ブラジル:エネルギー移行の欺瞞が再出現
石油が大声を上げている
左翼は二股路線に明確なノーを
スブベルタコミュニカ
イバマ(ブラジル環境・再生可能自然エネルギー研究所)による、国家が支配する石油企業のペトロブラスに対する、アマゾン川河口近くの赤道近接縁辺に沿った石油探査窄孔を対象にした認可承認という決定は、この国の環境およびエネルギー政策に関する巨大な後退の1歩を意味する。それが示すのは、われわれが至急に克服する必要のあるもの、つまり化石燃料を基礎にした発展という論理、がブラジル国家内で優勢なままなことだ。
環境にも経済にも大きな危険
パラ州ベレンで開催されるCOP30の前夜におけるこの決定は、単なる技術的選択では決してなく、むしろ世界的な気候危機を前にしたブラジルの政治的な位置取りの変更だ。事実それは、世界の公正な移行の先導を追求するひとつの国というイメージと矛盾し、ブラジルは今も資源依存と搾り出しという歴史的なサイクルにとらわれたまま、との理解を強めている。
現政権の綱領は社会的かつ環境的な公正に基づく環境的な移行に基礎を置いているとはいうものの、地球のもっとも敏感な地域のひとつにおける石油探査というこの認可は、理論と実践間の矛盾をはっきり照らし出している。「公正な移行」というレトリックは、化石燃料に依存する自然からの抽出モデルの継続と衝突し、それがエネルギー主権と国内的自給自足という根拠で正当化されている。
赤道近接縁辺での探査は、ブラジル領土をはるかに越えて影響を及ぼすだろう。抽出された石油の多くは、CO2排出を他の国々に移転しつつ、またブラジルの世界的な気候の責任を掘り崩しつつ輸出に向かうと思われる。
諸々の気候組織による評価によれば、この地域から抽出される潜在的に可能な石油の燃焼は、110億トン以上のCO2を解き放つ可能性もある。それは、温暖化が1・5度Cに限定されるとした場合に利用可能な残余炭素予算総体の約5%になる。換言すればこれは、地域的な影響にとどまらず地球的に影響を及ぼすのであり、それは、国際的な気候の闘いでこの国の役割を傷つける。
これはわれわれを、より大きな気候の安全喪失と不確実性という状況の中にさえ置く。地球はすでに、9つの地球的限界(地球のエコシステムに対する安定性の限界として科学界により確定された)の内7つを超えている。そして化石燃料産業はこれに主な責任を負っている。それがどこにあろうと、もっと多くの油井を求める探査を広げることは間違いなのだ。
環境と気候の影響に加えて、無視ができない経済的な論点もある。いくつかの国際的な研究、たとえば「持続可能な開発国際研究所」(IISD)による研究は、ペトロブラスの石油拡大はハイリスク投資を意味すると警告している。それらは、新しい生産構想の85%までは、2・4度C以上の地球温暖化シナリオにおいてのみ、すなわちパリ協定の目標に合致しないという筋道においてのみ収益性があるだろう、と評価している。
経済の要素やその数字のみが探査拒絶を求めるわれわれの動機になってはならないとしても、それらが示すものは、利潤論理にしたがってさえもこの国は、再生可能資源への世界的な移行により早々に行き詰まりになる可能性のある資産に投資中、ということなのだ。
公正な移行の主張に反する行動
戦略的な企業としてのペトロブラスは、この情勢の中で矛盾したところがある位置を占めている。多くの再生可能エネルギー構想に基づいて(ブラジル北東部での風力や太陽光の発電プラントをめぐる一定数の対立があっても)、また多くのグリーン広告によって、エネルギー移行の一指導者として自身の位置を置き換えようと求めつつも、それは同時に新たな油田に大量に投資中なのだ。イバマの決定はこの二股路線を正当化し、エネルギー部門の社会的かつ領域的な構造改革の必要に立ち向かうことを遅らせている。
ブラジル北東部のナタルからフランス領ギニアとの国境まで延びる赤道近接縁辺は、その高度な海と川の生物多様性で、また沿岸のエコシステムに直接頼っている沿岸漁業コミュニティ、キロムボラ(ブラジルに連れてこられ逃亡したアフリカ人奴隷の子孫:訳者)、そして先住諸住民にとっては本拠であることで有名だ。アマゾン河口域への調査や探査向けインフラの設置でさえ、かなりの影響があるだろう。石油漏れや汚染という将来の危険は言うまでもなく、それらは、漁業、水質、また伝統的な暮らし方に悪影響を与えて、生態的連鎖全体に打撃を与える可能性もある。
ふたつの合理性間の政治的戦い
エコソーシャリストの観点から見れば、ペトロブラスに与えられた認可が示すのは、周辺領域が中央集権化された資源依存的開発構想のために犠牲にされ続けているということだ。それは、資本によって絡め取られてきた「移行」の袋小路を実践の中で例示している。それは、エネルギーの必要の否認という問題ではなく、どんな論理で、またどのような種類の社会に役立つのかにしたがって、それを誰が生産するのかを問うという問題だ。
アマゾン河口での石油採掘は、ふたつの種類の合理性間にある対立を露わにする。すなわち、自然を商品に変える(ダヴィ・コペナワ〈アマゾン先住人のヤマノミ族のポルトガル語スポークスパーソン:訳者〉の言葉に従えば「商品の人々」の)生産力主義的合理性、そして(森の人々の)エコロジー的合理性だ。後者は、暮らしのシステム、領域、また文化間の相互依存性を理解している。
アマゾンの保護は狭い意味での「環境主義」の要求ではなく、他の暮らし方と他の種類の社会的再生産を求める政治的闘争なのだ。アマゾン河口を守ることは、石油の樽で測ってはならないような、生命の流れ、自律、そして社会的―環境的多様性で測るような、文明の将来のための闘いを意味している。
異なった合理性間のこの争いはさらに、石油を求めるより多くの窄孔がどのように歴史的な不平等を再生産するか、をも露わにしている。アマゾン沿岸で暮らす先住民、キロムボラ、また伝統的コミュニティは、実体的な決定策定機構に関与する通路が全くないまま、エネルギー前線の進行とぶつかっていることに気づいている。ILO条約169号に規定されたような、自由で前もっての情報が与えられた協議の欠落は、これらの人々の周辺化を強化している。搾取と環境的レイシズムの植民地主義論理が復活し、抽出された富からは最低の利益しか受けない人々に社会的―環境的な危険を押しつけている。
進歩的陣営、特に政府の社会的かつ政治的な基盤を構成している者たちの前にある挑戦課題は、化石資本主義との決裂なしには社会的―環境的な公正もまったくあり得ない、と言い張ることだ。われわれは、計画段階からその後まで活動的部分をになうコミュニティと共に、新しいエネルギーインフラの開発に貢献するイニシアチブを強化する必要がある。その目的は、火力発電と化石燃料を、あらゆるレベルで脱集中化され、利用可能で再生可能、かつ低汚染の公的インフラで置き換えることだ。
われわれは、あらゆる新火力発電プラント、新たな油井窄孔、そしてあらゆる他の汚染プロジェクト、さらに社会的―環境的な公正を欠いた再生可能発電プロジェクトに反対する。われわれは、石油労働者の労組や化石燃料部門の他の労働者との対話を推し進め続ける。組織された闘争のみが化石資本主義を止めることができるだろう、そしてわれわれは、この闘争に加わるようすべての人に訴える。(2025年10月22日、「スブベルタ」からIVが訳出)
▼スブベルタコミュニカは、世界を変革し、搾取、抑圧、また地球の破壊のあらゆる形態を終わらせるために活動しているエコソーシャリストの政治組織。(「インターナショナルビューポイント」2025年10月28日)
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