追求している強力な独占体なのだ。パンデミック、そしてその後に続く資本主義経済の再組織化は、その力を高めてきただけだ。
これらの理由から、このストライキには否定しがたい政治的影響力がある。しかし労組のこれまでを超える動きの重要性は、イタリアの労使諸関係、特に物流部門のそれが抱えるもっと幅広い力学の中で理解される必要がある。
イタリアの労組連合はこの20年、制度化というプロセス――1990年代以降からの、イタリア国家への統合過程に燃料を注いだ、社会的対話と企業主義の取り入れに続く――に参加した。諸労組は政策作成への参入回路を獲得した。しかし引き換えに、賃金引き下げと産業争議の停止を認めた。
これは特に、労働力市場の周辺部――特に、新興物流産業――を決起させる諸労組の能力に害を与えた。それはさらに、労働力市場の規制解体、賃金切り下げ、そして高まる一方の経営の自由裁量権力、に抵抗することをも難しくした。物流部門の労働者たち、特に移民は、外注という断片化された連なりの中に別個に囲い込まれた。つまり、大手物流企業は倉庫作業を、規制を外され多くの場合違法な条件の下にある協同組合に下請けした。これらの協同組合は、時間外労働、不払い残業、さらに専制的ルールを強要する目的で、特に、彼らのイタリアで暮らす要件が彼らの職に結びつけられている移民労働者を脅迫している。
諸労組連合は、特に労組と協同組合運動間の歴史的に良好な関係のゆえに、この戦線で真剣な主導性を発揮することはまったくなかった。この現状維持は最終的に、2011年からのSI・COBASとADL・COBAS(いずれも自律的な独立労組:訳者)という下部労働者の組合形成によって粉砕された。草の根の活動家と物流労働者から構成されたこれらの独立組合が、イタリア中で波を作り始め、この部門の力関係を変えたのだ。
COBASの成功は、多くをその柔軟な労組構造に負っている。つまりその構造は以前からある移民の共同体的な結びつきに依拠し、移民労働者が指導部的な役割を果たすことに余地を与えたのだ。また鍵となったのは、倉庫門前の座り込みや封鎖というその武器だった。これが、労働者が商品の配送を麻痺させることを可能にした。この圧力が相当程度経済的条件と労働条件を改善し、生気を回復した労組組織化の波をこの部門にもたらした。今日、SI・COBASとADL・COBASは、イタリアのもっとも重要な運送便と特別便の企業のいくつかで、もっとも代表的な労組になっている。
これはまた、厳しい弾圧をももたらした。ピケットラインは雇用主の忠実な手下や警察、また雇用主のロックアウト、政治的動機の解雇、法的起訴、罰金、裁判によって攻撃を受けた。まさに先週、ピアチェンツィアのSI・COBAS活動家が、FedEX―TNT(これも世界的な大手配送企業:訳者)に対する困難だったが勝利的なストライキの後逮捕された。
労働者の幅広い連帯が今後の鍵
アマゾンは事実、COBASが意味のある組織を確立できなかった唯一の企業だった。これは、その雇用条件の独自性、HRメソッドのスタイル、さらに特に在庫センターの相対的に大きな安定雇用の約束で説明が可能だと思われる。
これは、より確立された労組連合に向けたアマゾンストライキの政治的重要性を説明する助けとなっている。この業務放棄は、交渉の突然の中断によって引き金を引かれた。そして諸労組は多国籍企業に彼らの強さを示したがっている。しかし、社会的対話という狭い観念に忠実な彼らの狙いは、アマゾンを交渉のテーブルに力づくで戻す――他の部門では存在している正常な労使関係を確立するために――ことにある。
勝利は決して確実ではない。アマゾンの戦略は、あらゆる重要な約束を、特にそれが賃金水準や労働過程に関する労働者の統制という問題になる場合、回避することなのだ。それに加えてイタリアの出先には、シアトルのアマゾン本社の同意なしには、協定に署名する正統性や実効的な決定権限がまったくない。この会社はこれまで、この戦略を首尾よくやり遂げることができてきた。そして、諸労組と労働者が物流業務の通常の機能に実体的な害を与え、商品の流れを止めることができるまで、そうし続けるだろう。
3月22日のストライキは労働者運動にとっては歴史的だ。しかしそれがさらにもっと幅広い労組の復活に刺激を与えることができるかどうかは、この闘いの進行を維持し、それを他の労働者に、特にアマゾンのコールセンターオペレーターといった臨時契約労働者や他の企業の労働者に広げる労働者の能力にかかっている。さし当たり1つの前向きな兆候は、このストライキの当日に起きた、アマゾンの注文の配送を拒否したミラノのUPSドライバーによる行動だった。さまざまな労働者集団内部の分断を克服する上ではそのような連帯が――そして多国籍企業に対する国際的戦線の構築が――原則になる。(「ジャコバン」誌より)
▼著者はパリを拠点とする労働問題研究者、またローザ・ルクセンブルグ財団によって発行されたアマゾンの労使関係に関する報告の共著者。(「インターナショナルビューポイント」2021年4月号)
The KAKEHASHI
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